七宝焼ー七つの宝を集めたような美しさの秘密ー

みなさんは、七宝焼(しっぽうやき)を知っていますか?
「名前は聞いたことあるけど、詳しくは知らない…」「きれいだけど、どうやって作られるの?」という方が多いのではないでしょうか。

そこで、今回は七宝焼について、魅力や歴史、作り方や技法をご紹介します。
七宝焼に興味のある方は、ぜひ参考にしてください!

七宝焼とは

七宝焼ってどんなもの?

七宝焼は、陶器のような艶のある風合いと、鮮やかな色や模様が魅力の焼きものです。手作業から生み出される繊細な外見から「人がデザインできる宝石」と言われることもあるそうです。

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七宝焼とは、日本の伝統工芸技法の1つで、ひとことで言うと「金属の表面にガラスを焼き付けたもの」です。金や銀、銅、鉄などの金属の素地にガラス質の釉(うわぐすり)で模様を作り、750~950℃の高温で焼きます。

見た目はよく似ていますが、「有田焼き」や「九谷焼き」といった陶磁器とは材料も作り方もまったく違います。

なぜ「七宝焼」と言うの?

「七宝焼」という名前は、仏教が由来となっています。
仏教の経典の中に登場する「金・銀・瑠璃(るり)・玻瓈(はり)・硨磲(しゃこ)・珊瑚(さんご)・碼碯(めのう)」の七種の宝石が七宝の由来です。

瑠璃とは青色の宝石、玻瓈は水晶、硨磲は美しい貝殻を表します。碼碯とは今のメノウではなくエメラルドのことです。
経典によって多少種類は違いますが、7つの宝を全て合わせたかのような美しさを持つということで「七宝焼」という名前が定着しました。

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七宝で飾られたマニ車。一回回すことに真言を唱えたことと同じ功徳があるとされる。

どんなものに使われている?

七宝焼はどんなものに使われているのでしょうか?
壺やお皿といった芸術品やブローチ・指輪・イヤリングといったアクセサリーだけでなく、幅広く実用的なものにも使われているんです。

古くは、刀の鍔(つば)に使われました。鍔とは、刀の柄(つか)と刀身の間にある平たい鉄板です。あの小さい部分に七宝焼で装飾を施しました。

ほかにも、学校で使われる襟章や校章、資格章などのピンバッジも七宝焼なんですよ。もしかしたら、気づかないうちに七宝焼を身につけていたかもしれません。

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実は、キッチンで使われる琺瑯(ホーロー)製のバットや鍋などの調理器具も金属の上にガラスを焼きつけていて、七宝焼と同じつくりです。意外と身近なところで七宝焼の技法が使われているのは驚きですね。

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七宝焼の歴史

ツタンカーメンの黄金マスクも七宝焼!?

七宝焼の起源ははっきりしませんが、紀元前十数世紀のエジプトで使われていたことがわかっています。

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金と青のしま模様で有名な、エジプトのツタンカーメン王の黄金マスク。一度はテレビなどで見たことがある方が多いのではないでしょうか。
実は、あのマスクも七宝焼と同じ技術で装飾されているんですよ。金の素地にラピスラズリになぞらえた青いガラスを溶かしてから接合して作られています。

七宝は世界的な伝統工芸

エジプトからヨーロッパ各地や中近東に広がった七宝焼の技術は、シルクロードを経て中国に入った後、6~7世紀頃に日本に伝わったとされています。

七宝は、英語で「enamel(エナメル)」、フランス語では「émail(エマイユ)」と呼ばれ、アンティークジュエリーで盛んに用いられました。

中国では「琺瑯」と書き「ファーラン」と読みます。日本語読みだと「ホーロー」ですね。
また、1450年代以降に作られた中国製の七宝焼は「景泰藍(けいたいらん))と呼ばれていて、中国工芸の中でも高い評価を得ています。

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古代中国の動物文様

細かい技法は違っても、同じ技術が世界各地で受け継がれているというのはとても興味深いですね。

日本での七宝焼の歴史

古代の七宝焼

日本に七宝焼の技法が伝えらたのは、飛鳥時代頃とされています。
が、奈良県の古墳から出土した副葬品に七宝焼が使われています。中国から技術が伝来する前に、原始的な七宝焼が作られていたようです。

日本で古い七宝焼として有名なものは、奈良時代の正倉院に保管されている「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)」があります。
鏡の裏側に一面に七宝焼で装飾が施されている豪華な鏡です。この鏡に関する具体的な文献などは見つかっておらず、国内生産ではなく輸入品という説もあります。

