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皆さんはブラジルの音楽の歴史や楽器を知っていますか?「ブラジル音楽」とひとことで言っても、地域や風習、宗教に由来するもの、そこから新しいアーティストが現れ発展していったジャンルなど、その種類は本当に多種多様で、奥深く豊かな世界が広がっています。
なかでも私たちがイメージするブラジル音楽のなかで一番に思いつくのは、「サンバ」ではないでしょうか。でも、サンバがどのような音楽なのか、具体的にイメージできますか…?今回は、サンバの誕生や歴史、そして現在親しまれているスタイルを紹介。そして実際にどのような楽器を使いどんな音を奏でているのか、本物の音を体験しながら紐解いていきましょう。
サンバのルーツは、アフリカ系の奴隷がブラジルにもたらした音楽とダンスにあります。19世紀末から20世紀初頭にかけて、特にリオデジャネイロで発展。ポルトガルや先住民の音楽的要素も融合し、現在のサンバの形に進化しました。
サンバのはじまりはアフリカから奴隷としてブラジルに連れてこられた人々のリズムとダンスが大きく影響しています。特に、バイーア州などで見られた「サンバ・ヂ・ホーダ」と呼ばれる音楽とダンスが元となっているといわれ、奴隷制度が廃止されると、アフリカ系のブラジル人たちはリオデジャネイロなどの都市に集まり、コミュニティの中でサンバが発展していきました。
約100年前、1917年に「Pelo Telefone」という曲がヒットし、初めて“SAMBA”という呼称で一般に広く知られるようになりました。その後、カーニバルではサンバが主要な音楽として定着し、1920年代から30年代にかけてサンバのスタイルが多様化。リオのカーニバルは、サンバを通してブラジル文化の象徴的な存在となりました。
1928年には、最初のエスコーラ・ヂ・サンバ(サンバ学校)が設立されました。エスコーラは、地域のコミュニティが集まってサンバを学び、カーニバルでパフォーマンスを競う団体です。現在ではリオだけでも大小200団体ほどのエスコーラが存在しているいといわれています。リオのカーニバルでは、エスコーラのコンペティションが大きな見どころとなって、その規模は拡大。現在は世界最大規模のカーニバルに発展しました。
サンバの楽器隊は「バテリア (bateria)」と呼ばれ、サンバのリズムを作り出す中核的な役割を果たします。バテリアは多様な打楽器で構成され、リオのエスコーラでは数百名規模の大楽団となることも珍しくありません。カーニバルに出場するバテリアは、打楽器は生音、管楽器は使用不可、歌と弦はPAを用いて大音量のスピーカーを使うという規定のもと、チームごとに独自性のある編成でパレードします。
ここでは、サンバのバテリアに使われる主要な打楽器について紹介します。実際の楽器の音も併せて聴いてみましょう!
演奏:Deixa comigo
スルドは大きな低音ドラムで、サンバのリズムの基礎を担う重要な楽器です。通常、異なるピッチを持つスルドが3種類使われ、リズムに深みを与えます。
プライメイラ (Primeira): 最も低音で、サンバの基本的な拍を打つ。
セグンダ (Segunda):中音域を出し、プライメイラのリズムと対になる。
テルセイラ (Terceira): 高音で、リズムに変化やフィルを加える役割を持つ。
カイシャはスネアドラムに似た楽器で、細かくシャープな刻みで、サンバのリズムを支えます。楽器編成の中でもっとも人数が多く、複雑なパターンでリズムにうねりを加え、全体の演奏を引き締める役割を果たしています。ここでは上に持ち上げ肩にのせて演奏する「エンシーマ」スタイルを披露しています。
タンボリンは片手に持つタイプの小さなドラムで、バケッタと呼ばれる鞭のようにしなるスティックで打ちます。鋭い高音の音を出し、軽快で高速なリズムを奏でるほか、アクセントの位置を表や裏などさまざまな場所に入れ、歌うようにフレーズを叩きながらシンコペーションを強調する楽器でもあります。
ヘピニキは、サンバの指揮者的な役割を持つ筒形のドラムです。利き手でスティックを持って叩き、もう一方の手は素手でリムにかかるようにアクセントをつけて叩きます。鋭く響く高音で演奏のリズムをリードし、フィルインを入れるなどバテリアのパフォーマンスの中できっかけとなる合図を送ります。カイシャやスルドと協調しながらも自由なフレーズを入れて全体に軽やかなニュアンスを加えるなど、奏者のアドリブや個性が活きる楽器です。
アゴゴは、異なるピッチを持つ2つまたはそれ以上の金属製の鐘(ベル)で構成される楽器で、伝統的なアフリカ音楽の影響が強く現れています。ここでは、4連のアゴゴを紹介。4つのベルの間で、パルチード・アウトとよばれるリズムを刻みます。音階楽器の少ないバテリアにおいてリズムに独特の色彩を加える効果があり、バンドごとの個性が現れる楽器でもあります。
ショカーリョは、金属製のシェイカーの一種で、たくさんのジングル(小さな金属片)が付いたものです。演奏者が前後に振って基本となるサンバのリズムを際立たせる役割を果たします。軽やかな音が特徴で、大規模なバテリアの中でリズムの安定を図る楽器です。
サンバの笛は「アピート」と呼ばれ、バテリアの指揮やリズムの合図を出すために使われる重要な楽器です。パレードやパフォーマンスにおいて、バテリアのリーダーやヘピニキ奏者が使うことが多いです。アピートの音は非常に高く、パワフルな打楽器群の中でも明確に聞き取ることができ、バテリア全体を導く役割を果たします。
さて、紹介してきたすべての打楽器が合わさるとどのような音になるのでしょうか。早速聴いてみましょう!
いかがでしたでしょうか。元気いっぱいですね!ひとつひとつの楽器の役割や個性を知ってから聴いてみると、それぞれの音がどのように噛み合い、アンサンブルを生み出しているのかがお分かりいただけたのではないでしょうか。
サンバのリズムは、聴いているだけで踊りだしたくなる不思議な力があります。実際に、「サンバのビートを繰り返し聞くことで脳の運動領域の活動にも影響を与え、体を動かしたくなる衝動を誘発する可能性がある」※という脳科学の研究結果があるほど。
彼らの演奏を聴いて、何かが目覚めてしまった方もいるのでは?
※引用:サンバのリズムは、なぜ人を踊らせるのか?
日本でも、サンバ・ビートの魔力に取りつかれてしまった人々が大勢います。毎年、東京・浅草で行われる、「浅草サンバカーニバル」は北半球一の規模のカーニバルとして知られ、主催団体の発表によると2024年は約5000人が参加、48万人の来場がありました。
地球の裏側の音楽がなぜこんなにも人気なのかと不思議に思うかもしれませんが、実は日本人は古来から神楽をはじめ各地域に伝わる盆踊りなどを通じてリズムと踊りに親しんできた民族。むしろ日本でサンバが盛んになることは自然なことではなないかと感じます。
老若男女、世代を問わず人々を魅了していくサンバを、音楽の発展の歴史や楽器の音を体感していただきながら紹介しました。でも、文章や動画だけでは伝えきれない本当の魅力は、生音でビートと音圧を体感すること。少しでも興味をもったなら、あなたの脳内にも眠る「踊りだしくなる衝動」を体感してみることをおすすめしますよ!
<出演してくれたバンド>
今回、楽器紹介の演奏に協力してくれたDeixa comigo。彼らはいま、日本のサンバ界で最も勢いのある若者たちです。彼らの魅力は、エスコーラ・ヂ・サンバのように大人数が繰り出す大迫力の音というより、一人一人の卓越した技術が集結した、個性溢れるサウンド。
バツカーダ(打楽器のアンサンブル)やエンヘード(カーニバルで演奏される曲)だけではなく、サンバロック・サンバヘギ・マクレレなどを含むブラジル音楽全般を、クオリティ高く演奏できるバンドを作りたいという思いで結成。次に何が起こるのか予想ができないパフォーマンスが、見る人、聴く人ワクワクさせてくれます。
皆さんはブラジルの音楽の歴史や楽器を知っていますか?
「ブラジル音楽」とひとことで言っても、地域や風習、宗教に由来するもの、そこから新しいアーティストが現れ発展していったジャンルなど、その種類は本当に多種多様で、奥深く豊かな世界が広がっています。
なかでも私たちがイメージするブラジル音楽のなかで一番に思いつくのは、「サンバ」ではないでしょうか。でも、サンバがどのような音楽なのか、具体的にイメージできますか…?
今回は、サンバの誕生や歴史、そして現在親しまれているスタイルを紹介。そして実際にどのような楽器を使いどんな音を奏でているのか、本物の音を体験しながら紐解いていきましょう。
目次
ブラジル音楽のサンバ。その歴史と現在のスタイル
サンバのルーツは、アフリカ系の奴隷がブラジルにもたらした音楽とダンスにあります。19世紀末から20世紀初頭にかけて、特にリオデジャネイロで発展。ポルトガルや先住民の音楽的要素も融合し、現在のサンバの形に進化しました。
コミュニティの中で発展し、日常に根付いた音楽へ
サンバのはじまりはアフリカから奴隷としてブラジルに連れてこられた人々のリズムとダンスが大きく影響しています。特に、バイーア州などで見られた「サンバ・ヂ・ホーダ」と呼ばれる音楽とダンスが元となっているといわれ、奴隷制度が廃止されると、アフリカ系のブラジル人たちはリオデジャネイロなどの都市に集まり、コミュニティの中でサンバが発展していきました。
約100年前、1917年に「Pelo Telefone」という曲がヒットし、初めて“SAMBA”という呼称で一般に広く知られるようになりました。その後、カーニバルではサンバが主要な音楽として定着し、1920年代から30年代にかけてサンバのスタイルが多様化。リオのカーニバルは、サンバを通してブラジル文化の象徴的な存在となりました。
世界最大カーニバル。サンバ学校が競い合う
1928年には、最初のエスコーラ・ヂ・サンバ(サンバ学校)が設立されました。エスコーラは、地域のコミュニティが集まってサンバを学び、カーニバルでパフォーマンスを競う団体です。現在ではリオだけでも大小200団体ほどのエスコーラが存在しているいといわれています。リオのカーニバルでは、エスコーラのコンペティションが大きな見どころとなって、その規模は拡大。現在は世界最大規模のカーニバルに発展しました。
カーニバルの楽器隊はほとんどが打楽器。その種類は?
サンバの楽器隊は「バテリア (bateria)」と呼ばれ、サンバのリズムを作り出す中核的な役割を果たします。バテリアは多様な打楽器で構成され、リオのエスコーラでは数百名規模の大楽団となることも珍しくありません。カーニバルに出場するバテリアは、打楽器は生音、管楽器は使用不可、歌と弦はPAを用いて大音量のスピーカーを使うという規定のもと、チームごとに独自性のある編成でパレードします。
ここでは、サンバのバテリアに使われる主要な打楽器について紹介します。
実際の楽器の音も併せて聴いてみましょう!
演奏:Deixa comigo
1. スルド- Surdo
スルドは大きな低音ドラムで、サンバのリズムの基礎を担う重要な楽器です。通常、異なるピッチを持つスルドが3種類使われ、リズムに深みを与えます。
プライメイラ (Primeira): 最も低音で、サンバの基本的な拍を打つ。
セグンダ (Segunda):中音域を出し、プライメイラのリズムと対になる。
テルセイラ (Terceira): 高音で、リズムに変化やフィルを加える役割を持つ。
2. カイシャ- Caixa
カイシャはスネアドラムに似た楽器で、細かくシャープな刻みで、サンバのリズムを支えます。楽器編成の中でもっとも人数が多く、複雑なパターンでリズムにうねりを加え、全体の演奏を引き締める役割を果たしています。ここでは上に持ち上げ肩にのせて演奏する「エンシーマ」スタイルを披露しています。
3. タンボリン- Tamborim
タンボリンは片手に持つタイプの小さなドラムで、バケッタと呼ばれる鞭のようにしなるスティックで打ちます。鋭い高音の音を出し、軽快で高速なリズムを奏でるほか、アクセントの位置を表や裏などさまざまな場所に入れ、歌うようにフレーズを叩きながらシンコペーションを強調する楽器でもあります。
4. ヘピニキ-Repinique
ヘピニキは、サンバの指揮者的な役割を持つ筒形のドラムです。利き手でスティックを持って叩き、もう一方の手は素手でリムにかかるようにアクセントをつけて叩きます。鋭く響く高音で演奏のリズムをリードし、フィルインを入れるなどバテリアのパフォーマンスの中できっかけとなる合図を送ります。カイシャやスルドと協調しながらも自由なフレーズを入れて全体に軽やかなニュアンスを加えるなど、奏者のアドリブや個性が活きる楽器です。
5. アゴゴ - Agogô
アゴゴは、異なるピッチを持つ2つまたはそれ以上の金属製の鐘(ベル)で構成される楽器で、伝統的なアフリカ音楽の影響が強く現れています。
ここでは、4連のアゴゴを紹介。4つのベルの間で、パルチード・アウトとよばれるリズムを刻みます。音階楽器の少ないバテリアにおいてリズムに独特の色彩を加える効果があり、バンドごとの個性が現れる楽器でもあります。
6. ショカーリョ- Chocalho
ショカーリョは、金属製のシェイカーの一種で、たくさんのジングル(小さな金属片)が付いたものです。演奏者が前後に振って基本となるサンバのリズムを際立たせる役割を果たします。軽やかな音が特徴で、大規模なバテリアの中でリズムの安定を図る楽器です。
7. アピート- Apito
サンバの笛は「アピート」と呼ばれ、バテリアの指揮やリズムの合図を出すために使われる重要な楽器です。パレードやパフォーマンスにおいて、バテリアのリーダーやヘピニキ奏者が使うことが多いです。アピートの音は非常に高く、パワフルな打楽器群の中でも明確に聞き取ることができ、バテリア全体を導く役割を果たします。
合奏するとどうなる?大迫力の演奏を聴いてみよう
さて、紹介してきたすべての打楽器が合わさるとどのような音になるのでしょうか。
早速聴いてみましょう!
いかがでしたでしょうか。元気いっぱいですね!
ひとつひとつの楽器の役割や個性を知ってから聴いてみると、それぞれの音がどのように噛み合い、アンサンブルを生み出しているのかがお分かりいただけたのではないでしょうか。
サンバのリズムは、聴いているだけで踊りだしたくなる不思議な力があります。実際に、「サンバのビートを繰り返し聞くことで脳の運動領域の活動にも影響を与え、体を動かしたくなる衝動を誘発する可能性がある」※という脳科学の研究結果があるほど。
彼らの演奏を聴いて、何かが目覚めてしまった方もいるのでは?
※引用:サンバのリズムは、なぜ人を踊らせるのか?
実は日本でも盛んなサンバ
日本でも、サンバ・ビートの魔力に取りつかれてしまった人々が大勢います。毎年、東京・浅草で行われる、「浅草サンバカーニバル」は北半球一の規模のカーニバルとして知られ、主催団体の発表によると2024年は約5000人が参加、48万人の来場がありました。
地球の裏側の音楽がなぜこんなにも人気なのかと不思議に思うかもしれませんが、実は日本人は古来から神楽をはじめ各地域に伝わる盆踊りなどを通じてリズムと踊りに親しんできた民族。むしろ日本でサンバが盛んになることは自然なことではなないかと感じます。
老若男女、世代を問わず人々を魅了していくサンバを、音楽の発展の歴史や楽器の音を体感していただきながら紹介しました。でも、文章や動画だけでは伝えきれない本当の魅力は、生音でビートと音圧を体感すること。少しでも興味をもったなら、あなたの脳内にも眠る「踊りだしくなる衝動」を体感してみることをおすすめしますよ!
<出演してくれたバンド>
今回、楽器紹介の演奏に協力してくれたDeixa comigo。彼らはいま、日本のサンバ界で最も勢いのある若者たちです。彼らの魅力は、エスコーラ・ヂ・サンバのように大人数が繰り出す大迫力の音というより、一人一人の卓越した技術が集結した、個性溢れるサウンド。
バツカーダ(打楽器のアンサンブル)やエンヘード(カーニバルで演奏される曲)だけではなく、サンバロック・サンバヘギ・マクレレなどを含むブラジル音楽全般を、クオリティ高く演奏できるバンドを作りたいという思いで結成。次に何が起こるのか予想ができないパフォーマンスが、見る人、聴く人ワクワクさせてくれます。