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マイナーな国を旅して40ヵ国。ライターのR.香月(かつき)が、旅先で見つけた素敵なアレコレを紹介します。
今回は、世界最大の熱帯雨林、南米アマゾンのジャングルでの生活を紹介!電気やガスがない場所での生活とは…?
きっかけは、ペルーから日本へ向かう帰国便に乗り遅れたことでした。三ヵ月の南米旅行を終え、少し気が緩んでいたのかも知れません。
南米の交通手段は脆弱で、特にバスの場合3~5時間の遅延は日常茶飯事。ストライキで足止めされることも多いのですが、特に理由もなく遅れちゃう…。それが南米の交通事情です。
帰国便に乗り遅れ、行く当てがなくなった私は、空港近くの安宿へ。そこで出会った日本人に、アマゾン熱帯雨林へ行くことを強く、強く、すすめられました。
「シャーマンって知ってる? アマゾンの奥地には、現役のシャーマンがいて、アヤワスカっていう薬草で病気を治してくれるんだよ。持病とか、ケガとか、視力とか、心の病とか、なんでもOK。電気ないしすごい過疎なトコだけど、希望すれば修行もさせてくれるよ。飛行機のチケット買い直すんでしょ? あと一月もしたら、オフシ―ズンで飛行機代下がるからさ、待つ間に行ってきなよ。」
ガイドブックに載っていない情報。そして、“シャーマン”という魅力的な単語。聞いたこともない言葉“アヤワスカ”。 怪しすぎると思いつつ、「私、魔女とか占いとか結構好きなんだよね」と、気が付いたらジャングル生活に向けて荷造りを始めていました。
ペルーの首都リマから飛行機で約60分。そこからさらに、小型ボートやバイクタクシーを乗り継いで数時間。たどり着いたのは、蛇の神様(精霊)の守護を受けたシャーマンが暮らす村でした。
「ここに泊まって」と案内されたのは、木でできた簡素な家。六畳ほどの部屋には蚊帳で囲われたベッドが置いてあるのみで、椅子一つありません。
何ともなしにベッドでくつろいでいると、どこからか感じる何かの気配。じっと部屋を見つめていると、思わず「毒持ってる?」と聞きたくなるようなカラフルなヘビが床下から、こちらを覗いていました…。
ほかにも、貴重な食糧をネズミに奪われたり、共同トイレの中に巨大なカエルがいたり、二度見どころか三度見してしまう程、巨大なクモがいたり。生物の宝庫アマゾンらしく、とても賑やかな暮らしを体験しました。
その村は、何もないところでした。電気が通っていないため夜は真っ暗。蛇口はあるけれど、なぜかお水がでないので、水が欲しい時は井戸から水を汲み上げます。トイレは共同。お風呂はもちろん、シャワー設備もありません。
そんな何もない暮らし。一番大変だったのは、料理でした。 炊事場に置いてあるのはガスコンロではなく、巨大な薪(まき)と百円ライター。
まず、火を起こすのに一苦労。鉈(なた)を使って薪を割り、着火剤代わりに乾燥した草を集めます。最後はライターから移した小さな火が消えぬよう、木の葉で扇ぐ、扇ぐ、扇ぐ…(キャンプブームの火つけ役・芸人ヒ〇シと同じようなことをしていました)。
調理に使える火力になるまで火を育てるのは、本当に大変で、その時点で体はクタクタ。お腹が空いて“食べよう”と思ってから、食べられるまでに相当の時間を要しました。
無心になって火を起こしていると「昔は、一番優秀な忍者が火種を守っていた」というエピソードを思い出します。火って大切だよね。優秀な人でなきゃ任せられないよね、だってこんなに大変だもん。なんて独り言を喋っていたりもしました。
困ったのはシャワー。でも、これはすぐ解決しました。
乾燥していて汗をかきにくい気候とはいえ、やっぱりシャワーは浴びたい! できれば毎日浴びたい! そんな時は、昼間の一番暑い時間帯を狙って井戸水を汲み上げ、頭からザバッと水を浴びます。井戸の周辺には仕切り一つないので、服は着たまま。それを、2~3回繰り返します。石鹸は使えないものの、水浴びは身も心もかなりスッキリ!させてくれました。
ただ、ロープが張られた昔ながらの井戸から水を汲む作業は、なかなか難しく、初めは空の桶をカラカラ、カラカラ虚しく上下させるばかり。そこに水があるのに、自分の技量が足らず水が使えないという歯がゆい思いもしました。
アヤワスカとは、主にアマゾン川流域に住む先住民族のシャーマンが、神々や精霊と交信するため、また人々の病を治すために使用してきました。
ジャングルで採れるさまざまな植物を調合して煮詰めたもので、まるで泥水のような見た目をしています。味は、見た目そのもの(またはそれ以上)。飲み込むのに勇気がいる不味さです。嘔吐や下痢、幻覚などの副作用もありますが、その薬役が認められ、ペルーでは国家文化遺産にも指定されています。
“シャーマン”や“儀式”と聞くと、眉を細める人も多いように思いますが、2015年には、一連の交流を描いた『ハイヒールを履いたシャーマン』がイギリスでベストセラーになるなど、世界各国で注目を集めています。
インドに外国人修行者や観光客に向けたヨガ修行場があるように、近年ではアヤワスカ体験が“観光化”されていて、一部の町では、センター(宿泊所付きの体験施設)が用意されていたりもします。
アヤワスカを使った儀式は、夜半から夜明けにかけて行われます。儀式は、厳かそのもの。参加する者は、みな真剣で厳しい食事制限をしている者もいました。
私が参加したある儀式では、隣り村からやってきたという先住民族の女性が、祈祷を受けて泣きだすことも…。
病が治るとも、不思議な体験ができるとも言われるアヤワスカ体験。幸運なことに私は、蛇の神様(精霊)の加護を受けるシャーマンと、鳥の神様(精霊)の加護を受けるシャーマン、2人のシャーマンの儀式を受ける機会がありました。
体験して知ったのは、シャーマンによって儀式の様式やアヤワスカの中身(薬草の調合具合)が、微妙に違うこと。でも話を聞く限り、どのシャーマンもイカロと呼ばれる聖なる歌を歌い、パイプたばこの煙を使って悪い物を追い払うスタイルをとっていました。
聖なる歌と呼ばれるイカロは、低音と高音が混ざりあった不思議な歌。「精霊が奏でる音をそのまま口にしている」と説明を受けた通り、儀式によって毎回少しずつ歌が変わります。でも、どこか懐かしいような、いつまでも&いつまでも、耳に残る不思議なメロディーは不変。その音色に耳を傾けていると、見えない世界の扉が開かれるようでした。
次回は、扉の向こう側で見た世界をお伝えします。
マイナーな国にばかり魅了され、気付けば世界40カ国以上を旅行。 旅先で出会ったイスラム教徒と、国際結婚&出産&離婚。現在は2児の母。
マイナーな国を旅して40ヵ国。ライターのR.香月(かつき)が、旅先で見つけた素敵なアレコレを紹介します。
今回は、世界最大の熱帯雨林、南米アマゾンのジャングルでの生活を紹介!電気やガスがない場所での生活とは…?
目次
帰国便に乗り遅れて
きっかけは、ペルーから日本へ向かう帰国便に乗り遅れたことでした。三ヵ月の南米旅行を終え、少し気が緩んでいたのかも知れません。
南米の交通手段は脆弱で、特にバスの場合3~5時間の遅延は日常茶飯事。ストライキで足止めされることも多いのですが、特に理由もなく遅れちゃう…。それが南米の交通事情です。
帰国便に乗り遅れ、行く当てがなくなった私は、空港近くの安宿へ。そこで出会った日本人に、アマゾン熱帯雨林へ行くことを強く、強く、すすめられました。
シャーマンに会いに行きなよ
「シャーマンって知ってる? アマゾンの奥地には、現役のシャーマンがいて、アヤワスカっていう薬草で病気を治してくれるんだよ。持病とか、ケガとか、視力とか、心の病とか、なんでもOK。電気ないしすごい過疎なトコだけど、希望すれば修行もさせてくれるよ。飛行機のチケット買い直すんでしょ? あと一月もしたら、オフシ―ズンで飛行機代下がるからさ、待つ間に行ってきなよ。」
ガイドブックに載っていない情報。そして、“シャーマン”という魅力的な単語。聞いたこともない言葉“アヤワスカ”。
怪しすぎると思いつつ、「私、魔女とか占いとか結構好きなんだよね」と、気が付いたらジャングル生活に向けて荷造りを始めていました。
床下から毒蛇!?