平安時代にも、宇治平等院鳳凰堂の扉の金具に、七宝焼の装飾が使われています。

日本七宝の黄金時代

日本で七宝焼が盛んに作られるようになったのは、江戸時代、17世紀になってからのことでした。江戸時代初期に、京都の金工師平田道仁が朝鮮半島の工人に七宝の技術を学んだことが始まりと言われています。
そのころは、刀の装飾に使われたり、城や寺社仏閣などの釘隠し、大名の持ち物や襖の引手などの装飾に用いられました。

江戸時代後期には、尾張(愛知県名古屋市)の陶芸家・梶常吉(かじつねきち)がオランダ製の七宝を独自に研究して、七宝焼の技法を発見しました。
この愛知県発祥の「尾張七宝」は現在でも受け継がれていて、「東京七宝」と並んで製品を作り続けています。

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江戸時代の尾張七宝(推定)。

さらに明治に入ると、パリ万国博覧会をきっかけに世界から注目されるようになり、政府の支援もあって盛んに海外に輸出され、日本の七宝焼が世界中に広まりました。

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1889年フランスの雑誌「ル・ヴォルール・イルストル」の彫刻 1889年の世界博覧会を描く(博覧会ユニヴェルヴェル

七宝焼の作り方と技法

七宝焼の作り方

1.素地作り

ベースとなる金属(銀や銅など)を成形します。

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2.絵付けと線付け

墨で素地に模様を描きます。有線七宝の場合は、さらに銀をテープ状にしたものを使って釉薬を入れるための輪郭線(銀線)を立てます。

3.釉薬を入れる

ガラスを粉状にして水やのりに溶いた釉薬で色や柄を付けていきます。

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4.焼成

750~950℃の高温で焼きます。

5.研磨して仕上げ

とても細かいダイヤモンドペーパーやヤスリを使って、凹凸をなくすために削って磨き、艶のある表面に仕上げます。

七宝焼は、色や装飾を付けたものを一気に焼き上げるということはできません。素地の段階で焼き、絵柄を描いては焼き、と、技法によっては10回以上も焼くこともあります。
多くの工程を経て作られた七宝焼は、鮮やかで豊かな色彩が褪せることない作品に仕上がります。

七宝焼の技法

ひとくちに「七宝焼」と言っても、初心者でも楽しめる簡単なものから熟練の技が光る高度なものまで、いろいろな技法があります。幅広い伝統技法の中から、代表的なものを紹介します。

象嵌(ぞうがん)七宝

素地を凹ませたり彫ったりして文様のくぼみを作り、釉薬を焼き流しこむ技法です。ヨーロッパなどで多く用いられます。

有線(ゆうせん)七宝

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菊紋楓枝文七宝瓶・安藤七宝川出柴太郎の有線七宝

銀などを薄い帯状の金属線にして輪郭を施し、そこに釉薬を入れる技法です。繊細な描写ができますが、緻密な作業で手間がかかります。

無線(むせん)七宝

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双鳩図盆,濤川の無線七宝

釉薬の間に金属線の仕切りをつけない技法です。境界がぼやけて優しい表情に仕上がるのが特徴です。

盛上(もりあげ)技法

盛り上げたい部分のみに、後から釉薬を高く差して焼成する技法です。作品に立体感が出ます。

私は趣味でハンドメイドをしていますが、今回七宝焼について知れば知るほど挑戦してみたくなりました!
もし七宝焼にチャレンジできたら…やはり、日本七宝の中心である有線七宝に挑戦してみたいです。かなり工程が多く細かい作業が続きますが、自分だけのブローチなど作れたら、さらに七宝焼が好きになりそうですね。

七宝の魅力が堪能できるアイテム

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日本を代表する伝統工芸品として世界的に有名な七宝焼。ガラス質の釉薬を用いているため、一度完成したものは100年たっても色や模様が褪せることがありません。
ずっと美しさが保たれるので、親から子、さらに孫の世代へと、同じものを受け継いでいくというのも素敵ですね。

七宝焼は、ブローチやネックレス、ピアスなど普段使いできるアクセサリーから、飾り皿や額飾りのようなインテリアとして使えるアート作品まで、幅広いアイテムがそろっているのも魅力の1つです。特別な人へのギフトにも最適ですね。

特にアクセサリーは、古風な和テイストのデザインもたくさんあります。日本の伝統工芸品ということもあり、着物や浴衣といった和装にピッタリです。

チャイハネでも、七宝焼のリングやピアス・イヤリングといったアクセサリーを扱っています。
オリエンタルな雰囲気や個性的なデザインのアイテムもあるので、あなたのスタイルに合わせて七宝焼を取り入れてみませんか。

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