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いよいよ2024年7月26日にフランス・パリでオリンピック・パラリンピックが開幕します。世界中のアスリートたちが活躍する中、日本がいくつメダルを獲得するか気になる所です。
それと共に気になるのが「金メダルの素材って金じゃないの?」という素朴な疑問。そこで今回は、オリンピック・パラリンピックの金メダルが、何でできているのか解説していきます。
実は、オリンピックの歴史と金メダルの歴史は同じではありません。
オリンピックの起源は紀元前9世紀ごろに遡り、古代ギリシャで行われていた競技大会に由来します。その頃は「オリンピック」ではなく「オリンピア祭典競技」と呼ばれていました。 競技に参加できるのはギリシャ人の血筋を持つ者に限られ、女性は競技場に足を踏み入れることさえできなかったのです。
古代オリンピックにおいても競技優勝者は賞賛されていましたが、勝者に金メダルが贈られることはありませんでした。代わりに神殿へ並ぶ神様の像の隣に優勝者の像が飾られたり、税金が免除になったり、神に近い存在として栄光を手に入れたのです。
では今のようなメダル授与が始まったのはいつなのでしょうか。答えは1896年近代オリンピック第1回大会からです。 宗教上の理由により、393年を最後に古代オリンピックは幕を閉じ、そこから1500年以上の時を経て復活した、第1回アテネオリンピック(1896年)にてメダルの授与が始まりました。
ちなみにアテネオリンピックでは1位に銀メダル、2位に銅メダル、3位にはメダルの授与がありませんでした。 現在と同じ「金・銀・銅」のメダルになったのは、第2回パリオリンピック(1900年)とされています。
毎回オリンピックメダルで話題となるのが、開催都市によるオリジナルデザインです。
ところで、このオリジナルデザインは裏面だということを知っていますか。夏季オリンピックでは、表面は規定により「勝利の女神ニケ」を含むデザインと定められています。
裏側は自由度が高く、2000年シドニーオリンピックのオペラハウスや2012年ロンドンオリンピックのテムズ川など、開催都市を象徴するデザインが多くみられます。
一方で2021年に開催された東京オリンピックでは、大会エンブレムの組市松紋をモチーフにしたデザインがあしらわれました。
実は、オリンピック金メダルの素材は「金」ではありません。「銀」なのです。
夏季オリンピックでの金メダルの素材は、国際オリンピック委員会(IOC)が定めた規格によって決められており、少なくとも純度1000分の925の銀を用い、表面は6グラム以上の純金でコーティングするとされています。 つまり金メダルと銀メダルの素材は一緒で、金メダルは表面に純金がコーティングされているものなのです。
オリンピックの金メダルは「銀メダル」だった!とは少し驚きの真相ですが、1904年セントルイスオリンピック、1908年ロンドンオリンピック、1912年ストックホルムオリンピックでは、純金製の金メダルがつくられていました。 1920年アントワープ大会から純金メダルは廃止となったのです。
なぜ金メダルは、金ではなく銀でできているのか。それにはいくつかの理由があります。
オリンピックの精神(オリンピズム)では、「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって、平和でよりよい世界の実現に貢献すること」と掲げられています。
これは世界中の人がオリンピックへの参加資格を持ち、「勝つこと」よりも「参加すること」に意義があると指しているのです。 スポーツの世界は確かに結果が出ます。その結果がメダルの色に表れているのは事実でしょう。
しかしメダルの色が何色であっても、そこに至るまでの努力は差別すべきものではありません。金メダルの素材が「銀」であるのは、オリンピック精神に基づいた公平感を出すために、メダルの種類と素材による明らかな価値の違いを生み出さないようにしているとも考えられています。
金はとても価値の高い貴金属です。オリンピックの競技数が増えれば、金メダルの製作枚数も増加します。つまり純金で金メダルを作ることは、開催国にとって非常に大きな経済負担がかかることになるのです。
国際オリンピック委員会(IOC)では、なるべく平等に、多くの国でオリンピックが開催できることを望んでいます。 そのため、比較的安価で手に入りやすい銀を使ってメダルを作成し、金メダルには純金のメッキを施して金の輝きを表現することを定めたのです。
金メダルの素材は銀であり、そこに純金のメッキが施されていることは前述したとおりです。そこで次は銀メダルと銅メダルの違いについてみていきましょう。
銀メダルの素材はもちろん銀であり、メダルには純度92.5%以上の銀が使われています。 金メダルのメッキ加工に使われる金が純金であるのに対し、銀メダルの素材である銀は純度92.5%以上であれば良いとされています。
ちなみに2021年に開催された東京オリンピックでは純銀、すなわち純度99.9%以上の銀が使用されました。純銀は含有する銀の量が多いため、市場の相場は高くなります。 しかしながら純銀は非常にやわらかいという特徴を持ち、落とした時など傷がつきやすいといった難点があります。
純度92.5%の銀(通称スターリングシルバー)の市場の相場は純銀より低くなりますが、硬度が高く、メダルにしても傷つきにくいというメリットがあります。
続いて、銅メダルの成分。銅メダルの素材は青銅、または丹銅です。 金メダルと銀メダルに対しては、明確な規定があるオリンピックメダルですが、銅メダルにはそれほど厳格な規定がありません。
主成分は銅でスズを混ぜたものを青銅、亜鉛を混ぜたものを丹銅と言います。 青銅は青みを帯びた銅で10円玉なども青銅に含まれます。丹銅は赤みを帯びていて、トランペットなど金管楽器や仏具などが用途です。
2021年東京オリンピックの銅メダルでは、丹銅が採用されました。
ここからは、オリンピックメダルにまつわる、豆知識をもう少しお話ししましょう。
オリンピックの金メダルは、銀メダルに純金6gが金張りされたものです。では金メダルの貴金属としての価値はどのくらいなのでしょうか。
近年、金の相場は上昇を続けています。2024年1月に、1gあたり1万円ほどであった金相場は、約半年で約3,000円も価格が上がりました。 オリンピック金メダルに使われる純金は6gですから、単純に78,000円ほどの金が使われていることになります。
メダルの中心素材である銀の使用量は約550gです。純度92.5%であるスターリングシルバーの価格が150円(2024年5月現在)ほどですから、メダル重量が550gある銀の価値は約82,500円になります。つまりオリンピック金メダルの貴金属価値は16万円以上というわけです
ちなみに市場においての銅相場は、銀のおよそ100分の1だと言われています。ですから銅メダルの価値は銀メダルの100分の1程度、1,000円に満たないほどでしょう。
しかしこれらは単なる素材としてのメダルの価値です。 ここにオリンピック選手の努力と栄誉を加えれば、オリンピックメダルにおける本当の価値はプライスレスになるのではないでしょうか。
オリンピックのメダリストに、報奨金が与えられるという話を近年耳にするようになりました。 オリンピックで報奨金制度が解禁となったのは1974年からで、それ以前はアマチュアリズムの理念の下、スポーツでお金を稼ぐという考え方は否定されていたのです。
しかし解禁後も日本ではアマチュアリズム信仰が根強く残り、報奨金制度が導入されたのは、18年後の1992年アルベールビルオリンピックからでした。
きっかけは1988年ソウルオリンピックです。 日本のメダル獲得数はたった14個。かつてはアジアトップであったメダル数が、中国・韓国に抜かれて3位に転落したことにあります。
そこからメダルを獲得するためには選手の強化も込めて、結果を残したメダリストへの労いを込めた報奨金制度が始まりました。 現在、日本オリンピック委員会(JOC)から支給される金額は、金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円です。それ以外に各加盟競技団体から報奨金が支払われることもあります。
夏季オリンピックメダルの表側は、「勝利の女神ニケ」と定められていると前述しましたが、実は、冬季オリンピックメダルにも規約があります。 「冬季オリンピックのメダルのデザインは夏季とは異なるものでなければならない」という規約です。
裏を返せば、冬季オリンピックの方が夏季よりもメダルデザインの自由度が高いということ。 加えて冬季はデザインや素材の制約がなく、2006年トリノオリンピックではドーナツ状、1998年長野オリンピックでは素材に漆を使うなど、個性的なデザインが多くなっています。
オリンピックの表彰式で、メダリストがメダルを噛む光景を見た人は多いのではないでしょうか。 世界で初めてメダルを噛んだと言われているのは、1988年ソウルオリンピックの男子水泳200メートル自由形で金メダルを獲得した、ダンカン・アームストロング選手(オーストラリア)です。
ちなみに日本人選手では、1996年アトランタオリンピックの柔道男子71キロ級で金メダルを獲得した中村兼三が初めだと言われています。
アームストロング選手がなぜメダルを噛んだのかという理由は不明ですが、その後メダルを噛むメダリストたちが増えたのは、勝利の笑顔をおさめようとするカメラマンからのリクエストによるものが大きいとされています。
