ヒマラヤに木を植えよう! 22 years with IHCヒマラヤ保全協会

ヒマラヤの豊かな自然をこの先も守っていくために何ができるのか?
人と自然の共存を目指して、私たちにできることは?

前回、ネパール手漉き紙の生産現場のレポートに続き、
今回はカレンダーの裏に書かれている「SAVE THE TREE」についてのお話しです。

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前回の記事はこちら

ロクタ収穫~手漉き紙の完成まで

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ロクタの木。和紙やお札の原料となるミツマタ同様のジンチョウゲ科。
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材料になるのは、剥いだ樹皮の内側、フワフワ柔らかい繊維です。

2009年春。ネパールの山村を旅した時、遂に念願の“ロクタ収穫~手漉き紙の完成まで”を体験する事が出来ました。西ネパール、バグルン地方のサリジャ村です。
到着後、村の集落から30分ほど斜面を登って森の中へ。

あった、ありましたー!ロクタさん、初めまして!
想像していたよりずっと華奢なイメージです。このサイズでも4年経っていて、収穫後も再生して成長してまた収穫できるそうです。

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ロクタの苗木
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苗棚。各樹種育苗中。

このサリジャ村では、IHCヒマラヤ保全協会の技術サポートにより、苗を育て植樹をする森林保全、暮らしに役立つ生活林のメンテナンスをしています。電気やガスなどのエネルギーに頼りきれない山村では、カマドに使われる薪は必要不可欠です。
家畜の飼料や建築材も同様。そして現金収入を得て生活向上を目指す為の果樹や、手漉紙の原料ロクタ、手つむぎ手織り布の原料ヒマラヤイラクサなどが生活林を構成しています。
NPO法人 ヒマラヤ保全協会のH.P→ https://ihc-japan.org/

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この写真以降は、サリジャ村と同じような環境での様子(写真提供はカトマンズの手漉き紙製品工房より)。
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収穫したらすぐに樹皮を剥いで村に運びます。

Q:そもそも森林保全は何の為?

ネパールの山村という立地で考えると、
第一に村の安心安全です。斜面から森林が失われると土砂崩れの危険があります。
第二に森の保水力です。森が自然のダムになりますし、大切な表土の流出も防ぎます。
第三に自立した生活を支える森林資源確保となります。
地域によっては防風・防砂など、それぞれの役割で森林が地域の人々の生活を守っています。

ヒマラヤ保全協会は現在までに、ネパールで100万本以上の植樹実績がありますが、チャイハネでお買い上げいただいたネパール製品からの支援金が、そのうちの約6万本分の植樹費用となっています。(2000-2021. 22年間の累積)

5メートル間隔に植えた苗木が順調に育っているとして、横浜の山下公園で約1700本になります。
6万本と言えばその35倍の森に相当します。
国際試合が行われるサッカーのピッチには約330本になるので、その180倍の森に相当します。
10~20年前に植えた木は立派に成長して、山村の生活を守ってくれている事でしょう。

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収穫したロクタの樹皮を村へ運ぶシーン。
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農閑期、晴天率の高い冬が手漉き紙作りには最適。

Q:ヒマラヤ保全協会との出会いは?

2000年のある日。毎年大量に手漉き紙商品を輸入販売していたので、森林破壊になっていないかな?素材はこれからも安定供給されるのかな?と気になり調べ始めました。
それをきっかけに現地で活動する国内外の非営利団体を調べていき、ヒマラヤ保全協会の活動ポリシーと実績を知る事となります。

専門家が現地に入って状況をしっかりと調査・分析・計画をし、数年後には村人が自立してその仕組みを継続出来るようにします。
圧倒的な分析力、そして現場に親和性のあるアプローチ、与え続けるのではなく自立をサポートするスタイル。
この団体は只者ではない!と感心していたら、あーつ!そうだったのかー!
なんと創設者が川喜田二郎先生でした!

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太陽の光を全身に浴びて育つ手漉き紙
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乾くとペリペリッと気持ちよく剥がせます。
内側(網側)はフラットに仕上がるので表になります。
外側(太陽側)は繊維がボコボコした素朴な仕上がりです。

著書「ネパール王国探検記」「鳥葬の国」は、文化人類学者(あるいは民族地理学者)の川喜田先生が、1950年代、まだ謎に包まれていたネパールで長期学術探検をしていた頃の記録です。
私自身ネパールを旅しながら何度も読み直しました。

皆さんの中にはKJ法という情報整理と発想の為の手法を知っている方もいると思います。
これもネパールでのフィールドワークで集めた膨大な情報やアイディアを統合して、新たな発想を生み出すために考案されたと言われています。(KJは考案者のイニシャル)

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その出会いから22年、ヒマラヤ保全協会の活動をそれぞれの時代に支えてこられた会長、事務局長、理事、会員の皆さんと共に活動してきました。
これからも新たな世代を巻き込みながら続けていきましょう。

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プレーンな手漉き紙、出荷の様子。これから街に運ばれて、カレンダーなどが作られます。

ぜひ、紙の表情を見てみて!

今頃、2023年のネパール手漉き紙カレンダーがチャイハネの店頭に並んでいます。
お好きなデザインを選んでいただく前に、まずは、紙の表面を触ってみたり、透かして繊維を見てみたりしてください。手漉き紙本来の素材の魅力が感じられると思います。

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街の手漉き紙屋さん

この記事が公開される頃から3年ぶりにネパール出張に行ってきます。コロナ渦の中、大変な思いをしながら商品を作り続けてくれた現地のメンバーと再会するのが今から楽しみです。
次回40 years with Nepalは、現地からの最新ネタをお届けできると思います。

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上原さんのプロフィール画像

筆者プロフィール:上原 伸郎(うえはら しんろー)

元バックパッカー・現商品本部長
1989入社
履歴書に書いた海外渡航歴が決め手で採用される。
その後、世界の生産地を駆け巡って33年。
そろそろ…またバックパッカーに戻りたいと思っている。

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