2023.02.23

リオのカーニバル開幕!知っているようで知らない、カーニバルの世界

「リオのカーニバル」と聞くと、わたしたちは何を思い浮かべるだろうか。

「リオ」それはブラジルの大都市、「リオデジャネイロ」のこと。
コパカバーナ・ビーチやイパネマ・ビーチ、コルコバードの丘の上に立つ巨大なキリスト像が有名。2016年、オリンピックが開催されたときにはそういった景勝地も映像に映し出されたので、なんとなくその風景を記憶している、という人もいるだろう。

リオのカーニバル01

「カーニバル」、ポルトガル語では「カルナバル」。
元々は、カトリックなど西方教会の文化圏で見られる節期で、四旬節※の前に行われ、仮装したパレードや菓子や花を投げる行事などが行われてきた。

※復活祭の40日前の水曜日(灰の水曜日)から復活祭の前日(聖土曜日)までの期間

カーニバルの語源は俗ラテン語 carnem(肉を)levare(取り除く)から来ており、もともとは四旬節の前におこなわれた肉に別れを告げる宴に由来するといわれている。キリスト教文化では、復活祭までの期間は普段より「厳かに、質素に」過ごすことから、その前に思い切り楽しんでストレスを発散させておこうという意味合いがある。

とてもざっくりした言い方をすれば、リオのカーニバルは「カーニバル」の文化が18~19世紀ごろにブラジルに入り、紆余曲折を経て進化を遂げた姿だ。いまでは毎年約6万人がパレードに参加、100万人以上の観光客が訪れる、地球上で最大規模の祭りとなった。

リオのカーニバル02

リオのカーニバル、その起源

ただ、ブラジルのカーニバルは、純粋に「キリスト教のお祭り」というだけでは語れない。その歴史を紐解くと、ポルトガル人たちが18世紀に持ち込んだ、古代ギリシャ・ローマ時代のゲルマン系民族の儀式や春の農耕の祝祭がその原型といわれている。「エントルード」呼ばれるその祭りでは、収穫を祝ってごちそうを準備し、音楽を奏でる宴がおこなわれた。

特徴的な催しとして、「奴隷が主人役、主人が奴隷役を演じる」ことにより社会的地位を交換して、無礼講を演じるというものだ。この祭りの期間だけは、社会的身分や規範を忘れ、みんなが平等に今を楽しむというルールが適用された。奴隷制が布かれていた当時のブラジルでは、日頃抑圧されている人々日常のストレスを開放する機会となっていたようだ。

リオのカーニバル03

9世紀に入ると、エントルードの風習は廃止され、貴族や上流階級の人々が楽しむ舞踏会が行われるようになり、キリスト教カトリック教会は、異教の祭りである「エントルード」を禁止。自分たちの文化を広めようとしたが、「エントルード」の慣習が染みついていた民衆たちは反発し、禁止に抗議するように路上をパレードするようになったという。そこで、キリスト教カトリック教会は、「エントルード」の文化をキリスト教にちなんだ宗教儀式として取り入れることで、看板を掛けかえるようにして継承した。それが今に通じる、「リオのカーニバル」の起源といわれている。※諸説あり

やがて奴隷制が廃止された後、黒人たちもカーニバルに参加するようになった。彼らは故郷・アフリカの音楽や思想をカーニバルの中で表現してゆく。そうして生まれたのが現在もパレードで演奏される「サンバ」や「フレーヴォ」「マルシャ」という音楽であり、もともとはヨーロッパ文化であった「カーニバル」に、彼らの土着の文化が織り込まれてゆくことになった。

リオのカーニバル04

カーニバルはクリエイティブの真剣勝負

リオのカーニバルはなぜこんなにも独自に進化し、巨大化していったのか。
それは音楽とパレードの華やかさに他ならないのだが、それが「コンテスト形式」で争われるという点が大きいのではないかと思う。

リオのカーニバルはサッカーのように1部リーグ・2部リーグで分かれており、それぞれ10~15チームが参加する。リーグごとに優勝が争われ、TOPに輝いたチームには優勝賞金が贈られる。また2部リーグで優勝したチームは翌年から1部リーグへ昇格、1部リーグで最下位となったチームは2部リーグへと降格する。

リオのカーニバルは、各チームの真剣勝負の場でもある。
パレードの採点方法はとても細かいのでここでは割愛するが、下記の10項目を審査の基準としている。

  • 打楽器の演奏/BATERIA
  • リズム・歌・踊りのハーモニー/HARMONIA
  • テーマ曲の歌詞とメロディー/SAMBA-ENREDO
  • 始まりから終わりまでの踊りのクオリティ/EVOLUCAO
  • 衣装の表現力/FANTASIA
  • パレードのテーマ性/ENREDO
  • パレード先頭の表現/COMISSAO DE FRENTE
  • 山車と装飾/ALEGORIAS ADERECOS
  • チームの旗を持った女性とエスコートの男性の踊りの調和/
    MESTRE-SALA E PORTA-BANDEIRA
  • パレード全体の調和/CONJUNTO

そう。お気づきかもしれないが、ただお気楽に歌って踊って騒いでいるのがカーニバルではない!

(日本ではそんなイメージが先行し、概念としてのサンバを金ぴかのサムライが踊ったりしているが、それはそれとして筆者は好きです)

リオのカーニバル05

審査項目のなかにもあるように、各チームは深いメッセージを込めてシナリオを創作し、物語を表現する曲、歌詞、演奏、山車、踊りを生み出していく。ひとつのテーマを、パレード全体を通して「いかに美しく表現し、見る人々の心を動かすか?」という意義・目的に向かってクリエイトしていく。いわば動く演劇なのだ。

テーマには、前述した黒人たちの歴史や独自の思想などが反映されることも多く、中には政治的なメッセージや環境問題、日本人にとっては初めて知るような文化の裏側が垣間見えることもある。彼らはカーニバルによって、社会生活の中で募る感情を共有する。

表現力が磨かれ、ますます芸術性を高めていった結果、やがてブラジルのみならず、世界の人々の心をひきつけていく。パレードに参加することで共有される感情、自由と解放への喜び、白熱する勝負の行方…それらが大きなうねりとなって、地球の裏側の日本にまでも伝わってきているのではないかと筆者は感じている。

リオのカーニバル06

2023年のカーニバル週間

2021年は感染拡大防止のため、いまの形式のカーニバルとなって初めて全面的な中止となり、2022年はメイン会場のみでの開催となった。今年、2023年は新型コロナウイルスのパンデミックが宣言されてから初の通常開催となる。

開催期間は2月17日~2月25日。
この一週間は、リオ市内のいたるところでサンバの小団体が練り歩き、街中がお祭りモードになる。ビーチ沿いの道は、一週間ほぼ毎日歩行天国になり、路上に椅子やテーブルが並び、街中がビアガーデン状態。仮装をした人、陽気な観光客であふれかえる。

カーニバルの日程

2月17日(金)&2月18日(土) 2部リーグ
2月19日(日)& 2月20日(月) 1部リーグ
2月25日(土) チャンピオンカーニバル※

※チャンピオンカーニバルとは、1部と2部の上位チームだけが参加する後夜祭のような位置づけ

CARNAVAL2023/2月17日-18日

リオデジャネイロ市長が、統治の権限を象徴するカギを「カーニバルの王様」ヘと渡し、王様が祭りの開幕を宣言する。メイン会場、「サンボドロモ・ダ・マルケス・ジ・サプカイ」という専用スタジアムでは2部リーグのパレードがはじまり、メイン会場以外でも2部以下のチームや、「ブロッコ」と呼ばれるサンバの小団体がいたるところでパレードをする。

CARNAVAL2023/2月19日~

もっとも華やかな1部リーグの熱い戦いが、「サンボードロモ」でおこなわれる。1チーム、約6000人が爆音とともに練り歩く。夜の10時くらいから始まり、翌朝の6時くらいまで夜を徹しておこなわれ、盛り上がりの最高潮を迎える。コンテストの結果はTV放送などで知らされ、自分の「推し」チームの順位をハラハラドキドキしながら見守ることになる。

CARNAVAL2023/25日以降は…

カーニバルはキリスト教行事の日程で組まれており、謝肉祭の翌日は、「灰の水曜日」。そこから四旬節、復活祭という一連の宗教行事へと向かっていく。復活祭までの40日間は「厳かに・質素に」暮らしてイエス・キリストの処刑を悼しむ期間といわれ、騒がしい音楽やお笑いがテレビやラジオから消えるという。リオデジャネイロ市内は、カーニバルの熱狂から一転、静けさに包まれる。

リオのカーニバル07

リオのカーニバルを体験!

ここまで読んでくださった方には、ぜひリオのカーニバルを体験してほしい。
もちろん、実際にリオへ行って体験することをおすすめしたいが、今の時代なかなか難しいものだろう。

地球の裏側の祭りも、動画サイトで見ることができる。カーニバルの放送はブラジル最大の放送局「ヘジ・グローボ」がおこなっている。下記特設サイトでは、現地の盛り上がりを生で感じることができるだろう。

Globo/ carnaval 2023 特設サイト

またYOUTUBUEでは例年、パレードのアーカイブがアップされる。
「Carnaval Rio 2023 Disfaire」などで検索すれば、各チームの趣向を凝らしたパレードを視聴することができる。言葉はわからなくても、見ているだけで伝わるものがあるはずだ。

リオのカーニバル08

筆者は2015年に現地へ赴いてカーニバル前2週間から滞在し、現地の盛り上がりと最高潮のカーニバルを鑑賞した。そのとき体験した「命の洪水」ともいうような強烈なエネルギーのパレードはなかなか文章では伝えづらいものだが、「一生に一度は生で見てほしい」と伝えたい、凄まじい美しさだった。

その思い出はとても大切なもので、人生の岐路に立っていた当時の私に生きるエネルギーをくれた。その頃の思い出も機会があれば書いてみたいが、少し時間がたちすぎてしまって、その時の自分の思いを語ることは難しそうだ。現地でもう一度あの熱狂を体感することができたなら。それが叶うなら、きっとまた誰かに伝えたくなるだろう。

リオのカーニバル09
筆者の思い出写真/2015年2月

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ライタープロフィール:ぶらめがね

神社とお寺が心のふるさと。
会社ではグラフィックデザイン担当。
民俗の不思議とSambaの太鼓に魅せられ幾年月。


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