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カザフスタンからキルギスへ、地元の人たちに混ざって歩いて国境を越えました。キルギスで一日を過ごした後は同じ国境を反対方向へ。1日に2度、歩いて国境を越えた時のお話です。
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カザフスタンからキルギスへ、私は国境を越えるために乗合タクシーを使っていました。流れる景色の美しさに見とれていると、車が減速しました。時計を見ると予定より30分以上も早い時間です。不思議に思っていると、運転手は一言「着いたよ」と。
え?ここ?
海外では、頼めば目的地ではない場所でも降ろしてくれることが多々あります。だから最初私は、誰かがここで途中下車でもするのかと思いました。国境=厳重な警備施設を想像していたのに、窓から見えるのは至って普通の街並みです。警備員の姿もどこにもありません。モタモタしているうちに私以外の全員が車から降りていきました。
「ここが国境?」運転手はYESと頷き、私の後ろを指さしました。言われた方向には、屋根付きの簡素な通路がありました。国境というよりどこかの施設へ向かう通路にしか見えません。
タクシーを降りると目の前にミニデパートのような建物がありました。よく見ると、ぬいぐるみや飲料水、炊飯器やケトル、さらにはベッドまで売られています。国境のそばで、ここまで何でも揃っていることに驚きました。
運転手が示した先には屋根付きの簡素な連絡通路がありました。私以外の人たちは、まるで電車にでも乗るような気軽さで通路に入っていきます。少し緊張しているのは私だけ。念のため、もう一度パスポートを確認しました。
せっかくなので、通路に入っていく人々を観察しました。同じタクシーに乗っていたおしゃれなカップルは、小さなショルダーバッグだけの身軽さでした。ビジネスマンもビジネスバッグ一つを手に通路に消えていきます。国境を越えるというのに身軽な人々の姿が目立ちました。
さらに観察していると、自分の背丈くらいありそうな巨大なバッグを引きずるおばあさんが歩いてきました。巨大なバッグからは、何枚ものタオルがはみ出しています。炊飯器を3つか4つ抱えた男性もいました。電子レンジを抱えた男性もいます。引っ越しか行商でもするのかというほどの大荷物でした。
日本人の私は、海外で家電を買うことは滅多にありません。電圧やコンセントの違いで結局、使えないことが多いからです。でも、ここでは炊飯器を抱えて国境へ向かう人がいる。それが当たり前の光景であるかのように、みんな淡々と歩いていきます。不思議な気分でした。
いよいよ国境へ。真っ直ぐに通路を進みL字に曲がったところに制服姿の人が立っていました。軍人なのか警備員なのか、見た目では分かりません。国境なので少し身構えましたが、パスポートを確認するわけでもなく、怖い視線を向けられることもありませんでした。
拍子抜けしていると、後ろから大量の荷物を抱えた地元の女性が一人やってきました。制服を着た彼はその姿を見つけると、サッと手伝いの手を伸ばします。
やがて、小さな空港のような開けた空間に出ました。パスポートの窓口が並んでいます。窓口は3つ開いており、それぞれに列ができていました。
外国人は別の列に並ぶという情報をネットで見ていたものの、外国人用の表示は見当たりません。並んでいる人々を見ても、誰が外国人なのか見分けがつきませんでした。パスポートに注目します。色の違うパスポートを持っている人が3人いましたが、それぞれ別の列に並んでいます。どうやら外国人専用レーンはないようでした。
とりあえず、一番短い列へ並びます。行列に並ぶ間、閉まっている窓口では職員同士が談笑している姿を見ました。パスポートチェックの場所だというのに、ピリピリした雰囲気がありません。
やがて私の順番がやってきました。対応してくれたのは若い男性職員。笑顔の似合う感じのいい人で、いくつか質問された後、パスポートにスタンプを押してくれました。ネットでは1時間待ったという情報もありましたが、私の場合は至ってスムーズ。所要時間は15分ほどでした。そして又、通路を歩きます。
陸路で国境を越えるということで、国境線のようなものを期待していましたが、「ここからキルギス」と分かるような目印は、何も見当たりません。通路の窓から外を見ると、美しい自然が見えてきました。カザフスタンとは明らかに違う景色に心が躍ります。「キルギスに来たんだ」そう実感した瞬間でした。
左を見ると国境越えを待つ車の大渋滞が見えました。映画で出てくるようなメキシコの国境を思い起こさせます。車に乗ったまま国境を越えるのもロマンがあります。
思わずスマートフォンを向けると「NO PHOTO」と声をかけられました。改めて周囲を見ると、警備員がたくさんいます。カザフスタン側では警備をそれほど意識しなかったのに、急に国境らしい緊張感が増したように感じました。