ペルーの首都リマから飛行機で約60分。そこからさらに、小型ボートやバイクタクシーを乗り継いで数時間。たどり着いたのは、蛇の神様(精霊)の守護を受けたシャーマンが暮らす村でした。
「ここに泊まって」と案内されたのは、木でできた簡素な家。六畳ほどの部屋には蚊帳で囲われたベッドが置いてあるのみで、椅子一つありません。
何ともなしにベッドでくつろいでいると、どこからか感じる何かの気配。じっと部屋を見つめていると、思わず「毒持ってる?」と聞きたくなるようなカラフルなヘビが床下から、こちらを覗いていました…。
ほかにも、貴重な食糧をネズミに奪われたり、共同トイレの中に巨大なカエルがいたり、二度見どころか三度見してしまう程、巨大なクモがいたり。生物の宝庫アマゾンらしく、とても賑やかな暮らしを体験しました。
電気もガスも水道もない
その村は、何もないところでした。電気が通っていないため夜は真っ暗。蛇口はあるけれど、なぜかお水がでないので、水が欲しい時は井戸から水を汲み上げます。トイレは共同。お風呂はもちろん、シャワー設備もありません。
そんな何もない暮らし。一番大変だったのは、料理でした。
炊事場に置いてあるのはガスコンロではなく、巨大な薪(まき)と百円ライター。
まず、火を起こすのに一苦労。鉈(なた)を使って薪を割り、着火剤代わりに乾燥した草を集めます。最後はライターから移した小さな火が消えぬよう、木の葉で扇ぐ、扇ぐ、扇ぐ…(キャンプブームの火つけ役・芸人ヒ〇シと同じようなことをしていました)。
調理に使える火力になるまで火を育てるのは、本当に大変で、その時点で体はクタクタ。お腹が空いて“食べよう”と思ってから、食べられるまでに相当の時間を要しました。
無心になって火を起こしていると「昔は、一番優秀な忍者が火種を守っていた」というエピソードを思い出します。火って大切だよね。優秀な人でなきゃ任せられないよね、だってこんなに大変だもん。なんて独り言を喋っていたりもしました。
カラカラ井戸水を汲み上げて
困ったのはシャワー。でも、これはすぐ解決しました。
乾燥していて汗をかきにくい気候とはいえ、やっぱりシャワーは浴びたい! できれば毎日浴びたい!
そんな時は、昼間の一番暑い時間帯を狙って井戸水を汲み上げ、頭からザバッと水を浴びます。井戸の周辺には仕切り一つないので、服は着たまま。それを、2~3回繰り返します。石鹸は使えないものの、水浴びは身も心もかなりスッキリ!させてくれました。
ただ、ロープが張られた昔ながらの井戸から水を汲む作業は、なかなか難しく、初めは空の桶をカラカラ、カラカラ虚しく上下させるばかり。そこに水があるのに、自分の技量が足らず水が使えないという歯がゆい思いもしました。
薬草アヤワスカとは
アヤワスカとは、主にアマゾン川流域に住む先住民族のシャーマンが、神々や精霊と交信するため、また人々の病を治すために使用してきました。
ジャングルで採れるさまざまな植物を調合して煮詰めたもので、まるで泥水のような見た目をしています。味は、見た目そのもの(またはそれ以上)。飲み込むのに勇気がいる不味さです。嘔吐や下痢、幻覚などの副作用もありますが、その薬役が認められ、ペルーでは国家文化遺産にも指定されています。
“シャーマン”や“儀式”と聞くと、眉を細める人も多いように思いますが、2015年には、一連の交流を描いた『ハイヒールを履いたシャーマン』がイギリスでベストセラーになるなど、世界各国で注目を集めています。
インドに外国人修行者や観光客に向けたヨガ修行場があるように、近年ではアヤワスカ体験が“観光化”されていて、一部の町では、センター(宿泊所付きの体験施設)が用意されていたりもします。
夜更けの儀式
アヤワスカを使った儀式は、夜半から夜明けにかけて行われます。儀式は、厳かそのもの。参加する者は、みな真剣で厳しい食事制限をしている者もいました。
私が参加したある儀式では、隣り村からやってきたという先住民族の女性が、祈祷を受けて泣きだすことも…。
病が治るとも、不思議な体験ができるとも言われるアヤワスカ体験。幸運なことに私は、蛇の神様(精霊)の加護を受けるシャーマンと、鳥の神様(精霊)の加護を受けるシャーマン、2人のシャーマンの儀式を受ける機会がありました。
体験して知ったのは、シャーマンによって儀式の様式やアヤワスカの中身(薬草の調合具合)が、微妙に違うこと。でも話を聞く限り、どのシャーマンもイカロと呼ばれる聖なる歌を歌い、パイプたばこの煙を使って悪い物を追い払うスタイルをとっていました。
聖なる歌と呼ばれるイカロは、低音と高音が混ざりあった不思議な歌。「精霊が奏でる音をそのまま口にしている」と説明を受けた通り、儀式によって毎回少しずつ歌が変わります。でも、どこか懐かしいような、いつまでも&いつまでも、耳に残る不思議なメロディーは不変。その音色に耳を傾けていると、見えない世界の扉が開かれるようでした。
次回は、扉の向こう側で見た世界をお伝えします。
ライタープロフィール:R.香月(かつき)
マイナーな国にばかり魅了され、気付けば世界40カ国以上を旅行。
旅先で出会ったイスラム教徒と、国際結婚&出産&離婚。現在は2児の母。