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春を連想させる花木といえば、初春の梅、お雛様のころの桃と続いて、桜が最後を飾るといったイメージが思い浮かびます。 その一方で、桜と梅の違いや桃と桜の違いなどは、もうひとつわかりません。
そこでこれら3種類の花木について、それぞれの特徴や日本の文化とのかかわりをまとめてみることにしました。
桜も梅も桃も、すべてバラ科に属しています。そのためこれらの花木には似たところがあります。愛らしい花が咲くという点は皆共通です。 ここではそれぞれの花の特徴や違いを調べてみます。
桜・梅・桃の見分け方のポイントは、「花びらの形」「花柄(茎の部分)の長さ」「木の幹の様子」の3点です。
桜の花びらは、先端が2つに割れてハート形になっています。 花柄は長く、先端に5輪から6輪の花を咲かせます。 幹の色は赤茶色でゴツゴツとした横縞模様になっています。
一方、梅の花びらは丸い形をしているのが特徴です。 花柄は短く、目立ちません。花は枝にくっついているように見えます。花柄1本に対して咲く花は1輪だけです。 幹の色は黒ずんでいて比較的ざらついています。
そして桃の花びらは、先端が尖っています。 花柄は短く、梅と桜の中間ぐらいです。花柄1本に対して2輪の花が咲きます。 幹肌は白っぽくツルツルしていて、斑点があります。
桜と梅と桃は品種によって誤差があるものの、まず梅、次に桃、最後に桜の順番で花が咲きます。 花の咲くおおよその時期を覚えておくと、桜・梅・桃を区別することが比較的容易です。
最も一般的な桜の品種であるソメイヨシノは、南の沖縄から北の北海道まで日本列島を横断するように花が咲いていきます。 沖縄が3月中旬から開花、九州・四国・本州の各地では3月下旬から4月上旬、開花の遅い北海道では4月下旬から5月上旬です。 ただし、桜の品種の中には、開花時期が微妙に異なっていたり、春ではなく秋から冬に咲いたりするものも存在しています。
梅は、1月下旬から4月下旬までの間に開花します。しかし品種によっては、それより早く、12月の冬至の頃に花が咲くものもあります。 桃の開花時期は、3月中旬から4月下旬の間です。桜と似た時期だと思われそうですが、普通は桃の方が桜より先に咲き始めます。
桜の花の香りは顔を近づけて微かに感じる程度です。 桜餅のような香りがすることがありますが、これは桜の葉の香りと共通です。ソメイヨシノの香りは特に弱く、ほとんど匂いません。 桃の花の香りも微かで、多くの品種ではほとんど感じられません。香りそのものは甘いフローラル系の香りです。 これに対して梅の花は比較的香りが強く、ジャスミン・イランイラン・クチナシなどのような爽やかな香りがします。
以下に桜・梅・桃の代表的な品種とその特徴を紹介します。
桜の品種は極めて多く、500種類以上あります。それらの中で最も良く知られた桜は「ソメイヨシノ(染井吉野)」です。
ソメイヨシノは丸く中輪の一重咲きで、淡いピンク色の花と大きく横に枝を広げるのが特徴です。 花は一斉に咲いて、1週間ほどで散ってしまいます。葉は花が散った後に出てきます。そのため開花時には枝全体がピンク色に包まれてとても美しく、私たちの「お花見」の対象にもなります。
