巻き方にこめられた歴史と誇り、知られざるターバンの意味とは?

ターバンを巻いた人物の姿は皆さんイメージできるでしょう。でも、「ターバンの構造はどうなっているのか」「ターバンを巻いているのはどういう人たちか」「ターバンにはどんな意味があるのか」を知っている方は少ないのではないでしょうか?

今回はターバンの歴史や種類、秘められた深い意味まで分かりやすく解説します。
想像以上に多くの文化にターバンがかかわっていることに驚くでしょう。読み終えたあとには、あなたもきっとターバンを巻いてみたくなりますよ!

ターバンとは?何故頭に巻くのか?

一般的にターバンとは、頭に布を巻きつけて冠のような形に整えたものを呼びます。形が固定されているタイプのターバンも存在します。ターバンとはどういうものか、詳しくみてみましょう。

ターバンは紀元前から存在していた?

ターバンの語源には諸説あり、一説には、ペルシア語でターバンを意味する「ドゥルバンド」が由来とされます。

ターバンの歴史は非常に古く、紀元前2350年のメソポタミアの彫刻にもその姿が。また、ヒンドゥー教の聖典『ヴェーダ』にも、頭に巻く衣類「ウスニサ」の記述が見られます。ターバンの起源は文明開闢の時代までさかのぼるのです。

インドでターバンを巻くのはごく一部?

インドでターバンを巻くのはごく一部?

ターバンを巻くのはインドや中東の風習、と考えている方が多いのではないでしょうか?

実際には、インドや中東だけでなく、東南アジア、アフリカ、東欧、ロシアなど、広範な地域にターバン文化があります。特に南アジアのインドからアフガニスタン、ネパールにかけては、ターバン文化が色濃い地域です。

日本では「インド人といえばターバン」のイメージがありますが、実際のインドで日常的にターバンを巻いている人はごく一部。それに、ターバンの種類や巻き方にも、地域や宗教により大きな違いがあるのです。

階級によって異なるターバンの素材とサイズ

一般的なターバンの素材は、薄手の綿。風通しがよく軽いため、暑さから身を守るのに適しています。上質でボリューム感のあるモスリンや、富裕層が好むシルクのターバンもあります。

ターバンのサイズはさまざまで、幅15〜90cm、長さ8m前後が一般的です。なかには18mにも達するものも。羊飼いや農民など自然のなかで過ごす時間が多い人々は、大きなターバンをゆったりと巻く傾向があります。

宗教とターバンの関係

そもそも、なぜターバンを巻くのでしょうか?

起源をたどれば、それは実用的な目的からです。雨風や日差し、砂塵から頭を守るために巻かれてきたのです。また、ターバンは枕や毛布の代用になるほか、泥水のろ過や井戸から水を汲むロープ代わりにも使えます。

時代と共にターバンには装飾的な意味も加わり、巻き方や柄によってその人の地位や職業を示す役割も果たすようになりました。インド各地のマハラジャたちは、競うように鮮やかな色や豪華な装飾のターバンを着用。このような背景から、形が固定されたターバンも誕生したと考えられています。

宗教とターバンの関係

宗教的な理由でターバンを巻く人も多く見られます。
例えばイスラム教では「イマーマ」と呼ばれるターバンが用いられます。またヒンドゥー教でも、多くの人がターバンを着用します。特にインド北西部のラジャスタン州では、ヒンドゥー教徒によるターバン文化が色濃く残っています。

シーク族とターバン

宗教的な着用者の代表といえば、シーク族でしょう。日本における「インド人といえばターバン」というイメージは、シーク族の影響が大きいと考えられます。シーク教ではターバンの着用が戒律で義務付けられており、インドの大都市や海外でターバンをかぶるインド人男性の多くは、シーク族なのです。

シーク族が信仰するシーク教は、15世紀にパンジャーブ地方で生まれた一神教です。信徒はおよそ2500万人。世界の宗教でも有数の信者数ですが、インド全体の人口からみればわずか2%程度。それなのにインド人全体のイメージに影響を及ぼすとは、ターバンの印象の強さが表れていますね!

