人気のキーワード
★隙間時間にコラムを読むならアプリがオススメ★
憧れのエジプト。でも、期待に胸を膨らませて入ったエジプトで私は、あの手この手でお金をむしり取られました。思い出すのも悲しいカイロでの一日を前編・後編に分けて紹介します。
Lucia Travel連載一覧はこちら
「エジプトは危ないよ。ぼったくり天国だよ」エジプト行きを決めた私の耳には、そんな情報がイヤというほど届きました。
エジプトは、これまで訪れた他のどの国より〝危険度が高い国〟のようです。タクシートラブルも多発しているようなので、個人で動くのはリスクが高そう。
悩んだ私は〝空港に出店している旅行会社は比較的まとも〟という情報を信じることにしました。
カイロに降り立った私は、想像よりずっと広くてキレイな空港を歩きました。「すぐ足を申し込める現地ツアーはあるのだろうか」不安を胸に進めます。
意外にも旅行会社はすぐ見つかりました。広い通路の一角に細長いテーブルが2つ。中央には身なりの良い男性が座っています。英語で書かれた日帰りツアーの紹介と大きな社名が目印でした。男性と目が合います。
今思い返してもその男性はとても紳士的でした。きちんとした服装、分かりやすい英語、押し売りとは真逆の接客で、懐疑心でいっぱいの私の質問にも丁寧に答えてくれます。料金は少し高い気もしましたが、空港から出発ということを考えたら相場の範囲内でした。
彼は私の希望を全て聞き終わるとスマホで電話をかけます。アラビア語になってもなお、彼の話し方は穏やかでゆったりしていました。「OK。すぐに出発できるよ」
何度も何度も懸念事項を確認して、心を決めました。お金は今支払って追加は一切ないとのこと。念のため領収証をもらい、さらに一筆書いてもらいました。
爽やかな笑顔で彼は私を送り出します。「扉の外で運転手が待っているよ。楽しんでおいで!」
とても良い気持ちで外に出ると、私の名前のプラカードをもった男性が立っていました。少しヨレっとしたシャツを着た彼は、ドライバー兼ガイドだと言います。
空港にいた紳士的な男性とは随分異なる雰囲気を持つ運転手に少しだけ警戒心を持ちました。念のため支払い済みであることとツアー内容を確認しました。
「大丈夫!全部、聞いているから」
少し馴れ馴れしい雰囲気が気になりましたが、タクシーに乗り込みました。広々とした空港から、車と人でゴミゴミした市街地へ、そして吹きすさぶ風の砂漠地帯へ。
有名なギザのピラミッドより、一世紀以上も前に造られたというサッカラとダハシュールの古代ピラミッドは圧巻でした。
当初私はそこまで期待をしていませんでした。古代ピラミッドと言えば、僻地に残る忘れられたピラミッド程度の認識で、ツアーに組み込まれていなければ自発的に行くことはなかったと思います。
人工物がなくなってから、何キロ走ったでしょうか。砂しかない大地のはるか向こうに、三角の建造物が見えます。「あれがピラミッドだ」ドライバーにそう言われてもピンときませんでした。「すれ違う車もいないのだから、きっと小さいんだろう」そんな風に思ったほどです。でも小さく見えたピラミッドは徐々に大きくなり、あっという間に見上げる高さにまでなりました。
サッカラのピラミッドは、私が想像していた形とは異なっていました。例えるなら大きな大きな階段。どの階段も三角形の角が削れ落ちていて丸みを帯びています。砂を巻き上げる強い風が吹くたびに、静けさが深まりました。
観光客は一人もいません。見渡す限り砂しかない場所で、私とドライバーとピラミッドだけが存在する稀有な時間が流れていきました。
ダハシュールのピラミッドに到着しました。ここでは数人の観光客とすれ違いました。ラクダに乗って観光する人の姿もあり、エジプトらしい光景が広がります。
何世紀も砂漠の上にそびえ立つピラミッドは、どんな風雨にも耐える強靭な建造物だと思っていました。ところが、近付いてみると今にも崩れてしまいそうな脆い印象を受けました。
ぐるりとピラミッドの周りを歩きます。積み上げられた石は風に削られたのか、いびつな形に変形していました。少し歩くと、傾斜の一部は崩れ落ちていて、砂の上には無数の石が転がっています。
周囲を散策していると、エジプトの伝統的な衣装を着た現地の男性がやってきました。ドライバーとしばしアラビア語で話し込みます。やがてドライバーが英語で私に尋ねました。「君、登りたい?」言っている意味が分からず「え?どこに?」と質問します。返ってきたのは「このピラミッドに登ってみたい?登りたいなら登らせてあげるよ」というとんでもない回答でした。
私は丁寧にお断りしました。「大切な世界遺産だよね。自由に登っていいの?」というショックと、「崩壊しているピラミッドに登って安全なの?」という2つの感情が一気に沸き上がります。現地の人は少し残念そうな様子で去って行きました。
公式に許可された内部の見学を終えて地上に戻ってくると、観光客が2人ピラミッドによじ登っていました。先導しているのはもちろん、先ほどのエジプト人男性です。残念さとハラハラした思いが重なり、足早にその場を去りました。
古代ピラミッドを見終えた後は、いよいよギザの三大ピラミッドの見学です。
車を走らせながらドライバーが「先にお土産屋さんに行くから」と話しかけてきました。空港で申し込んだ時に説明は受けていました。お土産屋さんに観光客を連れていくとお店がガソリン代の一部を負担してくれるようで、「何も買わなくてもいいけど、お土産屋さんの中に入ってね。それも含めてのツアー料金だから」と。
最初はパピルス専門店に入りました。立派な一軒家の建物の中に、さまざまなパピルスが飾ってあります。何万円もする高価な品から、手ごろなものまで並んでいました。冷やかし程度の見学をし、ドライバーが店員からチケットのような紙を受け取ったのを確認して店を出ます。
香水を扱うお店、服や綿製品を扱うお店、何でもあるお店…と、延々と連れ回されました。正直2軒目でイヤになり、ドライバーに「まだ行くの?」と詰め寄ったりもしました。でもドライバーはどこ吹く風で、私がどれだけ抗議しても全く気にしません。それどころか、率先して店に入っていき店員と談笑を繰り返します。
頭では分かっていました。ドライバーにとっては、こうした世間話も大切な時間なのでしょう。でも、日本人の私にとってその会話は長すぎました。まずは自己紹介、そして日本人観光客を連れてきたと私の紹介。そのまま世間話をして、やっとガソリンのチケットがもらえます。
チケットを受け取って直ぐにサヨウナラとはいきません。その後も途中何度かチケットのお礼を言いつつ世間話を続けます。そしてお互いの健闘を称え合ってやっと退店。ドライバーに呼ばれるまで、私は買う気もないのに店内を散策しなければなりませんでした。
途中のお店で私と同じような〝被害〟に遭っている外国人を数組見かけました。どの人も困ったような心細いような表情で店内をうろうろ。ドライバーはそんなお客の姿など一切気にせず店員とタバコを吸ったり談笑したりしていました。
何でこんなに連れまわされるの?最後の方は心底イヤになって「もう止める。ここで降りる」と言いそうになっていました。でも、私はまだ三大ピラミッドを見ていません。ツアーのハイライトなのだからここで止めるわけにはいかない。そう思って、もう一度車に乗り込みました。
うんざりしている私に、ドライバーが言いました。「さぁ、クフ王のピラミッドに行くよ」
~後半へ続く~
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
憧れのエジプト。でも、期待に胸を膨らませて入ったエジプトで私は、あの手この手でお金をむしり取られました。
思い出すのも悲しいカイロでの一日を前編・後編に分けて紹介します。
Lucia Travel連載一覧はこちら
目次
ぼったくり天国エジプト
「エジプトは危ないよ。ぼったくり天国だよ」
エジプト行きを決めた私の耳には、そんな情報がイヤというほど届きました。
エジプトは、これまで訪れた他のどの国より〝危険度が高い国〟のようです。
タクシートラブルも多発しているようなので、個人で動くのはリスクが高そう。
悩んだ私は〝空港に出店している旅行会社は比較的まとも〟という情報を信じることにしました。
空港で現地ツアーを契約
カイロに降り立った私は、想像よりずっと広くてキレイな空港を歩きました。
「すぐ足を申し込める現地ツアーはあるのだろうか」不安を胸に進めます。
意外にも旅行会社はすぐ見つかりました。広い通路の一角に細長いテーブルが2つ。中央には身なりの良い男性が座っています。
英語で書かれた日帰りツアーの紹介と大きな社名が目印でした。男性と目が合います。
今思い返してもその男性はとても紳士的でした。きちんとした服装、分かりやすい英語、押し売りとは真逆の接客で、懐疑心でいっぱいの私の質問にも丁寧に答えてくれます。
料金は少し高い気もしましたが、空港から出発ということを考えたら相場の範囲内でした。
彼は私の希望を全て聞き終わるとスマホで電話をかけます。アラビア語になってもなお、彼の話し方は穏やかでゆったりしていました。
「OK。すぐに出発できるよ」
何度も何度も懸念事項を確認して、心を決めました。
お金は今支払って追加は一切ないとのこと。念のため領収証をもらい、さらに一筆書いてもらいました。
爽やかな笑顔で彼は私を送り出します。
「扉の外で運転手が待っているよ。楽しんでおいで!」
なんとなく怪しい運転手
とても良い気持ちで外に出ると、私の名前のプラカードをもった男性が立っていました。
少しヨレっとしたシャツを着た彼は、ドライバー兼ガイドだと言います。
空港にいた紳士的な男性とは随分異なる雰囲気を持つ運転手に少しだけ警戒心を持ちました。
念のため支払い済みであることとツアー内容を確認しました。
「大丈夫!全部、聞いているから」
少し馴れ馴れしい雰囲気が気になりましたが、タクシーに乗り込みました。広々とした空港から、車と人でゴミゴミした市街地へ、そして吹きすさぶ風の砂漠地帯へ。
サッカラの古代ピラミッド
有名なギザのピラミッドより、一世紀以上も前に造られたというサッカラとダハシュールの古代ピラミッドは圧巻でした。
当初私はそこまで期待をしていませんでした。古代ピラミッドと言えば、僻地に残る忘れられたピラミッド程度の認識で、ツアーに組み込まれていなければ自発的に行くことはなかったと思います。
人工物がなくなってから、何キロ走ったでしょうか。砂しかない大地のはるか向こうに、三角の建造物が見えます。
「あれがピラミッドだ」ドライバーにそう言われてもピンときませんでした。
「すれ違う車もいないのだから、きっと小さいんだろう」そんな風に思ったほどです。でも小さく見えたピラミッドは徐々に大きくなり、あっという間に見上げる高さにまでなりました。
サッカラのピラミッドは、私が想像していた形とは異なっていました。
例えるなら大きな大きな階段。どの階段も三角形の角が削れ落ちていて丸みを帯びています。砂を巻き上げる強い風が吹くたびに、静けさが深まりました。
観光客は一人もいません。見渡す限り砂しかない場所で、私とドライバーとピラミッドだけが存在する稀有な時間が流れていきました。
崩れそうな古代ピラミッドに登る
ダハシュールのピラミッドに到着しました。ここでは数人の観光客とすれ違いました。
ラクダに乗って観光する人の姿もあり、エジプトらしい光景が広がります。
何世紀も砂漠の上にそびえ立つピラミッドは、どんな風雨にも耐える強靭な建造物だと思っていました。ところが、近付いてみると今にも崩れてしまいそうな脆い印象を受けました。
ぐるりとピラミッドの周りを歩きます。積み上げられた石は風に削られたのか、いびつな形に変形していました。少し歩くと、傾斜の一部は崩れ落ちていて、砂の上には無数の石が転がっています。
周囲を散策していると、エジプトの伝統的な衣装を着た現地の男性がやってきました。
ドライバーとしばしアラビア語で話し込みます。やがてドライバーが英語で私に尋ねました。「君、登りたい?」
言っている意味が分からず「え?どこに?」と質問します。返ってきたのは「このピラミッドに登ってみたい?登りたいなら登らせてあげるよ」というとんでもない回答でした。
私は丁寧にお断りしました。
「大切な世界遺産だよね。自由に登っていいの?」というショックと、「崩壊しているピラミッドに登って安全なの?」という2つの感情が一気に沸き上がります。
現地の人は少し残念そうな様子で去って行きました。
公式に許可された内部の見学を終えて地上に戻ってくると、観光客が2人ピラミッドによじ登っていました。先導しているのはもちろん、先ほどのエジプト人男性です。残念さとハラハラした思いが重なり、足早にその場を去りました。
延々と続く土産屋巡り
古代ピラミッドを見終えた後は、いよいよギザの三大ピラミッドの見学です。
車を走らせながらドライバーが「先にお土産屋さんに行くから」と話しかけてきました。
空港で申し込んだ時に説明は受けていました。お土産屋さんに観光客を連れていくとお店がガソリン代の一部を負担してくれるようで、「何も買わなくてもいいけど、お土産屋さんの中に入ってね。それも含めてのツアー料金だから」と。
最初はパピルス専門店に入りました。立派な一軒家の建物の中に、さまざまなパピルスが飾ってあります。何万円もする高価な品から、手ごろなものまで並んでいました。
冷やかし程度の見学をし、ドライバーが店員からチケットのような紙を受け取ったのを確認して店を出ます。
香水を扱うお店、服や綿製品を扱うお店、何でもあるお店…と、延々と連れ回されました。
正直2軒目でイヤになり、ドライバーに「まだ行くの?」と詰め寄ったりもしました。
でもドライバーはどこ吹く風で、私がどれだけ抗議しても全く気にしません。それどころか、率先して店に入っていき店員と談笑を繰り返します。
頭では分かっていました。ドライバーにとっては、こうした世間話も大切な時間なのでしょう。でも、日本人の私にとってその会話は長すぎました。
まずは自己紹介、そして日本人観光客を連れてきたと私の紹介。そのまま世間話をして、やっとガソリンのチケットがもらえます。
チケットを受け取って直ぐにサヨウナラとはいきません。その後も途中何度かチケットのお礼を言いつつ世間話を続けます。そしてお互いの健闘を称え合ってやっと退店。
ドライバーに呼ばれるまで、私は買う気もないのに店内を散策しなければなりませんでした。
途中のお店で私と同じような〝被害〟に遭っている外国人を数組見かけました。
どの人も困ったような心細いような表情で店内をうろうろ。ドライバーはそんなお客の姿など一切気にせず店員とタバコを吸ったり談笑したりしていました。
何でこんなに連れまわされるの?最後の方は心底イヤになって「もう止める。ここで降りる」と言いそうになっていました。
でも、私はまだ三大ピラミッドを見ていません。ツアーのハイライトなのだからここで止めるわけにはいかない。そう思って、もう一度車に乗り込みました。
うんざりしている私に、ドライバーが言いました。「さぁ、クフ王のピラミッドに行くよ」
~後半へ続く~
関連記事
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel