美食の国としての地位を確立しているフランス。
ワインからチーズ、パン、デザートまで、フランス料理は多様であり世界中の食通たちを魅了しています。

フランスの人々は家庭でもイベントごとや大切な日には、レストランさながらのフルコースを家族で作ることもあり、大切なできごとを食で祝う文化や食を楽しむ考え方をもっています。

この記事では、フランスの美食文化の歴史や地域ごとの特色、そして定番料理について詳しく紹介していきます。

フランスの美食文化の歴史

フランス料理のルーツは、古代ローマ時代にまで遡ります。
この時期、ローマ帝国の影響を受けたガリア地方（現在のフランス）では、豊富な食材と多様な料理法が発展したのです。特にハーブやスパイスの使用が広まり、料理に深みと風味が加わりました。

中世になるとフランスの食文化はさらなる発展を遂げます。
この時期、フランスの宮廷料理は豪華で華やかなものとなり、宴会や祝祭の際には多くの料理が提供されました。特に、肉料理、パイやパンなどの多くのレシピが生まれたのです。

フランス料理が発展したのはイタリアのおかげ？

フランス料理は、中国料理、トルコ料理と並ぶ世界三大料理のひとつです。
フォーマルな場で選ばれることも多く、高い調理技術と上品で洗練された味が世界各国で評価されています。
格式の高いイメージもありますが、フランス料理の歴史は食材をローストしたり茹でたりするだけのシンプルなものから始まったのです。

16世紀のルネサンス期には、フランス料理に大きな変革が訪れます。
当時最先端として知られていたイタリア料理の文化が流れ込んだことで、食事作法や料理技術がフランスに広まり、料理の幅が広がったのです。
フランス王妃カトリーヌ・ド・メディシスは、イタリアからシェフを呼び寄せ、フランス料理に新しい風を吹き込みました。

フランス料理といえば1皿ずつテーブルに料理が運ばれてくるコース料理をイメージされるかもしれませんが、コース料理が広まったのは近年になってからです。

寒い気候の中で料理が冷めないようにと、ロシアのフランス料理人が1皿ずつテーブルに運んだことがきっかけでフランスでも取り入れられるようになり、現代のようなコース料理が確立されていきました。

今日のフランス料理は、伝統と革新が融合した形で進化を続けており、多くのシェフたちが創造的な料理を提供し続けています。
また、地元の食材を重視し、サステナビリティや健康志向のトレンドも取り入れられています。

地域ごとの特色

フランスの美食文化は、その地域ごとに異なる特徴を持っています。各地方は独自の気候、地形、農産物を活かし、それぞれ独特の料理を生み出しています。

パリ イル＝ド＝フランス

パリはフランスの首都であり、美食の中心地です。ミシュランの星を獲得したレストランが数多く存在し、フランス料理の最高峰を楽しむことができます。パリでは、クロワッサンやバゲットといったパン類、エクレアやマカロンといったデザートが特に有名です。

プロヴァンス

南フランスのプロヴァンス地方は、地中海の影響を強く受けた料理が特徴です。オリーブオイル、ハーブ、ニンニク、トマトを多用した料理が多く、ブイヤベース（魚介類のスープ）やラタトゥイユ（野菜の煮込み）が有名です。また、プロヴァンス産のワインも高く評価されています。

ブルゴーニュ

ブルゴーニュ地方は、ワインの生産地として世界的に有名です。ピノ・ノワールやシャルドネといったブドウ品種を使用したワインが特に有名で、エスカルゴ（カタツムリの料理）やブフ・ブルギニョン（赤ワインで煮込んだ牛肉料理）といった郷土料理も楽しめます。

アルザス

ドイツとの国境に位置するアルザス地方は、ドイツ料理の影響を受けたフランス料理が楽しめます。シュークルート（ザワークラウトとソーセージの料理）やタルトフランベ（薄い生地にチーズやベーコンをのせたピザのような料理）が有名です。また、リースリングやゲヴュルツトラミネールといった白ワインも特産品です。

フランスの定番料理5選

高級料理から郷土料理まで、美味しい食べ物がたくさんあるフランス料理ですが、ここではその中から厳選した5選をご紹介します！

ラタトゥイユ

ラタトゥイユといえば、ディズニー映画の「レミーのおいしいレストラン」にも登場する、南フランスニースの郷土料理です。
ナスやズッキーニ、トマトや玉ねぎなど、夏野菜をたっぷり使って作られています。

あの映画を見る度に、ラタトゥイユを食べたくなるのは私だけでしょうか？
映画では野菜を綺麗に並べてオーブンで焼かれていましたが、じっくりと煮詰めて作られることも多いようです。

ラタ（Rata）＝「ごった煮」

トゥイユ（touille）＝「かき混ぜる」

この2つの意味からきているラタトゥイユは、昔は貧しい料理というイメージが強かったようですが、現在ではニースの名物として広く親しまれています。

ポトフ

ごろごろと大きな野菜とウインナーが入った、コンソメ風味のスープ。
日本でも夜ご飯や給食にも登場するなど、馴染の深い料理です。

フランスも日本も、じっくり食材を煮込んで作る過程はよく似ていますが、フランスでは肉類に牛肉の塊をそのまま使用するのが特徴的で、じっくりと煮込むことで食材から旨味を引き出すため、味付けも塩、コショウ、香辛料のみと至ってシンプルです。

食べるときにはスープは前菜、具材はメインディッシュとして別々に分けられて食べられます。

エスカルゴ

エスカルゴとは、日本語でカタツムリ。カタツムリをガーリックバター風味に味付けしたフランスでも人気の高い料理のひとつです。
ワインとの相性も良く、貝のような触感が楽しめるエスカルゴは、近年日本でも人気が高まっています。

あまり馴染みのない方からすると、街中で見かけるカタツムリが頭に浮かんで少し気持ち悪く感じるかもしれませんが、料理で使われているのは食用のカタツムリなのでご安心ください。

ガレット

日本でもおしゃれなカフェなどで人気なガレットは、フランスの郷土料理です。
ガレットというそば粉をクレープ状に薄く焼き、卵やチーズ、生ハムなどのお好みの具材をのせていただきます。

食事系のガレットの以外にも、生クリームやフルーツをのせた甘いものもあるので、デザート感覚で楽しむのもおすすめです。

こうして見てみると、見た目も作り方もクレープとよく似ていますね。
決定的な違いは生地にあって、ガレットの生地はそば粉、水、塩のみで作るのに対して、クレープはそば粉ではなく小麦粉、そしてそこにバターや卵、砂糖が加わります。

クレープはガレットから派生したものなので、よく似ていますが別の料理なのです。

ロッシーニ風

最後にご紹介するのは、ちょっぴり高級感のあるロッシーニ風。
ロッシーニ風とは、有名な作曲家ジョアキーノ・ロッシーニが考案した料理のことです。
厚い牛フィレ肉の上に、フォアグラやトリュフを乗せたものが一般的に知られていますが、牛フィレ肉以外にも鶏肉や鴨肉が使われるなど様々なバリエーションがあります。

世界最大珍味が2つも使用される、非常に贅沢な一品ですね。

豪華な見た目の反面、使われている材料や作り方はシンプルで、フランス料理の中でも比較的作りやすい部類に入ります。

材料さえ揃えば自宅でも作ることができるので、自宅で特別感を味わいたい時などに作ってみてください。

この他にも、パテやキッシュ、鴨のコンフィなど、美味しい料理が盛りだくさんのフランス料理。

格式高いイメージが強くありますが、家庭でも作りやすい郷土料理もたくさんあることが分かっていただけたかと思います。

郷土料理には自宅でも手軽に食べられるという魅力がある一方、コース料理のような少し高級な料理も手軽には食べられないからこその特別感があって魅力的ですよ。

ちなみに、シェフは料理人と認識されている方もいるかと思いますが、シェフはキッチンの中で一番偉い総料理長のことを指します。
総料理長以外の料理人はシェフとは呼ばないそうです。

フランス料理の哲学

フランス料理は単なる食べ物の提供ではなく、芸術と見なされることが多く、その哲学は以下のような要素に基づいています。

食材の尊重

フランス料理では、食材の質が非常に重視されます。新鮮で高品質な食材を使用することが、美味しい料理を作るための基本とされています。
地元産の季節の食材を活かした料理が好まれ、シェフたちはその素材の持ち味を最大限に引き出すことを目指します。

調理技術の追求

フランス料理は、調理技術の高さでも知られています。ソースの作り方、肉の火入れ、デザートの仕上げなど、細部にまでこだわった技術が必要とされます。
特に、クラシックなフランス料理の技術は、多くの料理学校で基本として教えられています。

美しい盛り付け

見た目の美しさもフランス料理の重要な要素であり、「配色」「高さ」「バランス」の3つを基本に構成されています。
盛り付けられた料理は、食欲をそそるだけでなく、食事の楽しさを倍増させてくれます。

フランスは、美食の国としての地位を確固たるものとしています。

その豊かな歴史と文化、多様な地域料理、そして洗練された調理技術と哲学が、世界中の人々を魅了し続けています。
フランス料理を楽しむことは、ただ食べるだけでなく、その背景にある文化や歴史、職人の技を感じることでもあります。

フランスを訪れる際には、ぜひその美食文化を存分に堪能してみてください。