神社参拝 の基本的な作法とは? 気持ちよくお参りするためのマナーを解説

神域に一歩踏み入れると、思わず背筋がすっとのびる神社。
一年の節目、また人生の節目にも訪れる、私たちの暮らしと深く関わる存在です。

誰でもいつでも、心が向いたときに訪れることができる、開かれた場所。
そんなふうにとても身近であるからこそ、参拝の正式な作法はよく知らない、という方も多いかもしれませんね。

基本の作法を知っておけば、神様に対して失礼なく、そしてなにより自分が気持ちよくお参りができそう。
作法それぞれの意味も、なかなか興味深いものですよ!
お参りするときの心のあり方も一緒に考えてみましょう。

神社参拝の流れとは?

神社のお参りには、

  • 正式参拝(または昇殿参拝)
    神職の案内により、本殿内で祈祷などを受ける参拝
  • 略式参拝(または自由参拝)
    拝殿の前で手をあわせる、一般的な参拝

の2種類があります。

ここで解説するのは、略式参拝。

  • 会釈し、心を整えて鳥居をくぐる
  • 手水舎で心身を浄める
  • 参道を進んで神前へ
  • 二礼二拍手一礼で拝礼
  • 会釈して退く

おおきくこのような流れになるでしょうか。

でも、どうか難しく考えないでください。
大切なのは、間違いのない作法ではなく、神様に感謝するその心の方。

それでは作法の意味や、注意すべき点もすこし詳しくみていきましょう。

鳥居はどうくぐる?参道はどこを歩くの?

鳥居はどうくぐる?参道はどこを歩くの?

まず神社に着くと、その入り口に立つのが鳥居。そしてそこから拝殿まで、参道が続いています。

鳥居の役割は?くぐり方のマナー

神社のシンボル的存在でもある鳥居。
「これより神の領域」という意味で、神聖な神様の世界と私たちが暮らす俗世を分ける結界でもあります。

つまり鳥居をくぐるということは、神様の世界に足を踏み入れるということ。
鳥居は神社の玄関にあたります。

まず服装を正します。帽子やサングラスなどは取りましょう。
そして、これから神域に入らせていただきます、というご挨拶として、軽く一礼してから鳥居をくぐります。
この時、鳥居の真ん中ではなく、左右どちらかに寄ってくぐります。

参道は中央を避けて歩く?

鳥居から拝殿までは、参道が続きます。この参道、真ん中を避けて進む、と聞いたことはありませんか?

この参道の真ん中は「正中(せいちゅう)」と呼ばれ、神様が通る道だとされています。

真ん中を避ければ、歩くのは右側でも左側でもどちらでも問題ありません。
ただ伊勢神宮では、外宮は左側通行、内宮は右側通行と定められているのでご注意を。

やむをえず正中を横切る際は、神様に敬意を表すために軽く頭を下げながら渡る、または中央で神前に向かい一礼してから渡ります。

手水舎での正しい作法

鳥居はどうくぐる?参道はどこを歩くの?

手水舎と書いて「てみずや」「ちょうずしゃ」など、いろいろな読み方があります。
参道の途中にある、心身を浄める場所です。

本来、川や海で全身を水に浸して禊祓い(みそぎはらい)をしてから神前に進むべきですが、その禊を簡略化したのがこの手水舎。ここで手と口を浄めます。

いざとなるとやり方がよくわからなくて、他の人をこっそり見ながら、なんて人もいるかもしれませんね。

文字で見ると、すこしややこしく思えますが、やり方を目で追いながら実際に手を動かしてみると、わかりやすいかもしれません。

左手、右手を浄め、口を浄める、そして口につけた左手をあらためて浄め、次の人のために柄杓も浄める、という流れです。

手水の順番

  • 水盤に向かって軽く一礼
  • 右手で柄杓を取り、水を汲み上げる
    左手に水をかけ、浄める
  • 柄杓を左手に持ち替え、右手を浄める
  • ふたたび右手に持ち替えて、柄杓から左手に水を受け、その水で口を濯ぐ
    ※口から水を吐き出すときは、手で口元を隠すとよいでしょう
  • 左手に水をかけ、浄める
  • 両手で柄を持ち、柄杓をそっと立てるようにして、柄に水を伝わせて柄杓を浄める
  • 柄杓を伏せて一礼
  • ハンカチなどで手を拭く

ここで必ず守らなければならないのは、手や口を濯いだあとの水が水盤に入らないように注意すること。外側の溝に流れるように気をつけましょう。

また、ハンカチで手を拭いてはいけないといわれることもありますが、濡れた手ではふたたびケガレがつきやすくなります。
せっかく浄めた手で、バッグのなかを探さなくていいよう、あらかじめハンカチを用意してから手水を始めるとよいですね。

