掲載日:2025.04.18

「犬」に関することわざや慣用句 世界のことわざや使われる場面や意味を解説!

日本で「犬」が入ったことわざと言えば「犬も歩けば棒に当たる」ですよね。実は世界中の国で「犬」が入ったことわざは多く存在します。

どの国でどんな場面で「犬」が入ったことわざが使われているのでしょうか。ことわざを知ることで各国の「犬」に対する考えや捉え方の傾向が見えてきます。

よく使う犬のことわざ・慣用句【8選】

まずは日本に存在する「犬」が入ったことわざをまとめました。

犬も歩けば棒に当たる

意味:
物事をすると思わぬ幸運に出会う可能性があること。
使い方:
「思わぬ幸運が立て続けに起こり『犬も歩けば棒に当たる』の気持ちだ。」
類義語:
歩く足には泥がつく、触らぬ神に祟りなし

「犬も歩けば棒に当たる」について、不運があった場合に使われることわざだと思っている人も多いのではないでしょうか。
実は思わぬ幸運に出会えた時にも使えるのですね。

飼い犬に手をかまれる

意味:
日頃から目をかけてきた部下や後輩などから、思いがけない裏切りを受ける様子のたとえ。
使い方:
「可愛がってきた後輩にお金を貸したら連絡が取れなくなり飼い犬に手をかまれた気持ちだ。」
類義語:
恩をあだで返す、後足で砂をかける

この状況は、学校でも社会に出ても良く出くわしますよね。類義語「恩をあだで返す」の方が意味のイメージがつきやすいかもしれません。
可愛がってきた愛犬に裏切られる様子をうまく表現したことわざです。

犬猿の仲

犬猿の仲
意味:
とても仲が悪い様子のたとえ。
使い方:
「あの子たちは小さい頃から犬猿の仲だ。」
類義語:
水と油

実際に同じ場所に犬と猿がいた場合、犬が追い猿が逃げるケースがほとんどで、仲が悪いというよりは一方的に犬が優勢のようです。

夫婦喧嘩は犬も食わぬ

意味:
ささいなことが原因ですぐに仲直りするから仲裁する必要がない様子のたとえ。
使い方:
「あの人たちはいつもすぐ仲直りする。夫婦喧嘩は犬も食わないから放っておけばいい。」
類義語:
痴話喧嘩は犬も食わぬ

基本的に、喧嘩に巻き込まれる周囲の側が「つまらない喧嘩なんて放っておいたほうが得だよ」というニュアンスで使われます。

尾を振る犬は叩かれず

尾を振る犬は叩かれず
意味:
従順で振る舞いに愛嬌があると誰からもひどい扱いを受けることはない。
使い方:
「尾を振る犬は叩かれず。愛嬌がある方がひどい扱いを受けずに済むよ。」
類義語:
尾を振る犬は打ち手なし

日本人にはこのタイプ、多いのではないでしょうか。数ある「犬」が入ったことわざの中ではメジャーではない方ですが、よくあるシチュエーションを表したことわざですよね。

負け犬の遠吠え

意味:
勝負に負けた者が、負けを認めない主張をする様子のたとえ。
使い方:
「試合に負けて悪口を言っているあの子は負け犬の遠吠えだ。」
類義語:
虚勢を張る

負け犬という言葉単体でもよく使われますよね。
負け惜しみを言ったり、潔くなかったりすると使われることわざです。

吠える犬は噛みつかぬ

吠える犬は噛みつかぬ
意味:
強がったり威張ったりする人ほど実力がないこと
使い方:
「あの人は大口叩いてばかりで結果を出せない、吠える犬は噛みつかない状態だ。」
類義語:
鳴く猫は鼠をとらぬ

よく吠える犬ほど噛みつく勇気がないことが由来となっています。

犬死にする

意味:
何か意味のあるつもりであっても、結局は何の役にも立たず、名誉にもならない死に方。
使い方:
「敵陣に乗り込んで行ったが最初から勝ち目のない戦で、犬死にした。」
類義語:
無駄死に

現代の日本では社会的意味に重点をおいていう場合が多いですね。

知っていたらすごい!ちょっと珍しい「犬」のことわざ【6選】

「犬」が入ったことわざはまだまだあります。
ちょっと珍しいことわざ・慣用句を見てみましょう。いくつ知っていますか?

犬馬の労を取る

意味:
主君のために力を尽くすこと。
使い方:
「上司のために犬馬の労を取る。」
類義語:
犬馬の労をいとわない。

他者のために力を尽くして働くことをへりくだっていう言葉です。現代的な言葉だとバックアップ、フォローなどが同じ意味の言葉として挙げられます。
しかし、職場で「犬馬の労を取りました」とはあまり言わないですよね。

犬に論語

犬に論語
意味:
どれだけ道理を説いて聞かせても何の効果もなく無駄な様子とたとえ。
使い方:
「あの人は何度言っても理解してくれない、犬に論語だ。」
類義語:
馬の耳に念仏。

類義語の馬の耳に念仏の方が、なじみがありますよね。
どちらも動物が使われていることわざですが、人間に例えるより動物の方がより理解してくれない状況を表現していると思います。

犬骨折って鷹の餌食になる

意味:
苦労してようやく得たものを、他に奪われてしまうことのたとえ。
使い方:
「苦労して勝ち取ったクライアント様だが、上司に手柄を取られて犬骨折って鷹の餌食になった気持ちだ。」
類義語:
犬が追い出したうずらを鷹が捕る

職場でよくある光景ですね。
「犬骨折って」という表現はなかなかインパクトがありますが、骨を折るくらい苦労したのに他者に奪われた悔しい気持ちが伝わってくることわざです。

犬が西向きゃ尾は左

犬が西向きゃ尾は左
意味:
当たり前のことを、取り立てて口に出す様子のたとえ。
使い方:
「そんなに何度もわかりきったことを言わなくてもいいよ。犬が西向きゃ尾は左じゃないんだから。」
類義語:
御神酒上がらぬ神はない

あたり前のことをあえて口に出す人はいますのでシチュエーションとしてはよくある場面ですが、普段あまり使わないことわざですよね。

犬の糞で敵を討つ

意味:
ごく卑劣な手段で仕返しをすることのたとえ。
使い方:
「まるで犬の糞で敵を討つような方法で仕返しした。」
類義語:
江戸の敵を長崎で討つ

類義語の「江戸の敵を長崎で討つ 」はあまり卑劣な印象は無いですが、「犬の糞」という言葉からは姑息さや卑劣さが感じられます。

犬の川端歩き

意味:
食べ物を探しても何も得られないように、何も食べずに素通りして歩いていく様子のたとえ。
使い方:
「飲食店を探し回ったが良い店が無く、犬の川端歩きだった。」
類義語:
犬の子のいたずら歩き

日常生活の中で使えそうなことわざですね。身近な誰にでも起こりうるできごと・行動を「犬」というなじみのある動物でたとえています。

世界にも存在する!「犬」にまつわることわざ【英語圏編】

日本と同じように、他の国にも犬にまつわることわざが存在します。どんなことわざが、どんな場面で使われているのか、一覧にまとめました。

Every dog has his day.

Every dog has his day.
日本語訳:
犬でさえ良いことが起こるのだから、誰にでも良い時はある。
意味:
思わぬ幸運に出会う時もある。
使い方:
「I failed the exam, but, every dog has his day.(試験に落ちた。でも、誰にでも良い時はある)」

海外の映画やドラマのセリフに出てきそうなことわざですね。
思わぬ幸運に出会う時もある、という意味でとらえると日本の「犬も歩けば棒に当たる」と似ている気がします。

Let sleeping dogs lie.

Let sleeping dogs lie.
日本語訳:
寝た犬を起こすな。
意味:
面倒なことをそっとしておく様子のたとえ。
使い方:
「We can discuss it later.My father is in a bad mood now.It’s better to let sleeping dogs lie.(後で話し合おう。父は今機嫌が悪いから。寝ている犬を起こさない方がましだ。)」

たしかに寝ている犬を起こすと吠えられそうで面倒ですよね。日本のことわざだと「触らぬ神に祟りなし」が近いのではないでしょうか。

You can't teach an old dog new tricks

日本語訳:
年老いた犬に新しい芸を教えることはできない。
意味:
年配者や頭の固い人に新しいことを教えるのは無理だ。
使い方:
「You can't teach an old dog new tricks.(モチベーションが高いうちに英語の勉強を始めた方がいいよ。)」

日本で言うと「鉄は熱いうちに打て」が類義語ですね。「年老いた犬」が年配者や頭の固い人を表現しています。

「犬」にまつわることわざ【欧州編】

Avoir un mal de chien(フランス)

