究極の月が輝く中国の祝日「中秋節」 2025年はいつ?

中秋節と聞いて何を思い浮かべますか?
きっと多くの方が月餅を連想するのではないでしょうか。とってもおいしいですよね!

月餅をはじめ中秋節の行事には、アジア文化の精髄ともいうべき深い思想や神話、歴史が込められています。
いったいどんな行事で、いつ行われるのでしょうか?

この記事では、中秋節の由来や2025年の日付、国ごとの風習の違いや楽しみ方まで詳しく紹介します。
満月が一年で最も美しく輝くこの日を深く知ることで、文化や季節の魅力が鮮やかに見えてきますよ。秋の夜、月を見上げながら、あなたも中秋の心を味わってみませんか?

中秋節とは?

中秋節とは?

旧暦の8月15日は「中秋節」です。
中秋節には、中国や台湾などの中華圏をはじめ、韓国やベトナムなど多くのアジアの国々でイベントが催されます。日本でも、「中秋の名月」には団子やススキを飾ってお月見をしますね!

旧暦では、新月の日を月の初めとし、次の新月までを1ヶ月と数えます。このため、毎月15日はほぼ満月になるのです。
そして8月15日は、7月から9月まで続く秋のちょうど真ん中。この日は「中秋」とよばれ、一年で最も満月が美しいとされます。

ちなみに、旧暦の8月を「秋の半ば」を意味する「仲秋」といいます。
仲秋のさらに真ん中の日が、中秋というわけです。中秋と仲秋はよく似た言葉ですが、細かくみるとこんな違いがあったのですね!

三大節句のひとつ

中国や台湾では、中秋節は春節(旧正月)や端午節(端午の節句)と並ぶ重要な伝統行事「三大節句」の一つです。
団欒節」ともよばれ、家族が集まって健康を祈り、団欒を楽しむ大切な日とされます。

中国と台湾では国民の祝日になっており、人々は家族で集まって食卓を囲み、団欒を楽しみます。
さらに中国では、中秋節は直前の国慶節の連休とあわせて大型連休になるのが通例です。

春節、国慶節・中秋節、そして労働節(メーデー)の前後は、中国の人々が旅行や帰省を楽しむ大型連休。日本でいえば「盆暮れ」やゴールデンウィークに相当します。中国の人々にとって、中秋節がいかに重要な秋のイベントか、想像できるのではないでしょうか。

中秋節の歴史

「中秋」という言葉の最古の記録は、紀元前11世紀に書かれたとされる『周礼(しゅらい)』。
古代中国の帝王たちは、四方に祭壇を設け、春分には日壇で太陽を、夏至には地壇で大地を、秋分には月壇で月を、冬至には天壇で空を祭ったと記録されています。

一説には魏・晋の時代には中秋節の月見が始まったとされますが、行事として定着したのは唐の時代に入ってから。
7世紀の『唐書 太宗記』には、8月15日を中秋節として祝った記録があります。
また、唐の時代には多くの詩に月が詠まれ、情緒豊かな文化が花開いたのです。

宋の時代には、中秋節の夜には街のいたるところで宴が開かれ、人々は夜を徹して楽しんでいたようです。
宋の詩人たちも、唐に続いてよく月を題材にした情緒深い歌を詠みました。楽しそうな時代ですね♪

明の時代になると、中秋節を「団欒節」とする記録が登場します。
北京の月壇は、明とそれに続く清の歴代皇帝が月を祭る儀式を行った場所です。
明・清の時代には宮廷でも民間でも、中秋節は春節(旧正月)と並ぶ重要な行事になっていったのです。

2025年の中秋節はいつ?

中秋節の日付は、毎年変わります。旧暦では新月の日が毎月の1日となるため、毎年約11日ずつ新暦とずれるのです。

2025年の旧暦8月15日は、新暦に換算すると10月6日(月)にあたります。

中国や台湾ではこの日は祝日です。
多くの会社が休みになり、飲食店などは満席になりやすいので、旅行する場合は注意しましょう。

特に中国では、中秋節は大型連休になり、交通機関や宿泊施設は非常に混み合います。
2025年の国慶節・中秋節は10月1日から8日まで8連休。この時期に中国へ行く場合は、各予約は早めにするのがおすすめです。

月にまつわる伝説-嫦娥奔月-

ニュースをよく見る方は、中国の月探査衛星の「嫦娥(じょうが)」という名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
この名前は、中華文化圏では誰もが知る有名な神話の登場人物に由来しています。

神話によると、はるか昔、空には太陽が10個ありました。順番に地上を照らしていたのですが、ある時、すべての太陽が同時に現れたのです。地上は灼熱に包まれ、人々は危機に陥りました。

そのとき、「后羿(こうげい)」という弓の名手が現れ、9つの太陽を射落として世界を救ったのです。英雄となった后羿は、美しい仙女・嫦娥と結婚しました。

ある日、后羿は西王母(せいおうぼ)から不老不死の仙薬を授かります。
しかし后羿の留守中に弟子の蓬蒙(ほうもう)が仙薬を渡すよう嫦娥を脅迫。嫦娥が薬を奪われる前に自ら飲むと、体が宙に浮いて天に昇ってしまいました。

こうして嫦娥は、天の中では夫のいる地上に最も近い、月に住むようになったのです。

后羿は美しい月に嫦娥の面影を見出し、庭に果物を供え、月を見上げて彼女を偲んだといいます。
やがて人々も香炉を炊いて月に平穏を祈るようになり、中秋節に月を祭る習慣が広まっていったのです。

月にまつわる伝説-嫦娥奔月-

中秋節の過ごし方

中秋節は本来、月を祭って秋の収穫に感謝する風習。
これは現在も各地域で共通する基本コンセプトですが、これに加えて、それぞれの地域で独自の文化が育まれています。各地の中秋節の過ごし方を紹介しましょう。

家族での団欒

中国では、満月は一家団欒の象徴とみなされ、中秋節は「団欒節」ともよばれます。
普段は離れて暮らしている人も中秋節には実家に戻り、家族そろって月にお供え物をし、食事をして語らいます。
親戚や友達にも挨拶し、ともにこの日を祝うのが習わしです。

月餅を食べる

月餅を食べる

中秋節を象徴するお菓子といえば、なんといっても「月餅(げっぺい)」!

月餅の真ん丸い形には、満月と同様に、円満な家庭や団欒を象徴する意味があります。
中秋節には月餅を贈りあい、家族で均等に切り分けて食べるのです。

唐の時代にはすでに、中秋節に餅を食べる風習があったとされます。
13世紀の南宋の時代の文献『夢梁録(むりょうろく)』には、月餅という呼び名も登場。さらに、明の時代の『西湖遊覧志会』には、月餅は一家団欒を意味する中秋節の贈答品として定着していたことが記されています。

こしあんが入った月餅や、ゴマ・クルミなどのナッツが入ったタイプは日本人にもおなじみですが、本場の月餅のバリエーションの多さは、まさに百花繚乱!
アヒルの卵が入った月餅や野菜・果物が入ったもの、シーフードが入った甘くない月餅までさまざまな種類があります。
近年ではチョコレートやアイスクリーム、ジャムなどが入った新感覚の月餅も人気です。

さらに、広大な中国では地域ごとに独特の月餅文化が花開き、広東周辺の「広式」や北京周辺の「京式」、上海周辺の「蘇式」といったご当地月餅が個性を競っています。

中秋節の風習

中秋節を彩る代表的な食べ物は、月餅だけではありません。
中国の多くの地域では、スイカも重要な供え物のひとつです。真ん丸いスイカは、やはり団欒の象徴。
蓮の花のように美しく切って飾り付けます。

中秋節の風習

北京の伝統工芸に、「兎児爺(トゥルイエ)」という人形があります。
子ども向けの玩具ですが、中秋節には月餅や果物といっしょに飾り付けられます。なぜ人形を飾るのでしょうか?

兎児爺のモデルとされるのが、月にいるというウサギ「玉兎(ぎょくと)」です。
伝説によると、玉兎は火に飛び込んで自らの体を神仙に捧げ、天帝により月へ引き上げられたといいます。
いまでは、嫦娥のもとで薬を作る手伝いをしているそうです。

香港の中秋節では、勇壮な「舞火龍(ファイヤードラゴンダンス)」が行われます。
銅鑼や太鼓が鳴り響くなか、長さ60mを超える巨大な龍が出現し、背中から花火を噴き散らしながら躍動!その圧巻の迫力は、見る人の心を震わせずにはおきません。

これら以外にも地域ごとの風習があり、各地の少数民族にも独自の中秋節の文化が伝わっています。

中国以外の国では?

中国以外のアジアの国には、さらに多様な中秋節の文化があります。詳しくみていきましょう!

台湾-BBQをする!?

台湾-BBQをする!?

台湾でも、中秋節には月餅を食べ、家族で集まって食事をします。
ただ、なぜか台湾では、中秋節にBBQをするという面白い慣習が広まっているのです。いったいなぜ?

どうやら1980年代に、大量の輸出用BBQグリルの在庫をさばくため、メーカーが国内販売を強化したことがきっかけのようです。
さらにその後、焼き肉ソースのテレビCMが話題となり、台湾では中秋節といえばBBQというイメージが定着しました。

また、台湾の中秋節では柑橘類のフルーツ「文旦(ぶんたん)」も定番です。
文旦は中秋節の頃が収穫期にあたり、フォルムも真ん丸なので、家族円満を象徴する食べ物として中秋節の食卓に並べるにはぴったりなのです♪

韓国-収穫を感謝する日-

韓国では中秋節に相当する行事として「秋夕(チュソク)」があり、旧正月と並ぶ大切な行事とされます。
中国同様、前後の祝日とあわせて大型連休になるのが通例で、多くの韓国人が故郷に帰り、親戚が集まって先祖と収穫に感謝し、豊作を祈るのです。

秋夕では各家庭で「茶礼(チャレ)」という儀式が行われ、手の込んだ20種類以上の料理「茶礼床(チャレサン)」が供えられます。
あまりに豪華すぎて経済負担が大きいので、2022年には韓国政府が茶礼床を簡略にする標準案を策定したほど。食べてみたいですね!

故郷に親戚が集まるなど、どこか日本のお盆と似た特徴もある、韓国の秋夕。
交通機関が混雑するところもお盆と同様なので、この時期に韓国を旅行する場合は要注意です。

ベトナム-カラフルなランタンでパレード-

ベトナムにも中秋節を祝う文化が伝わっており、「節中秋(テットチュントゥ)」とよばれます。

ベトナムでは子どものためのイベントという特徴があり、「節小児(テットティエウニー)」という呼び名も定着しています。
ホー・チ・ミンが中秋節に各地の子どもに手紙を送ったため、「子どもの節句」というイメージが広まったようです。

ベトナムの節中秋で月餅と並んで欠かせないのが、色鮮やかなランタン(灯篭)。
子どもたちがランタンを持って歌いながら練り歩く、ランタン行列が風物詩です。
大都市では、この日が近づくと幻想的な夜市「灯篭街(フォーロンデン)」が出現。通りにはランタンを売る屋台が立ち並び、街は華やかな光景に包まれます。

それにしても、なぜランタン?それにはある昔話が由来するとされます。

ベトナムでは、月の影の部分は「クオイ」というおじさんがガジュマルの根元に座っている姿だという言い伝えがあります。
ランタンの光は、クオイが地上に帰れるように願って灯されるようになったと考えられているのです。

また、日本の獅子舞によく似た「麒麟舞(ムアラン)」も、節中秋の名物になっています。

日本の中秋節=十五夜・中秋の名月

日本人も中秋節を祝っています。旧暦8月15日前後にお月見をする「中秋の名月」、もっとなじみのある言葉でいえば「十五夜」は、まさしく日本版の中秋節。

十五夜とは、本来は旧暦で毎月15日目にやってくる満月の夜をさします。
しかし現在では、十五夜といえば、年に一回の中秋の名月をさすのが一般的といえるでしょう。

十五夜の歴史

日本では、平安時代の貴族の間で、中国の中秋節の風習が広まりました。

平安時代前期の漢詩集『田氏家集(でんしかしゅう)』には、859年8月15日に月見の宴が催された記録があります。
貴族たちが歌を詠み、酒を飲みながら月見を楽しんだのです。

900年前後に書かれたとされる『竹取物語』も、貴族社会の月への強い関心が表れた作品といえるでしょう。

室町時代になると、名月は宴を催して楽しむよりも、食べ物をお供えして拝む対象になっていったようです。
宮中や天皇の複数の記録に、ナスなどの食べ物を月にお供えしたという記録がみられます。

江戸時代には庶民にも月見が広まり、十五夜には夜更かしして遊ぶことが慣習化しました。
江戸の隅田川や愛宕山、京都の渡月橋といった月見の名所も生まれ、十五夜は日本人にとってなじみの深い年中行事になっていったのです。

十五夜はなにをする?

日本の十五夜は、美しい月を鑑賞する点は中国やアジアの中秋節と同じですが、日本ならではの特徴もあります。
例えば、日本でよくお供えされる食べ物は月餅ではなく、月見団子や秋の七草といった独特の食べ物。

月見団子は、ちょうど十五夜の時期に収穫期を迎える米を満月に見立てたものです。
米を団子にしてお供えすることで収穫に感謝し、来年の豊作を祈る意味が込められています。子どもがお供えものを勝手に食べたら怒られるけど、月見団子だけは許されるという風変わりな風習もありました。

ちなみに、月見団子を供える習慣が広まったのは江戸時代中期以降で、それまでは里芋がお供え物の主流でした。
そのため、十五夜を「芋名月」とよんだり、地域によって月見団子を里芋のような形に作ったりする慣習が残っているのです。

ススキを飾る習慣は、江戸~東北エリアで始まりました。この地域では十五夜の時期は稲の収穫前だったため、稲穂の代わりにススキをお供えしたのです。
また、ススキの茎の空洞には神様が宿ると信じられていました。
こういったことから明治以降、十五夜にススキを飾る習慣が全国に広まったのです。

十五夜はなにをする?

ススキだけでなく、秋の七草を飾ることもあります。
秋の七草とは、ハギ・ススキ・クズ・ナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・キキョウの7つ。その起源は『万葉集』で山上憶良が詠んだ歌とされます。
七草粥にして食べる春の七草と違い、純粋に鑑賞して美しさや季節を感じるのが秋の七草の楽しみ方。
日本の中秋節は、季節の移ろいを感じとり、自然に感謝する細やかな感性を育んできたのです。

秋の七草についてもっと知りたい方はこちら▼

「秋の七草」を知っていますか?-七草の秘密と覚え方-

アジア各地の人々が同じ心で同じ月を見上げる中秋節

アジア各国で祝われている秋の風物詩「中秋節」、いかがでしたか?
「中秋の満月の日に、自然の恵みに感謝する」という共通の思想を持ちながらも、各地域の文化を反映して独特の風習が花開いているのが面白いですね!

2025年は10月6日が中秋節。秋の夜長に空を見上げ、同じ月を愛でている各地の文化に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?


  • Twitter
  • Facebook
  • LINE