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海外旅行の最中、突然壊れたスマホ。現地調達のためショップを覗いてみると、見たことも聞いたこともないメーカーばかりが並んでいます。「怪しいメーカー…」でも、調べてみるとそれこそが“世界の主流”でした。アレ?もしかして日本は置いていかれている…?
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旅先でスマホが壊れたのは、よりによってフィリピン旅行の前半のことでした。突然、真っ黒になった画面。私のスマホは静まり返り、こちらからの操作を一切受け付けません。
でも、ここは海外。スマホが壊れたところで、対処のしようがありません。しばらくスマホなし生活を謳歌しました。そして気付きます。
――スマホなんてなくたって、特別困らないんだ
そして、ある日ふと思い出しました。私は SIMフリーのスマホを使っています。キャリアの縛りもありません。極端に言えば「世界中どこでもスマホを買い替えられる」のです。ワクワクしました。
――海外でスマホを買う。その経験、ちょっと面白そうじゃない?
――どうせ買わなきゃいけないなら、こっちで買っちゃえば?
「自分自身への最高のお土産が決まった」そう思って、フィリピンに住んでいる日本人に相談してみました。ところが返ってきたのは意外なほど強い否定。
「やめたほうがいいよ」
「フィリピンは高いだけ。買う意味ないよ」
「こっちで買ったって日本では使えないよ」
あまりに皆が“否定”するので、私は逆にワクワクしてしまいました。こうして、早速ショップ巡りが始まりました。
まず向かったのがショッピングモール。私は iPhoneユーザーではないし、そんなに高いスマホは必要ありません。なので、高級路線ではなく庶民的なショッピングモールへ行きました。
店内をグルグルしていると早速スマホショップを見つけます。一軒目は、扉が開くようなちゃんとしたお店ではなく、半露店のような通路脇にあるお店でした。ショーケースには 50台近くのスマホが並んでいます。日本では滅多に出会えない NOKIAや、昔ながらのボタン式(テンキー)で文字を打つガラホ。そして見たことも聞いたこともないメーカーのスマホまでズラリと並んでいました。
色とりどりの箱。知らないメーカー名。どのスマホも日本のそれより大きめでした。Canonのカメラを搭載したもの、有名なSamsung、2つ折り・3つ折りのスマホは日本と同じくらい高額でした。
問題なのは、名前も知らないメーカーたち。説明書きを見ると値段とスペックが一致していません。1万円前後でストレージは 125GB以上、バッテリーも大容量と言われる数値以上。さらに防水・防塵でカメラ性能も良し。
価格設定があり得ないほど安いのです。あまりに安すぎて、一瞬おもちゃと勘違いしたほどでした。品ぞろえは豊富で価格も安めですが、デモ機がありません。安すぎる機種に混乱しながら店を後にしました。
二軒目は電気屋さん。日本と変わらない煌々とした照明が出迎えてくれます。こちらにはデモ機がズラリ。実際に触ってみると、知らないメーカーでも日本のスマホと変わらないくらいサクサク動き、カメラも高性能であることが分かりました。
次の日は、また別のショッピングモールへ。少し大きめの場所で、各スマホメーカーが個別のブースを出しています。見たことのないメーカーばかりでしたが、どのブースにも専属のスタッフがいて、最新機種からお手頃価格の型落ちまでズラリと展示されていました。デモ機も複数台あり、自由に触ることができます。
すべての店で尋ねました。「このスマホ、日本でも使える?」
どこのお店でも店員さんはYESと答えます。「当然でしょ?私たちはワールド版しか取り扱わないよ」と逆に不思議がられたりもしました。
日本で売られるスマホは“日本向け仕様”が当然だけれど、こちらでは逆。「基本は世界向け」という言葉が胸に残りました。
――あれ?もしかして日本って、世界から見るとスマホ後進国なの?そう思った瞬間、胸がザワッとしました。
自分に合うスマホを探す旅は続きます。気になった機種を4つに絞り込んで調べてみると、驚いたことにすべて中国メーカーでした。
中でも特に目を引いたのが「TECNO」というブランド。日本では名前すら聞いたことがありませんでしたが、実はアフリカでシェア1位を誇る巨大メーカーでした。
さらに調べていくと、低価格・高性能で注目していたTECNO、Infinix、itelの3社は、すべて「Transsion(伝音)」という企業の傘下であることが分かりました。Transsion社は、2025年には世界スマホシェアで第4位にまで躍進しています。日本人のほとんどが聞いたこともないブランドなのに、世界4位。その事実に、思わず息をのみました。
日本が“ガラパゴス”だと言われる理由が、少し分かった気がしました。というより、日本はもう世界の主戦場に入っていないのかもしれません。残酷な現実。ただの小さなスマホ選びの中に、こんな世界の縮図が隠れていたなんて…。
翌日、心を決めてスマホを買いに行きました。価格、性能、デザイン、全部が合格点以上でした。ところが仕様をよく見ると、衝撃の事実が判明します。――日本語が初期設定にない。
英語、スペイン語、フランス語、中国語、アラビア語。さらによく分からない言語まで入っているのに、日本語だけが抜けています。後付けで日本語アプリを入れればむりやり日本語化できるようですが、やはり怖いものがありました。泣く泣く、そのモデルは見送ることに。
結局、1万4,000円ほどで別メーカーのスマホを購入しました。ストレージは128GB、RAMは8GB。カメラも普通に使えて、防水・防塵、衝撃吸収性能まで備えています。手に取った瞬間「これでいいや」ではなく「これがいい」と思えるデザインだったのも決め手。旅先で出会った、知らない国の知らないメーカーのスマホになんだか縁のようなものを感じました。
購入を決めると、その場で店員さんが箱を開けてくれました。「このまま、すぐ使えるようにしておくね」そう言うやいなや、スマホを拭いてガラスフィルムを貼り、SIMカードを入れ、スマホケースをはめ、さらには「どこの国の時間に合わせる?」と初期設定まで全部すませてくれました。
すべての作業を手際よく進める店員さん。日本だと有料になるサービスがすべて無料でした。さらに「サービスだから」とスマホアクセサリーを選ばせてくれます。“人の手”が加わるサービスに触れたことで、買い物は特別な思い出になりました。
フィリピンで購入したスマホは、帰国後も問題なく使えています。それを見るたびに思い返します。「なんであの時、日本の人は“買わないほうがいい”なんて言ったんだろう?」
彼らに悪意はなかったでしょう。きっと、知らなかっただけ。日本のスマホ市場が世界の主流から外れていることも、世界には“日本で見かけないメーカー”が当たり前に浸透していることも。
スマホが壊れたことは不運でしたが、その不便さが連れてきてくれたのは、日本にいたら決して触れられない景色でした。「日本から見える世界」「世界から見える日本」。その境界に足を踏み入れたことで、また少しだけ世界が広がった気がしました。
※日本国内では、技適マークのない海外製端末は原則使用できません。利用時はご注意ください。
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大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
海外旅行の最中、突然壊れたスマホ。
現地調達のためショップを覗いてみると、見たことも聞いたこともないメーカーばかりが並んでいます。「怪しいメーカー…」でも、調べてみるとそれこそが“世界の主流”でした。
アレ?もしかして日本は置いていかれている…?
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目次
旅先で突然スマホが壊れたら
旅先でスマホが壊れたのは、よりによってフィリピン旅行の前半のことでした。
突然、真っ黒になった画面。私のスマホは静まり返り、こちらからの操作を一切受け付けません。
でも、ここは海外。スマホが壊れたところで、対処のしようがありません。しばらくスマホなし生活を謳歌しました。そして気付きます。
――スマホなんてなくたって、特別困らないんだ
そして、ある日ふと思い出しました。私は SIMフリーのスマホを使っています。キャリアの縛りもありません。
極端に言えば「世界中どこでもスマホを買い替えられる」のです。ワクワクしました。
――海外でスマホを買う。その経験、ちょっと面白そうじゃない?
――どうせ買わなきゃいけないなら、こっちで買っちゃえば?
「自分自身への最高のお土産が決まった」
そう思って、フィリピンに住んでいる日本人に相談してみました。
ところが返ってきたのは意外なほど強い否定。
「やめたほうがいいよ」
「フィリピンは高いだけ。買う意味ないよ」
「こっちで買ったって日本では使えないよ」
あまりに皆が“否定”するので、私は逆にワクワクしてしまいました。
こうして、早速ショップ巡りが始まりました。
世界には知らないスマホがこんなにあった
まず向かったのがショッピングモール。
私は iPhoneユーザーではないし、そんなに高いスマホは必要ありません。なので、高級路線ではなく庶民的なショッピングモールへ行きました。
店内をグルグルしていると早速スマホショップを見つけます。
一軒目は、扉が開くようなちゃんとしたお店ではなく、半露店のような通路脇にあるお店でした。
ショーケースには 50台近くのスマホが並んでいます。
日本では滅多に出会えない NOKIAや、昔ながらのボタン式(テンキー)で文字を打つガラホ。そして見たことも聞いたこともないメーカーのスマホまでズラリと並んでいました。
色とりどりの箱。知らないメーカー名。
どのスマホも日本のそれより大きめでした。Canonのカメラを搭載したもの、有名なSamsung、2つ折り・3つ折りのスマホは日本と同じくらい高額でした。
問題なのは、名前も知らないメーカーたち。説明書きを見ると値段とスペックが一致していません。
1万円前後でストレージは 125GB以上、バッテリーも大容量と言われる数値以上。
さらに防水・防塵でカメラ性能も良し。
価格設定があり得ないほど安いのです。あまりに安すぎて、一瞬おもちゃと勘違いしたほどでした。
品ぞろえは豊富で価格も安めですが、デモ機がありません。安すぎる機種に混乱しながら店を後にしました。
二軒目は電気屋さん。日本と変わらない煌々とした照明が出迎えてくれます。
こちらにはデモ機がズラリ。実際に触ってみると、知らないメーカーでも日本のスマホと変わらないくらいサクサク動き、カメラも高性能であることが分かりました。
旅で出会った人の多くがvivoユーザーでした。
市場を歩いて気づいた、日本との“距離”
次の日は、また別のショッピングモールへ。少し大きめの場所で、各スマホメーカーが個別のブースを出しています。
見たことのないメーカーばかりでしたが、どのブースにも専属のスタッフがいて、最新機種からお手頃価格の型落ちまでズラリと展示されていました。デモ機も複数台あり、自由に触ることができます。
すべての店で尋ねました。
「このスマホ、日本でも使える?」
どこのお店でも店員さんはYESと答えます。
「当然でしょ?私たちはワールド版しか取り扱わないよ」
と逆に不思議がられたりもしました。
日本で売られるスマホは“日本向け仕様”が当然だけれど、こちらでは逆。
「基本は世界向け」という言葉が胸に残りました。
――あれ?もしかして日本って、世界から見るとスマホ後進国なの?
そう思った瞬間、胸がザワッとしました。
洗練された世界観です。
海外版スマホの世界シェアから見えた日本との差
自分に合うスマホを探す旅は続きます。
気になった機種を4つに絞り込んで調べてみると、驚いたことにすべて中国メーカーでした。
中でも特に目を引いたのが「TECNO」というブランド。日本では名前すら聞いたことがありませんでしたが、実はアフリカでシェア1位を誇る巨大メーカーでした。
さらに調べていくと、低価格・高性能で注目していたTECNO、Infinix、itelの3社は、すべて「Transsion(伝音)」という企業の傘下であることが分かりました。Transsion社は、2025年には世界スマホシェアで第4位にまで躍進しています。
日本人のほとんどが聞いたこともないブランドなのに、世界4位。その事実に、思わず息をのみました。
日本が“ガラパゴス”だと言われる理由が、少し分かった気がしました。
というより、日本はもう世界の主戦場に入っていないのかもしれません。残酷な現実。
ただの小さなスマホ選びの中に、こんな世界の縮図が隠れていたなんて…。
破格の高性能モデルを購入
翌日、心を決めてスマホを買いに行きました。価格、性能、デザイン、全部が合格点以上でした。ところが仕様をよく見ると、衝撃の事実が判明します。
――日本語が初期設定にない。
英語、スペイン語、フランス語、中国語、アラビア語。さらによく分からない言語まで入っているのに、日本語だけが抜けています。
後付けで日本語アプリを入れればむりやり日本語化できるようですが、やはり怖いものがありました。泣く泣く、そのモデルは見送ることに。
結局、1万4,000円ほどで別メーカーのスマホを購入しました。
ストレージは128GB、RAMは8GB。カメラも普通に使えて、防水・防塵、衝撃吸収性能まで備えています。
手に取った瞬間「これでいいや」ではなく「これがいい」と思えるデザインだったのも決め手。旅先で出会った、知らない国の知らないメーカーのスマホになんだか縁のようなものを感じました。
購入を決めると、その場で店員さんが箱を開けてくれました。
「このまま、すぐ使えるようにしておくね」
そう言うやいなや、スマホを拭いてガラスフィルムを貼り、SIMカードを入れ、スマホケースをはめ、さらには「どこの国の時間に合わせる?」と初期設定まで全部すませてくれました。
すべての作業を手際よく進める店員さん。日本だと有料になるサービスがすべて無料でした。
さらに「サービスだから」とスマホアクセサリーを選ばせてくれます。“人の手”が加わるサービスに触れたことで、買い物は特別な思い出になりました。
異国で選んだ一台が見せてくれた景色
フィリピンで購入したスマホは、帰国後も問題なく使えています。それを見るたびに思い返します。
「なんであの時、日本の人は“買わないほうがいい”なんて言ったんだろう?」
彼らに悪意はなかったでしょう。きっと、知らなかっただけ。
日本のスマホ市場が世界の主流から外れていることも、世界には“日本で見かけないメーカー”が当たり前に浸透していることも。
スマホが壊れたことは不運でしたが、その不便さが連れてきてくれたのは、日本にいたら決して触れられない景色でした。
「日本から見える世界」「世界から見える日本」。その境界に足を踏み入れたことで、また少しだけ世界が広がった気がしました。
※日本国内では、技適マークのない海外製端末は原則使用できません。利用時はご注意ください。
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フィリピンでのもうひとつの異文化体験▼
フィリピンではバイタクで冒険気分を味わおう▼
筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel