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夏至とは、1年で1番昼が長い日で、この日から夏の暑さが本格的に始まる節目の時期です。現代の日本では、夏至の日に特別な行事が行われることがなく、食事も冬至のカボチャや春分の日のぼたもち、秋分の日のおはぎのように決まったものを食べることはほとんどありません。しかし、かつての日本では夏至の時期に特別な行事が日本各地で行われ、特別な食事を食べていたのです。
そこで今回は、日本各地に伝わる夏至の食べ物や海外の夏至の食べ物などについて解説していきます。
「夏至(げし)」とは、1年の中で最も昼の時間が長い日のことであり、この日から7月6日ごろまで続く期間のことを指します。
夏至は、古代中国で作られ、かつて日本でも使われていた「二十四節気(にじゅうしせっき)」という暦の中の季節の呼び方の1つです。二十四節気では、1年を春夏秋冬の4つの季節をそれぞれ6つに分けたもので、夏至は夏の中の4番目にあたり、現代では夏至の期間が始まる初日のことを指しています。
夏至の日は毎年6月20日~6月22日のいずれかになり、2026年の夏至は6月21日(日)です。
日本では、昔から夏至に特別な食べ物を食べる風習があります。夏至に食べるものは、日本全国で共通のものだけでなく、関東と関西の違いや都道府県によっても違いがあるので、詳しく紹介していきましょう。
夏至に食べる一般的な食べ物は「冬瓜(とうがん)」です。冬瓜とは、薄い黄緑色の皮で中身が白い瓜の仲間で名前が「冬瓜」なので冬の野菜と思われがちですが実は夏が旬の野菜で、冷暗所でそのまま保存すると冬までもつことからこの名前が付けられたといわれています。
冬瓜は水分を多く含んでいるため、体を冷やして暑い夏を乗り切るため、夏至に食べられるようになったと考えられています。また、冬瓜には夏バテを防止するビタミンCや利尿効果のあるカリウムなどが多く含まれているため、夏至にぴったりの食べ物ですね。
関東では、夏至に「新小麦の焼き餅」を食べる風習があります。新小麦の焼き餅とは、同量の新小麦ともち米を合わせて作った餅を焼いたもので、「お餅のように粘り強く物事を行うように」という願いを込められています。夏至に食べられるのは、昔から関東地方では米と小麦の二毛作が盛んに行われており、夏至の時期に採れる新小麦を使った餅を作る習慣ができたといわれており、かつては神様への供え物だったとされています。
関西では、二十四節気で6月21日ごろから7月6日ごろまでの夏至の期間内と重なる「半夏生(はんげしょう)」という時期に「タコ」を食べる風習があります。
「半夏生」とは、夏至から11日目となる7月2日ごろから7月7日の七夕の日までの5日間のことで、二十四節気と同じく古代中国で生まれて昔の日本でも使われていた「七十二候(しちじゅうにこう)」と、農作業など日本人の生活に照らし合わせて明治時代に作られた「雑節」と呼ばれる暦の中の1つです。
「半夏生」は農作業にとって大切な目安で、半夏生までに田植えを終わらせなければならないとされていました。これは、「半夏生」の時期に大雨が降ることが多かったため、それまでに田植えを終わらせないと米の収穫が半減するといわれていたからです。そのため、関西では半夏生前に田植えを終わらせ、植えた苗が吸盤のついたタコの足のようにしっかりと根付いて豊作になることを祈り、田の神様にタコを供えていたことが由来となって、半夏生にタコを食べるようになったといわれています。また、田植えという大仕事をねぎらうためやタコの足は8本なので末広がりで縁起が良いという由来もあるそうです。
日本は地域によって地形や気温などの差が大きいため、収穫できる農作物や風習などにも違いがありました。そのため、夏至に食べるものにも大きな違いがあり、現在でも特定の地域だけで食べられているものも数多くあります。ここでは、夏至の食文化が色濃く残っている地域で食べられているものを紹介していきましょう。
愛知県の一部地域(尾張地方の一部)では、夏至の日に「いちじく田楽」を食べる風習が昔からありました。「いちじく田楽」とは、いちじくを半分に切ったものに味噌をかけたものです。いちじくは、江戸時代初期に薬として中国から伝わった果物で、かつては不老長寿の効果があるともいわれていました。また、田楽とはもともと田植え前に豊作を祈るために行われていた歌舞で、田楽の舞の中で1本の竹に乗って舞うという演目があり、豆腐を串にさして味噌を塗り焼いたものが祖の舞の姿と似ているということから「田楽」と名付けられました。そのため、いちじく田楽は米の豊作と健康を願って夏至に食べられるようになったとされています。
しかし、愛知県でもとても珍しい風習のようで、現在ではほとんど食べられていないようです。
奈良県や大阪府では、半夏生に「半夏生餅(はげっしょもち)」を食べる風習があります。奈良県や大阪府では昔から小麦栽培が盛んで、半夏生の時期に、小麦が収穫され、田植えも一段落するため、小麦ともち米を使った餅にきな粉をまぶした半夏生餅が食べられてきました。半夏生餅は、田植えが終わると山に帰るとされる田の神様への感謝と豊作を願って行われる「早苗饗(さなぶり)」でも食べられることから、「さなぶり餅」とも呼ばれています。
福井県大野市周辺では、半夏生に「焼き鯖」を食べる風習があります。福井県の若狭湾では、昔から質の良い鯖が多く獲れており、竹串に刺して1匹丸ごと焼いた「まる焼き鯖」が郷土料理として有名です。半夏生に焼き鯖が食べられるようになったのは江戸時代からだとされています。
江戸時代、焼き鯖は病気の際にしか食べられないような特別な食べ物でしたが、当時の大野(現・大野市)を治めていた殿様が、田植えで疲れた農民をねぎらって、田植えが終わる半夏生の時期に「まる焼き鯖」を振舞ったことがこの風習の始まりといわれています。
香川県では、半夏生に「うどん」を食べる風習があります。昔、香川県の農家では、麦の収穫と田植えが終わる半夏生の時期に、収穫した麦でうどんを作り、農作業を手伝ってくれた人に振る舞っていました。この風習が広まっていき、半夏生にうどんを食べる風習として根付いていったとされています。
現在でも半夏生にうどんを食べる風習は残っており、香川県生麺事業協同組合によって半夏生の日である7月2日を「うどんの日」という記念日に制定され、様々なイベントが行われています。
三重県では、夏至に「みょうが」や「みょうが饅頭」を食べる風習があります。「みょうが」は6月が旬の香味野菜で、食欲増進や夏バテ予防の効果があるとされており、田植えが終わった夏至の頃にねぎらいの意味を込めて食べられるようになったとされています。また、みょうがの葉で包んで蒸した「みょうが饅頭」も夏至に食べられる三重県では定番の和菓子です。
夏至の日の食べ物ではありませんが、京都で毎年6月30日に「水無月(みなづき)」という和菓子が食べられています。「水無月」とは、三角形の外郎(ういろう)に甘く煮た小豆を乗せた和菓子で、三角の形は氷を表し、小豆には厄払いの意味が込められています。「水無月」が誕生したのは平安時代です。平安時代の宮中では旧暦の6月に暑気払いのため氷を食べる「氷室の節会(ひむろのせちえ)」と呼ばれる行事が行われていました。しかし、貴重な氷を食べることのできない庶民が氷を模した和菓子を作り、宮中行事を真似して旧暦の6月にこの和菓子を食べて暑気払いをするようになり、旧暦の6月を「水無月」と呼んでいたことからこの名前が付けられたとされています。