キルギスで一日観光を楽しみ、夕方に再び国境へ戻ってきました。午前中に利用したばかりの国境なので、今度は少し勝手が分かります。カザフスタン側では気付かなかった「NO PHOTO」の表示が目に入りました。
キルギスからカザフスタンへ行く国境は比較的空いていました。パスポートチェックの窓口は一つ、5人ほどが並んでいました。みんなどこか少し疲れているようで、旅のワクワクや、国境を越えるドキドキとは無縁の顔をしています。
朝カザフスタンからキルギスへ入り、その日のうちにまたカザフスタンへ戻る。私の行動は少しだけ不審なので、色々な質問を覚悟していました。ところが、何も聞かれません。スタッフはパスポートを確認し朝のスタンプを見ると、ああ、そういうことかというような感じでスタンプを押してくれます。それだけでした。
その後は荷物をチェックするレーンへ。みんな慣れた様子で荷物をレーンに置いていきます。大量の食料品を持っている人に混ざって、ここでも大量の家電を持っている人がいました。カザフスタンからキルギスだけでなく、キルギスからカザフスタンへも家電を持ち込むようです。カザフスタンのほうが経済的に豊かだから、家電はカザフスタン→キルギスへ持っていくものだとばかり思っていたので、逆パターンを目にして戸惑います。
また、大量の毛布を抱えたおばあさんが、なぜか別のレーンでポツリと一人佇んでいました。持ち込み不可だったのか、誰かを待っているのか…。背中を丸めて立ちすくむ彼女の姿は、どこか哀愁が漂っていました。
ゲートを越えてカザフスタンへ向かいます。
通路を歩いていると、男性4人がかりで巨大な荷物を運んでいる姿が目に入りました。少し傾斜のある通路を、4人で力を合わせて荷物を押しています。2人は通行人。そして残る2人は国境のスタッフでした。国境のスタッフが、通行人の荷物運びを手伝っている。思いがけない優しさに、温かい気持ちになりました。
通路が終わりを迎えます。その先には、先ほどまで見えていたキルギスの豊かな自然が消え、建物や車が現れました。ほんの数メートルしか離れていないのに、空の色が違って見えました。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
カザフスタンからキルギスへ、地元の人たちに混ざって歩いて国境を越えました。
キルギスで一日を過ごした後は同じ国境を反対方向へ。1日に2度、歩いて国境を越えた時のお話です。
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目次
え?ここが国境?
カザフスタンからキルギスへ、私は国境を越えるために乗合タクシーを使っていました。
流れる景色の美しさに見とれていると、車が減速しました。時計を見ると予定より30分以上も早い時間です。不思議に思っていると、運転手は一言「着いたよ」と。
え?ここ?
海外では、頼めば目的地ではない場所でも降ろしてくれることが多々あります。だから最初私は、誰かがここで途中下車でもするのかと思いました。
国境=厳重な警備施設を想像していたのに、窓から見えるのは至って普通の街並みです。警備員の姿もどこにもありません。モタモタしているうちに私以外の全員が車から降りていきました。
「ここが国境?」
運転手はYESと頷き、私の後ろを指さしました。
言われた方向には、屋根付きの簡素な通路がありました。国境というよりどこかの施設へ向かう通路にしか見えません。
タクシーを降りると目の前にミニデパートのような建物がありました。よく見ると、ぬいぐるみや飲料水、炊飯器やケトル、さらにはベッドまで売られています。国境のそばで、ここまで何でも揃っていることに驚きました。
国境を行き交う人々
運転手が示した先には屋根付きの簡素な連絡通路がありました。私以外の人たちは、まるで電車にでも乗るような気軽さで通路に入っていきます。
少し緊張しているのは私だけ。念のため、もう一度パスポートを確認しました。
せっかくなので、通路に入っていく人々を観察しました。
同じタクシーに乗っていたおしゃれなカップルは、小さなショルダーバッグだけの身軽さでした。ビジネスマンもビジネスバッグ一つを手に通路に消えていきます。
国境を越えるというのに身軽な人々の姿が目立ちました。
さらに観察していると、自分の背丈くらいありそうな巨大なバッグを引きずるおばあさんが歩いてきました。巨大なバッグからは、何枚ものタオルがはみ出しています。
炊飯器を3つか4つ抱えた男性もいました。電子レンジを抱えた男性もいます。引っ越しか行商でもするのかというほどの大荷物でした。
日本人の私は、海外で家電を買うことは滅多にありません。電圧やコンセントの違いで結局、使えないことが多いからです。でも、ここでは炊飯器を抱えて国境へ向かう人がいる。それが当たり前の光景であるかのように、みんな淡々と歩いていきます。不思議な気分でした。
