登拝女子-後編- 私たち、登拝いってみました

登場人物

●ぶらめがね // 神社とお寺が心のふるさと。会社ではデザイン担当。

●こさと // 岩座スタッフ。神社と石を愛する素敵女子。3姉妹の長女でしっかり者。

●たんたん // 岩座スタッフ。癒しオーラ全開で、周囲の人間は何でも話してしまう。

●中村さん // 神社学主宰。フィールドワークとして登拝を催行している。

●アウトドアの達人 // 社内で右に出る者のいないワイルドな漢。登拝にはもれなく参加している。

前回の記事はこちら

山では、だれもが平等にひとりの人間。

山では、だれもが平等にひとりの人間。

前回、たんたんさんが岩櫃山で転んでしまったというお話をお聞ききました。

自然の中で、一歩間違うと死の危険がある。なかなか普通に生きていて経験できることではないですね。

そうですね。今回は登拝女子というタイトルですけど、登拝においては、あまり男女で感じ方に違いはないかもしれないですね。

人間の本質的な部分と向き合うということなんでしょうか。

はい。山に入れば、誰もが平等になるというか。地位も名誉も関係なく、ひとりの人間に立ち返る感じですかね。

なるほど、自然の一部になるような感覚なんでしょうね。

こさとさんは、山の中でちょっと危険だったな…と思うことはありましたか?

うーん、そうですね。普段自分の体をアクティブに使っている仕事じゃないので、もうちょっといけるかな、と思ってたところが、意外ともっと頑張らないといけなかった!という場面はありましたね。

なるほど、そこは自分の体力を過信していたというか、険しさが想像を上回ってきたというか。

そうですね。やっぱりそこのギャップ感というのが普段の生活では測りづらい部分で。極限だからこそ分かるものなのかなあ、と。

うん、だって普段だったら登りたくなければエスカレーター使っちゃいますから!

一同笑い

ですよね。たしかに。都市生活をしていると、人間の基礎的な体力が鈍っていきますもんね。

はい、だから最近はよく階段を登るようになりました。基礎基礎~!って。

えらい!(笑)それも大きな変化ですね。

山では、だれもが平等にひとりの人間。02

怖さと向き合う

私は高所恐怖症かつ逃げ場のないところが苦手というタイプで、いまお二人からお話を聞いているだけでもゾクゾクしてしまっているのですが、危険な足場を行くとき、不安感みたいなものはなかったですか。

そうですね。やっぱりそこは中村さんだったり、一緒に登ってくれる仲間のありがたさを感じますね。

なるほど、一緒に登る仲間で乗り越えていくというか。なんだか絆が深まりそうですね!

最初の登拝では上司2人と登りましたけど、ほかの参加者の方から、「上司と一緒に登るなんてすごい!」と驚かれました。やっぱり仲がいいのかなと。改めて感じられた部分もありました。心強かったです。

うんうん、上下関係とか普段の関係性を越えて、信頼が増すのかもですね。

命を預けるじゃないですけど…最悪最後を見届けられてしまう可能性もありますからね!(笑)

一同 汗と笑い

そういえば、鎖場(くさりば)の直前で「怖い」と思ったらいけないよ、と言われましたね。後ろを振り向いたり、「あ、怖い」と思うとダメだから。前だけ見て登ることだけに集中して。と。

はー、なるほど

自分の手に「全集中!!!」というか。

たんたん/全集中のポーズ

うんうん(笑)、余計な心配はあえて考えない。目の前のことに集中する。と。

そうですね。踏み外したら真っ逆さまというところですからね。命がかかっていると思えば、本当に真剣に集中します。

なるほど、それはもしかしたら…不安を抱えやすい現代人…つまり私のような人間が、実生活で注意が散漫になって自ら心配事を増やしていっているのと、逆の世界かもしれないと思いました。(汗)

うん、たしかに。たしかに。

悩んでる人は一度、鎖場に行ってみるといいですよ!強制的に思考を狭める練習になります。命かかってるけど。(笑)

一同笑い

うんうん、それは強烈な修行かもしれないですけど、そこから学び取れることは大きそうです。怖さとの向き合い方を学ぶって、実生活ではなかなかできない。登拝って、人間の本来持っている「生きる力」みたいなものに気が付く経験なのかもしれませんね。

みんないっぺん行くといいよ!!

一同笑い

怖さと向き合う

自然と自分とは鏡のような関係

「楽しかった、もう一度行きたい」と思うということは、怖さを克服したということですもんね。それは自分に少し自信がついた、ということなんでしょうか。

そうなんだと思います。この一年、あまのいわと学校~登拝の流れの中で、自然と接して、いろんな人と交流して、性格がポジティブに変化したなと思います。コロナ禍でお店が閉店していたこともあって、しばらくは塞いでいたんですよ。

そっか。そうだったんですね。それはいいタイミングで経験ができましたね。

はい、もう落ち込んだら山に行こうと思ってます!この感覚を忘れないように。

いいなあ。私も行きたくなってきた…かも…(こわいけど)

ちなみに、温泉もよかったですよ!

必ず寄ってくださいます。中村さん主催の登拝は温泉とセットですね。

体を使ったあとの温泉!それは!最高しかない!!