京都で6月30日に「水無月」を食べるようになったのは、この日がちょうど1年の折り返しの日にあたる「夏越しの祓(なごしのはらえ)」と呼ばれる日だからです。「夏越しの祓」には、これまでの半年間の罪や穢れを祓い、残りの半年間の無病息災を祈る神事が神社で行われます。この「夏越しの祓」と「氷室の節会」が結びついて、6月30日の「夏越しの祓」の日に、暑気払いと厄除けの意味から「水無月」を食べるようになったとされています。
夏至に特別な食べ物を食べるのは、大きく分けて3つの理由があります。
夏至の時期は、田植えが終わる時期でもあり、小麦の収穫が終わる時期でもあります。昔は、田植えが終わると米の豊作を願って田の神様に餅や縁起の良い食材などを供え、みんなでご馳走を食べて豊作を祈願していました。この風習が現在まで伝わり、各地域で夏至に特別なものを食べる習慣が根付いていったのです。
夏至は、一年で最も昼が長い日で、この日を境に本格的な夏を迎えます。そのため、ビタミンやカリウムなどを多く含む冬瓜やみょうがなどを食べて夏バテを予防するという意味があります。また、夏至は田植えが終わる時期であるため、疲労回復効果があるとされるタウリンを多く含んだタコや鯖を食べたり、餅やうどんなどの栄養価の高い食べ物を食べたりして体力を回復させ、暑い夏を乗り切ろうという意味が込められています。
日本には、昔から旬の食材を旬の時期に食べるという文化があります。昔の日本では、大半の人が農家であったため、旬の食べ物を食べて季節の節目を感じていました。現代では1年中食べることができるものが多くなり、旬の食材が分かりにくくなってしまいましたが、四季があり季節の移り変わりとともに生活してきた日本人の自然観が脈々と受け継がれ、現代でも季節の節目に旬のものを食べるということが文化として根付いていきました。そのため、夏至には冬瓜やいちじく、みょうが、タコ、小麦を使った餅やうどんなどが食べられているのです。
日本以外でも、夏至を特別な日として迎え、決まった食べ物を食べる習慣のある国があります。海外ではどのようなものを食べて過ごすのか、詳しく紹介していきましょう。
中国では、夏至には麺類(陽春麺、ジャージヤン麵など)を食べる習慣があります。中国では夏至の時期に小麦の収穫が行われるため、新小麦を使った麺類を食べて豊作を祝い長寿を願うという風習が、昔から受け継がれているからです。麺料理は地域によって違いがあり、南の方の地域ではスープだけで食べる陽春麺(ヤンツンめん)、北の方の地域では冷たい麺に色々な具材を乗せて食べるジージヤン麺などが食べられています。
その他にも、「お茶で煮込んだゆで卵」や「夏至餅(小麦で作った薄いパンのようなものに野菜や干し肉、豆腐などを挟んで食べるもの)」「ライチ」「ワンタン」「餃子」などを食べる地域もあります。
スウェーデンでは昔から、6月の夏至の時期に「ミッドサマー(Midsommar)」と呼ばれる夏至祭りが行われて、ニシンの酢漬け、新ジャガイモ、サワークリーム、デザートにイチゴを食べる習慣があります。かつてスウェーデンでは、夏至祭りが農業の始まりの日とされていました。そのため、この時期の農家には食料が不足しており、夏至祭りにはニシンの酢漬けや乾燥させた肉、乾燥ライ麦のパン、バターやチーズなどの保存食でお祝いしていました。そのため、「ニシンの酢漬け」は夏至祭りに欠かせない食べ物として現在でも受け継がれているのです。また、ジャガイモやイチゴは1700年代に入ってから栽培されるようになり、夏至の時期に収穫される「新ジャガイモ」や「イチゴ」が加わったとされています。夏至祭りではどの食材も必ず「スウェーデン産」のものでなければならないそうです。
イギリスでは、毎年夏至の日に古代遺跡のストーンヘンジで日の出を見てお祝いする夏至祭りが行われています。普段は立ち入りが制限されているストーンヘンジ周辺ですが、夏至の日には解放され、みんなで朝日を見てこれから始まる夏を祝います。ストーンヘンジは広大な草原の中にあるため、みんなピクニック料理を持参して食べます。イギリスの定番ピクニック料理は、サンドイッチ、ひき肉のパイ、スコッチエッグ、スコーン、ケーキ、チーズ、フルーツ、紅茶、ジュース、ポテトチップスなどで、自分で作ったり近くの町のお店で買ったりしたものを持っていくそうです。
もう1つ、イギリスで夏至の時期の飲み物といえば、エルダーフラワーを使ったドリンクです。イギリスでは、6月になるとエルダー(和名:西洋ニワトコ)という木に甘く爽やかな香りの白い小さな花がたくさん咲きます。イギリスの家庭では昔から夏至の時期にエルダーフラワーを使った「コーディアル」と呼ばれるシロップ作って炭酸水やシャンパンで割って飲むという習慣があります。また、エルダーフラワーは香りが良いだけでなく、発汗作用や利尿作用などがあり、昔からハーブティーとしても親しまれています。
現代では夏至の日に特別な食事をすることがほとんど無くなってしまいましたが、季節の変わり目を感じ、旬の食材の栄養素を取り込んで夏バテを予防するために、「夏至の食」を取り入れて楽しんでみてはいかがでしょうか。
夏はキッチンも暑くて、火を使った料理が億劫ですよね。また、夏が旬の野菜は瑞々しいものが多く、火を入れずに食べた方が美味しいものも多くあります。
そこで、きゅうりやトマトなどの夏野菜を使ったサラダや、みょうがやシソの葉などの薬味をたっぷり使った冷たいうどん、冷しゃぶサラダ、タコのカルパッチョなどの火を使い過ぎない料理がおススメです。
夏至は太陽を称える日でもあるので、光を感じられる明るい食卓を作るのもおすすめです。ベランダや庭、光がたくさん入る窓辺などに食卓を置いて夏の光を楽しみながら食事を楽しんではいかがでしょうか。暑い場合は、シェードやパラソルを使って日陰を作ると、柔らかな光になるので心地よく過ごせます。
「夏至の食」に発酵食品や保存食を取り入れた食事もおすすめです。
味噌や漬け物、納豆などの発酵食品は、腸内環境を整えて免疫力を上げる効果がある乳酸菌や麹菌、納豆菌などが多く含まれているため、「夏至の食」と組み合わせるとよいでしょう。また、夏は食材が傷みやすいため、夏野菜や果物、魚などを、酢付けやピクルス、コンポート、油漬けなどの保存食を取り入れるのもおすすめです。
日本では昔から、夏至の時期に梅酒や梅干し、らっきょう漬け、実山椒の佃煮などをする風習があります。とくに梅干しや梅酒の仕込みは「梅仕事」と呼ばれ、6月の風物詩となっています。
梅仕事について詳しくはこちらをご覧ください
夏至は、1年で1番昼が長い日で、世界各国では夏が始まる大切な日として祝う日ですが、日本では特別な日としてお祝いすることはほとんどありません。
これは、かつて日本で使われていた暦の中で、夏至は田植えで最も忙しい時期だったためではないかとされています。そのため、田植えが終わる半夏生に豊作祈願と慰労を合わせたお祝いをし、特別なご馳走を食べていました。半夏生に食べられるものは地方によって違いがありますが、いずれも旬の食材や夏バテを予防する効果がある食材が使われています。
農業に携わる人が少なくなったことで夏至や半夏生に特別な「夏至の食」を食べることはほとんどなくなってしまいましたが、地域によっては現代でもスーパーや和菓子屋さんなどで販売されているものもあるので、夏至や半夏生には「夏至の食」を食べて季節の節目を感じてみてはいかがでしょうか。
夏至とは、1年で1番昼が長い日で、この日から夏の暑さが本格的に始まる節目の時期です。
現代の日本では、夏至の日に特別な行事が行われることがなく、食事も冬至のカボチャや春分の日のぼたもち、秋分の日のおはぎのように決まったものを食べることはほとんどありません。
しかし、かつての日本では夏至の時期に特別な行事が日本各地で行われ、特別な食事を食べていたのです。
そこで今回は、日本各地に伝わる夏至の食べ物や海外の夏至の食べ物などについて解説していきます。
目次
夏至とは?その意味と由来
「夏至(げし)」とは、1年の中で最も昼の時間が長い日のことであり、この日から7月6日ごろまで続く期間のことを指します。
夏至は、古代中国で作られ、かつて日本でも使われていた「二十四節気(にじゅうしせっき)」という暦の中の季節の呼び方の1つです。
二十四節気では、1年を春夏秋冬の4つの季節をそれぞれ6つに分けたもので、夏至は夏の中の4番目にあたり、現代では夏至の期間が始まる初日のことを指しています。
夏至の日は毎年6月20日~6月22日のいずれかになり、2026年の夏至は6月21日(日)です。
地域別|夏至に食べる代表的な食べ物
日本では、昔から夏至に特別な食べ物を食べる風習があります。
夏至に食べるものは、日本全国で共通のものだけでなく、関東と関西の違いや都道府県によっても違いがあるので、詳しく紹介していきましょう。
【全国共通】冬瓜(とうがん)
夏至に食べる一般的な食べ物は「冬瓜(とうがん)」です。
冬瓜とは、薄い黄緑色の皮で中身が白い瓜の仲間で名前が「冬瓜」なので冬の野菜と思われがちですが実は夏が旬の野菜で、冷暗所でそのまま保存すると冬までもつことからこの名前が付けられたといわれています。
冬瓜は水分を多く含んでいるため、体を冷やして暑い夏を乗り切るため、夏至に食べられるようになったと考えられています。
また、冬瓜には夏バテを防止するビタミンCや利尿効果のあるカリウムなどが多く含まれているため、夏至にぴったりの食べ物ですね。
【関東】新小麦の焼き餅
関東では、夏至に「新小麦の焼き餅」を食べる風習があります。
新小麦の焼き餅とは、同量の新小麦ともち米を合わせて作った餅を焼いたもので、「お餅のように粘り強く物事を行うように」という願いを込められています。
夏至に食べられるのは、昔から関東地方では米と小麦の二毛作が盛んに行われており、夏至の時期に採れる新小麦を使った餅を作る習慣ができたといわれており、かつては神様への供え物だったとされています。
【関西】タコ
関西では、二十四節気で6月21日ごろから7月6日ごろまでの夏至の期間内と重なる「半夏生(はんげしょう)」という時期に「タコ」を食べる風習があります。
「半夏生」とは、夏至から11日目となる7月2日ごろから7月7日の七夕の日までの5日間のことで、二十四節気と同じく古代中国で生まれて昔の日本でも使われていた「七十二候(しちじゅうにこう)」と、農作業など日本人の生活に照らし合わせて明治時代に作られた「雑節」と呼ばれる暦の中の1つです。
「半夏生」は農作業にとって大切な目安で、半夏生までに田植えを終わらせなければならないとされていました。
これは、「半夏生」の時期に大雨が降ることが多かったため、それまでに田植えを終わらせないと米の収穫が半減するといわれていたからです。
そのため、関西では半夏生前に田植えを終わらせ、植えた苗が吸盤のついたタコの足のようにしっかりと根付いて豊作になることを祈り、田の神様にタコを供えていたことが由来となって、半夏生にタコを食べるようになったといわれています。
また、田植えという大仕事をねぎらうためやタコの足は8本なので末広がりで縁起が良いという由来もあるそうです。
【各地】夏至の食べ物
日本は地域によって地形や気温などの差が大きいため、収穫できる農作物や風習などにも違いがありました。
そのため、夏至に食べるものにも大きな違いがあり、現在でも特定の地域だけで食べられているものも数多くあります。
ここでは、夏至の食文化が色濃く残っている地域で食べられているものを紹介していきましょう。
いちじく田楽(愛知)
愛知県の一部地域(尾張地方の一部)では、夏至の日に「いちじく田楽」を食べる風習が昔からありました。
「いちじく田楽」とは、いちじくを半分に切ったものに味噌をかけたものです。
いちじくは、江戸時代初期に薬として中国から伝わった果物で、かつては不老長寿の効果があるともいわれていました。
また、田楽とはもともと田植え前に豊作を祈るために行われていた歌舞で、田楽の舞の中で1本の竹に乗って舞うという演目があり、豆腐を串にさして味噌を塗り焼いたものが祖の舞の姿と似ているということから「田楽」と名付けられました。
そのため、いちじく田楽は米の豊作と健康を願って夏至に食べられるようになったとされています。
しかし、愛知県でもとても珍しい風習のようで、現在ではほとんど食べられていないようです。
半夏生餅(奈良・大阪)
奈良県や大阪府では、半夏生に「半夏生餅(はげっしょもち)」を食べる風習があります。
奈良県や大阪府では昔から小麦栽培が盛んで、半夏生の時期に、小麦が収穫され、田植えも一段落するため、小麦ともち米を使った餅にきな粉をまぶした半夏生餅が食べられてきました。
半夏生餅は、田植えが終わると山に帰るとされる田の神様への感謝と豊作を願って行われる「早苗饗(さなぶり)」でも食べられることから、「さなぶり餅」とも呼ばれています。
焼き鯖(福井)
福井県大野市周辺では、半夏生に「焼き鯖」を食べる風習があります。
福井県の若狭湾では、昔から質の良い鯖が多く獲れており、竹串に刺して1匹丸ごと焼いた「まる焼き鯖」が郷土料理として有名です。
半夏生に焼き鯖が食べられるようになったのは江戸時代からだとされています。
江戸時代、焼き鯖は病気の際にしか食べられないような特別な食べ物でしたが、当時の大野(現・大野市)を治めていた殿様が、田植えで疲れた農民をねぎらって、田植えが終わる半夏生の時期に「まる焼き鯖」を振舞ったことがこの風習の始まりといわれています。
うどん(香川)
香川県では、半夏生に「うどん」を食べる風習があります。
昔、香川県の農家では、麦の収穫と田植えが終わる半夏生の時期に、収穫した麦でうどんを作り、農作業を手伝ってくれた人に振る舞っていました。
この風習が広まっていき、半夏生にうどんを食べる風習として根付いていったとされています。
現在でも半夏生にうどんを食べる風習は残っており、香川県生麺事業協同組合によって半夏生の日である7月2日を「うどんの日」という記念日に制定され、様々なイベントが行われています。
みょうが(三重)
三重県では、夏至に「みょうが」や「みょうが饅頭」を食べる風習があります。
「みょうが」は6月が旬の香味野菜で、食欲増進や夏バテ予防の効果があるとされており、田植えが終わった夏至の頃にねぎらいの意味を込めて食べられるようになったとされています。
また、みょうがの葉で包んで蒸した「みょうが饅頭」も夏至に食べられる三重県では定番の和菓子です。
和菓子「水無月」(京都)
夏至の日の食べ物ではありませんが、京都で毎年6月30日に「水無月(みなづき)」という和菓子が食べられています。
「水無月」とは、三角形の外郎(ういろう)に甘く煮た小豆を乗せた和菓子で、三角の形は氷を表し、小豆には厄払いの意味が込められています。
「水無月」が誕生したのは平安時代です。
平安時代の宮中では旧暦の6月に暑気払いのため氷を食べる「氷室の節会(ひむろのせちえ)」と呼ばれる行事が行われていました。
しかし、貴重な氷を食べることのできない庶民が氷を模した和菓子を作り、宮中行事を真似して旧暦の6月にこの和菓子を食べて暑気払いをするようになり、旧暦の6月を「水無月」と呼んでいたことからこの名前が付けられたとされています。
京都で6月30日に「水無月」を食べるようになったのは、この日がちょうど1年の折り返しの日にあたる「夏越しの祓(なごしのはらえ)」と呼ばれる日だからです。
「夏越しの祓」には、これまでの半年間の罪や穢れを祓い、残りの半年間の無病息災を祈る神事が神社で行われます。
この「夏越しの祓」と「氷室の節会」が結びついて、6月30日の「夏越しの祓」の日に、暑気払いと厄除けの意味から「水無月」を食べるようになったとされています。
夏至の食べ物の風習がある理由
夏至に特別な食べ物を食べるのは、大きく分けて3つの理由があります。
農作物の豊作祈願
夏至の時期は、田植えが終わる時期でもあり、小麦の収穫が終わる時期でもあります。
昔は、田植えが終わると米の豊作を願って田の神様に餅や縁起の良い食材などを供え、みんなでご馳走を食べて豊作を祈願していました。
この風習が現在まで伝わり、各地域で夏至に特別なものを食べる習慣が根付いていったのです。
夏バテ防止・疲労回復
夏至は、一年で最も昼が長い日で、この日を境に本格的な夏を迎えます。
そのため、ビタミンやカリウムなどを多く含む冬瓜やみょうがなどを食べて夏バテを予防するという意味があります。
また、夏至は田植えが終わる時期であるため、疲労回復効果があるとされるタウリンを多く含んだタコや鯖を食べたり、餅やうどんなどの栄養価の高い食べ物を食べたりして体力を回復させ、暑い夏を乗り切ろうという意味が込められています。
旬の食材を食べる文化
日本には、昔から旬の食材を旬の時期に食べるという文化があります。
昔の日本では、大半の人が農家であったため、旬の食べ物を食べて季節の節目を感じていました。
現代では1年中食べることができるものが多くなり、旬の食材が分かりにくくなってしまいましたが、四季があり季節の移り変わりとともに生活してきた日本人の自然観が脈々と受け継がれ、現代でも季節の節目に旬のものを食べるということが文化として根付いていきました。
そのため、夏至には冬瓜やいちじく、みょうが、タコ、小麦を使った餅やうどんなどが食べられているのです。
世界では夏至に何を食べる?
日本以外でも、夏至を特別な日として迎え、決まった食べ物を食べる習慣のある国があります。
海外ではどのようなものを食べて過ごすのか、詳しく紹介していきましょう。
中国
中国では、夏至には麺類(陽春麺、ジャージヤン麵など)を食べる習慣があります。
中国では夏至の時期に小麦の収穫が行われるため、新小麦を使った麺類を食べて豊作を祝い長寿を願うという風習が、昔から受け継がれているからです。
麺料理は地域によって違いがあり、南の方の地域ではスープだけで食べる陽春麺(ヤンツンめん)、北の方の地域では冷たい麺に色々な具材を乗せて食べるジージヤン麺などが食べられています。
その他にも、「お茶で煮込んだゆで卵」や「夏至餅(小麦で作った薄いパンのようなものに野菜や干し肉、豆腐などを挟んで食べるもの)」「ライチ」「ワンタン」「餃子」などを食べる地域もあります。
スウェーデン
スウェーデンでは昔から、6月の夏至の時期に「ミッドサマー(Midsommar)」と呼ばれる夏至祭りが行われて、ニシンの酢漬け、新ジャガイモ、サワークリーム、デザートにイチゴを食べる習慣があります。
かつてスウェーデンでは、夏至祭りが農業の始まりの日とされていました。
そのため、この時期の農家には食料が不足しており、夏至祭りにはニシンの酢漬けや乾燥させた肉、乾燥ライ麦のパン、バターやチーズなどの保存食でお祝いしていました。
そのため、「ニシンの酢漬け」は夏至祭りに欠かせない食べ物として現在でも受け継がれているのです。
また、ジャガイモやイチゴは1700年代に入ってから栽培されるようになり、夏至の時期に収穫される「新ジャガイモ」や「イチゴ」が加わったとされています。
夏至祭りではどの食材も必ず「スウェーデン産」のものでなければならないそうです。
イギリス
イギリスでは、毎年夏至の日に古代遺跡のストーンヘンジで日の出を見てお祝いする夏至祭りが行われています。
普段は立ち入りが制限されているストーンヘンジ周辺ですが、夏至の日には解放され、みんなで朝日を見てこれから始まる夏を祝います。
