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2022.01.06

意外と知らない だるまのコト

意外と知らない だるまのコト

〜だるまとは?〜


丸いフォルムに鮮やかな色彩、厳かな表情。

祈願成就のための飾り物として古来、親しまれているだるまですが、出で立ちは知っていてもその歴史やご利益については深く知らないという方もいるでしょう。

だるまとは、もともと厄や病、災いなどを払う縁起物として、人々が願掛けを行っていた飾り物です。「だるま」はサンスクリット語で「法」や「教え」という意味があります。その名を冠し、インドから中国へ仏教を伝えたという僧、達磨大師の伝説がだるまの由来。「壁に向かい座禅を続けて手足が腐った」という話や「羽織を着て座禅をしている」という容姿にちなんで、手足がなく作られたといわれています。

浮世絵に描かれる“だるま”

江戸時代より生産が始まって以降、色や顔、形の特徴が異なるさまざまなだるまが各地で誕生。有名な群馬県の「高崎だるま」をはじめ、埼玉県の「越谷張子だるま」、福島県の「白河だるま」など、各県の伝統工芸品に指定されている物もあります。

〜だるまのご利益〜

だるまは、五穀豊穣や商売繁盛、受験合格、開運などのさまざまな祈願の成就のために飾られることが多いです。

縁起がよいとされた理由や現在のデザインとなった由来は諸説あります。

【色の意味】


だるまの色は赤色が代表的。赤は邪気を払うといういわれがあり、高崎だるまの歴史では、疱瘡(ほうそう)と呼ばれる病気が蔓延したことから赤く塗られただるまが病気除けとして使われていた背景があります。

また、越谷の五色だるまのように、青・黄・赤・白・黒(紫)と5体の小さなだるまを1組として生産していた地域もあります。後には、色ごとに異なるご利益があるとされ、色のバリエーションも増えていきました。

例えば、黒色は黒字、ピンクは恋愛、黄色は縁結、白色は目標達成、緑は安全・健康などなど、願いたいことによってだるまの色を選ぶことも珍しくなくなりました。色のご利益は地域によっても差があるので、選ぶ際は、神社やお寺の説明を確認しましょう。

【デザインの意味】


だるまのフォルムや顔にも意味があります。手と足がなく重心が安定したふくよかな形は、「困難に対処する心や忍耐力」「七転び八起き」などを表現。胴体に吉祥の言葉が記されている物もあります。また、眉は鶴、髭は亀というように、顔のパーツに縁起のよいモチーフが描かれているだるまもあるので、注目してみてください。

h2〜だるまの種類〜

だるまは日本各地で生産されており、デザインや製法の違う物など数多くの種類があります。なかには、目入れする必要のないユニークな絵柄・顔のだるまや、だるまがモチーフとなった服飾雑貨など、さまざまな商品も。縁起のよさだけでなく、どこか憎めない見た目のよさも人気の理由です。

現在ではカラフルなだるまも登場。

【地方別のだるまの種類】

だるまの特徴や雰囲気は作られている地域によってそれぞれ異なります。以下では地方別の代表的なだるまを紹介していきます。

・高崎だるま
群馬県ふるさと伝統工芸品に指定された、国内でも随一の生産量のだるまです。江戸時代後期に、豊岡村で山縣友五郎が作り始めたのが縁起だるまの起源とされています。後に養蚕農家で祀られることが多かったという歴史背景があり、蚕の起きとだるまの起き上がりとの語呂合わせで、座禅像に近いデザインが次第に丸い形へと変容。眉毛に鶴、髭に亀が描かれ、肩には「商売繁昌」「家内安全」といった縁起のよい金文字が施されているのが特徴です。

・松川だるま
宮崎県の松川だるまは、最初から目入れがされているのが特徴です。仙台にゆかりのある戦国武将、伊達政宗の独眼に配慮して作られたといういわれもあります。また、大空や海を表現した群青色や、宝船や米俵、大黒様などの縁起のよい絵柄が配された、豪華なデザインが印象的。宮城県知事指定伝統的工芸品にも選ばれている「仙台張子」の伝統技法で作られています。

・越谷だるま
埼玉県の伝統的手工芸品に指定されている「越谷張子だるま」。川崎大師や柴又帝釈天など、関東を中心として各地に届けられているだるまです。江戸時代中期、間久里の地で人形師を行っていた「だる吉」が、起き上がりこぼし人形に達磨大師を描いたのが始まりだと伝えられています。埼玉県のは顔の色が比較的白く、やや鼻の高い上品で優しい表情が特徴です。

・東京 多摩だるま
「東京だるま」や「多摩だるま」と称されている、東京都瑞穂町の特産品です。農家が仕事の閑散期である冬に、副業として始めたのがルーツ。だるま職人による伝統は脈々と受け継がれており、現在でも三多摩地方の数えられるほどの地域で制作が行われています。一つ一つ手作りなため、それぞれフォルムや顔立ちに個性があるのが魅力です。猫がだるまを抱きしめた「だるま抱き猫」というユニークなデザインのだるまも人気を呼んでいます。

・福島だるま
もとから目入れがされ、睨みをきかせた勇ましい顔を持つだるまです。睨みつけることで悪魔や災い、病気などを追い払い、福を呼んでくれるといわれています。生産が始まったのは江戸時代後期。昔ながらの木型を用い、やや長身で彫り深く作られているのが特徴です。顔の脇には火事を防ぐという意味がある伝統の唐草模様があしらわれています。

・白河だるま
眉毛の鶴、髭の亀ほか、唐草や松竹梅を各部位に模様化して表しており、全体的に福々しさが溢れるだるまです。約300年以上前、南画家の画匠、谷文晁が藩主松平定信の命のもとでだるまの原画を描き、当時の職人がそれを元にして京都に修行しに行ったことが誕生の起源。あでやかで品のよさがあるのが特徴で、商売繁盛や家内円満、合格祈願などを願う身近な縁起物として長く親しまれています。毎年2月11日には「白河だるま市」が開催。約15万もの人が訪れて賑わいます。

