掲載日:2024.05.31

日本の焼き物の種類と特徴~初心者にもやさしい、日本の焼き物「基本のキ」~

有田焼、益子焼、備前焼、九谷焼…。日本にはたくさんの種類の焼き物があります。
名前は聞き覚えがあっても、「なんだか難しそう」というイメージをもってはいませんか?
実は日本の焼き物はさまざまな場面で私たちの生活を支え、豊かにしています。難しいどころか、知らず知らずのうちに使いこなしているかもしれません。

今回は歴史ある日本の焼き物の基本を解説します。
読み終わる頃には、すっかり焼き物に魅了されているはずです。

日本の焼き物は種類の豊富さが魅力!組合わせの楽しさは無限大

日本の焼き物は種類の豊富さが魅力!組合わせの楽しさは無限大

海外ではお皿をテーブルに置いたままナイフやフォークで食事をしますが、日本は長い歴史の中で食器を手に持ち、箸で食べる文化が発展しました。
そのため和食器は手触りが良く、用途に合わせた様々な形があるのが特徴です。ご飯茶碗、湯呑み茶碗、皿、丼など、素材も大きさもデザインも数えきれない程あります。

これだけの種類があるので、日本の焼き物は、無限の組み合わせを楽しめるのが最大の魅力です。焼き物の種類や特徴を知って、テーブルコーディネートを楽しみましょう

陶器と磁器はどう違う?日本の焼き物の種類と特徴を解説

日本の焼き物は、大きく「陶器」「磁器」「炻器(せっき)」「土器」の4つに分類することができます。

陶器と磁器はどう違う?

陶器

陶器は粘土を原料とし、「土もの」とも呼ばれます。
焼き物の中では比較的低温で焼成されるので生地が完全には焼き締まらず、厚みと重みがある器です。
陶器は吸水性がある為、釉薬(焼き物の表面をコーティングする役割があり、「うわぐすり」とも呼ばれます)を使用して作られます。釉薬の色や素材、使い方などによって、陶器はいろいろな表情に焼上がります。作り手の釉薬遣いが陶器の面白さの一つです。

磁器

磁器の材料は主に石で、「石もの」とも呼ばれます。
高音で完全に焼き締めるため、吸水性はありません。とても硬く、軽く叩くと金属的な音がします。
華やかな「絵付け」や「印判」という技法で型押しされた和柄が美しい焼き物です。一見敷居が高く感じられますが、金や銀の装飾がなければ電子レンジも使用可能で、日常的に使いやすい器です。

炻器(せっき)と土器

炻器(せっき)は半磁器とも呼ばれるように、陶器と磁器の中間的な性質をもちます。
磁器と同じく吸水性はありませんが、光を通さないのは陶器と似ています。食器の他、建築用タイルにも使われる焼き物です。

それに対して土器は小石や砂などが混ざった粘土を低温で焼きます。
釉薬は使わず素焼きにするのが特徴です。古代人の日用品のイメージがありますが、今も植木鉢などで使われています。

日本の焼き物は魅力がいっぱい!産地ごとの特徴やおすすめの使い方

日本全国にはたくさんの焼き物の産地があり、どれも個性的です。
ここからは日本を代表する焼き物の種類をいくつかご紹介します。紹介しきれない産地がまだまだあるので、まずはここを入り口にして、ぜひいろいろなものを手に取ってくださいね。

日本の焼き物は魅力がいっぱい!

陶器の代表的産地

陶器からは、益子焼(栃木県)、やちむん(沖縄県)、美濃焼(岐阜県)にスポットライトを当ててご紹介します。

益子焼(栃木県)

歴史ある陶器の代表的産地、益子。材料となる土は、砂気が多く、粘性が少ないのが特徴です。
細やかな細工には不向きな土質のため、どっしりとした重みとぽってりとした厚みをもち、温もりを感じさせる焼き物になります。料理が冷めにくいので、シチューなど煮物にぴったりです。

釉薬がのりやすいことも長所です。釉薬の使い方で様々な表現ができるため現代作家も多く、個性的な器が生まれています。

やちむん(沖縄県)

「やちむん」は沖縄方言で「焼き物」を意味する言葉です。「壺屋焼」とも呼ばれます。
やちむんは琉球文化や自然を感じさせる大胆な模様が多いのが特徴です。コバルトブルーや緑・茶色がよく使われ、食器自体に存在感や風格を感じさせます。
その独特なデザインは、一つあるだけで食卓のアクセントに。メインの料理を盛ることで、料理がさらに際立ちます。

美濃焼(岐阜県)

美濃焼は決まった様式がありません。陶器も磁器も作られ、多種多様な器が揃うので、どんなライフスタイルにも馴染みやすい焼き物です。
使いやすさを表すように、美濃焼の国内シェアはなんと6割!知らず知らずのうちに美濃焼を使っている方も多いのではないでしょうか。
現代的な器も数多く揃いますが、伝統的な技法の器をお探しなら黄褐色の「黄瀬戸」、特徴的な白の「志野焼」、深い緑が印象的な「織部(おりべ)」が有名です。

炻器(せっき)の代表的産地

陶器と磁器の中間である炻器(せっき)からは、備前焼(岡山県)と萬古焼(三重県)をご紹介します。

備前焼(岡山県)

日本の中でも最も古い歴史をもつ焼き物の一つ、備前焼。
釉薬を使わないのが特徴で、ざらりとした手触りや土の質感を感じさせ、唯一無二の味わいがあります。熱しにくく、冷めにくい性質があるので、ビールのグラスとしてもよく利用されます。
焼成時の窯の中の状態によって表面の色に違いが出るため、同じものは存在しません。お気に入りの備前焼が見つかったら、その時がいちばんの買い時です!

萬古焼(三重県)

萬古焼といえば土鍋の代名詞とも言える焼き物で、国内シェアは8割にもなります。土鍋以外では急須や蚊遣りも有名です。代表作の豚の蚊遣りは、誰もが見たことがあるのではないでしょうか?

耐熱性に優れているので直火での使用も可能で、オーブン調理にも向いています。グラタン皿をお探しの方は、萬古焼がぴったりです!皆さんの食卓に、お一ついかがですか?

磁器の代表的産地

磁器からは、「伊万里・有田焼(佐賀県)」と「九谷焼(石川県)」をご紹介します。

伊万里・有田焼(佐賀県)

日本の代表的な焼き物の産地で、世界的にも有名です。江戸時代、佐賀県の有田周辺で作られた焼き物が伊万里川の河口付近から運ばれていったのでこの辺りの焼き物が次第に「有田焼」、「伊万里焼」と呼ばれるようになりました。
澄んだ白さとなめらかな手触りが特徴で、薄いのに耐久性があります。和の伝統的な絵柄が描かれていますが、パスタやトーストを乗せても意外としっくり来るので、普段使いしやすくおすすめです。

九谷焼(石川県)

伊万里・有田焼と並ぶ日本の伝統的な磁器の産地です。
九谷焼には、「優美」や「華麗」といった言葉が似合います。「九谷五彩」と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青の色絵の具を使って絵画を描くように絵付けをするのが特徴で、ため息が出る美しさです。
器としてだけではなく、部屋のインテリアとしてお気に入りの場所に飾るのもおすすめです。空間をパッと明るくするアクセントになりますよ。

普段使いから贈り物まで。日本の焼き物をもっと楽しむためのひと工夫

焼き物は、日常的なものだからこそいろいろな使い方があります。ここからは焼き物をもっと楽しむための活用方法を探っていきましょう。

日本の焼き物をもっと楽しむためのひと工夫

器選びで季節を楽しみましょう!

日本には四季があり、昔から季節の移り変わりを大切にしてきました。料理に旬の食材を取り入れるように、食器の形や絵付けなどでも季節を楽しんでみませんか?

春に桜の形の器を選んだり、秋には紅葉が描かれたお皿を使ったりすることで、食卓に遊び心が加わります。
夏には薄手の磁器で涼しさを、冬には厚手の陶器で暖かみを表すのも素敵です。
旬の食材と焼き物のテーブルコーディネートをぜひ楽しんでください!

食器だけじゃない!装飾品としても活躍する日本の焼き物

焼き物というと食器のイメージが強いですが、装飾品としても活躍しています。
花器や植木鉢などの園芸用品や、置き時計などの陶器製のインテリアは目にする機会も多いのではないでしょうか?

装飾品としての焼き物で注目したいのが「アクセサリー」です。ブローチやイヤリング、リング、ネックレスなど、いろいろなアイテムがあります。
日本の焼き物は産地によって多種多様な特徴があるので、アクセサリーのデザインも千差万別!プレゼントにしても喜ばれます。

結婚や引っ越しの贈り物に。日本伝統の焼き物で門出を祝いましょう!

結婚や引っ越しのお祝いなら、焼き物はいかがですか?
結婚祝いであれば、新婚以外にも結婚9周年の「陶器婚式」、20周年の「磁器婚式」に合わせて陶磁器を贈るのもいいですね。耐熱性があるものや、割れにくいものは使い勝手がよく、新生活のどのシーンでも役立ちます。

食器以外ではインテリアを選ぶという手もあります。ひな人形やクリスマスツリーなどの置物は新居に季節感を呼び込みます。コンパクトなものは飾る場所を選ばないので、使いやすいですよ。

各地の焼き物市に出かけましょう!

焼き物に興味が湧いてきたら、焼き物市に出かけましょう!たくさんの焼き物が並ぶので、運命を感じる器との出逢いもあるはずです。

各地の焼き物市に出かけましょう!

【春】有田陶器市

2024年に開催120回目を迎えた、歴史ある焼き物市です。
普段は静かな山間の町である有田に、全国から焼き物ファンが集まります。JR有田駅周辺から上有田駅までのおよそ4kmの道なりに並ぶのは、なんと450店!数百円のお値打ち品から、何百万円もする高級品まで揃い、とても1日では見きれない豊富な品揃えです。

同じ期間にはWEB陶器市も開催されています。遠方で参加が難しい場合や、時間を気にせずじっくり選びたい方に便利です。

【春・秋】益子陶器市(栃木県)

益子の陶器市は春と秋の2回開催されます。春はGW頃、秋は11月3日前後に行われ、合わせて約60万人が集まる一大イベントです。
首都圏にお住まいの方には益子への往復バスツアーもありますよ。
益子陶器市は出展者がとても多く、会場には約600ものテントが並びます。それぞれのテントには、窯元の職人さんや注目の現代作家さんがいるので、器づくりへの想いやおすすめの使い方などをぜひ聞いてみてくださいね。

【春】土岐美濃焼まつり(岐阜県・土岐市)

陶磁器の生産量日本一を誇る美濃焼の焼物市で、5月の初め頃に行われます。
300を超える出展者が集まり、会場内は素敵な焼き物であふれ、よいものをお値打ち品で買うことができるチャンスです。多種多様なデザインが特徴の美濃焼ならば、好みにぴったりの食器が必ず見つかります。
むしろ欲しいものが多すぎて困ってしまうかもしれませんね。

知れば知るほど魅了される!バリエーション豊かな焼き物の魅力

日本の焼き物の種類や特徴についてご紹介しました。
和食はもちろん、どのジャンルの料理も合わせることができるのは、日本の焼き物のバリエーションの豊かさゆえです。

今回、各地の焼き物の特徴に合わせておすすめの使い方もご紹介しましたが、器の使い方に正解はありません。その日の気分に合わせて、自由に焼き物を楽しんでくださいね。
ただし、和食器は知れば知るほど魅了されて深みにはまるので、買い過ぎにはご用心!不必要に買いすぎて、結局あまり出番ないとあっては本末転倒です。和食器は使い込むほど風合いが変わるのも良いところなので、お気に入りのものを長く大切にして育てていく楽しみもあります。

まずはお気に入りの一つを見つけるところから、素敵な焼き物ライフをスタートしてくださいね!

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