自分で自分に推薦状?ジブチの不思議なVISA取得方法

世界で一番暑い国ジブチ共和国へ行こう!
でも、ジブチは例え観光であっても入国にVISAが必要な国でした。下調べも完璧にして、駐日ジブチ共和国大使館へ向かった私を待っていたのは…。今回はちょっと不思議なVISA取得体験談です。

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ハードル高め?VISAの取得方法

ジブチ共和国は、入国にVISAが必要な国です(VISは必要な国・不必要な国があります)。
VISAはパスポートと同じくらい大切。観光、ビジネス、結婚と目的によって種類もその国に滞在が許される期間もさまざま。もちろん、目的に合ったVISAを取得しなければいけません。

また訪れる国によってその取得方法や準備期間も異なります。
一般的にツアー旅行の場合は、ツアー会社が取得を代行してくれるので心配いりませんが、個人で旅行となると自分自身で取得しなければなりません。

とりあえず行ってみよう、やってみよう、「何とかなる~」で能天気に世界中を旅してきた私ですが、VISAだけは何とかならないので、そこはしっかり調べています。
(VISAの申請には、綿密な旅行計画表の提出を求められる場合があります。宿泊先のホテルの予約表や列車の切符、支払い完了書…などなど。計画をたてず、現地で導かれるまま動く私には、かなりハードルが高い!そのため渡航を諦めた国、まだ行けていない国が結構あります)

また、VISAが必要な国に渡航するのに、必要なVISAを取得していなかった場合、その国に飛ぶ飛行機に乗せてもらえない、または乗せてもらえたけれど空港から外へ出られないという最悪のシナリオも…。

なので何度でも言います!VISAだけはしっかり事前準備してくださいね。

普通の一軒家を間借り?東京のジブチ大使館

さて、自分でVISAを取得する場合は、大使館または領事館へ行って手続きを行います。
この時に忘れていけないのが、アポとり。実は、大使館へのアポとりは結構、大変です。

私の経験からお話すると、大使館で働いている人は、すっごく親切な人、取り付く島もないほど冷たい人の2パターンに分かれます。
すっごく親切な人であればスムーズにアポをとれますが、冷たい人の場合は…。気を取り直して何度でも電話をかけましょう。

嬉しいことに、駐日ジプチ共和国大使館の場合は、親切な人ばかりでした。電話であれメールであれ、何を聞いても丁寧に教えてくれます。VISAは郵送でも取得可能とのことでしたが、ジブチ大使館があるのは東京。せっかくなので行ってみることにしました。

東京の品川区。行ってみてビックリしました。ジブチ大使館は何と、誰かの家の2階にあったのです。2階へと直接通じる外階段があるため、大使館へは1階を通らず直接行けますが、ちょっとした間借り状態?でした。
もしかしたら1階部分には、大使が住んでいるのかもしれません。もしくは全く関係ない人のお家を貸してもらっているのか…。

もちろん住宅としては立派です。横浜の山手や東京の白金など高級住宅地に建っているレベル程度には立派なお家ではあります。
でも警備員がいたり、豪華なお庭があったり、飛行機の搭乗時に通る金属を探知するあの機械(ゲート?)を通ったりするのを想像していた私は、その簡素な造りにビックリしました。

アフリカの小さな国が日本に大使館を置いてくれている事実に感謝しつつ、色々と大変なのかな?と勝手に心配したりしました。(余談ですがアメリカ大使館は、東京ドーム一個分の大きさを〝超〟がつく破格の値段で日本から借りています。にも関わらず、約10年間もの間家賃を滞納していました。興味がある方はお調べください)

ジブチビザ01ジブチ郊外にある人々の家。『風の谷のナウシカ』の王蟲のような見た目です。簡素を通りこした家ですが、何度も何度も目にしました。

スムーズな流れが一変!!大使館職員の一言

普通の一軒家に大使館があるという事実にビックリしつつ、階段を使って直接大使館へ。
扉をあけると、こじんまりした玄関ホールが広がっていました。洋館で見るような黒味の強いシックな木製の床には、よく手入れされた美しい絨毯が敷かれています。

正面にはさらに上へと続くお城のような階段もありました。豪華ではないけれど、綺麗に品よくまとめられた空間。向かって左側には飾り気のない机が一つ置いてあり、日本人女性2人がにこやかに迎えてくれます。やっぱりとても親切。

事前に電話で問い合わせをしていて、さらに大使館の方もきちんと準備をしていてくれたので、全てがとてもスムーズに進みました。(大使館によってはアポをとっているにも関わらず、本当にくるか分からないからという???な理由で何一つ準備していてくれない事もあります)

嬉しいことに、大使が2階(3階?)にいるから、VISAもすぐこの場で発券してくれると言います。
(ある国の大使館で、必要ですと言われた書類が不要だったり、逆に不要と言われた書類が必要だったり…。対応する職員によって必要書類が違うという、さんざんな目に合ったことがあるので、ジブチ大使館はかなり優秀かつ親切な大使館だと思います。独特な時間軸で動くことが多い大使館では異色かも)

必要な個所に記入をして、職員と談笑して…。と、全てがスムーズに進んでいた時のことです。職員が突然言いました。

「最後に、推薦状の提出をお願いします。」

…え?