ソメイヨシノは花びらが5枚しかない一重咲きの桜ですが、園芸種の中には「ヤエザクラ(八重桜)」と呼ばれる花びらが20枚以上重なって咲くボリュームたっぷりで華やかな品種もあります。 ヤエザクラは、ソメイヨシノが散った後の4月中旬から5月上旬頃に開花します。中でも有名なのは「カンザンザクラ(関山桜)」という品種です。公園や街路樹として植えられていて、花びらが20枚から40枚もあるピンク色の大輪の花を咲かせます。
ソメイヨシノは日本で最もよく知られた桜です。 江戸時代末期にオオシマザクラ(大島桜)とエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)を交配して生まれました。
しかしソメイヨシノの全てが1本の木から挿し木や接ぎ木によって増えていったことは、あまり知られていないかもしれません。 ソメイヨシノには種を結ばない性質があるためです。
このため世界中のソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持っています。つまり、ソメイヨシノはすべてクローンなのです。
梅も桜と同じように品種がとても多く、300種類以上あるといわれています。 梅は大別すると、花を楽しむ「花梅」と実を取るための「実梅」に分かれます。 今回は花梅の中から、紅梅と白梅を1種類ずつ紹介します。
紅梅の中で良く知られているのは「ヤエカンコウ(八重寒紅)」です。 庭木や盆栽として人気があると共に、12月中旬から1月中旬に開花するため、正月用の花材としても重宝されています。 花は濃いピンク色の中輪八重で、香りもよく豪華な印象を与えます。
白梅の中で良く知られているのは「トウジ(冬至)」です。 花が咲き始めるのが冬至の頃なのでこの名前が付きました。一般の梅より早い12月中旬から2月中旬ごろまで開花します。 花は白く中輪の一重咲きで、枝が細いという特徴があり鉢植えや盆栽に向いています。寒さにも暑さにも強いので、比較的育てやすい品種です。
桃も、梅と同じように花を楽しむための「花桃」と、実を食用にするための「実桃」に分かれます。 花桃の先祖は大昔に中国からやって来ましたが、品種改良されたのは江戸時代の頃で、桜や梅ほど品種改良は進んでいません。
そのような花桃の中でも代表的な品種は、「ヤグチ」と「ゲンペイ」です。
「ヤグチ(矢口)」は切り枝として飾られることも多い、愛らしいピンク色の八重咲品種です。 花の直径は4㎝から5㎝ほどで、開花時期は他の桃の花より少し早い3月から4月です。ひな祭りの飾りとしてよく使われるので「桃の花」というと、この矢口をイメージする人も多いはずです。
「ゲンペイ(源平)」は、紅白2色の花が同時に咲く、あでやかな品種です。 1本の木から紅白2色の花が咲くことを源氏と平家に例えて、「源平」という名前が生まれました。花は一重の場合も八重の場合もあります。花が咲く時期は、矢口と同じように3月から4月にかけてです。
日本人にとって、桜・梅・桃の3種類の花木は、ただ春を告げる役割を持つだけではありません。 文化に深い影響を与え、生活と密接なつながりを持っています。
まず忘れてはいけないのは、春の行事との関係です。 お花見がその代表格ですが、ここではあえて「ひな祭りと桃」「入学式と桜」について述べてみることにします。
3月3日はひな祭り、女の子の健やかな成長をお祝いする日です。 ひな祭りは「桃の節句」とも呼ばれており、桃の花と関係の深いことがわかります。
童謡「うれしいひなまつり」の歌詞にも、桃の花を飾るシーンが登場します。なぜひな祭りには桃の花を飾るのでしょうか?
