掲載日:2024.06.04

ハワイ王族のシンボル「レイフル」とは ~伝統的な羽根の首飾り~

みなさんは「レイフル」って何だかわかりますか?
レイフルとは羽根でできたレイ(首飾り)、いわゆる「フェザーレイ」のことです。

レイは、一般的に花や葉などの植物や貝殻で作られることが多いのですが、鳥の羽根を使ったものもあるんです。

貴重な羽根のレイを作るには高度な技術と時間を要するため、かつては王族のシンボルとされたレイフル。今回は、そんなハワイの伝統的な羽根のレイ「レイフル」についてお届けします。

レイフル

ハワイ語で「フル(hulu)=羽根」という意味。ハワイ固有種のミツスイなどの鳥の羽根で編んだレイのことです。

羽根を使うといっても、昔の人は鳥を殺して全部の羽根を使うのではなく、捕獲した鳥が弱らない程度に、少量の羽根を抜き、また森へ放っていたそうです。

レイフルの歴史

レイフルはハワイ王国以前から作られており、一説では、マルケサス諸島から1,500年前に伝えられたとされています。

1778年キャプテンクックがハワイにやってきた頃には、すでにハワイ王族は権力の象徴として羽根を使った装飾品を所有していました。

レイフルの歴史

古代ハワイアンにとって羽根のレイは宝石のように貴重なもの。高位のアリイ(王族や酋長)のみが着けることが許され、マナ(パワー)が込められた特別な存在でした。

現在でも、王族を歌ったフラ曲を踊る際には赤や黄色などロイヤルカラーのレイフルを使うことがあります。もちろん今は希少なハワイ固有種の鳥ではなく、染色したカモやガチョウの羽根が使われています。

レイフルを着けられる選ばれた人

古代ハワイアンにとって、フェザーワークは、王族だけの所有物であり、特にレイフルは位の高い女性王族が身に着けるものでした。

レイフルを着けられる選ばれた人

カメハメハ大王のお気に入りだったカアフマヌ王妃。彼女を描いた絵画では、王妃の頭にはレイフルが飾られています。
また美しく聡明だったカイウラニ王女の写真では、首にレイフルをかけた王女の凛とした姿が印象的です。

レイフルの作り方

レイフルには大きく分けて2つの種類がありますが、伝統的なヴィリ・ポエポエの作り方を簡単にご紹介します。

まず羽根、糸、縫い針、ひも、サテンリボンなどの材料と古い枕カバーを準備。

①下準備として、枕カバーに羽根を入れ、霧吹きでカバー全体を湿らせドライヤーに30~40分かける。(これで羽根がふわふわに!)

②羽根を1インチの長さになるよう、定規で測りながら1枚ずつ均一にカットする。

③軸となるひもの端をかた結びにし、結び目を被うようにサテンリボンを糸で縫い付ける。(リボンはじゃまにならないよう小さくたたみ縫い付けておく)

④②でカットした羽根の裏面から爪でカーブを付ける。

⑤④の羽根を1枚ずつ軸ひもに乗せ、糸で縛っていく。羽根が半分重なるよう、少しずつずらしながら糸で縛って固定して編んでいく。

※カットする長さ、縛る位置、重ね具合などすべてが均一でなければきれいに仕上がりません。途中で全体のバランスを見ながら慎重に進めましょう。

その他羽根(hulu)で作られる工芸品

羽根で作られるフェザーワークはレイフルだけではありません。他にどんなものがあるか見てみましょう

ケープ・マント(ahuula)

ケープ・マント(ahuula)

赤や黄色など鮮やかな鳥の羽根で作られたケープ・マントは「アフウラ(ahuula)」と呼ばれ、王族や酋長だけが着用できた装飾品。

マントの長さは階級を表していて、足首近くまである長いマントは最高位の王族の証です。またマントは装飾品であると同時に、戦いの際に体を守るための防護服でもありました。

ホノルルにあるビショップミュージアムでは、1700年代に酋長たちが身に着けていたマントを実際に見ることができます。

ヘルメット(mahiole)

ヘルメット(mahiole)

「マヒオレ(mahiole)」と呼ばれる羽根のヘルメットは、マントとセットで使われました。これらは王族や酋長(男性)が戦闘に行く際に着用するもの。

軽くて丈夫なフレームに、赤や黄色の数万枚のフェザーで装飾したヘルメットは、色やデザインもさまざまで、バリエーションも豊富。

カヒリ(kahili)

カヒリ(kahili)

カヒリとは、王族の威厳と存在を示すしるし。長い棒の先に円柱形の羽根飾りを付けたものです。侍従が3~4mもある大きなカヒリを掲げると、遠くからでも「そこに王がいる」と知らせることができます。

赤色のカヒリはカラカウア王、黄色のカヒリはカメハメハ一族の象徴だったとか。今でもハワイに行くと、王族にまつわる場所や伝統儀式の中でカヒリを目にすることがあるでしょう。

メリーモナーク・フェスティバルのオープニングセレモニーでは、大きなカヒリが掲げられ、王族に扮したロイヤルコートが登場します。カヒリが掲げられると、まるでハワイ王朝時代にタイムスリップしたかのような厳粛な雰囲気に包まれるのが不思議です。

主に使用されていた鳥の種類

伝統的なレイフルに使われていたのは、赤や黄色の羽根を持つハワイ固有種のミツスイの仲間。代表的なものは次の4種類です。

主に使用されていた鳥の種類

iiwi(ベニハワイミツスイ)

かつてハワイのどこにでもいたiiwi。鮮やかな赤い羽と、黒い尾、曲がった赤いくちばしが特徴で、成鳥は全長15cm。レフアの花の蜜を主食にしています。

iiwiは感染症に対する耐性がないため、蚊が生息できないハワイ火山国立公園などの高地でのみに生息しています。

apapane(アカハワイミツスイ)

apapaneはハワイ固有のミツスイの中で最も数が多いといわれています。赤い羽と黒い尾を持ち、全長は10~15cm程度。iiwiによく似ていますが、くちばしが黒く尖っているのが特徴です。

apapaneもレフアの花の蜜を吸うため、ハワイ火山国立公園など、オヒアレフアの森がある場所で見かけることがあります。

oo(ミツスイの一種)

ooは、黒い体に両翼と尾の下に隠れた黄色の羽毛を持つ希少な鳥。その美しく幻想的な鳴き声が印象的で、フラ曲の中にもたびたび登場するのでご存じの方も多いのでは?

王族の象徴とされた黄色い羽根だけが使われるため、1羽から取れる羽根はほんのわずか。乱獲と森林破壊に加え、外来鳥類が持ち込んだ伝染病により、残念ながら絶滅してしまいました。

mamo(キゴシクロハワイミツスイ)

mamoとは黒い体に尾羽や下腹部が黄色いハワイ固有のミツスイの仲間。全長は10~12cm程、曲がったくちばしが特徴です。

ミゾカクシ属の花の蜜しか吸わないため、森林開発により花がなくなってしまったことに加え、伝染病が広がったことが原因で絶滅してしまいました。

mamoの羽根は深みのあるゴールドに近い黄色。王族の象徴である黄色い羽根の中でも特に珍重されていました。
「ゴールデン・クローク」と呼ばれるカメハメハ大王の黄金のマントには、なんと約45万枚、約8万羽分のmamoの羽根が使われています。しかも制作に何十年もの歳月がかかったというから驚きです。

ゴールデン・クロークは、ビショップミュージアムで実際に見ることができます。ホノルルに行かれた際はぜひ足を運んでみてください。

ハワイの伝統工芸

レイフルはハワイに伝わる伝統工芸のひとつ。ハワイには他にどんな伝統工芸があるのでしょうか?

【カパ】

カパ

樹皮を水に浸し叩いて延して作った生地。花や植物の絞り汁で染色されたカパは、古くより男性のふんどし(マロ)や女性のスカート(パウ)などに使われていました。

かつてカパ作りは女性の仕事のひとつだったとか。ハワイ神話でも、月の女神ヒナがカパ作りの名手として描かれています。

【ラウハラ】

ラウハラ

パンダナスの葉を干して編んだ伝統工芸。マットやバスケット、帽子、草履などの日用品はもとより、昔はカヌーの帆なども作られていました。

先祖代々伝わる伝統的な製法を守りながら、現代風に進化したラウハラ織りの雑貨やアクセサリーは、ハワイのお土産としても人気があります。

【ハワイアンキルト】

19世紀初頭に宣教師の妻たちにより持ち込まれたアメリカのパッチワークが、ハワイ独自の進化を遂げたハワイアンキルト。

自然の植物などをモチーフにした左右対称のデザイン、波紋のようなエコーキルトを施すのが特徴です。毎日使う実用品というよりは、ひと針ごとに願いを込めてつくられた作品として扱われています。

ハワイレイフルの魅力

貴重な鳥の羽根で作られた首飾り「レイフル」。鮮やかな黄色や赤の羽根は何百年の時を経ても、その美しさは衰えることを知りません。

大変な手間と高度な技術を要する宝石のように貴重なフェザーレイは、王族の富と権力の象徴でもあり、mana(パワー)が宿るとされていました。

ハワイで最も美しく、高貴で希少な伝統工芸品。レイフルの魅力を知り、ハワイ王朝時代に思いを馳せてみるのもいいですね。

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