手水舎がない⁉そんな場合は

小さな神社や季節や事情によってで手水舎がない、水を張っていないということもあります。そんなときはどうすればいいのでしょうか。

事前に手水舎がないとわかっていれば、きれいな水をペットボトルなどに入れて持参します。また、ウェットティッシュなどで代わりに浄めるという方法でも大丈夫。

また、心のうちで祓戸大神(ハラエドノオオカミ)に呼びかけ、「祓え給ひ、浄め給へ」と祓詞を唱える方法も。

また、雪が積もっているときは雪で、草が生えているときはその草をすこしいただいて、自然のもので手をこすり浄める方法もありますよ。

神社の境内なので、生えている草、花は採ってもよいものなのかどうか、きちんと確認してから行いましょう。

拝殿での正しい作法

手水舎で心身を浄めたら、参道を拝殿まで進みましょう。
拝殿に着いたら、まず軽く会釈をします。

お賽銭と鈴、どっちが先⁈

お賽銭と鈴、どっちが先⁈

拝殿の中央に鈴があれば鳴らし、感謝の気持ちを込めてお賽銭を入れます。

このお賽銭と鈴、どちらが先?と悩んだことはありませんか?
じつはこちらが先、といった決まりはないのだそう。

鈴の清々しい音には、魔除けの霊力があるとされ、参拝する人を浄めるとされます。また、神霊を発動させる、つまり神様の力を呼び起こすようお願いする力があるとのこと。

そしてお賽銭には、神様に対する感謝のお供えという意味と、自ら のケガレを移して浄めていただくという考え方があります。

神社によっては、順番が定まっているところもあるので、それに合わせるのがいいでしょう。

それでなければ、鈴とお賽銭の意味を踏まえ、自分の考え方、思いで決めていいのです。

拝礼の作法

日本の多くの神社で基本の参拝の作法としているのが、二礼二拍手一礼。

  • 神前に進み、姿勢を正して2度礼をする(二礼)
  • 拍手を2回打つ(二拍手)
  • 姿勢を正して1度礼をする(一礼)
  • 頭を軽くさげ、退く

■礼と拝の違いって?

敬意を表す作法である礼は、拝に置き換えられることもあります。伊勢神宮などでは、二拝二拍手一拝という作法。

礼と拝の違いは、お辞儀の角度です。拝はより丁寧で、深い90度のお辞儀のことを指します。
神様に敬意を払い、心を込めて頭を下げることは、どちらも同じです。

■拍手の意味、正しいやり方は?

拍手(はくしゅ)は「かしわで」ともいい、神様に敬意と感謝を表す作法です。
古の時代には地位が高い人に対しても、敬意を示し拍手の作法が行われていました。

拍手を打つときは、まず胸の高さで両方の手のひらを合わせ、右を関節一つ分下にずらしてから、肩幅まで手を広げて打ちます。

雑学

この拍手の作法にも、意味があります。
陰陽の考えにおいて、左手は陽(火)、右手は陰(水)を象徴しているとされます。

それぞれの語源は、左手が「火足りて(ひたりて)」、右手が「水極まりて(みずきわまりて)」。
「火」は上に昇り、「水」は下に流れる性質を持つため、拍手のときに左手を上、右手を下にすることで、より自然に音が鳴りやすくなるのだそうです。

神社でのタブーとマナー

せっかくお参りに来たのですから、神様に対して失礼のないようにしたいもの。
気をつけたいポイントをみていきましょう。
鳥居をくぐったそこからが、神様の領域ですよ。

境内や拝殿で大きな声を出す

神社は神聖な祈りの場。
大きな声を出すことは、神様に対して失礼な行い、また他の方の祈りを邪魔する行為になります。
時間によっては、ご祈祷が行われていることもあるでしょう。
境内では、声のボリュームは控えめに。

ペットを連れてお参りをする

今の時代、家族であるペットと一緒にお参りをしたいという方も多いと思います。
ただ、古来の考えを引き継ぐ神社も多く、基本的に境内に動物を連れて立ち入ることを禁じています。
一方、今の時代に合わせてペット連れでもお参りできたり、ペット祈願などを受け付けたりする神社も増えてきました。
ペットを連れて、という希望がある方は事前に確認してみるのがいいでしょう。

ところかまわず写真を撮る

本殿内などでの写真撮影は基本的に禁止されています。また、本殿や拝殿への参道の中央は、神様の通り道。つまり、本殿・拝殿の正面から写真を撮ることも控えた方がよい行為です。

神域である境内には、ほかにも写真禁止となっている場所、また禁足地(立ち入ってはならない場所)もあります。
撮影する前に確認し、神社の案内に従いましょう。
写真撮影に夢中で、他の参拝者に迷惑をかけるなんてこともないように。

境内で飲食する

神社の境内で、許可なく飲食することは控えた方がよいでしょう。
ただ、夏の暑い時期、水分補給をしたい場合などはその限りではなく、本殿・拝殿から少し離れたところを選ぶようにします。

最近では、境内に飲食できるスペースが設けられたり、カフェがあったりという神社も。
せっかくなので、そういった場所を利用する、というのも訪れる楽しみになりますね。

服装の基本マナーは?

神社を訪れるときの服装も、心得ておきたい点がいくつかあります。

  • 短パンにサンダルなど、カジュアルまた肌の露出が多すぎる装いは控える
  • アニマル柄の服、毛皮などは避ける
  • 派手なアクセサリーなどは避ける、または外す
  • マフラーや帽子、サングラスは、鳥居をくぐる前に外す

わかりやすいのが、目上の方のお宅に伺うときを想定してみること。
どんな服装でしょうか?