もともと桃の木には沢山の実がなるため生命力を象徴する神聖なもので、邪気を払う力があるとされていました。 「古事記」には、イザナギノミコトという神様が鬼女に桃を投げつけて追い払うのに成功した、というエピソードが記されています。 また生命力の象徴である桃の実は、食べると長寿になると考えられていました。
しかも実がたくさんなる桃は、子沢山の象徴とみなされていました。 それに加えて桃の花は愛らしく、ちょうど旧暦の3月3日の頃に満開になるため、桃の花が飾られるようになったのです。(なお現代の暦の3月3日は、桃の花の季節には少し早いので、早咲きの矢口という品種が飾られます。)
以上のように桃の木の性質といくつかの歴史的な要素が一致したため、ひな祭りと桃の花を飾ることはしっかりと結びつき、ひとつの行事として定着したのです。
日本では、満開の桜の下で入学式を迎えるというイメージが完全に定着しています。入学式が4月初旬のソメイヨシノが満開を迎える時期に行われることが最大の理由です。 淡いピンク色の花が一面に広がって誇らしげなソメイヨシノは、入学式の晴れがましい雰囲気にぴったりです。
また、入学式があるということはその前に卒園式や卒業式があって、多くの友人との別れを経験しないといけないことも関係しています。ソメイヨシノの一斉に咲いて一斉に散る性質は、別れと出会いが交錯する4月の雰囲気に、ぴったりと合っています。
桜・梅・桃にもそれぞれの花言葉があります。品種ごとに花言葉が決められている場合すらあります。
桜の花言葉は「精神の美」「優美な女性」「純潔」です。 それぞれ日本を象徴する花としての品格、桜のように美しい女性の姿、清らかさや潔さを象徴しています。
西洋の花言葉は「精神の美」と「良い教育」などです。 これは米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが少年の頃、父親の桜の木を切り倒してしまったのを正直に告白して逆に褒められた、というエピソードに基づいていると思われます。 ただし、この時代のアメリカに「桜」の木が本当にあったかどうかはわからないので、この有名な逸話も創作かもしれません。
梅の花言葉は「上品」「高潔」「忍耐」「忠実」です。 これらの言葉は2月というまだ寒さの厳しい時期に凛として咲き誇る梅の姿からつけられたと思われます。
中でも「忠実」という花言葉は、平安時代の貴族であった菅原道真が大宰府に左遷されたときの言い伝えにもとづいていると言われています。京都の自宅に植えられていた道真が愛していた梅の木が、主を慕って一晩のうちに九州の大宰府まで飛んで行った、とされるエピソードです。
桃の花言葉は、「チャーミング」「気立ての良さ」「私はあなたのとりこ」「天下無敵」です。 最初の3つは女性の魅力に対する敬意の現れです。桃という漢字が木偏に「兆」、と書くことと、桃の花は多くの実をつけることから、女性の象徴とみなされたことに由来します。
ただし「天下無敵」は女性の美しさではなく、有名な「桃太郎の鬼退治」の伝説に由来しています。 桃太郎も、川を流れてきた大きな桃から生まれましたね。さらに古事記には、ひな祭りと桃の関係のところでも述べたように、イザナギノミコトが桃を投げて鬼女を退散させたという記述があり、そのことも関係しているのかもしれません。
日本では、桜・梅・桃が伝統的なことわざにも取り入れられています。その代表的な例として「桜梅桃李」と「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」を紹介します。
「桜梅桃李(おうばいとうり)」とは、文字通り「桜」「梅」「桃」「李(スモモ)」の4種類の果樹の意味です。 それぞれが独自の個性を持った美しい花を咲かせるので、「他人と比べる必要はなく、皆が自分独自の個性を磨けば良い」という意味に通じます。
現代でいえばSMAPの「世界で一つだけの花」を連想させますね。「No.1にならなくてもよい、もともと特別なOnly One」(作詞:梶原敏之)という歌詞に共通するものを感じます。
「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」も「桜梅桃李」と同じように、それぞれの個性を大切にするように、という意味を含んでいます。 桜も梅も同じバラ科の植物ですが、それぞれの特性から手入れ、特に剪定の方法が異なるからです。
桜、特にソメイヨシノは枝を切るとそこから菌が入って腐りやすいので、むやみに剪定してはいけません。 一方、梅は枝が上に向かって大きく伸びるので、定期的に剪定しないと光が十分に当たらなくなって、花や実の付き方が悪くなります。
