イースターとラマダンに共通する「断食」の意味とは?宗教を超えた共通点

日本にも定着しつつあるイースター(復活祭)。

ある日、ロシア人の友人が言いました「もうすぐイースター、辛い日々がやってくる」と。
その言葉は、イスラム教徒の前夫が、ラマダンを前にして口にしていたものと、あまりにもよく似ていました。

一見、遠い存在に思えるイースターとラマダン、その共通点を紹介します。

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【イースター】7週間もの食事制限

キリスト教の祝日・イースター。詳しくは知らないものの、ウサギやカラフルな卵といったシンボルから、春らしいふわふわしたイメージを持っていました。〝何となく楽しそう〟な祝日だと。

でもある日、ロシア正教会の敬虔な信者であるロシア人の友人が言いました。
「もうじきイースターが始まる。知ってる?私たちは7週間前から食事制限を始めるんだよ」

彼女の説明によると、1週目はお肉が食べられなくなり、2週目は乳製品がダメになり、その後は魚、油、お酒…と、週を追うごとに食べられるものが消えていく食事制限を行うと言います。

「最後の週は、ほとんど食べられるものがなくなる。もう本当に考えるだけで辛い」
その口ぶりが心底辛そうで、私はビックリして思わず聞いてしまいました。

「何のために、そんな事するの?」

「イースターを祝う気持ちを高めていくためだよ」

よく理解できないでいると、彼女は簡潔にこう言いました。
「不便さを受け入れて、感謝の気持ちを思い出すの。欲から離れることで、自分を鎮めるの」

【ラマダン】厳格な禁酒と断食 ロシアやカザフスタンで愛される揚げパン。もちもちした食感とチーズの風味が堪らない!

【ラマダン】厳格な禁酒と断食

イースター前の食事制限は、ただの我慢ではなく、お祝いに向かうために自分を整えていく時間。

そう言われて、私はピンときました。イスラム教徒だった前夫も、ラマダンに入る40日前からお酒を抜いて準備していました。
お酒を止める理由は「ラマダンという素晴らしい期間を清い体で迎えるため」。
また、ラマダンの期間に飲食を止めるのは「貧しい人々の気持ちを身をもって知るため。そして、感謝の気持ちを思い出すため」でした。

「なんだかイスラム教のラマダンと似ているね」率直に気持ちを伝えます。
彼女は嫌がることなく答えました。
「そうかもね。私達、結局は創造主を崇めてるんだから」
あまりにも的を射た回答でした。

「イースターの当日は、制限されていた食べ物が全部食べられるの!あの幸せな気分は最高だよ。」
とびきりの笑顔で話してくれる彼女の姿が、再び前夫と重なります。
陽が沈む瞬間を、待って、待って、待って、やっと口にする水一滴のおいしさ、沸き上がる有り難さ。それは文字通り最高の気分になれる瞬間です。

【イースター】7週間もの食事制限 左右対称の美しいモスク

【イースター・ラマダン】日程は暦によって変動

イースターの日付は毎年変わります。2026年の今年、西洋教会では4月5日、ロシア正教会の場合は4月12日です。
これはグレゴリオ暦、ユリウス暦の違いによって生まれるもの。同じキリスト教、同じイースター、同じ祝日、なのに日付が違います。

対してイスラム教のラマダンも、毎年イスラム暦に基づいて開催時期が変わります。2026年は2月19日頃~3月20日頃でした。

前夫が初めて日本で迎えたラマダンは真夏でした。
敬虔な信者だった前夫は水を飲むことさえ拒否。真夏に水分を拒否することは、生死に関わる問題なので、ハラハラしながら見守っていました。
それだけに、今年の寒い時期のラマダンには、心からホッとしました。

また、ラマダンは新月を開始日としているため、国によって開始日が前後します。
住んでいる国の新月、公式発表の新月、どの新月をスタートにするかで同じラマダンでも日付が変わるのです。

イースターもラマダンも動く宗教行事です。イースターが“春の中で動く祝日”だとすれば、ラマダンは〝季節そのものを越えて動く行事〟。
祝日が動くことは、日本でカレンダー通りの生活をしていると少し受け入れがたいもののように思えます。でも、彼らにとっては、宗教行事に合わせて自分たちの生活を変えるのが当たり前。

日本人が春分や秋分、中秋の名月を確かめて季節の変化を意識するように、彼らも祝日の訪れを意識しながら毎日を過ごしています。

異なる宗教でも共通する心

国も宗教も違う2人が食事を制限して自分を律し、その先にある祝福の瞬間を待つ。その姿は、私の目に驚くほど似て映りました。

本人たちは「辛い」「大変」そう言いつつも、食事制限を止めることをしません。
そのゆるぎない信仰心は、どこか美しく、他者が踏み込めない「聖域」のようでもありました。私が簡単に「止めたら?」と言える隙など、微塵もありません。

食べ物や水を絶つ辛さ。それを乗り越えた先にある、極上の喜び。食べられることへの感謝の気持ち。
イースターのご馳走も、ラマダンの夕食も、同じ感覚で人々の心を導き、満たしているのでしょう。
国や宗教が違っても、人は待つことで祝福を味わう生き物なのかもしれません。

R.香月(かつき)プロフィール画像

筆者プロフィール:R.香月(かつき)

大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel


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