掲載日:2025.02.04

心を養い絆を結ぶ月の光!イスラム教の聖なる月ラマダン、2025年はいつ?

世界のイスラム教人口の半数以上がアジアに住む人々です。
日本から気軽に行ける、インドネシアやマレーシア、シンガポールなどはイスラム教国。最近では、日本に暮らすムスリム(イスラム教徒)も増えてきています。

さて、イスラム教といえば、「ラマダン」や「断食」という言葉を知っている人もいるでしょう。実はラマダンには断食だけでなく、とても深い宗教的な意味があるのです。

このコラムでは、奥行きの深いラマダンの意義とその魅力、外国人としてラマダン中のイスラム教国を訪問する際のマナーを解説します。

ラマダンって何?どんな意義があるの?

ラマダンとはヒジュラ暦というイスラム教の暦の9番目の月の名称です。この月は、イスラム教に馴染みのない国でも一般的に一年に一か月行われ「断食月」として知られています。
断食のことをラマダンだと解釈している方もいますが、月の名称が正しい解釈です。

ラマダンとは?

ラマダンはイスラム教の聖典クルアーン(コーラン)が教祖のムハマンドに神から示された聖なる月です。断食だけでなく、喫煙、性行為、けんかといった行為も日の出から日没の間は禁止されています。

ヒジュラ暦は月の運行を基準にしています。ラマダンの始まりはヒジュラ暦8月の「シャバーン」の末に新月が確認されたときに始まり、ヒジュラ暦10月「シャウワール」の新月が確認されるまで続きます。ヒジュラ暦の1年は354日なので、一般的に用いられている太陽暦のグレゴリオ暦よりも11日短く、しかも閏年などの調整を行いません。そのため、ラマダンの期間は毎年ずれていきます。

ラマダンの意義とは?

イスラム教は、信仰は行動に表すことが大切であるとする宗教です。その実践の目安として、ムスリムの聖典であるクルアーン(コーラン)には、以下のような「イスラム五行」が示されています。

【イスラム五行】
  • ・信仰の告白 → 神を信じることを声に出す
  • ・礼拝 → 1日5回の礼拝
  • ・喜捨 → 貧しい人への施し
  • ・断食 → ラマダン月に日中の飲食を断つ
  • ・巡礼 → 一生に一度は聖地に巡礼する

この中の「断食」がラマダンに勧められている信仰の実践です。
ラマダン中、毎日日没後にとる断食明けの食事を「イフタール」と言います。イフタールは多くの人と分かち合って食べるほど功徳が積めるとされているので、家族や地域の人と一緒に食事をする機会が増えます。そして一緒に断食を乗り越えたという気持ちが、家族や仲間の一体感を強めるそうです。

ラマダンの意義とは? 豪華なイフタールの影響で、断食中にも関わらず太る人もいるとか。

また断食は、食事ができることへの感謝の気持ちばかりでなく、十分に食事が取れない貧しい人の気持ちが実感できる機会にもなります。ラマダン中にはモスクで宗教講話が催されたり、家族や友人と信仰の話をする時間も増えるので、自分自身を清め、心を養うという意味もあります。

このように宗教的な意味が強いラマダンですが、ムスリムの人々はラマダンがやってくることを心待ちにしています。ラマダン前にはラマダン中の特別な食事のための食材を買い求める人々で市場が賑わい、日本の年末のような雰囲気だそうです。そして、1ヶ月後にラマダン明けが宣言されると、大祭「イード(イール・アド・フィトル)」が盛大に祝われます。

ムスリムのラマダン中の過ごし方

日の出から日没まで飲食を断つ生活は一体どのようなものなのでしょうか?
以下でムスリムの平均的なラマダンでの過ごし方を紹介いたします。

ムスリムのラマダン中の過ごし方

旅行に行っている人、子どもやお年寄り、妊婦、病人には断食の義務はありません。
ただし、旅行に行っている人は帰国してから断食の務めを果たすようすすめられています。

2025年のラマダンはいつ?

