掲載日:2025.04.30

鬼の正体とは!日本三大妖怪である鬼の種類を徹底解説

日本三大妖怪である鬼、天狗、河童。なかでも「鬼」は各地の伝承や物語などに多数登場する、日本を代表する妖怪のひとつです。

昔話の「桃太郎」にも登場することから、日本人にとってなじみ深い鬼ですが、実際の位置づけなどが分からないという方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、鬼の種類や伝承について詳しく解説します。
節分やなまはげなど、私たちの生活とも密着している鬼の、伝説や正体に迫るので、ぜひチェックしてみてくださいね。

鬼とはどんな妖怪?基本情報を解説

鬼とはどんな妖怪?基本情報を解説

鬼について、登場する物語や伝承ごとにイメージはさまざまですが、具体的にはどんな妖怪なのでしょうか。
鬼という言葉だけでも色々な意味を持っているのでぜひ確認してみてください。

鬼って何者?

鬼は、日本の伝承や物語に登場する妖怪のことです。ところで、「鬼」と聞くと、見た目はどのような姿を思い浮かべるでしょうか。
一般的には、以下のようなイメージの方が多いはずです。

  • 赤や青の皮膚
  • 1~2本の角が生えている
  • 髪はモジャモジャ
  • 虎柄のパンツなどを履いている
  • 金棒を持っている

毎年2月3日の節分の時期には、上記のようなデザインをした鬼のお面や衣装が販売されています。こうしたイメージは、仏教に登場する鬼のイメージが由来とされています。

また鬼は古来より日本文化や伝説の中にも登場し、「桃太郎」や「一寸法師」などは代表的な例です。多くは人間にとって悪さをする存在で、主人公となるキャラクターが鬼退治をする悪役の象徴となっています。

一方で、鬼を単なる悪役として描いていない作品として児童書の「泣いた赤鬼」なども有名です。

人間と仲良くなりたいのに鬼というだけで信用してもらえない赤鬼が、青鬼のおかげで人間と仲良くなれるというストーリーで、青鬼との友情なども描かれる教育的な作品です。

悪役のイメージの強い鬼ですが、決して悪い部分だけでなくさまざまな意味を持っています。

鬼の語源

鬼の語源は平安時代までさかのぼり、目に見えない存在を表す「隠(オヌ)」が元です。中国から伝わった「鬼」という言葉が後から当てられ、今のような妖怪としてではなく、人間を襲う目に見えない存在として恐れられており古代日本においても“人ならざるもの”の象徴でした。つまり鬼とは、目に見えない死者の霊や、不可思議な力を持つ存在の象徴だったのです。

鬼の歴史

日本における鬼の歴史は、7世紀ごろまでに中国から伝わったことで始まります。中国では目に見えない存在で、必ずしも悪いものだけではないとされていた鬼ですが、日本においては悪しきものとしての側面が強く伝わり、物の怪を鬼と呼ぶようになっていきました。

720年に成立した日本書紀でも鬼が登場しており、現在の佐渡島にて北方にすむ「粛慎人(みしはせびと)」が上陸した事件を、鬼の出現だとして語られています。

また、平安時代には陰陽道で忌み日とされる「夜行日」に出歩くと鬼に出くわすとされており、鬼の爪の痕なども記録されています。

このように、日本では歴史の中で外部からの来訪者や物の怪など、得体の知れないものを鬼として語られるケースがあったのです。

現代の日本における鬼とは?

現代の日本において、鬼という言葉は単なる妖怪のひとつではなく、生活の中で馴染み深いものとなっています。

たとえば、「鬼ごっこ」という遊びは、諸説ありますが平安時代に中国から日本に伝わった「追儺(ついな)」が起源であるとされています。役人が鬼を追いかけまわす宮中行事で、節分の起源でもあります。

鬼を悪いものとして見立て、邪気を払って健康や幸福を呼び寄せる儀式です。

一方で、鬼を単なる悪ではなく、力強さや指導力の象徴と例えるケースもあります。たとえば、「鬼上司」や「仕事の鬼」などが該当します。

現代日本においては、鬼という言葉は悪い意味だけではなく、強さなどを表す場合もありますね。

鬼のような人

現代社会における鬼は、妖怪としての鬼とは違った意味で使われることがあります。
たとえば、「鬼のような人」という言葉には、以下のような意味が含まれます。

  • 鬼のように怖い人
  • 無理を強いる人
  • 強くてリーダーシップのある人

単に恐ろしくて無茶な人というだけでなく、強さを感じさせる優秀な人という側面で語られることもあるでしょう。必ずしも良い意味で使われるわけではありませんが、自分の周りにも「鬼のような」人がいるかもしれません。

鬼の種類

鬼の種類

伝承などに登場する、さまざまな鬼の種類について紹介します。

  • 伝説・神話の鬼
  • 民間伝承の鬼
  • 異界・霊的な鬼

鬼の中にも妖怪・化け物としての側面が強調される場合と、教育や秩序のために鬼の存在を利用するなど良い側面を際立たせる場合があります。

伝説・神話の鬼

伝説や神話に登場する鬼について、代表的なものを紹介します。

  • 酒呑童子
  • 茨木童子
  • 夜叉・羅刹

漫画やゲームなどにも登場するため、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。具体的にどんな逸話があるのか確認してみましょう。

酒呑童子

酒呑童子は、平安時代に京都の大江山を根城としたとされる鬼です。酒が大好物で、夜の京に配下の鬼たちを率いて現れ、暴れまわったとされています。
天皇から鬼退治の命を受けた源頼光とその配下は、道に迷った山伏(修行僧)と偽り、酒呑童子らとともに酒宴を開きます。饗応のさなか、「神便鬼毒酒」とよばれる鬼の力を封じるという酒を飲ませ、酒呑童子は寝首をかかれる形で首を獲られました。

嘘や謀りを嫌う酒呑童子は、首を切られてなお頼光に襲い掛かったといわれています。現在も京都市と亀岡市の間にある「首塚大明神」に祀られているので、近くを通りがかったときは訪れてみてくださいね。

茨木童子

茨木童子は酒呑童子の配下であり、大江山を拠点に京の都を荒らし回った鬼です。源頼光らによって壊滅させられた酒呑童子の一味の中で、唯一生き残ったとされています。
酒呑童子が首を切られたとき、茨木童子は頼光の配下である渡辺綱と交戦中で、酒呑童子が討たれたのを見て逃亡しました。

その後も渡辺綱は羅生門に棲みついていた茨木童子の腕を切り落としたなど、故事や説話で語られることがあり、その後も何かと因縁があります。

夜叉・羅刹

夜叉・羅刹はインド神話や仏教に登場し、毘沙門天に仕える鬼神のことです。男はヤクシャ、女はヤクシニーと呼ばれることもあります。

仏法を守護する八部衆であり、人間に対して恩恵をもたらす存在として、悪の象徴としての鬼ではなく、どちらかといえば神様に近い存在です。

民間伝承の鬼:人間との共存と教育的な鬼

民間伝承の間でも、さまざまな鬼がいます。たとえば、青鬼や赤鬼など、色のついた鬼はそれぞれ仏教における5つの煩悩に当てはまります。

鬼の種類・色 煩悩 意味
赤鬼 貪欲(どんよく) 執着や人間の欲望
青鬼 瞋恚(しんに) 怒りや憎しみ、恨みなど
黒鬼 疑(ぎ) 自分や他人、仏教の教えなど疑う心
黄鬼 惛沈(こんじん) 怠けようとする心
緑鬼 掉挙(じょうこ) 平静な心を失っている状態のこと

節分はこうした煩悩を鬼に見立てることで、鬼を退治することで煩悩を打ち払うという意味があります。

また、秋田県の男鹿半島周辺の伝統行事である「なまはげ」も、教育的な意味を持つ鬼です。厳密には鬼ではなく来方神とされていますが、恐ろしい容貌をしており、大晦日の晩に現れて悪事に訓戒を与えて厄災を祓う意味合いがあります。

なまはげは子どもにとっては怖い存在ですが、悪いものではなく一年の厄を祓って新年を祝う神様のような存在です。

異界・霊的な鬼

悪い化け物として語られることの多い鬼ですが、地獄の鬼はどちらかといえば秩序を守る側の存在です。

地獄の役人であり、地獄に落ちたものに罪を償わせる役目があるとされています。また地獄の鬼には「餓鬼(がき)」もあり、こちらは飢えと渇きに苦しむ死者の霊のことです。
仏教においては、生前に嫉妬心や欲望にとらわれている人が、餓鬼道に落ちるといわれて戒めとされています。

鬼の正体は?

鬼の正体は?

鬼の正体については諸説ありますが、中国では鬼とは死者の霊魂そのものであり、姿形のないものとされていました。

死に対する恐怖から、鬼もまた恐ろしいものとして捉えられていったのです。また、人間が恨みや嫉妬などで悪霊と化し、鬼の姿へと変わったものと言われることもあります。

特に人間の女性が鬼となると「鬼女(きじょ)」と呼ばれ、能面で使われる「般若(はんにゃ)」となります。

鬼が登場する日本各地の伝説

日本各地の伝説には、鬼が登場する逸話が多数あります。酒呑童子や茨木童子が登場する大江山の鬼伝説以外にも「鬼住山(きずみやま)」などが有名です。

「鬼住山ものがたり」は日本最古の鬼伝説とよばれており、鳥取県の笹苞山を舞台としています。当時の孝霊天皇が、人々を苦しめる鬼を退治しようと笹苞山に陣を敷き、兄弟鬼を退けるというストーリーです。

弟の乙牛蟹は大矢口命の矢によって退治できますが、兄の大牛蟹は手ごわい相手でした。ある日、天皇の枕元に天津神のお告げがあり、お告げに従って笹の葉を積み上げることになります。

そして突如強い風が吹くと、笹の葉は瞬く間に鬼の体にまとわりつき、燃え盛って鬼たちを退散させました。降参した鬼は天皇の配下となって北を守ることになり、一件落着します。

現在でも周辺地域では、鬼をモチーフとした鬼ミュージアムやおにっ子ランドといった施設があり、連日人気を博しているので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

全国各地にさまざまな鬼の種類や伝承がある

全国各地にさまざまな鬼の種類や伝承がある

日本各地には、さまざまな鬼の言い伝えがあり、鬼の種類も多彩です。単なる妖怪というだけでなく、地獄の鬼やなまはげのように、鬼の存在を教育やルールの伝承などに利用しているケースもあります。

また、現代日本においては鬼上司や仕事の鬼といった具合に、強さや恐ろしさの象徴として鬼という言葉が使われます。

私たちの生活に馴染み深い鬼ですが、言葉によって持つイメージが大きく異なるので、節分などの際に意識してみると面白いかもしれませんよ。
次回は、鬼と並んで日本三大妖怪のひとつである河童についての記事を更新予定なので、ぜひ御覧くださいね。


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