モロッコ女性のリアルな暮らし。義母に誘われた「女子会」で知った文化と日常

モロッコで暮らしていた頃、私は義母に誘われて女性だけの集まりへ参加しました。
色鮮やかな民族衣装、絨毯の上に広がる食卓、そして言葉が通じなくても伝わる女性たちの温かさ。今回は、私が義母を通して見たモロッコの日常を紹介します。

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モロッコ人義母と私の衣装選び

モロッコ人の義母は時々、私を女性だけの集まりへ連れて行ってくれました。
よそのお宅へお邪魔して食事をする、その体験は普通のモロッコの暮らしを知るのにとても役立ちました。

ある昼下がり。ソファでのんびりしている私に元夫が言いました。

「今からママと近所の家へ行っておいでよ。ママが一緒に行こうってさ」

「あなたは一緒に行かないの?」

「僕は行けない。女性しか参加できない集まりだから」

アラビア語が全く喋れないのに、アラビア語しか話さない女性たちの集まりに参加して大丈夫だろうか。思うところはありましたが、暇を持て余している私にとっては魅力的なお誘いでした。
よそ様の家庭がどうなっているのか純粋に興味もありました。

元夫が私には理解できないアラビア語で義母に返事をしています。「すぐ行こうだってさ」その言葉を聞いた私は嬉しくなって階段を駆け降りました。

義母はお出かけ用のカフタン(モロッコの民族衣装)を選んでいました。少し豪華な集まりなのでしょう。いつもより華やかなカフタンが登場しています。
アレコレ悩んだ義母は、深い緑色に金色の刺繍を施したカフタンと、刺繍に合わせた金色のヒジャブを被りました。

象牙色の肌に彫りの深い顔立ち。赤いリップを引いた義母は、人目を引く美しさでした。

その様子を見て、私はピンクのバラ柄が全面に施された明るい印象のワンピースに着替えました。念のため義母に確認すると、彼女は満足そうに頷きます。言葉が通じない私たちは、いつもお互いを観察し合うことでそれを補っていました。

私の髪はそのまま。義母は私に一度もヒジャブを強制しませんでした。「被りたいなら貸すよ」それが彼女のスタンスで、私もそれならと被らないで済ませていました。

モロッコ人義母と私の衣装選び

絨毯の上に広がる食卓

時刻は午後2時。石畳の狭い道路を義母と2人で歩きます。日本の道路を歩いていたら誰もが振り返るほど派手な装いなのに、赤土色のモロッコの街では私たちの服装が馴染みます。

10分くらいで目的地に着きました。大きな3階建ての家です。
義母は扉の前に立つと、ドアをノックする代わりに大きな声で何かを叫びました。それに負けないくらい大きな声が上から降ってきました。見上げると、2階の窓から女性が顔を覗かせています。

玄関には鍵がかかっていませんでした。扉を開けると目の前に階段があり、私たちはそのまま2階に進みます。そこには、30畳か40畳はありそうな広い空間が広がっていました。

白いタイルの床には特大サイズのベルベル絨毯が何枚も敷かれ、中央には大皿に盛られたクスクスやチキン、色とりどりの野菜が並んでいました。
その料理を囲むように、15人ほどの女性たちが座っています。

映画で見たアラビアの世界、そのままの光景が目の前に広がっていました。私が暮らしていた家や親戚の家は、テーブルと椅子で食事をするスタイルだったので、絨毯の上に料理が並ぶ光景はとても新鮮でした。

私の中にあった「伝統的なアラビアの暮らし」。
しかも、テントや砂漠の上ではなく、モダンな一軒家の一室で伝統的な食事様式が繰り広げられているのです。
思わず「わぁー」と声が出ました。義母は私の反応を楽しんでいるようでした。

絨毯の上に広がる食卓

カフタンに彩られた空間

家主らしい女性がやってきます。大柄な女性で、褐色の肌をしていました。
理解できないアラビア語とその風貌に少し圧倒されます。促されるまま、クスクスに一番近い場所に座りました。

言葉が分からない私は周囲をじっと観察して過ごします。どの女性も美しいカフタンやジュラバを着ていて、凝った装飾や繊細な刺繍に目を奪われます。
「派手過ぎでは?」と思っていた義母の姿も、煌びやかな女性たちの中ではよく馴染んでいました。

30~50代の成人した子を持つ親が多いようで、ふくよかな姿の女性が大多数を占めます。大きな声と豊かな表情で、身振り手振りを交えながら会話を楽しんでいました。

家庭ごとに違うクスクスの味

食事の時間が始まると、女性たちは当たり前のように手を使って料理を食べ始めました。お肉や野菜はもちろん、ポロポロ崩れるクスクスでさえ右手一本で器用に平らげていきます。

私も真似してチャレンジしました。手の平を使ってギュッと一口大にまとめるのがポイントのようですが、何度トライしても口に入る前に半分ほど皿に落ちてしまいます。味わうより、どう食べたら良いのかに気を取られました。

苦戦している私を見かねたのか、若い女性がスプーンとフォークを持ってやってきます。彼女は何かを囁きましたが、私にアラビア語が通じていないことが分かると、残念そうに去っていきます。

頂いたスプーンとフォークで食事をすると、味の違いを深く感じました。並んでいる料理はどれもモロッコの伝統的な家庭料理ですが、義母が作るそれとは全く味が異なっていました。
「お味噌汁は各家庭で味が違うと言うけれど、クスクスもこんなに違うんだ」それほど明確な味の違いがありました。
時間はゆっくりと流れます。

やがて私の元にミントティーが回ってきました。大好きなミントティー。ここでも味の違いを感じました。こちらの家庭はミント控えめ甘さ強めです。
先ほどスプーンとフォークを持ってきてくれた女性が、今度は小さなクッキーをすすめてくれました。それは日本でも見かけるような西洋風のクッキーでしたが、ここモロッコでは日常のお菓子ではありません。売っているところさえ、ほとんど見たことがない高級なお菓子です。

「この家はきっと裕福なのだろう」

そう思った瞬間、なぜ義母がいつもより華やかなカフタンを選んでいたのか、その理由が分かった気がしました。

家庭ごとに違うクスクスの味

自由な女性たちの輪の中で

言葉は最後までほとんど通じませんでしたが、居心地の良い集まりでした。
異国から来たヒジャブもジュラバもカフタンも身に着けていない私を、みんなが温かく迎え入れてくれました。

「あれを食べなさい」「これを食べなさい」いつの間にか私のお皿は料理でいっぱいで、食べ方が分からず困っていると誰かが必ず目配せしてくれました。

女性たちの自由な振る舞いも、私をリラックスさせてくれました。
話の途中で自宅へ帰り、何事もなかったように戻ってくる人。食事よりも新調したカフタンのお披露目に夢中になる人。クッションにもたれてうたた寝をしている人。

そこにいた女性たちは、伝統的な衣装をまとい、昔ながらの食事を楽しみながらも思い思いに時間を過ごしていました。
誰も全力で女子会に参加していない。その自由な空気は、言葉の分からない私にも「ここにいていい」と伝えてくれているようでした。

現地の女性だけが集まる未知の女子会に、一人で参加して大丈夫だろうか。最初に抱いていた不安は杞憂に終わりました。
もし次も誘われたなら、私は迷わずついて行きたいと思っています。

R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel


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