ストーンヘンジは広大な草原の中にあるため、みんなピクニック料理を持参して食べます。
イギリスの定番ピクニック料理は、サンドイッチ、ひき肉のパイ、スコッチエッグ、スコーン、ケーキ、チーズ、フルーツ、紅茶、ジュース、ポテトチップスなどで、自分で作ったり近くの町のお店で買ったりしたものを持っていくそうです。
もう1つ、イギリスで夏至の時期の飲み物といえば、エルダーフラワーを使ったドリンクです。
イギリスでは、6月になるとエルダー(和名:西洋ニワトコ)という木に甘く爽やかな香りの白い小さな花がたくさん咲きます。
イギリスの家庭では昔から夏至の時期にエルダーフラワーを使った「コーディアル」と呼ばれるシロップ作って炭酸水やシャンパンで割って飲むという習慣があります。
また、エルダーフラワーは香りが良いだけでなく、発汗作用や利尿作用などがあり、昔からハーブティーとしても親しまれています。
現代でも取り入れたい「夏至の食」の楽しみ方
現代では夏至の日に特別な食事をすることがほとんど無くなってしまいましたが、季節の変わり目を感じ、旬の食材の栄養素を取り込んで夏バテを予防するために、「夏至の食」を取り入れて楽しんでみてはいかがでしょうか。
「火を使い過ぎない料理」で夏至らしさを
夏はキッチンも暑くて、火を使った料理が億劫ですよね。
また、夏が旬の野菜は瑞々しいものが多く、火を入れずに食べた方が美味しいものも多くあります。
そこで、きゅうりやトマトなどの夏野菜を使ったサラダや、みょうがやシソの葉などの薬味をたっぷり使った冷たいうどん、冷しゃぶサラダ、タコのカルパッチョなどの火を使い過ぎない料理がおススメです。
光を楽しむ食卓
夏至は太陽を称える日でもあるので、光を感じられる明るい食卓を作るのもおすすめです。
ベランダや庭、光がたくさん入る窓辺などに食卓を置いて夏の光を楽しみながら食事を楽しんではいかがでしょうか。
暑い場合は、シェードやパラソルを使って日陰を作ると、柔らかな光になるので心地よく過ごせます。
発酵・保存食との組み合わせ
「夏至の食」に発酵食品や保存食を取り入れた食事もおすすめです。
味噌や漬け物、納豆などの発酵食品は、腸内環境を整えて免疫力を上げる効果がある乳酸菌や麹菌、納豆菌などが多く含まれているため、「夏至の食」と組み合わせるとよいでしょう。
また、夏は食材が傷みやすいため、夏野菜や果物、魚などを、酢付けやピクルス、コンポート、油漬けなどの保存食を取り入れるのもおすすめです。
日本では昔から、夏至の時期に梅酒や梅干し、らっきょう漬け、実山椒の佃煮などをする風習があります。
とくに梅干しや梅酒の仕込みは「梅仕事」と呼ばれ、6月の風物詩となっています。
梅仕事について詳しくはこちらをご覧ください
夏至に旬のものを食べて暑い夏を迎える準備をしよう
夏至は、1年で1番昼が長い日で、世界各国では夏が始まる大切な日として祝う日ですが、日本では特別な日としてお祝いすることはほとんどありません。
これは、かつて日本で使われていた暦の中で、夏至は田植えで最も忙しい時期だったためではないかとされています。
そのため、田植えが終わる半夏生に豊作祈願と慰労を合わせたお祝いをし、特別なご馳走を食べていました。
半夏生に食べられるものは地方によって違いがありますが、いずれも旬の食材や夏バテを予防する効果がある食材が使われています。
農業に携わる人が少なくなったことで夏至や半夏生に特別な「夏至の食」を食べることはほとんどなくなってしまいましたが、地域によっては現代でもスーパーや和菓子屋さんなどで販売されているものもあるので、夏至や半夏生には「夏至の食」を食べて季節の節目を感じてみてはいかがでしょうか。
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