掲載日:2024.04.30

古代ハワイのフラ学校「フラ・ハラウ」とは ~ハワイの自然や信仰を伝承する場所~

ハワイ語で「フラ・ハラウ」とはフラスクール(フラ学校)のこと。
現代でも、フラのイベントなどを見に行くと、MCの中で「次に登場するハラウのみなさんは…。」など、各「教室=ハラウ」を紹介しているのを耳にします

「ハラウ」は、フラ業界ではかなり定着している言葉。この記事では、さらに歴史をさかのぼり、フラがまだ儀式として行われていた頃の古典的なフラ・ハラウについて紹介したいと思います。

フラ・ハラウとは

フラ・ハラウとはフラを教える場所のこと。正確には「ハーラウ(Hālau)」と発音し、現代ではフラスクールや教室を指します。「フラを教える場所」といっても現代と古代ハワイでは少しイメージが異なるかもしれません。

フラ・ハラウ

フラ・ハラウ

ハラウとは、本来は「カヌーをしまっておくための横長の小屋」のこと。かつてフラはこのような場所で教えられることが多かったため、フラの学校を「ハラウ」と呼ぶようになったそうです。

当時の「カヌー置き場」は、柱と屋根だけのオープンな構造。やがて時代が進むにつれ、ハラウで教える内容もより神聖で高度なものになり、四方を壁で囲み外から内部が見えない建物へと進化していきます。

フラ・ハラウの中で絶対的権威を持つのは、師匠である「クム・フラ」です。クムは踊りを教えるだけでなく、ハワイ語の知識、メレの理解と朗唱、楽器やレイ選び、場所にふさわしいフラの選択など、フラに関わるすべてに精通した人物。

生徒たちは、フラの厳しいしきたりを守りながら、クムから踊りはもちろんフラに関わる様々な知識を学んでいきます。

ハラウの建設

ハラウを建てる際、どこでも好きな場所に建ててよいわけではありません。
フラを教える場所は非常に神聖な場所。ハラウを建設する際は、必ずカフナ(神官)のお告げに従い、清められた地が選ばれました。

そのため、森の奥や、人里離れたひっそりした場所に建てられることが多かったのだとか。
ハラウを建てるためには、様々なカプをクリアしなければならなかったのです。

ハラウの建設中にも、フラの練習中と同様に厳しいカプが存在しました。私語は禁止、禁欲など…。さらに死体など穢れたものを見たり触れたりすることもNG。万が一、遭遇してしまった場合は、聖水で身を清めるよう定められていました。

ハラウで最も重要な場所「クアフ(祭壇)」

ハラウの中には必ずクアフ(祭壇)が設けられ、ラマが捧げられます。ラマとは、黒檀の一種の木を切ったもので、女神ラカのキノラウ(化身)と考えられています。ラマは、オーレナ(ウコン)の香りを移した黄色のカパ布で包み大切に扱われました。

クアフを飾る植物は、捧げる神々により種類が決まっています。

例えば)

  • レフア:女神ラカ
  • ハラペペ:女神カポ
  • パラパライ(シダ):ヒイアカ
  • イエイエ:ラウカイエイエ
  • マイレ:マイレ4姉妹

植物を集めに森に入る際は、生徒全員でラカに捧げるオリ(詠唱)を合唱します。森の女神でもあるラカに許しを乞うためです。

クアフの装飾や捧げものをする際には厳しいルールがあり、作業中もオリを絶やしてはなりません。一方クムは、女神ラカが自分たちのハラウに宿り、見守ってくださるよう祈りを捧げます。

ハラウで信仰されているフラの神

フラの女神と呼ばれる神々の中で「ラカ」と「カポ」は特別な存在。特にフラを学ぶ者にとって大切な2人の女神についてご紹介しましょう。

ラカ

フラの女神として最も多くのハラウに信仰されている「ラカ」。しかしラカの自出については謎が多いのも事実です。ハワイ四大神の1人、ロノの妻(または妹)とされ、またポリネシア一帯に伝わるラタという男性神だったとする説も。

いずれにせよ、ラカはハワイの人々にとって、喜びや生命の源であり、病を癒す存在。フラの女神であると同時に森の女神、カヌー作りの神とされています。

ラカは母のカポからフラとチャントを学びました。そしてニイハウ島へ行きカアナの丘でフラを披露したのがフラの発祥だとか。後にラカがカウアイ島に住んだことで、フラのカウアイ島起源説が生まれました。

カポ

カポ

少数ではありますが「カポ」をフラの女神として信仰するハラウもあります。カポはペレと同じくハウメアの娘で、カヒキからハワイに渡ってきたとされる女神。最初に到着したのはニイハウ島でした。

酋長ハラリイが開いた宴会で、カポはハラリイの体を借りてオリを歌い、妹ケヴェラニに「フラ・ キイ」と呼ばれる物まね風のフラを舞わせたのが非常に受けたそう。その後、モロカイ島に移り住んだカポが島民にフラを教えたことで、フラのモロカイ島起源説が誕生しました。

カポは厳しく残酷な面と、慈愛に満ちた優しい面を持ち、女神ラカの「悪の面」がカポだとされる説もあります。ハラウ内でカプを軽んじた者は、ラカがカポに変身し、制裁を下すのだとか。

ハラウを支えた組織とは

ハラウを支えた組織とは

古代ハワイの社会では、すべてのものはアリイ(酋長)の所有とされていました。しかしフラのグループは酋長が指名して組織するのではなく、自発的な集まりだったそう。とはいえ新しいグループを作った際には、酋長にお披露目するのが礼儀とされました。

当時フラは村のあちこちで披露されており、人気のダンサーは人々から尊敬され、時には王室からいくつも褒章を受けることもあったそうです。

ハラウの頂点である「クム・フラ」は、フラの訓練における全責任を持ち、才能ある生徒をスカウトし、王室からスポンサー支援を引き出すなど、経済面でも重要な役割を担っていました。

スポンサーが決まると、王室から任命されたカフナ(神官)がハラウに赴き、宗教的な儀式を行います(コクア・クム)。

また生徒たちは「ハウマナ」と呼ばれ、クムから認められると「アラカイ(クムのアシスタント)」となり、生徒のリーダー的役割を果たします。

また組織の中には、ポオ・プアア(罰金集めや祭壇のメンテナンスを行う役)、ホオ・ウル(ハラウに入る人を聖水で清める役)などの様々な役職がありました。

ハラウ卒業の儀式

ハラウ卒業の儀式

ハラウを卒業することは、長く厳しいフラ修行とカプから解放され、フラ社会で一人前だと認められたということ。卒業の儀式は「ウニキ(UNIKI)」と呼ばれ、現在でも多くのハラウで行われています。

古典的な卒業の儀式では、卒業前日、生徒は全員海に入って沐浴し、体を清めます。海から帰ってくるとクムが一人ひとりを聖水で清め、祈りを捧げるとカプが解除されます。

卒業当日はフラの正装に着替えます。まずはクペエ(足首につけるレイ)、次にパウ※(スカート)、レイの順にそれぞれのオリを唱えながら身に着けていきます。

※正装に使うパウはカパ布で作られています。

卒業の儀式では、生徒はクムの前に集まり全員で手を重ね、これまで学んできたことを記憶から消し去らないよう誓いを立てた後、クアフを解体するのです。

続いて「アイロロ」と呼ばれる祝宴が開催され、最後に再度カプの解除の祈りが捧げられると卒業式は終了。ついに一人前のフラダンサーの誕生です。

ハラウを卒業すると、王宮に招かれ王室お抱えのフラダンサーになる者、旅に出て興行を行う者、クムに認められクム・フラになる者などそれぞれの道へと進んでいきます。

まとめ

古代ハワイにおける「フラ・ハラウ(フラ学校)」とは?
その成り立ちや、歴史、しきたり、儀式などについてご紹介しました。

現代ではハラウによって簡略化されたり、変化したりしていますが、昔から変わらず受け継がれているものもたくさんあります。

古代ハワイでは、フラは神や自然とのつながりを表現するもの。ハラウとは、フラ(踊り)だけでなく、楽器やオリの習得、自然や文化、しきたりそのものを学び、伝承していくための厳しい修行の場だったのです。

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