2025年のラマダンは
開始:2025年2月28日金曜日の日の出
終了:3月29日土曜日の日没まで

となっています。

ラマダンの開始日は、ヒジュラ暦8月の29日目に宗教指導者が肉眼による目視で新月を確認できた場合は、その翌日からラマダンが始まると宣言されます。もし、その日に天候の具合で目視できなかった場合はその翌日にもう一度試み、その日も目視できなかった場合は翌日からラマダンが始まると宣言されます。
終了日もまた、新月の観測を目視で行って決定します。

近年は天文学者による月の運行の正確な計算と目視を合わせて行い、宗教者が会議を開いて検討した上で決定、宣言されるそうです。
ただ、月が目視できる時間帯は日の出日の入りに左右されるので、国や地域、イスラム団体によってラマダンの期間が数日ずれるとか。イスラム教国以外の世界各国に暮らすムスリムはそれぞれの国の「新月観測委員会」の決定に従ってラマダンを開始するそうです。

雑学

ラマダンはランタンの光が煌めく幻想的な月!

ラマダンはランタンの光が煌めく幻想的な月!

ラマダンには五行の「喜捨」の意味でボーナスを支給したり、広義の「喜捨」ということで「ラマダンセール」が開催されたり寄付のためのイベントも多く、むしろ夜の街は賑やかです。
この期間はファヌースと呼ばれるランタンが街を彩ります。イスラム教のシンボルである三日月と月があしらわれたランタンは、人々の精神的な「行く道を照らす光」としての意味もあります。ファヌースの装飾や照明で、ラマダンの夜の幻想的な空間を楽しむことができるでしょう。

ラマダン期間中の旅行で気を付ける点は?

ムスリムでない外国人にはラマダン期間中の断食は義務ではありませんが、ラマダン期間中にイスラム教の国を旅行するときには、普段よりも注意すべきことがいくつかあります。
以下にラマダン期間中の旅行で気を付けるべき4つの点を解説します。
国によっては、外務省の海外安全ホームページに「断食月(ラマダン)における注意喚起」が掲載せれる場合もありますので、事前にチェックしてから出かけましょう。

飲酒や喫煙を避ける

イスラム教国はクルアーン(コーラン)で禁止されているため、一般的に飲酒は禁止です。外国人向けの飲食店では提供されている場合もありますが、ラマダン中にはメニューから外されている場合が多いでしょう。万が一、入手できたとしても、日中に公共の場で飲酒してはいけません。喫煙も同様です。外国人だとしても大変不作法なこととされ、現地の人々に不愉快な印象を与えてしまいます。

人目がないからといって、自動車やレンタカーの移動中の食事も日中は控えましょう。現地の人々にとってラマダン中の断食は宗教的に非常に大切な行い。ラマダン月のイスラム教国への訪問は、現地の人々に十分に敬意を払い、不快感を与えないような注意が必要です。

普段以上に服装に注意する

イスラム教国の女性は一般的にゆったりとしたラインの服装で、髪もヒジャブで覆っていますね。これはイスラム教の影響で、一般的に肌の露出が多い服は品が良くないと思われているからです。
ラマダンではこの傾向がいつも以上に強まるため、外国人の観光客であったとしても体のラインが出る服や肌が透ける服などは避けましょう。

お店の営業時間に注意する

ラマダンの日中、現地の人々はあまり出歩きません。そのためレストランやショッピングモールなどは日中は閉店となる場合があります。観光客向けの飲食店は通常より遅い時間に開店するなど、変則的な営業時間になることもあるので注意しましょう。

「それなら食事はどうするの?」と不安になりますね。外国人向けのホテルでは、ルームサービスを行ってくれることもあります。ですが、リーズナブルな宿では難しいかもしれません。あらかじめ前日の夜間に食料品を購入するなど各自で工夫しましょう。

飲食店と同様、官公庁などの機関も業務時間が短縮する場合があります。申請等の窓口が混雑することも多いので、利用する場合は営業時間をしっかり確認して、時間に余裕を持って出かけましょう。

交通事故の増加に注意!渋滞の可能性も

ラマダン中はケンカや悪口も禁止。そして空腹に伴う判断力の低下やイライラもマックスに。そのため、ラマダンには接触事故などの交通事故が増加する傾向があるそうです。

また日没後の食事に合わせて帰宅ラッシュも起こるため、交通渋滞も起こりがちです。移動に車を利用する場合は、余裕を持って早めの行動を心がけましょう。特に夜のフライトを予定している場合のタクシー移動は要注意です!

まとめ

今回はムスリムにとって重要なラマダンの意義やイフタール、ラマダン中に私たち旅行者が気を付けるべき点などをご紹介しました。
ラマダン中のイスラム教国は普段とは違った伝統文化や神秘的な魅力を見せてくれますが、旅行などでの訪問や、ムスリムの人と過ごす機会がある場合は、彼らの信仰心と文化に敬意を持って過ごしたいですね!

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