そのため「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」となるのですが、このことわざには人間もそれぞれの個性に応じた育て方をしないといけない、という意味も重ねられているのです。
春が近づいて梅や桃や桜の花を見かけると、ファッションもそれらしく装いたくなります。一足先に春を感じるアイテムを取り入れて、新鮮な気分を味わってみませんか? 「岩座」や、「倭物やカヤ」では、下記のような商品を取り揃えてお待ちしています。
ピンク色の珊瑚玉を同じピンク系のロードナイトや緑色のアベンチュリン、そして屋久杉の玉とアレンジした、春の訪れを語りかける紅梅をイメージしたブレスレットです。 珊瑚は母なる海の力でネガティブなエネルギーを浄化してくれます。ロードナイトやアベンチュリン、そして屋久杉にも、持ち主の心を守ってくれたり厄除けになったりする力があるといわれています。
花のモチーフを天然石と組み合わせた、お守りにもなる指輪です。 「桜 ROSE QUARTZ」は桜のモチーフにピンク系のローズクォーツ、「梅 RMS」は梅のモチーフに七色の光を放つレインボームーンストーンを、それぞれ組み合わせています。
着物の隠れたお洒落である「八掛(はっかけ)」をイメージしたワンピースです。 中でも「BK MOMO」は、黒地のワンピースの背中の切りかえしから、桃の花がちらっと見える粋なウェアです。着物の重ねのようなデザインの襟は、着るだけで和の雰囲気を印象付けます。ゆったりとしたシルエットなので、着心地も最高です。
今回は桜と梅と桃の違いと共に、この3種類の花木が日本の文化に対して大きな影響を与えていることを紹介しました。 春先の散歩でピンク色の花が一面に咲いている木に出会ったら、それが桜か梅か桃かを確かめてみましょう。もしかしたら、新しい発見があるかもしれませんよ。
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春を連想させる花木といえば、初春の梅、お雛様のころの桃と続いて、桜が最後を飾るといったイメージが思い浮かびます。
その一方で、桜と梅の違いや桃と桜の違いなどは、もうひとつわかりません。
そこでこれら3種類の花木について、それぞれの特徴や日本の文化とのかかわりをまとめてみることにしました。
目次
桜・梅・桃の違いと見分け方
桜も梅も桃も、すべてバラ科に属しています。そのためこれらの花木には似たところがあります。愛らしい花が咲くという点は皆共通です。
ここではそれぞれの花の特徴や違いを調べてみます。
見た目の違い
桜・梅・桃の見分け方のポイントは、「花びらの形」「花柄(茎の部分)の長さ」「木の幹の様子」の3点です。
桜の花びらは、先端が2つに割れてハート形になっています。
花柄は長く、先端に5輪から6輪の花を咲かせます。
幹の色は赤茶色でゴツゴツとした横縞模様になっています。
一方、梅の花びらは丸い形をしているのが特徴です。
花柄は短く、目立ちません。花は枝にくっついているように見えます。花柄1本に対して咲く花は1輪だけです。
幹の色は黒ずんでいて比較的ざらついています。
そして桃の花びらは、先端が尖っています。
花柄は短く、梅と桜の中間ぐらいです。花柄1本に対して2輪の花が咲きます。
幹肌は白っぽくツルツルしていて、斑点があります。
咲く時期の違い
桜と梅と桃は品種によって誤差があるものの、まず梅、次に桃、最後に桜の順番で花が咲きます。
花の咲くおおよその時期を覚えておくと、桜・梅・桃を区別することが比較的容易です。
最も一般的な桜の品種であるソメイヨシノは、南の沖縄から北の北海道まで日本列島を横断するように花が咲いていきます。
沖縄が3月中旬から開花、九州・四国・本州の各地では3月下旬から4月上旬、開花の遅い北海道では4月下旬から5月上旬です。
ただし、桜の品種の中には、開花時期が微妙に異なっていたり、春ではなく秋から冬に咲いたりするものも存在しています。
梅は、1月下旬から4月下旬までの間に開花します。しかし品種によっては、それより早く、12月の冬至の頃に花が咲くものもあります。
桃の開花時期は、3月中旬から4月下旬の間です。桜と似た時期だと思われそうですが、普通は桃の方が桜より先に咲き始めます。
香りの違い
桜の花の香りは顔を近づけて微かに感じる程度です。
桜餅のような香りがすることがありますが、これは桜の葉の香りと共通です。ソメイヨシノの香りは特に弱く、ほとんど匂いません。
桃の花の香りも微かで、多くの品種ではほとんど感じられません。香りそのものは甘いフローラル系の香りです。
これに対して梅の花は比較的香りが強く、ジャスミン・イランイラン・クチナシなどのような爽やかな香りがします。
代表的な品種と特徴
以下に桜・梅・桃の代表的な品種とその特徴を紹介します。
桜の種類
桜の品種は極めて多く、500種類以上あります。それらの中で最も良く知られた桜は「ソメイヨシノ(染井吉野)」です。
ソメイヨシノは丸く中輪の一重咲きで、淡いピンク色の花と大きく横に枝を広げるのが特徴です。
花は一斉に咲いて、1週間ほどで散ってしまいます。葉は花が散った後に出てきます。そのため開花時には枝全体がピンク色に包まれてとても美しく、私たちの「お花見」の対象にもなります。
ソメイヨシノは花びらが5枚しかない一重咲きの桜ですが、園芸種の中には「ヤエザクラ(八重桜)」と呼ばれる花びらが20枚以上重なって咲くボリュームたっぷりで華やかな品種もあります。
ヤエザクラは、ソメイヨシノが散った後の4月中旬から5月上旬頃に開花します。中でも有名なのは「カンザンザクラ(関山桜)」という品種です。公園や街路樹として植えられていて、花びらが20枚から40枚もあるピンク色の大輪の花を咲かせます。
【豆知識】ソメイヨシノは全てクローン!?
ソメイヨシノは日本で最もよく知られた桜です。
江戸時代末期にオオシマザクラ(大島桜)とエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)を交配して生まれました。
しかしソメイヨシノの全てが1本の木から挿し木や接ぎ木によって増えていったことは、あまり知られていないかもしれません。
ソメイヨシノには種を結ばない性質があるためです。
このため世界中のソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持っています。つまり、ソメイヨシノはすべてクローンなのです。
梅の種類
梅も桜と同じように品種がとても多く、300種類以上あるといわれています。
梅は大別すると、花を楽しむ「花梅」と実を取るための「実梅」に分かれます。
今回は花梅の中から、紅梅と白梅を1種類ずつ紹介します。
紅梅の中で良く知られているのは「ヤエカンコウ(八重寒紅)」です。
庭木や盆栽として人気があると共に、12月中旬から1月中旬に開花するため、正月用の花材としても重宝されています。
花は濃いピンク色の中輪八重で、香りもよく豪華な印象を与えます。
白梅の中で良く知られているのは「トウジ(冬至)」です。
花が咲き始めるのが冬至の頃なのでこの名前が付きました。一般の梅より早い12月中旬から2月中旬ごろまで開花します。
花は白く中輪の一重咲きで、枝が細いという特徴があり鉢植えや盆栽に向いています。寒さにも暑さにも強いので、比較的育てやすい品種です。
桃の種類
桃も、梅と同じように花を楽しむための「花桃」と、実を食用にするための「実桃」に分かれます。
花桃の先祖は大昔に中国からやって来ましたが、品種改良されたのは江戸時代の頃で、桜や梅ほど品種改良は進んでいません。
そのような花桃の中でも代表的な品種は、「ヤグチ」と「ゲンペイ」です。
「ヤグチ(矢口)」は切り枝として飾られることも多い、愛らしいピンク色の八重咲品種です。
花の直径は4㎝から5㎝ほどで、開花時期は他の桃の花より少し早い3月から4月です。ひな祭りの飾りとしてよく使われるので「桃の花」というと、この矢口をイメージする人も多いはずです。
「ゲンペイ(源平)」は、紅白2色の花が同時に咲く、あでやかな品種です。
1本の木から紅白2色の花が咲くことを源氏と平家に例えて、「源平」という名前が生まれました。花は一重の場合も八重の場合もあります。花が咲く時期は、矢口と同じように3月から4月にかけてです。
日本人と桜・梅・桃
日本人にとって、桜・梅・桃の3種類の花木は、ただ春を告げる役割を持つだけではありません。
文化に深い影響を与え、生活と密接なつながりを持っています。
行事ごとと桜・梅・桃
まず忘れてはいけないのは、春の行事との関係です。
お花見がその代表格ですが、ここではあえて「ひな祭りと桃」「入学式と桜」について述べてみることにします。
ひな祭り-桃-
3月3日はひな祭り、女の子の健やかな成長をお祝いする日です。
ひな祭りは「桃の節句」とも呼ばれており、桃の花と関係の深いことがわかります。
童謡「うれしいひなまつり」の歌詞にも、桃の花を飾るシーンが登場します。なぜひな祭りには桃の花を飾るのでしょうか?