カザフスタンからキルギスへ徒歩で国境越え
いよいよ国境へ。
真っ直ぐに通路を進みL字に曲がったところに制服姿の人が立っていました。軍人なのか警備員なのか、見た目では分かりません。
国境なので少し身構えましたが、パスポートを確認するわけでもなく、怖い視線を向けられることもありませんでした。
拍子抜けしていると、後ろから大量の荷物を抱えた地元の女性が一人やってきました。制服を着た彼はその姿を見つけると、サッと手伝いの手を伸ばします。
やがて、小さな空港のような開けた空間に出ました。パスポートの窓口が並んでいます。窓口は3つ開いており、それぞれに列ができていました。
外国人は別の列に並ぶという情報をネットで見ていたものの、外国人用の表示は見当たりません。並んでいる人々を見ても、誰が外国人なのか見分けがつきませんでした。
パスポートに注目します。色の違うパスポートを持っている人が3人いましたが、それぞれ別の列に並んでいます。どうやら外国人専用レーンはないようでした。
約15分のスムーズな入国審査
とりあえず、一番短い列へ並びます。
行列に並ぶ間、閉まっている窓口では職員同士が談笑している姿を見ました。パスポートチェックの場所だというのに、ピリピリした雰囲気がありません。
やがて私の順番がやってきました。対応してくれたのは若い男性職員。笑顔の似合う感じのいい人で、いくつか質問された後、パスポートにスタンプを押してくれました。
ネットでは1時間待ったという情報もありましたが、私の場合は至ってスムーズ。
所要時間は15分ほどでした。そして又、通路を歩きます。
国境を越えて変化する景色
陸路で国境を越えるということで、国境線のようなものを期待していましたが、「ここからキルギス」と分かるような目印は、何も見当たりません。
通路の窓から外を見ると、美しい自然が見えてきました。カザフスタンとは明らかに違う景色に心が躍ります。
「キルギスに来たんだ」そう実感した瞬間でした。
左を見ると国境越えを待つ車の大渋滞が見えました。映画で出てくるようなメキシコの国境を思い起こさせます。車に乗ったまま国境を越えるのもロマンがあります。
思わずスマートフォンを向けると「NO PHOTO」と声をかけられました。改めて周囲を見ると、警備員がたくさんいます。
カザフスタン側では警備をそれほど意識しなかったのに、急に国境らしい緊張感が増したように感じました。
同じ国境からカザフスタンへ再入国
キルギスで一日観光を楽しみ、夕方に再び国境へ戻ってきました。
午前中に利用したばかりの国境なので、今度は少し勝手が分かります。カザフスタン側では気付かなかった「NO PHOTO」の表示が目に入りました。
キルギスからカザフスタンへ行く国境は比較的空いていました。パスポートチェックの窓口は一つ、5人ほどが並んでいました。
みんなどこか少し疲れているようで、旅のワクワクや、国境を越えるドキドキとは無縁の顔をしています。
朝カザフスタンからキルギスへ入り、その日のうちにまたカザフスタンへ戻る。私の行動は少しだけ不審なので、色々な質問を覚悟していました。ところが、何も聞かれません。
スタッフはパスポートを確認し朝のスタンプを見ると、ああ、そういうことかというような感じでスタンプを押してくれます。それだけでした。
その後は荷物をチェックするレーンへ。みんな慣れた様子で荷物をレーンに置いていきます。
大量の食料品を持っている人に混ざって、ここでも大量の家電を持っている人がいました。カザフスタンからキルギスだけでなく、キルギスからカザフスタンへも家電を持ち込むようです。
カザフスタンのほうが経済的に豊かだから、家電はカザフスタン→キルギスへ持っていくものだとばかり思っていたので、逆パターンを目にして戸惑います。
また、大量の毛布を抱えたおばあさんが、なぜか別のレーンでポツリと一人佇んでいました。
持ち込み不可だったのか、誰かを待っているのか…。背中を丸めて立ちすくむ彼女の姿は、どこか哀愁が漂っていました。
カザフスタンとキルギス、国境を越えて見えたもの
ゲートを越えてカザフスタンへ向かいます。
通路を歩いていると、男性4人がかりで巨大な荷物を運んでいる姿が目に入りました。少し傾斜のある通路を、4人で力を合わせて荷物を押しています。2人は通行人。そして残る2人は国境のスタッフでした。
国境のスタッフが、通行人の荷物運びを手伝っている。思いがけない優しさに、温かい気持ちになりました。
通路が終わりを迎えます。
その先には、先ほどまで見えていたキルギスの豊かな自然が消え、建物や車が現れました。ほんの数メートルしか離れていないのに、空の色が違って見えました。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel