掲載日:2024.12.09

日本犬はたったの6種類しかいない!?それぞれの性格や特徴を徹底解説

日本犬とは古来から日本に住んでいる犬のことです。その姿をほとんど変えることなく、令和の時代まで生き抜いてきました。

古き良き日本を象徴する日本犬は、たったの6種類しかいないのをご存じですか?

この記事では、日本犬の種類と性格、特徴などを詳しく解説します。あわせて地犬やそれ以外の日本犬もご紹介するので、日本犬への理解を深める参考にしてみてください。

はじめに~日本犬とは~

日本犬は日本が原産の犬種であり、縄文時代から日本人と共に生活し、番犬や猟犬として活躍してきました。

洋犬に比べて警戒心が強く、飼い主に忠実です。精悍な佇まいと従順な性格が人気を博し、日本のみならず海外でも日本犬を家族に迎える方は増えています。

6種類の日本犬とその特徴

現在、日本犬は日本文化を担う貴重な存在として、国の天然記念物に指定されています。日本犬は以下の6種類です。

  • 柴犬
  • 紀州犬
  • 四国犬
  • 北海道犬
  • 甲斐犬
  • 秋田犬

それぞれの性格や特徴を詳しく見ていきましょう。

柴犬

柴犬

日本犬と言えば、真っ先に柴犬を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。実際に、日本で飼育されている日本犬の約80%は柴犬であり、海外でも絶大なる人気を誇っています。

柴犬は、縄文時代の遺跡である愛媛県の上黒岩岩陰遺跡などから犬の骨が発掘されているため、南方から渡ってきたと考えられています。山岳部を中心に鳥やウサギなどの狩猟を行い、人間のパートナーとして暮らしてきました。

日本犬の中で唯一小型犬に属する柴犬は、「小さい」という意味を持つ「柴」が由来だと言われています。他の犬と比べて体高が低く小さいですが、機敏な動きで獲物を翻弄していたことでしょう。

柴犬は、くるっと巻いた尻尾とピンと立った三角の耳が可愛いらしい犬種です。

一方で、とても勇敢な性格のため、飼い主に対する忠誠心は強く、従順な家庭犬になってくれます。警戒心の強さから、訓練次第では番犬として活躍してくれるでしょう。

紀州犬

紀州犬

紀州犬は、現在の和歌山県から三重県付近の山岳地帯で生まれました。

タヌキや鹿を狩る狩猟犬として日本人と暮らし、特に猪猟にかけてはずば抜けたポテンシャルを持っていたと言われています。現在は狩猟で生計を立てる人が減ったため、家庭犬での飼育がほとんどです。

紀州犬は体高より体長がやや長く、筋肉質でがっちりとした体格が特徴の中型犬です。頭部の額は広く、まっすぐなマズルをしています。目はつり目気味で、獲物を捕らえるときのキリッとした表情が想像できますね。

紀州犬の毛色は白いイメージが強いですが、他にも赤、胡麻、虎などの有色や模様もあります。

悠然として落ち着いた佇まいの紀州犬は、飼い主にとても忠実です。

真面目な性格ゆえ、見知らぬ人や犬には威圧的な態度をとることがあります。警戒心が強いため番犬として頼りになりますが、紀州犬を迎えたらしっかりとしつけを行うことが大切です。

四国犬

四国犬

四国犬は、かつては「土佐犬」と呼ばれていました。現在は土佐闘犬との混同を避けるために「四国犬」に改名されています。

四国犬の先祖は、高知の山岳地帯にいた「ヤマイヌ」と呼ばれた野犬と言われています。
猟師が飼い慣らして育てた結果、猪や鹿を追う優秀な猟犬として生き抜いてきました。体力と持久力を武器に、日本人の生活を支えてきた勇敢な犬種です。

四国犬はしっかりとした筋肉質で、身体の幅に合った前足と、腰幅に合った後ろ足ががっちりとした体を支えています。額は広く、口元は引き締まっていて、凛々しい顔が特徴です。
その見た目は日本犬の中で最もオオカミに似ているため、過去にはニホンオオカミと間違われて、大騒ぎになったこともありました。

性格は飼い主に忠実かつ冷静です。頭が良いとされ、飼い主の気持ちを理解し、行動できます。
状況を判断する力に長けているため、見境なく興奮することはありませんが、闘争心と頑固な一面があるため、根気強いしつけは必要です。

北海道犬

北海道犬

過去には「アイヌ犬」と呼ばれた時代がありましたが、国の天然記念物に指定された際に「北海道犬」という名前が定着しました。
北海道犬のルーツは縄文時代に縄文人と共に東北から渡ってきた狩猟犬とされており、広大な北海道の大地でヒグマを相手に戦ってきたと言われています。

寒さの厳しい北海道の自然を生き抜いてきた北海道犬は、小さめの厚い耳と密集した被毛が特徴です。寒さや飢えにも耐える強さを持ち、持久力にも長けています。前胸部が著しく発達し、筋肉質で骨格ががっちりしているため、逞しさを象徴したような中型犬です。

他の日本犬と同じく、北海道犬は飼い主に非常に従順で、辛抱強く愛情深いです。勇敢さと警戒心も持ち合わせているため、番犬に向いています。
毛色は白のイメージが強いですが、赤毛、白毛、黒毛、胡麻毛など、日本犬の中ではバリエーションが豊富です。

甲斐犬

甲斐犬

甲斐犬は山梨県原産の中型犬です。
南アルプス周辺の山岳地域でカモシカや猪を相手に狩りを行ってきた歴史があります。甲斐犬は、現在も狩猟犬として活躍しています。
日本犬の中では最も色濃く狩猟犬としての血筋が受け継がれていると言っても過言ではないでしょう。

狩猟犬としての長い歴史から、甲斐犬は足腰の筋肉が非常に発達しています。機敏な動きが持ち味で、運動能力が優れた犬種です。
ピンと立った耳は他の日本犬よりもやや大きめで、舌の色が青黒い個体も多く存在します。
被毛は、黒虎、赤虎、中虎があり、狩猟をするときの保護色として役立っています。

甲斐犬は他の日本犬よりも気性が荒いです。飼い主に強い忠誠心を持ち、状況の変化に敏感で、見知らぬ人や犬には激しい警戒心を示します。
気難しい性格のため愛玩犬として振る舞うのは苦手ですが、信頼する飼い主にはひたすら心を開き、甘える姿も見せてくれます。

秋田犬

秋田犬

日本犬の中で唯一の大型犬が秋田犬です。
秋田犬が犬種として認められたのは、1900年代に入ってからで、他の日本犬に比べると非常に浅い歴史になります。
第二次世界大戦後には純粋な秋田犬は20頭足らずしか残っていませんでした。現在の個体数を維持できているのは、秋田犬を愛する人々の努力と研究の成果です。

秋田犬は奥羽山脈一帯で熊を相手に活躍してきた狩猟犬であり、骨格が頑丈で逞しい犬種です。体高と体長がほぼ同じスクエア型をしており、堂々とした風格ながら、ちょこんとしたつぶらな瞳をしています。
日本では登録数が減少傾向にありますが、アメリカでは日本をしのぐほどの人気の犬種です。

知性に優れている秋田犬は、忠誠心が厚く、飼い主に素直に従います。一方で、保守的で警戒心が強い一面もあり、飼い主以外には敵意を示すことがあります。
秋田犬は体格が大きいため、子犬の頃からしっかりとしつけをして、さまざまな人や物に慣れさせることが大切です。

日本で有名な犬の話3選

日本人と日本犬は、かけがえのないパートナーとして苦楽を共にしてきました。
生活を共にするなかで、たくさんの思い出も積み重ねてきたことでしょう。

ここからは、日本に伝わる犬の話をご紹介します。心あたたまるエピソードに目を通しながら、犬と人間との絆を感じてみてください。

忠犬ハチ公

忠犬ハチ公

JR渋谷駅前のハチ公前広場にある「忠犬ハチ公像」は、秋田犬のハチがモデルです。

ハチは大正12年秋田県の大館市で生まれ、翌年に近代農業土木の祖といわれる上野英三郎博士のもとで飼われることになりました。
犬好きだった上野博士はハチを子どものように可愛がり、就寝時も自分のベッドの下に寝かせるなど愛情を注いでいたそうです。ハチもその愛情を一心に受け入れ、毎日渋谷駅前まで上野博士の送り迎えをするようになり、強い絆が結ばれていきました。

しかし、大正14年5月21日、上野博士は脳溢血で亡くなってしまいます。
ハチと上野博士が出会ってからわずか17ヶ月後のことでした。

上野博士の死を知らないハチは「どうして帰って来ないのだろう」と思いつつ、「いつか帰って来る」と信じていたのでしょう。
雨の日も風の日も、渋谷駅前で上野博士の帰りを待ち続けました。次第に衰弱しつつも上野博士を待ち続けたハチでしたが、その願いは叶うことなく、生涯を閉じます。昭和10年3月8日、11歳のことでした。

飼い主である上野博士を一心に思い続けたハチは、晩年に忠犬と称されるようになりました。
ハチの心にはいつの日も大好きな上野博士がいて、愛された日々の記憶が消え去ることはなかったでしょう。
忠誠を誓い、その生涯を飼い主に捧げたハチ公は、今頃天国で上野博士とゆっくりと過ごしているかもしれません。

タロとジロ

昭和34年1月14日は「愛と希望と勇気の日」と呼ばれています。
その所以は、樺太犬である兄弟犬であり、タロとジロという名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

タロとジロは昭和31年に日本の南極観測隊に同行し、昭和基地で犬ぞりを引く役割を担っていました。
しかし、昭和33年1月に第2次越冬隊が悪天候により昭和基地に到着できず、第1次越冬隊員も帰還を余儀なくされます。その際、タロとジロを含めた15頭は南極に置き去りにされてしまいました。

極寒の南極で生き延びるのは絶望的と思われていました。
しかしながら、翌年の昭和34年1月14日、第3次越冬隊によりタロとジロの生存が確認されたのです。

タロとジロの生存は日本中に驚きと感動をもたらしました。
ジロは第4次越冬中に亡くなりましたが、タロは昭和36年5月、第4次越冬隊の交代に合わせて4年半振りに帰国しています。
昭和45年に14歳7ヶ月で老衰で亡くなるまで、たくさんの人に愛されて晩年を過ごしたそうです。

おかげ犬

伊勢神宮では、江戸時代に数ヶ月に何百万という人々が訪れたという「おかげ参り」が行われていました。

その際、病気などで伊勢に行けない主人のかわりにおかげ参りをした犬を「おかげ犬」と言います。

無事に主人のもとに帰ってきたおかげ犬は「犬の代参」とも呼ばれ、開運のご利益があると言われるようになりました。
また、主人に忠誠を誓い、伊勢神宮まで向かうおかげ犬に対して、支援をする人々もいたそうです。おかげ犬への手助けそのものが、徳を積むと感じていたのではないでしょうか。

現在、三重県伊勢市のおかげ横丁では、愛犬と一緒に「おかげ犬体験」というアクティビティが体験できます。
また、愛らしさと縁起の良さから、置物やストラップなどのお土産がたくさん販売されています。伊勢までの長い道のりを歩いた歴史から、健脚や健康増進のご利益もあるとされ、贈り物にも最適です。

おかげ犬

かつては日本中にいた!地犬とは?

日本の特定の地域のみに昔から生息している犬を「地犬(じいぬ)」と言います。
その土地で人間と共に暮らし、代々繁殖されてきた地犬は、他の土地では見られない特徴があります。

地域の特色を色濃く受け継ぎ、かつては日本全国に多種多様な地犬が生息していました。
近年は交雑により、絶滅した地犬も少なくありません。現存する地犬は保存活動が行われており、県の天然記念物に指定されている犬種もいます。

川上犬は長野県南佐久郡川上村原産の柴犬に似た地犬です。
「秩父山塊のニホンオオカミが猟師によって飼い慣らされた」との言い伝えが残っており、狼の面影が感じられる野性的な顔をしています。一時は絶滅の危機に瀕していましたが、現在では約350頭にまで個体数が回復し、長野県の天然記念物に指定されています。

琉球犬は沖縄県原種の希少な地犬です。
縄文時代初期に九州地方から渡ってきた山岳狩猟犬がルーツといわれており、琉球王国時代には狩猟や祭事、護衛などの役割を担っていました。
琉球犬には舌斑といわれる舌に黒い模様があり、古い歴史を持つ犬に多く見られる特徴です。
川上犬と同じく絶滅の危機を脱し、現在は増加傾向にあります。1962年に沖縄県の天然記念物に指定されました。

まだまだいる!日本原産の犬たち

日本犬と地犬の他に、日本原産の犬もご紹介します。
日本原産の犬とは、外来種との交配により日本で誕生した犬種のことです。小型犬から超大型犬まで体格はさまざまで、地犬としての気質も持ち合わせている犬種もいます。

今回は2種類の日本原産の犬をご紹介します。

狆(チン)

狆(チン)

狆のルーツは732年に韓国から聖武天皇に献上された犬が始まりとされています。
その後、日本で改良が行われ、1613年にはイギリスのビクトリア女王に献上されたことがきっかけで、世界各国に広まりました。江戸時代には、犬好きで有名な徳川綱吉にも飼われています。

小型犬に属する狆は、親しみやすい見た目から、今日も家庭愛玩犬として広く愛されています。
利口かつ穏やかな性格なので、初めてペットを飼う方にもおすすめです。やや神経質な面もあり、あまり忍耐強くない一面もあるため、荒々しく扱わずに適度なスキンシップが大切です。

土佐犬・土佐闘犬

土佐犬・土佐闘犬

闘犬に属する土佐犬は、四国犬にルーツを持つ伝統的な犬種です。
元々は四国犬が闘犬として用いられていましたが、より強い犬を作り上げるため、19世紀末から洋犬との交配が開始されました。ブルドッグから始まり、マスティフ、グレート・デーン、セント・バーナードがあげられます。

土佐犬は別名「ジャパニーズ・マスティフ」と呼ばれ、海外では一定の人気を誇っています。平均体重が60㎏を超える超大型犬であり、強靭な肉体と勇敢な性格が特徴です。
一方で、闘犬としての血筋から凶暴性も持ち合わせているため、しっかりとした訓練が必要です。土佐犬は家庭犬には向きませんが、番犬としては頼りになる犬種と言えます。

日本の宝である日本犬は生涯のパートナーになれる

日本犬は、日本人と生活を共にしてきた貴重な存在です。
ときには飼い主と狩猟に出かけ、ときには外敵から一家を守る番犬として活躍してきました。飼い主に優しく撫でられると、嬉しそうに目を細めたかもしれません。飼い主も日本犬の甘えた仕草に心が安らいだことでしょう。

日本犬は警戒心が強く保守的な性格が多いため、他人に吠えたり、唸ったりなど、コントロールが難しい一面があります。
しかし、その行動は飼い主を守ろうとする忠誠心によるもので、確固たる信頼関係が築けている証拠です。

日本犬は真っすぐな愛情を注いでくれる、飼い主思いの犬種です。これからも、日本の宝として世界中に愛され続けることを願っています。

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