・相州だるま
神奈川県の名産100選にも選ばれている「相州だるま」。口の形が富士山のようになっており、目の周りがラメでキラキラとしているのが特徴です。東日本で盛んに生産が行われているだるまですが、神奈川県でだるま作りを営んでいるのは数軒のみ。150年以上もの歴史を持つ「相州だるま」ですが、職人の数も減り希少なものとなってきています。

・鈴川だるま
毘沙門天大祭のだるま市で知られる、静岡県鈴川地区の伝統的なだるま。江戸時代に製紙業が始まった頃、「紙の町」とも称される富士で半端な紙を用いて作られたのが始まりといわれています。優しい目鼻立ちで、独特の表情を持っているのが特徴です。

【素材・製法別のだるまの種類】

伝統的なだるま作りに主に用いられているのは、「張り子」と呼ばれる製法です。だるまの形をした木型に紙を重ねて貼り、乾かした後に型から抜きだす手法で、伝統の技が活かされています。特に、職人による顔書きが行われているだるまは、唯一無二の表情を楽しめます。

また、こけしのように木肌にそのまま絵付けを行う「木地だるま」のほか、和紙や陶器で作られただるまもあります。

【そのほかのだるま】

王道のだるま以外に、福の神や女性の顔をしただるま、トナカイや桜など季節に合わせたテーマのだるまなど、市場には多種多様なデザイン展開されています。バッグや靴下などの絵柄になっていたり、豆皿や箸などにデザインされていたりと、飾り物としてではなくおしゃれに生活に取り込めるようなだるまの商品も必見です。

〜だるまの用途、扱い方〜

地域によって作法が異なる場合もありますが、だるまに祈願をする際は目入れを行うのが一般的です。最初は、願いを込めながら左(向かって右)に目入れを行います。この順番は、密教の始まりと終わりを表す「阿吽」に関連しているという説があります。大安や友引、先勝などの吉日に願いを込めましょう。もし願掛けをしない場合は、両目を先にいれて厄除けとして飾る方法もあります。

願いを込める"目入れ"

だるまを飾る場所に、特に明確な指定はありません。縁起物を飾るのに好ましいとされている東か南向きに飾るのがよいでしょう。また、神棚にそなえたり、高所や玄関に置いたりすることも多いです。

願いが成就したときは、感謝の心を込めて右の目を描き入れ、神社に奉納しましょう。正月に神社やお寺で「お焚き上げ」や「だるま供養」をするという文化もあります。

〜だるまの魅力に触れられるイベントや施設〜

だるまの魅力に触れられる地域は全国各地にあります。

以下では、特に有名な「だるま市」やだるまの魅力に触れられる場所を特集しました。

【日本三代だるま市】


だるま市とは、その名の通りさまざまなだるまが販売される市のこと。関東を中心として行事的に開催されており、なかには「目入れ」や「供養」を行っている場所があるものや、祭礼行列を行う祭りなどもあります。今回取り上げるものは、「日本三大だるま市」とよばれるものです。

・高崎だるま市
群馬県高崎市にて、1月1日、2日に開催される、国内で最も早いだるま市です。色やサイズの異なるさまざまな高崎だるまが販売されており、だるま職人の威勢のよい掛け声が聞こえます。また、1年の抱負や願いを書き入れられる巨大だるまや、高さ2.8mにも及ぶ特大だるまも必見。そのほか、食堂やステージイベント、抽選会など、楽しめる要素が詰まっています。

・毘沙門天大祭だるま市
静岡県富士市で行われるだるま市です。毎年旧暦1月7日~9日、つまり2月中旬頃に開催されます。この3日間は毘沙門天王が娑婆(しゃば)に下り、人々の願いを聞いたという話が大祭の起源。1kmを超える露店が立ち並び、境内にも全国から集まったさまざまなだるまのお店が並んでいます。参拝客は昼夜問わずに訪れ、例年数十万にも及ぶ観光客で賑わいます。

・深大寺だるま市
江戸時代からおよそ300年以上続いている歴史的な縁日で、春を呼ぶ東京の風物詩としても知られています。3月に行われる「厄除元三大師大祭」という行事に合わせて開催。だるま店を中心とした約300の露店が立ち並んでおり、境内や門前は赤いだるま一色の圧巻の光景です。開眼所にて、僧侶により1つ1つ目入れをしてもらうこともできます。

【施設】

だるまにゆかりのあるお寺やだるまが展示されている観光施設などもあります。だるまの歴史をより深く知りたい人はぜひチェックしてください。

少林山達磨寺

福だるま発祥の寺といわれています。達磨堂には古今東西から集められたさまざまな種類のだるまが約2000点展示。祈祷はもちろん、名前や社名入りのだるまも申し込みができるため、開業や引越しなどを期に飾る特別な縁起物を探している方におすすめです。絵付け体験などもできます。

だるまランド

だるまランドは、2021年7月8日にオープンした福島県白河市の体験型観光施設です。ある約300年の歴史を誇る白河だるま総本舗が「だるま好きになろう!」をコンセプトに、歴史的建造物をリフォーム。700坪にもわたる施設内には、福島の伝統工芸品である白河だるまを活かした「見て、学んで、楽しめる」がテーマの6つのブースが設けられています。展示品を見られるだけでなく、だるまの絵付けや製造過程なども楽しく学べる施設です。

だるまを知って、ご当地だるまに会いに行こう。知れば見えてくる日本の風景。

そぞろ歩いてみればハレの出会いが待っています。

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