中心のクロスが特徴的 中心のクロスが特徴的

シーク族が巻くターバンは「ダスタール」と呼ばれ、二重巻きが基本です。
シーク教では自然のままを尊重し、髪を切ることが禁じられています。そのため、長く伸びた髪を保護するためにターバンで覆っているのです。この戒律が定められたのは17世紀。10代目グル(教団指導者)ゴービンド・シンが、ムガル帝国に対抗し団結を強めるために導入しました。

ちなみに、シーク族の男性はすべて「シン(獅子)」、女性は「コウル(姫)」と名乗ります。これはカーストを否定し、平等を重んじる考え方によるもの。日本でも活躍したシーク族のプロレスラー、タイガー・ジェット・シンの名前には、こうした背景があったのですね!

巻き方から見るターバンの違い

インドでも特にターバン文化が色濃い地域が、インドの北西部で隣接しているラジャスタン州とパンジャーブ州。この2つの州では、ヒンドゥー教徒やシーク族がそれぞれ独自のターバン文化を築き、多彩なスタイルが展開されているのです。詳しく見ていきましょう。

ヒンドゥー教のターバン文化が強く残るラジャスタン州

ラジャスタン州では、人口の約90%を占めるヒンドゥー教徒の男性が「パグリー」や「サーファー」と呼ばれるターバンを巻いています。この州では15kmごとにターバンの巻き方が変わるともいわれ、巻き方で出身地が分かるほどです。

カーストごとに色も異なり、例えば羊飼いは赤を用います。複数の色を使ったターバンは階級の高い人々が着用し、王族のターバンはさらに複雑な色と装飾が加えられます。

なぜこれほどまでにラジャスタン州でターバン文化が発達したのでしょうか?その理由は、地域の歴史と自然環境にあります。

7〜13世紀にかけて、ラジャスタン州はラージプート諸王朝の中心地でした。これらの王朝では、支配階級や軍人の間でターバンの着用が広まり、伝統として受け継がれてきたのです。また、砂漠地帯に位置し、日差しの強いラジャスタン州では、実用面からもターバンの着用が求められたのです。

シーク族の大定番「パティアーラ・シャーヒ」

シーク教発祥の地であるパンジャーブ州には、シーク族のターバン文化が今も強く根付いています。パンジャーブ州は人口におけるシーク族の割合が約60%と異常に高く、世界中のシーク族のうちおよそ80%がこのパンジャーブ州に居住しているのです。

シーク族が日常的に巻いているターバンは「ダスタール」と呼ばれます。そのなかでも最もよく見られる巻き方が「パッグ」と呼ばれるスタイル。シーク族の男性や男の子の多くがパッグを巻いており、ダスタールといえば多くの場合パッグをさすほどです。

ターバンの上の部分が右斜めになっているのも特徴 ターバンの上の部分が右斜めになっているのも特徴

パッグの巻き方にもいくつかの種類があり、なかでも有名なのが「パティアーラ・シャーヒ」というスタイル。これは「パティアーラの王」を意味し、かつてマハラジャが愛用していた巻き方として知られています。額の部分が美しい三角形を描き、両サイドで布が折りたたまれているのが特徴です。

縦長に伸びる「ドゥマッラー」

ドゥマッラーは儀式に参加したシーク教徒が着用できる ドゥマッラーは儀式に参加したシーク教徒が着用できる

縦に長く仕上げる巻き方は「ドゥマッラー」。シーク教の正装とされ、巻いた上に紋章などを装飾する場合もあります。シーク王国が成立する以前から主流とされていた伝統的な巻き方です。

シーク王国とは、パンジャーブ地方を中心に19世紀に繁栄したシーク教の王朝です。この地にターバン文化が色濃く残っている背景には、シーク教発祥の地であることに加えて、こうした歴史や、日差しが強い自然環境なども関係しています。

アフガニスタンの「ルンギ」

シーク族の子供が着用するお団子が特徴的なパトカ 長く垂らした布の先を用いて砂埃から身を守る

アフガニスタンでは、男性は公共の場では何かしらの帽子をかぶるのが習慣となっています。そのなかでも広く用いられているのが「ルンギ」と呼ばれるターバン。なお、ルンギという言葉は南アジア全体で腰巻きなど布製の衣服に広く使われており、地域によって意味が異なります。

アフガニスタンのルンギは、後ろに垂らした布をマスクにして砂埃から身を守るなど、実用的な役割を果たします。同時に、宗教学者や長老といった権威ある人物が巻く象徴的な意味もあります。

カブールなどの都市では日常的にルンギを着用する習慣は薄れていますが、結婚式などの行事ではルンギを着用するのが一般的です。

雑学

女性や子供用のターバン

シーク族の子供が着用するお団子が特徴的なパトカ シーク族の子供が着用するお団子が特徴的なパトカ

現在ではターバンを巻くのは男性が中心ですが、女性が着用する場合もあります。「ケースキー」と呼ばれる巻き方は、長い布を頭に下から上へ巻き付けるもので、男女問わず使えるスタイルです。

また、シーク教徒の少年たちは「パトカ」と呼ばれるタイプのターバンをよく着用します。

ターバンと儀式:冠婚葬祭におけるターバンの意味

ターバンは宗教上の理由や砂埃から身を守る以外にも、冠婚葬祭の儀式で使用される場合もあります。一体どのような意味で使用されているのでしょうか?ターバンのタブーも交えながら、以下で詳しく紹介していきます。

葬儀とターバンの関係

ターバンの象徴的な意味が強く表れる儀式として、「ラサム・パグリ(ターバンの儀式)」があります。これはパンジャーブ州やラジャスタン州のヒンドゥー教徒の間で行われる伝統行事です。

この儀式では、一族の長男が亡くなると、遺族のなかで最年長の男性が親族の前でターバンを頭に巻きます。これは、一族を守り幸福に導く責任が、故人から引き継がれたことを意味します。ターバンが責任や名誉を象徴しているのです。

結婚式を彩るターバン

結婚式でもターバンは大切な役割を果たします。例えば、ターバンは敬意の印として、新郎の親族から新婦の家族に贈られる場合があります。都市部など普段ターバンを巻く習慣が薄れている地域でも、特別な式典や結婚式では男性が正装としてターバンを着用するのが一般的です。

ターバンは友情や和解の証として交換される場合もあります。父親が長男にターバンを贈ることは、世代交代や引退の意思を示す意味合いを持ちます。持ち主の地位や信頼と深く関わっているターバンは、時にはなんと融資の担保にもなるとか。

ターバンの色は、用途やイベントに応じて使い分けられます。結婚式では赤などの明るく華やかな色が好まれ、葬儀では白やカーキ色など厳粛な色が選ばれます。季節によっても色に違いがあり、例えば夏はサフラン色、雨季には緑、冬は赤が選ばれるのが一般的です。

ターバンのNG行為

ターバンは名誉と結びついた重要な存在です。そのためターバンを床に置くのは着用者の威厳を損なう行為とされ、タブー視されています。同様に、他人のターバンを跨ぐ、踏む、無理に脱がせるなどの行為も、非常に失礼な侮辱と見なされます。
また他人の足元に自分のターバンを置くことは、服従とみなされます。

実際にターバンを巻いてみよう!

様々な文化と歴史を持つターバンですが、手元に大きなストールがあれば簡単に再現することができます。

◆ターバンを巻くのにおすすめなストールはコチラ!

サシコストール

ヴィンテージの古布を重ねて刺し子を施した一点物のストール。
世界に一つだけの魅力をお手元に。

ハンダイストール

タイダイ染めのナイロンストール。
軽くもたつかないのでオールシーズン使用できます。

一枚の布にこめられた歴史と誇り

ターバンは、実用的なアイテムであると同時に、信仰や文化、名誉を象徴する重要な存在です。巻き方や用途は地域や文化によって実に多彩。

気軽なファッションとしても注目されるターバン、あなたも一度、巻いてみてはいかがでしょうか?

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