一同笑い

温泉も満喫して、自然の恵みも厳しさも、全部いただくような感じですね。

自然と自分とは鏡のような関係

温泉も含めて、自然の中に身をおくことで色々分かることがあるんですよね。よく自分の事を知るためには人との対話が必要って言いますけど、自然と自分とも鏡のような関係だと思いました。べつに「木と会話する…」みたいなことではないですけど、人それぞれで感じたり、学んだりすることがあるんじゃないでしょうか。

はい。お二人のお話を伺っていて、自然との対峙の中で自分の内面の成長であったり、身体的なポテンシャルであったり、いろいろな気付きがあるんだなと。「自然のパワー」というと、スピリチュアルな雰囲気が漂いますけど、実際中身を聞いてみると、生活や人間性にも影響する経験なんだなというのが分かります。

山頂での過ごし方

中村さんは、山頂で祝詞を上げられたり、笛を吹かれていたり、独自のお祈りをされると伺うんですが、おふたりは何かされましたか?

あ、玄人さんはお香をたいたり、歌を歌ったりされていますね。私たちはそこまでではですが…最近篠笛を買いました!

おお、いいですね。山頂で献笛、ひとつ目標ができましたね。

わたしは法螺貝かな…パンチでいうと

上司と同じこと言ってる!笑

ほら吹きスト!

一同笑い

そういう、山頂で何かを奉納する、自分なりに表現するというのは普段なかなか出来ないことなのかなと。独特の文化ですね。なんか、気持ちよさそうです。

そりゃあもう。あ、動画見ますか?中村さんが笛を吹いている…

おお、素敵。

N●K…

日曜の朝8時代の感じますね。(笑)

ほら吹きストの上司は瞑想していました。

いやあ、でもわかります。これは心静まるというか…。山頂に着いたら、みんな思い思いに過ごしてるんですか。

そうですね。じゃあご飯でもなんでも、解散~という感じで。寝てる人もいれば、更に登る人もいて。

えっ、さらに登る人もいるんですね…。すごすぎる。

はい、先ほど見せた金峰山の山頂の巨大岩ですけど、これを登っていましたね。

山頂での過ごし方

ほお…強者がいますねえ。。

次はクライミングかな。

えっっ、たんたんさん登ろうとしてる?

一同笑い

私の場合は登りきって山頂に着くと、無事に登れてよかった、見守ってくれてありがとう、という気持ちになりますね。

なるほど、自然と感謝の気持ちになっていく。という感じですね。なんか…いいなあ。集中して成し遂げて、自分に対して「よく頑張った」と思えたり、山や自然に対して、「ありがとう」という気持ちになる。仲間に対しても、感謝の気持ちが湧いてくる。ポジティブなことばっかりですもんね。たとえ滑落してしまったとしても…(汗)無事に帰って来れた、という。

そうですね、あの滑っている間にいろいろ思いを巡らせましたけど、一度山頂まで登りきってるし、まあ、これで終わってもいいか!とか。

めっちゃ悟ってる!笑笑

うん、結局、生きてるし!と。うじうじ考えてしまうときは、あのときのことを考えればもう怖くないですね。悩みすぎている人は、いっぺん滑ってみよう!
(個人の見解です)

一同笑い

期待したことだけではない、意外性から気付くこと。

なんでしょう…こう、山とか自然って、何かを期待して行ってはいけないのかなと思いました。期待が大きいと、たんたんさんのように滑落してしまったとき、こんなはずじゃなかったのに、という気持ちに支配されてしまいそうです。

うん。コントロールできるものじゃないですもんね。

モ●ベルの人も言っていました。期待が外れてしまって、あれが嫌だった、これが嫌だったと言うひとは二度と登ってくれない。でも、まれにお姉さんみたいに真剣に靴を選びにきてくれる人がいると、僕はこの仕事をやっててよかったなあ、と思うって。

ああ、なんか、すごく嬉しいですね。それは。

なんとそこに竹内さんのお写真飾ってあったんですよね。でも違ったら嫌だったんで聞かなかったんですけど。

えっ、なんでー!たしかモン●ルでアルバイトしていたとか、ご本に書いてあったように思います。「登山の哲学」という本、すごく面白いんですよ。

あ、やっぱりそうなのかな。じゃあ次言ったときに聞いてみます。会員にもなってしまったし。

たんたんさん、もう、完全に目覚めましたね。

ひとまず筑波山行ってみよう!と。

ああ、いいですね~。私も行ってみたいとおもっていたんですよ。筑波山。でも、いいお天気で、景色が綺麗で…という期待感満々で行ってしまうと、何かが違う。そういうことじゃなくて、真摯に山に入るというか。

たしかに、登拝ではまったく、そういう期待はなかったですね!

すごくフラットな状態というか。

それが逆にいいんでしょうね。フラットな状態だからこそ感じられること。それが大事な気がします。何かを得よう、凄いものが見たい、そういう期待を持っていってはいけないというか。持って行っても、結果的にそんな気分はどこかへ行く。みたいな(笑)

そうですね。持ってきてもいいけど、結果的に置いて来ることに(笑)

鎖を見た辺りで埋めて帰るわ、みたいな。あ、なんでもない。みたいな。

一同笑い

あと、人間って意外と何とかなるもんだと思います。

うん、それは説得力ある。

私も、あまり高いところとこ得意ではないですけど。観覧車とかダメだし。

ああっ!!!観覧車、すべての乗り物の中で一番怖いです…

うん、でも山は足場は狭いけど視界は広いので。そんな時は空を見上げて、心を落ち着かせて。

うんうん、それも心の持ちようの修行になりそうですね。なんとかなったら、世界が変わるのかも。

今日はなんだかとても大切なことを聞かせていただいたように思います。ぜひ私も行ってみたいと思います。素敵なお話、たくさんありがとうございました!!

ありがとうございました!

ありがとうございましたー!

期待したことだけではない、意外性から柔軟に学ぶ

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