首にかけたメダルと選手の顔を1枚の写真に収めようとすると、写真が縦長になり顔が小さくなりがちです。選手の表情をもっとアップに、メダルをより大きく、というカメラマンの要望をうまく叶えたのが、メダル噛みポーズなのだそうです。
このメダル噛みポーズに関して、東京オリンピックの公式ツイッター(現X)が次のようにコメントを残しています。
訳:東京2020メダルは食用ではないことを正式に確認したいと思います。 私たちのメダルは、日本の国民から寄付された電子機器からリサイクルされた素材で作られています。 だから、あなたたちはそれらを噛む必要はありません...けれどもまだ噛むのでしょうけどね。
2021年に開催された東京オリンピックでは、世界初の取り組みによってメダルの素材が集められました。それが「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」です。
都市鉱山とは、使用済みとなった家電や携帯電話、パソコンなどから金属材料を回収して再利用することを指します。
日本は資源が乏しい国ではありますが、都市鉱山に眠る貴金属の埋蔵量は世界有数といわれています。 それを活かし、東京オリンピックではすべてのメダルが都市鉱山から生み出された資源をもとに作られているのです。
ちなみに集められた廃品小型家電の量は全国自治体分で約78,990トン、NTTドコモの回収分が約870トンと公表されています。これらの廃棄物から得られた素材は、金約32㎏、銀約3,500㎏、銅約2,200kgにも上りました。
オリンピックメダル以外にも、純金製メダルが登場したことがあります。いくつか紹介していきましょう。
など
2005年に愛知県で開催された日本国際博覧会(愛称:「愛・地球薄」)では、額面1万円の純金メダルが発行されました。直径26mmのメダルには、15.6gの純金が使われています。
ちょっと面白いものだと、上野動物園で産まれた双子の赤ちゃんパンダ(シャオシャオとレイレイ)の誕生記念純金メダルが大人気となりました。
オリンピックの表彰台で光り輝いている金メダル、その素材は金ではなく銀でした。
金は非常に高価な貴金属であり、開催国によっては純金の用意が大きな負担になってしまう可能性があります。 そのため国際オリンピック委員会(IOC)では、比較的安価な銀を素材とした金メダルを規定に掲げているのです。
また、たとえメダルの色が違っても、そこに至るまでの努力は決して差別するものではありません。オリンピックの公平性を重んじている精神が、メダルの素材にも表れています。
オリンピックメダルについて知ると、これから表彰式を見る目が少し変わるかもしれません。けれども忘れてはならないのは、メダルの価値は色で決まるのではないということ、そして参加している選手すべてが尊敬に値するということです。
2024年夏には、フランス・パリで第33回夏季オリンピック競技大会が開催されます。メダルの秘密を胸に、選手たちの熱い戦いを応援しましょう。
いよいよ2024年7月26日にフランス・パリでオリンピック・パラリンピックが開幕します。世界中のアスリートたちが活躍する中、日本がいくつメダルを獲得するか気になる所です。
それと共に気になるのが「金メダルの素材って金じゃないの?」という素朴な疑問。そこで今回は、オリンピック・パラリンピックの金メダルが、何でできているのか解説していきます。
目次
オリンピック金メダルの歴史
実は、オリンピックの歴史と金メダルの歴史は同じではありません。
メダル授与は近代オリンピックから始まった
オリンピックの起源は紀元前9世紀ごろに遡り、古代ギリシャで行われていた競技大会に由来します。その頃は「オリンピック」ではなく「オリンピア祭典競技」と呼ばれていました。
競技に参加できるのはギリシャ人の血筋を持つ者に限られ、女性は競技場に足を踏み入れることさえできなかったのです。
古代オリンピックにおいても競技優勝者は賞賛されていましたが、勝者に金メダルが贈られることはありませんでした。代わりに神殿へ並ぶ神様の像の隣に優勝者の像が飾られたり、税金が免除になったり、神に近い存在として栄光を手に入れたのです。
では今のようなメダル授与が始まったのはいつなのでしょうか。答えは1896年近代オリンピック第1回大会からです。
宗教上の理由により、393年を最後に古代オリンピックは幕を閉じ、そこから1500年以上の時を経て復活した、第1回アテネオリンピック(1896年)にてメダルの授与が始まりました。
ちなみにアテネオリンピックでは1位に銀メダル、2位に銅メダル、3位にはメダルの授与がありませんでした。
現在と同じ「金・銀・銅」のメダルになったのは、第2回パリオリンピック(1900年)とされています。
メダルデザインの特徴とは
毎回オリンピックメダルで話題となるのが、開催都市によるオリジナルデザインです。