私は私を推薦します!推薦状の奇妙な内容

「推薦状はお持ちですか?」
「え?」
「推薦状のご提出をお願いします」
「推薦状ですか?」
「はい、推薦状です!」

でた、大使館の得意技!これまでの事前やりとりで一度も出てこなかった〝推薦状〟というワードに、私は凍り付きました。もちろん用意なんてしていません。

「あの、〝観光〟にも、推薦状は必要ですか?」
「はい、どのVISAでも取得には推薦状が必要です。」
「あの…。事前に伺った時に推薦状のお話がなかったので、用意していません」
「あら…」

沈黙。

ここまでスムーズに進んできたので、私の落胆は酷いものでした。
推薦状って誰にお願いしたらいいの?権威ある人じゃなきゃダメだよね?大学の先生とか?あぁ。必要な書類がないのだから、即日発行できるというVISAも後日の発行になってしまう。またアポをとって、ここに取りに来るの?東京だから近いけれど、それでも片道2時間…。郵送してもらえないか、ダメもとで聞いてみようかな。親書だから書留ならOKかも。

グルグル思考を巡らせる私の悩みなど、気にも留めていないようで職員が口を開きました。

「それでは、ご自分で推薦状をお書きください!」

真っ白なA4の紙を一枚差し出して、にこやかに語る職員。
意味が分からずに、再び固まる私。

「あの? 私が私の推薦状を書くのですか?」
「はい。フランス語でお願いします」
「え?あの?自分の名前で自分の推薦状を書くのですか?何を書けば良いのでしょうか?あと、私フランス語まったくダメなんです」

罫線一つない真っ白な紙を前に困惑する私。そんな私の混乱など関係なしに「英語でもOKですよ~」と何を書くべきかレクチャーしてくれる職員。
その場でVISAが欲しかった私は、教えてもらうままに、推薦状を書きました。

大使殿。

R.香月さんは、ジブチ共和国を訪れることを熱望しています。
どうぞ観光に必要なVISAを発券してあげてください。
R.香月さんはそれに相応しい人物であると、R.香月が保証します。

R.香月の推薦状
推薦人:R.香月

出来上がった推薦状は、こんな感じでした。自分で読んでいて、ちょっと訳が分からないというか、「これでいいの?」という推薦文です。
どこの世界に、自分で自分に推薦状を書く人間がいるのでしょうか?しかも突然だったので、英語もメチャクチャ。果たして公式文章として通じるのか、かなり不安です。

「これで、良いのでしょうか?」
と職員に渡すと、
「はい、これで全ての書類がそろいました!大使にお渡ししてきますね」
と職員は去って行きました。

ジブチビザ02映画「猿の惑星」の撮影地だと言われるアッべ湖。ジブチきっての観光地です。大地の白は雪ではなく、塩。暑いのに景色は冬っぽい不思議な光景。

果たしてVISAは取得できるのか

職員が戻ってくるまで、半信半疑でした。
映画『キューティ・ブロンド』でヒロインの女性が、超難関のロー・スクールに入学するために、自己PRビデオを撮影し提出します。映画を見たとき、アメリカ人は凄いな。自分に凄く自信があってアピールが上手だな、…なんて他人事のように思っていましたが、まさか自分が似たようなことをするとは。

待つこと数分。書類一式を持って職員は、あっという間に戻ってきました。
「VISA発券できましたよ~」
自分で自分を推薦する不思議な推薦状が無事に受理され、問題なく発券されたVISA。感謝しつつも「これで良いの?」と混乱がおさまりません。

その後も職員に、ジブチ共和国を観光する上で注意すべきことや情報収集の仕方などを、色々と親切に教えてもらいました。
ジブチ共和国の情報は本当に少なく、バックパッカーのバイブル「地球の歩き方」にも数ページしかありません。なので、大使館で得られた情報はとても有益でした。例えそれが「分からない」であっても、です。

ジブチビザ03世界の果て、地球の果て、この世の終わり、終焉(しゅうえん)。そんな言葉が似合うアッべ湖周辺。乾ききった大地はまるで魚の鱗のよう。表面が固まっていて、踏みしめるとパラパラと鱗が壊れていきます。

残念だったのは、すべての手続きが玄関ホールで済んでしまうため、ほかのお部屋を拝見できなかかったこと。正面にあった立派な階段を登って大使の部屋へ♪は叶いませんでした。

でも、訪れたその日にすぐVISAを発券してもらえ、職員がフレンドリーに迎えてくれ、自分で自分に推薦状を書くという滅多にない稀有な経験をさせてもらいました。

皆さんもジブチに関わらず、もしVISAを取得する必要がきたなら、ぜひ大使館へ赴いて下さい。きっと素敵な体験ができるはず!
オンラインでパパっと済ませるのも効率的で良いですが、その工程を楽しむのも素敵ですよ。

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R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel

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