また、古の時代は川や海で禊をし、心身を浄めてから参拝したことを考えると、派手な装いや華美なアクセサリーなどは控えた方がよいことがわかりますね。

神社に行くのに理由は必要なの?

この前神社を訪れたのは、どんな目的だったでしょう。
初詣、厄払い、恋愛成就のお願いや合格祈願?

では、なにも理由がなく神社を訪れたことはありますか?
神社を訪れるのに、特別な理由は必要ありません。

神社が信仰する神道は、古の時代、自然とその中に生きる人々の暮らしから生まれました。
つまりどんなに時間が流れても、神社はどこまでも私たちの暮らしの延長線上にあるのです。

予定がまだ決まっていない日。気持ちよく目が覚めた朝。心を落ち着かせたい時、そして心が落ち着いている時。
神様に会いに、神様にご挨拶しに、神社を訪れてみるのはいかがでしょう。

そんな時こそ、神社の真骨頂を知ることができる時!
初詣でもなくお祭りなどでもなく、あまり人もいないかもしれません。
そんな時の神社こそ、静謐で、心地よく背筋がのびるような清浄な空気を感じることができます。

掃き浄められた玉砂利を進みながら、心に浮かぶのはどんなことでしょう。

時間を気にせず、神様に会いに行く。
それは、いつもとすこし違う、きっとちょっと特別な心持ちになることでしょう。

気になるお参りに関するあれこれ

気になるけれど、いまさら聞けない、わざわざ聞くほどのことなのか?という、お参りについてのちょっと気になるあれこれについて。

お賽銭はいくらがいいの?

お賽銭はいくらがいいの?

お賽銭に、適正な金額というものはありません。
さらには、お賽銭を入れなければいけない、という決まりもないのです。

しつこいようですが、参拝とは、その心が大切。
お賽銭を奮発したからといって、ご利益をいただけるというものではありません。

神様にお礼としてお供えするのがお賽銭。
お賽銭は、収穫の感謝として海の幸山の幸をお供えしていたのがはじまりです。とくに特別なお供えには、収穫したお米を白い紙に包んだ「おひねり」をお供えしていたのだそう。
現在でも、お金でなく、このおひねりをお供えするという人もいます。

自分に負担のない程度、神様に感謝の印として、心を込めてお賽銭箱に入れるのです。

詳しく知りたい方は こちら の記事をご覧ください。

願いごとの伝え方は?

神社に参拝する本来の意味は、神様に感謝をお伝えすること。
では、お願いごとはしてはいけないの?というと、そんなことはありません。

まずは神様に丁寧に感謝の気持ちをお伝えしましょう。そしてそのあとに、お願いごとをします。
大切なのは、自分のお願いごとを神様任せにしないこと。
それでは本当の神頼みです。

「自分で叶える努力をいたしますが、どうか見守ってください」というふうに、神様に誓いを立てるのはどうでしょう。

神様に誓いを立てたら、きっとすこし心がまえが変わるはず。だって、神様と自分との約束ごとですから。
それは、あなたの力になってくれます。

神社とお寺の違いとは?

神社とお寺では、お祀りしている神様、信仰する宗教が異なります。

神社が信仰するのは、日本古来の暮らしから生まれた「神道」です。
神道では、ありとあらゆるもの、自然現象にも宿るとされる八百万の神を祀り、神社は、その神様が宿る、住まう場所とされます。

一方のお寺では、「仏教」を信仰しています。
仏教はインドで生まれた宗教、釈迦(ブッダ)が開祖です。中国を経由し、飛鳥時代に日本に伝わったとされます。
お寺は、その仏教の教えを学び、伝える場所。僧侶が修行する場所でもあります。

大陸から伝わると、この国でも仏教が次第に重んじられるようになります。
奈良時代から平安時代にかけては、もともと根付いていた神道と、仏教の二つの宗教が融合した「神仏習合」という独自の宗教文化が生まれました。
神社の境内にお寺が建てられたり、日本古来の神々がじつは仏教の仏や菩薩の化身であるという考え方も生まれたりしました。

奈良の興福寺と春日大社は、お寺と神社。同じ敷地内に建ちます。
またよく考えると実家には神棚とお仏壇、どちらもあるという方も多いですよね。

神道と仏教が歩んだ歴史の名残は、今でもさまざまなところにみることができるのです。

参拝すること、その心

神社に参拝するときの、基本的な作法やその作法の意味、マナーについて解説しました。

「大切なのは、完璧なお作法ではなく、心の持ち方。じつは神社のお参りは、こうしなければならないという厳格な決まりはないのです」
神職の方がそう言ってくださいます。

森羅万象に宿る神々を祀る神社。なんと大らかで、懐が深く広い!
そう考えると、だからこそ、お参りするときはきちんとしたい。
もうなんだかちょっと身が引き締まる思い、気持ちがシャンとするのは気のせいでしょうか。

さあ次のお休み、お近くの神社へ、神様に会いに行ってみませんか?

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