もともと桃の木には沢山の実がなるため生命力を象徴する神聖なもので、邪気を払う力があるとされていました。
「古事記」には、イザナギノミコトという神様が鬼女に桃を投げつけて追い払うのに成功した、というエピソードが記されています。
また生命力の象徴である桃の実は、食べると長寿になると考えられていました。
しかも実がたくさんなる桃は、子沢山の象徴とみなされていました。
それに加えて桃の花は愛らしく、ちょうど旧暦の3月3日の頃に満開になるため、桃の花が飾られるようになったのです。(なお現代の暦の3月3日は、桃の花の季節には少し早いので、早咲きの矢口という品種が飾られます。)
以上のように桃の木の性質といくつかの歴史的な要素が一致したため、ひな祭りと桃の花を飾ることはしっかりと結びつき、ひとつの行事として定着したのです。
入学式-桜-
日本では、満開の桜の下で入学式を迎えるというイメージが完全に定着しています。入学式が4月初旬のソメイヨシノが満開を迎える時期に行われることが最大の理由です。
淡いピンク色の花が一面に広がって誇らしげなソメイヨシノは、入学式の晴れがましい雰囲気にぴったりです。
また、入学式があるということはその前に卒園式や卒業式があって、多くの友人との別れを経験しないといけないことも関係しています。ソメイヨシノの一斉に咲いて一斉に散る性質は、別れと出会いが交錯する4月の雰囲気に、ぴったりと合っています。
それぞれの花言葉
桜・梅・桃にもそれぞれの花言葉があります。品種ごとに花言葉が決められている場合すらあります。
桜の花言葉
桜の花言葉は「精神の美」「優美な女性」「純潔」です。
それぞれ日本を象徴する花としての品格、桜のように美しい女性の姿、清らかさや潔さを象徴しています。
西洋の花言葉は「精神の美」と「良い教育」などです。
これは米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが少年の頃、父親の桜の木を切り倒してしまったのを正直に告白して逆に褒められた、というエピソードに基づいていると思われます。
ただし、この時代のアメリカに「桜」の木が本当にあったかどうかはわからないので、この有名な逸話も創作かもしれません。
梅の花言葉
梅の花言葉は「上品」「高潔」「忍耐」「忠実」です。
これらの言葉は2月というまだ寒さの厳しい時期に凛として咲き誇る梅の姿からつけられたと思われます。
中でも「忠実」という花言葉は、平安時代の貴族であった菅原道真が大宰府に左遷されたときの言い伝えにもとづいていると言われています。京都の自宅に植えられていた道真が愛していた梅の木が、主を慕って一晩のうちに九州の大宰府まで飛んで行った、とされるエピソードです。
桃の花言葉
桃の花言葉は、「チャーミング」「気立ての良さ」「私はあなたのとりこ」「天下無敵」です。
最初の3つは女性の魅力に対する敬意の現れです。桃という漢字が木偏に「兆」、と書くことと、桃の花は多くの実をつけることから、女性の象徴とみなされたことに由来します。
ただし「天下無敵」は女性の美しさではなく、有名な「桃太郎の鬼退治」の伝説に由来しています。
桃太郎も、川を流れてきた大きな桃から生まれましたね。さらに古事記には、ひな祭りと桃の関係のところでも述べたように、イザナギノミコトが桃を投げて鬼女を退散させたという記述があり、そのことも関係しているのかもしれません。
ことわざ
日本では、桜・梅・桃が伝統的なことわざにも取り入れられています。その代表的な例として「桜梅桃李」と「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」を紹介します。
桜梅桃李
「桜梅桃李(おうばいとうり)」とは、文字通り「桜」「梅」「桃」「李(スモモ)」の4種類の果樹の意味です。
それぞれが独自の個性を持った美しい花を咲かせるので、「他人と比べる必要はなく、皆が自分独自の個性を磨けば良い」という意味に通じます。
現代でいえばSMAPの「世界で一つだけの花」を連想させますね。「No.1にならなくてもよい、もともと特別なOnly One」(作詞:梶原敏之)という歌詞に共通するものを感じます。
桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿
「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」も「桜梅桃李」と同じように、それぞれの個性を大切にするように、という意味を含んでいます。
桜も梅も同じバラ科の植物ですが、それぞれの特性から手入れ、特に剪定の方法が異なるからです。
桜、特にソメイヨシノは枝を切るとそこから菌が入って腐りやすいので、むやみに剪定してはいけません。
一方、梅は枝が上に向かって大きく伸びるので、定期的に剪定しないと光が十分に当たらなくなって、花や実の付き方が悪くなります。
そのため「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」となるのですが、このことわざには人間もそれぞれの個性に応じた育て方をしないといけない、という意味も重ねられているのです。
一足先に春を感じませんか?
春が近づいて梅や桃や桜の花を見かけると、ファッションもそれらしく装いたくなります。一足先に春を感じるアイテムを取り入れて、新鮮な気分を味わってみませんか?
「岩座」や、「倭物やカヤ」では、下記のような商品を取り揃えてお待ちしています。
紅梅(こうばい)ピンクコーラル ブレスレット
ピンク色の珊瑚玉を同じピンク系のロードナイトや緑色のアベンチュリン、そして屋久杉の玉とアレンジした、春の訪れを語りかける紅梅をイメージしたブレスレットです。
珊瑚は母なる海の力でネガティブなエネルギーを浄化してくれます。ロードナイトやアベンチュリン、そして屋久杉にも、持ち主の心を守ってくれたり厄除けになったりする力があるといわれています。
花咲きリング
花のモチーフを天然石と組み合わせた、お守りにもなる指輪です。
「桜 ROSE QUARTZ」は桜のモチーフにピンク系のローズクォーツ、「梅 RMS」は梅のモチーフに七色の光を放つレインボームーンストーンを、それぞれ組み合わせています。
四季の春風八掛新ワンピース
着物の隠れたお洒落である「八掛(はっかけ)」をイメージしたワンピースです。
中でも「BK MOMO」は、黒地のワンピースの背中の切りかえしから、桃の花がちらっと見える粋なウェアです。着物の重ねのようなデザインの襟は、着るだけで和の雰囲気を印象付けます。ゆったりとしたシルエットなので、着心地も最高です。
桜・梅・桃はすべて春の風物詩
今回は桜と梅と桃の違いと共に、この3種類の花木が日本の文化に対して大きな影響を与えていることを紹介しました。
春先の散歩でピンク色の花が一面に咲いている木に出会ったら、それが桜か梅か桃かを確かめてみましょう。もしかしたら、新しい発見があるかもしれませんよ。
関連記事
あられは雛人形のお弁当?桃の節句のひみつについて
桃の節句の由来と定番の食べ物を紐解く!
この記事が好きなあなたにおすすめ!
祝い酒をふるまう鏡開きとは?酒樽を使った伝統行事をご紹介!