掲載日:2023.03.26

東欧ブルガリアの伝統工芸「トロヤン陶器」

円形にほどこされた色鮮やかなマーブル模様がパッと目を引く素敵な焼き物。これはブルガリアを代表する民芸品のひとつ「トロヤン陶器」です。
この記事では、そんなトロヤン陶器について、その歴史や特色などをお伝えしていきます!

トロヤン陶器の歴史と産地

東ヨーロッパのバルカン半島に位置する国・ブルガリア。
ブルガリアと聞くとヨーグルトが真っ先に思い浮かぶ方が多いと思いますが、実は陶芸をはじめ、昔から工芸が盛んな土地でもあります。

2000年以上もの伝統を誇るトロヤン陶器

トロヤン陶器とは、ブルガリアのトロヤンという町で代々受け継がれてきた焼き物のこと。
この地で豊富に採れる粘土ならではの赤茶色に、色とりどりの繊細なマーブル模様を組み合わせたデザインが特徴です。

トロヤン陶器01

トロヤン陶器の起源は、なんと古代ギリシャにさかのぼるといわれています。
当時ブルガリアに住んでいたトラキア人たちは、トロヤンが陶器作りにぴったりの土地であることに気づきました。近くを流れる白オスム川のおかげで、熱に強く、加工しやすい粘土が豊富に運ばれてくるのです。
こうした恵まれた環境のもとで、トラキア人たちはろくろを用いて簡単な食器作りをはじめました。

現在のブルガリアの原型となる帝国が建てられた7世紀後半には、すでに釉薬(うわぐすり)を工程に取り入れていたとされます。
釉薬とは、陶器の表面に薄いガラス膜を張るための特殊な液体。
この技術によって、より耐久性が高く、見た目にも映える陶器が作られるようになりました。

その後もトラキア人とスラヴ人の文化をベースに、ビザンツ帝国といった近隣の文化圏とも活発に交流しながら、すぐれた技術が育まれていきました。

19世紀に入ると、オスマン帝国の支配から抜け出すべく、ブルガリア人としての独自性を打ち出そうとする動きが巻き起こります。
そうした意識は陶器作りにも表れ、ブルガリア人は当時の教会に描かれていた壁画にインスピレーションを得て、マーブル模様を描くという習慣を定着させました。このとき、現在まで受け継がれているトロヤン陶器の技法がほぼ完成したと考えられています。

また、時代を追うごとに、作られる陶器の種類もどんどん増えていきました。
今では平皿からボウル、カップ、土鍋にいたるまで、用途に合わせて自在に選ぶことができます。

食器以外を見ても、小物入れや灰皿、ロウソク立て、花瓶など、驚くほどラインナップ豊か。トロヤン陶器は、観光客向けのお店で取り扱っていないところを探すほうが大変なくらい、ブルガリアお土産の定番になっています。

芸術の町トロヤン

では、この豊かな陶芸文化を生み出したトロヤンとは、いったいどんな町なのでしょう?

トロヤンはブルガリア中央部、国土を東西に横切るバルカン山脈の北側のふもとに位置しています。首都ソフィアからは東に150キロほどで、人口3万人前後の小さな自治体です。
バルカン山脈の絶景を間近に楽しめるほか、「全国でもっとも空気の美しい土地」としてブルガリア政府のお墨付きを受けています。

トロヤン陶器03

トロヤンは古くから陶芸の里として栄え、地元の職人たちはその技によって人々の生活を便利にし、自らもまた生計を立てていました。ほかにも、金属加工や木工、織物などなど、トロヤンで発達してきた工芸を挙げればキリがありません。

今では、市内の陶芸スクールで、一流の陶芸家を目指す学生たちが日々訓練を積んでいます。トロヤン陶器の作り手として活躍している人たちの多くもそこの卒業生だとか。
そして、市役所の向かい側には伝統工芸に特化した博物館があり、かつて制作されていた工芸品の数々をじっくり眺めることができます。

またトロヤンには、ブルガリアで第3の規模を誇る修道院が存在します。
全国各地から信徒がやってくるこの修道院は、オスマン帝国に対する抵抗の拠点になったことで知られ、まさにブルガリア民族の歴史と切っても切れない場所。

このように、工芸品が好きな人はもちろん、歴史や宗教に興味がある方や自然を満喫したい方にとっても、トロヤンは魅力あふれる街です。

トロヤン陶器04

女性だけが描ける、トロヤン陶器の伝統模様

トロヤン陶器は、若い頃から技を磨き上げてきた熟練の職人たちによって、ひとつひとつ手作業で作られています。ここでは、トロヤン陶器ならではの魅力をいくつかご紹介しましょう。

女性だけが描くマーブル模様「トロヤンの雫」

トロヤン陶器の制作では、柄を付けるのは基本的に女性の職人さんだけ。
その詳しい理由はわかっていないのですが、お隣の国ルーマニアの陶芸でも柄付けはやはり女性の仕事なので、バルカン半島に広く根づいている慣習なのかもしれません。

トロヤン陶器の繊細なマーブル模様は「トロヤンの雫」という愛称で親しまれています。
ろくろの上で回っている器に垂らした絵の具を、先の細い道具を使って手作業で引き伸ばしながら描かれます。絵の具を伸ばしたときに雫そっくりな美しい柄が出ることから、「トロヤンの雫」と呼ばれているのです。

トロヤン陶器05

一方、絵の具をかけない部分には、「テラコッタ」と呼ばれる粘土自体の赤茶色がそのまま残ります。
テラコッタ特有の素朴な色合いを生かしつつ、さまざまな色を加えていき、全体として調和のとれたデザインに仕上げていくのです。

トロヤン陶器から感じられる確かな温かみは、こうした丁寧な作業のたまものに違いありません。

同じ陶器はふたつとして存在しない

トロヤン陶器は、まったく同じ工程をたどっても毎回少しずつ違った仕上がりになるのも大きな特徴。
その理由は、柄付けを終えた陶器を窯に入れる段階を見るとよくわかります。このとき熱によって陶器が多少縮むのですが、その縮み具合が粘土の状態によって変わってくるのです。

そのため、窯のなかでは、陶器そのもののサイズの変化に合わせて、描いておいたマーブル模様にもかすかな動きが出てきます。トロヤン陶器ならではの味わい深さを実感できる瞬間ですね。

ブルガリアの伝統が息づくトロヤン陶器

時代を越えて受け継がれてきたトロヤン陶器は、今やブルガリア人の暮らしにとってなくてはならない存在です。

伝統的な柄や色合いはとても美しいものでしたが、このトロヤン陶器は、触ってみるとより魅力が伝わってきます。厚みがあって、程よく大きくて、優しく手に馴染みます。手作りならではの素朴な温かさが感じられるものなんです。
トロヤンの職人が作る、世界にひとつだけの陶器だからこその魅力ですね。

トロヤン陶器06

今回ご紹介したトロヤン陶器は、ヨーロッパ雑貨店「欧州航路」の直営店に並んでおります。気になる方は、是非店舗までお越しください。

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