空中を浮遊! クリスタルボウルを使った瞑想体験

静寂に包まれた御嵩山の宿坊で行われる、クリスタルボウルを使った瞑想体験。心地よさから最中に眠ってしまう人もいる中で、私は深いリラックスによるちょっとした浮遊体験をしました。また、滝行好きな猛者たちに教えてもらった、滝行を行う上での注意点をお伝えします。

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潜在能力を開花させる瞑想コース

その宿坊にはこう書かれていました。

「今までの自分自身をリセットしたい、潜在能力を開花させたいという方のための宿坊です。瞑想コースございます。人間のチャクラを開花させるために作られたクリスタルボウルを使います。身体の隅々まで振動が行き渡り、細胞のひとつひとつを活性化します。」

なんて怪しい、イエ、なんて魅力的!
アヤワスカといい、シャーマンの修行といい、私はこういうちょっと怪しいものや不思議な世界が大好きです。

【R20】アヤワスカ体験記〜シャーマンの儀式へ

「滝行」を体験するために選んだ宿ではありましたが、この欲望に率直なうたい文句が余りに素敵で、クリスタルボウルを使ったヒーリングには絶対に参加しようと決めていました。何なら「滝行」に参加できなくとも、クリスタルボウルの瞑想だけは参加したいなと。それ位の思いで宿坊への宿泊を決めました。

もしかしたら、あちら側の世界に通じている扉が半分開くかもしれない。アヤワスカを飲んだ時みたいに、深い深いリラックス状態に入れて、また色々見えてしまうかも知れない。

滝行修行01
滝行に向かう道中で見つけた天使の階段

1個50万円!?高価なクリスタルボウル

時刻は夜7時。闇の帳が降りた御嵩山は静寂に包まれています。
クリスタルボウルを使ったヒーリングが行われるのは、1階の大広間。私たちが滝行の前に、レクチャーを受けたあの広い広い畳の間です。

会場となる広間には、すでに大小さまざまなサイズのクリスタルボウルが並んでいました。そして奥には巨大な神棚。さすが神社の宿坊です。一般的な家庭に置かれている神棚とはレベルが違う立派さで、大人の男の人の背丈より高さがあるように感じました。

この神棚、昼間は姿を見ることができません。〝その時〟がきた時だけ御開帳されるのですが、御嵩山の夜の静寂と闇の美しさに彩られた神棚は、尊さより怖さを感じました。多分、本物の神様は怖いのでしょう。私たちとはレベルが違うから。

瞑想に最適な暗さを保つためか広間は間接照明のみ。「本を読むのは厳しいかな」と思う程度の薄暗い中で、クリスタルボウルが光ってみえます。無造作にゴロゴロと置かれたクリスタルボウルたち。その数6個。

「これはね1個だいたい30~50万円くらいします」

参加者との他愛ない会話を楽しんでいた神主が言いました。
瞬間、広間にいた全員が息をのみます。

「高いんですよ。本物の水晶の粉で出来ていますから。集めているうちに、数が増えてしまって。」

何てことない様子で話す神主。でも私を含め値段を聞いてしまった参加者は平常心でいられません。

「自由に触ってもらって良いですよ」と神主さんは太っ腹な発言をしますが、そんな簡単に触ることなどできません。まるで美術作品を鑑賞するかのように全員が遠巻きに、でもしっかりクリスタルボウルを注視していました。

滝行修行02
6個あるクリスタルボウル。大きいほど低音がでます

静かに始まったクリスタルボウルヒーリング

コーン

初めにお寺にある〝おりん〟にそっくりな音が響きました。
次は低音。次もまた低音。神主が奏でるクリスタルボウルの低音が、部屋を包み込んでいきます。

グゥワン、グゥワン、グゥワン…。

低い重厚な音が大地を這うようにゆっくり一定の速度を保って進みます。穏やかな優しい音色。まるでゆりかごに揺られている気分。

グゥワン、グゥワン、グゥワン…。

そこに重なるように響く高音。飛んでいるような、舞っているような、軽やかな音。

グゥワン、グゥワン、グゥワン…。

呼吸を整えて、深く深く息を吸います。耳を澄ませると、四方の空間を音が走り始めました。

グゥワン、グゥワン、グゥワン…。

クリスタルボウルの低音は、まるでモンゴルの伝統的な歌唱法「ホーミー」のよう。記憶の中にあるビブラートのかかった、うなるような低い声に重なります。その音はまるで、寄せては返す波のような、回り続ける回転木馬のような…。

そのうちに、前後左右360度どこから音が聞こえてきているのか、分からなくなりました。まるで自分自身がクリスタルボウルの中に閉じ込められた気分。目を閉じているせいか、上がどちらなのかさえ分からなくなります…。

アレ?私は座っていた?寝ていた?どっちを向いているの?この音はどこから?頭の上から?違う体の下からだ。音が回っている…。

体の感覚がなくなるほど、深いリラックスへ

交差する低音。中音。高音。
音を追っているのに、耳に入ってくるのは残響ばかり。深いリラックス状態にあるためか体の境目が分からなくなります。プカプカと宙を漂う気分。

会場には私以外にも5人の参加者がいるというのに、世界からは私と音以外の全てが消えていました。クリスタルボウルの音を奏でているはずの神主の吐息も聞こえてきません。誰もいない。音が回っている…。

そして静寂。

耳を澄ませていると、壁の向こう側、宿坊の外に広がる山の存在を感じました。風にそよぐ木々。雨を待つ土。エサを求め動き回るネズミの音が聞こえます。さらに探っていくと、地面を歩くアリの存在や、今まさに飛び立とうとしている羽虫のその振動さえ感じられます。

それは妄想なのかもしれない。私はいま宿坊の大広間でクリスタルボウルヒーリングを受けている最中。でも音は360度回っていて、私は前後左右の位置も不明。まるで曼荼羅に閉じこめられた状態。感覚が研ぎ澄まされている。今なら壁の向こうのアリの存在にさえ気付ける。

誰かが「クリスタルボウルは、自分の体の感覚がなくなるほど、深いリラックスへと導く道具。まるで麻酔をかけられた気分になれる」と言っていました。
音の曼荼羅の中をグルグル回りながら、「こういうことか」と言葉の意味を理解しました。

滝行修行03
この距離なのに、深い瞑想状態になると相手の存在を忘れるから不思議

瞑想の先に、浦島太郎の気分

クリスタルボウルの音は、小さい音ではありません。鐘の音のような荘厳な低音、矢が宙を切るような軽やかな高音。空気越しに振動も伝わってきます。
でも、静か。音が鳴っているのに静か。リラックスの度合が深まるにつれ、音より静寂の幅が増えていきました。無音。

どこからか寝息が聞こえてきました。しばらくは深い瞑想の世界と現実の間を行き来していましたが、「寝息が聞こえる」と私自身が自覚したことがきっかけとなり、麻酔は消えます。寝息はだんたん大きくなり、代わりにクリスタルボウルの音は小さく消えていきました。瞑想の終了です。

気が付くと、私以外の参加者の姿が近くにありました。はっきり覚醒している人、寝息をたてて眠っている人、さまざまです。私は眠っていたのか、起きていたのか…。でも意識はあったので睡眠状態ではなかったはずです。

時計を見るとクリスタルボウルヒーリングが始まってから30分も経っていませんでした。永遠に近い長さの夢を見ていた気がするのに、浦島太郎の気分です。

私が現実との折り合いをつけていると神主が語ります。
「瞑想は自分自身との対峙です。どんな時も自分を忘れないように」。

滝行に行く前に読んで 猛者たちのアドバイス 

この日の宿坊には6人の参加者がいました。同じ滝に打たれた仲。自然と会話が生まれます。そこで私はちょっとショックな事実を知りました。

なんと私以外は全員が滝行の経験者。中には「首都圏の行けるところは全部行った」という猛者までいるではありませんか!

「〇〇の滝、行った?」「行ったよ。あそこは〇〇だった。そこに行くなら〇〇がおススメ」なんて、初心者の私からしたらビックリな会話も飛び交います。
私が初滝行だったことを伝えると、みなさん親切に色々と教えてくれました。

「ここを選んで正解だよ!ここは指導者(=神職のこと)が良いから。私は神職の人柄にひかれてリピ」
「静かだし、都内から近いし、ホント良い場所。上級者になれば別の滝のリクエストもできるよ」

どうやら私が直感で選んだこの宿坊の滝行は、猛者たちも絶賛する素晴らしい場所のようでした。
でも、怖い話も聞きました。

「〇〇には行かない方が良いよ。あそこの指導者は自分が絶対!だから。言葉は悪いけど奴隷気分になる。そういう滝行とは違う部分で滝行を嫌いになって欲しくない」
「有名な〇〇もおススメできない。私、指導者にナンパされたから。滝行中にナンパってホント恐怖だよ」

どうやら煩悩を消したくて滝行を求めても、さらなる煩悩に巻き込まれることがあるようです。今回は直感で選んで大正解でしたが、今後もしどこか他の場所で滝行修行することになった時は、ちゃんと情報収集しようと心に決めました。

でもどの女性もみんな滝行が好きなようで、「この宿は日帰り修行もできるよね。来週きちゃおっかな~」と。
独身の女性はもちろん、結婚している女性も時間を見つけてはあちこちの滝行に参加している様子。中には娘を誘って母娘で滝行修行している女性もいました。

こういう女性たちの存在を知らなかった私。エステやショッピングで自分を労わるのも良いけれど、滝行でリフレッシュするのもステキだなと、生き生きした彼女たちの顔を見て素直に尊敬しました。

滝行修行04
夕食。これに一人一つの「おひつご飯」がつきます。手作りのご飯はとてもおいしく、運動の後の食事はさらにおいしく、全員おひつご飯までペロリと完食

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel

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