日本語訳:
犬の病気を避ける。
意味:
大変な努力をすること。強い痛みを感じること。

何かをするのには苦労や不都合が生まれ、大変な努力が必要になるという意味ですね。
「犬の病気を避ける」だとシンプルでストレートな感じがします。外国語での表現を知ると、日本語の繊細さを実感できますね。

mismos perros con distintos collare(スペイン)

mismos perros con distintos collare(スペイン)
日本語訳:
同じ犬に違う首輪。
意味:
誰がやっても同じ。
使い方:
「政治家なんて誰がやっても同じだ。同じ犬に違う首輪がついただけだろ。」

うまい言い回しのことわざだと思います。日本と言葉だと「異曲同工(趣は違うが出来栄えは一緒)」が近いでしょうか。

Er ist bekannt wie ein bunter Hund(ドイツ)

日本語訳:
カラフルな犬のように有名だ。
意味:
いたるところで有名であることを表したたとえ。

昔は「悪い意味で有名人」という表現として使われていたことわざでしたが、現在では侮辱的な言葉としてではなく、個性的な人を表現するときに使うんだとか。
日本だと「悪評名高い」という慣用句が近い意味を持っています。どちらかというと悪い意味で使うことが多いようですね。

「犬」にまつわることわざ【アジア編】

狗改不了吃屎(中国)

日本語訳:
糞を食べるという犬の本性は変えられない。
意味:
悪人の本性は変えられない。
使い方:
「彼の行動を見ていると、悪人の本性は変えられないなと感じる。」

人は変わらないという意味では「三つ子の魂百まで」が近いかもしれません。「糞を食べる」という表現はなかなかのパワーワードでインパクトがありますよね。

狼心狗肺(中国)

日本語訳:
狼のように貪欲で野良犬のように獰猛(どうもう)である。
意味:
恩知らずである。
使い方:
「お世話になった先輩にあんな態度をとるなんて、恩知らずな奴だ。」

日本語だと「恩をあだで返す」「飼い犬に手を噛まれる」が近い言葉ですね。「可愛がっていた愛犬に裏切られる」という表現の日本とは違ったニュアンスで「恩知らず」を表しています。

닭 쫓던 개 지붕 쳐다보듯(韓国)

닭 쫓던 개 지붕 쳐다보듯(韓国)
日本語訳:
鶏追った犬屋根見つめるように。
意味:
どうすることもできない様子のたとえ。
使い方:
「目の前の喧嘩を止めることができず、鶏追った犬屋が根見つめるようだった。」

日本には、どうすることもできない様子のたとえとして進退両難(しんたいりょうなん)という言葉があります。

Chó ngáp phải ruồi(ベトナム)

日本語訳:
犬があくびをすれば蝿が入る。
意味:
犬がうるさい蝿をどうにかするために口を開けてたらたまたま蝿が入って捕まえられた様子のたとえ。
使い方:
靴ひもを結ぼうとしゃがんだら100円見つけて、犬があくびをすれば蝿が入る気持ちだった。

「犬も歩けば棒にあたる」に似た意味のことわざですね。思わぬ幸運が巡ってくるという状況のたとえです。

หมาไม่กัดหมา(タイ)

日本語訳:
犬は犬を噛まない。
意味:
同じグループやコミュニティの一員として争いを避け、協力を重んじるべきだ。
使い方:
犬は犬を噛まないのと同じように、私たちは協力し合いましょう。

助け合う、協力し合うという意味では日本の「相互扶助」が近いですね。

日本にも海外にもたくさん存在する「犬」にまつわることわざ

「犬」にまつわる世界のことわざをたくさん紹介しましたね。
日本と海外のことわざを比べてみると、各国における犬の捉え方が見えてきませんか?

日本では、犬を良い意味でも悪い意味でもことわざに使いますが、世界全体で見るとネガティブな表現が多いようです。

例えば、ヨーロッパでは、現在のようなペットとしての立場になる前は、犬は汚くいたずら好きな動物と見なされていました。
また、アジア圏、特に中国では、「犬は糞を食べる」「野良犬のように獰猛(どうもう)」といった表現があるように、犬に対するイメージはあまり良くありません。

「吠える」「尾を振る」など、犬の習性をもとにしたことわざは世界中にありますが、その解釈や使い方は国によって異なります。

どのことわざも、犬という身近な動物を通して、状況や感情をうまく表現しています。
日本にも海外にも、動物を使ったことわざや慣用句は数多く存在するので、さらに調べてみると新しい発見があるかもしれませんね。


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