ところで、このオリジナルデザインは裏面だということを知っていますか。夏季オリンピックでは、表面は規定により「勝利の女神ニケ」を含むデザインと定められています。
裏側は自由度が高く、2000年シドニーオリンピックのオペラハウスや2012年ロンドンオリンピックのテムズ川など、開催都市を象徴するデザインが多くみられます。
一方で2021年に開催された東京オリンピックでは、大会エンブレムの組市松紋をモチーフにしたデザインがあしらわれました。
金メダルは特別な価値がある?素材に隠された秘密とは
金メダルの素材は「銀」
実は、オリンピック金メダルの素材は「金」ではありません。「銀」なのです。
夏季オリンピックでの金メダルの素材は、国際オリンピック委員会(IOC)が定めた規格によって決められており、少なくとも純度1000分の925の銀を用い、表面は6グラム以上の純金でコーティングするとされています。
つまり金メダルと銀メダルの素材は一緒で、金メダルは表面に純金がコーティングされているものなのです。
オリンピックの歴史、純金メダルの時代
オリンピックの金メダルは「銀メダル」だった!とは少し驚きの真相ですが、1904年セントルイスオリンピック、1908年ロンドンオリンピック、1912年ストックホルムオリンピックでは、純金製の金メダルがつくられていました。
1920年アントワープ大会から純金メダルは廃止となったのです。
銀でできている理由
なぜ金メダルは、金ではなく銀でできているのか。それにはいくつかの理由があります。
オリンピック精神の継承
オリンピックの精神(オリンピズム)では、「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって、平和でよりよい世界の実現に貢献すること」と掲げられています。
これは世界中の人がオリンピックへの参加資格を持ち、「勝つこと」よりも「参加すること」に意義があると指しているのです。
スポーツの世界は確かに結果が出ます。その結果がメダルの色に表れているのは事実でしょう。
しかしメダルの色が何色であっても、そこに至るまでの努力は差別すべきものではありません。金メダルの素材が「銀」であるのは、オリンピック精神に基づいた公平感を出すために、メダルの種類と素材による明らかな価値の違いを生み出さないようにしているとも考えられています。
開催国の負担軽減
金はとても価値の高い貴金属です。オリンピックの競技数が増えれば、金メダルの製作枚数も増加します。つまり純金で金メダルを作ることは、開催国にとって非常に大きな経済負担がかかることになるのです。
国際オリンピック委員会(IOC)では、なるべく平等に、多くの国でオリンピックが開催できることを望んでいます。
そのため、比較的安価で手に入りやすい銀を使ってメダルを作成し、金メダルには純金のメッキを施して金の輝きを表現することを定めたのです。
オリンピックの銀・銅メダルの成分は?
金メダルの素材は銀であり、そこに純金のメッキが施されていることは前述したとおりです。そこで次は銀メダルと銅メダルの違いについてみていきましょう。
銀メダルの成分
銀メダルの素材はもちろん銀であり、メダルには純度92.5%以上の銀が使われています。
金メダルのメッキ加工に使われる金が純金であるのに対し、銀メダルの素材である銀は純度92.5%以上であれば良いとされています。
ちなみに2021年に開催された東京オリンピックでは純銀、すなわち純度99.9%以上の銀が使用されました。純銀は含有する銀の量が多いため、市場の相場は高くなります。
しかしながら純銀は非常にやわらかいという特徴を持ち、落とした時など傷がつきやすいといった難点があります。
純度92.5%の銀(通称スターリングシルバー)の市場の相場は純銀より低くなりますが、硬度が高く、メダルにしても傷つきにくいというメリットがあります。
銅メダルの成分
続いて、銅メダルの成分。銅メダルの素材は青銅、または丹銅です。
金メダルと銀メダルに対しては、明確な規定があるオリンピックメダルですが、銅メダルにはそれほど厳格な規定がありません。
主成分は銅でスズを混ぜたものを青銅、亜鉛を混ぜたものを丹銅と言います。
青銅は青みを帯びた銅で10円玉なども青銅に含まれます。丹銅は赤みを帯びていて、トランペットなど金管楽器や仏具などが用途です。
2021年東京オリンピックの銅メダルでは、丹銅が採用されました。
知っておきたいオリンピックメダルの豆知識
ここからは、オリンピックメダルにまつわる、豆知識をもう少しお話ししましょう。
オリンピックメダルの貴金属的な価値
オリンピックの金メダルは、銀メダルに純金6gが金張りされたものです。では金メダルの貴金属としての価値はどのくらいなのでしょうか。
近年、金の相場は上昇を続けています。2024年1月に、1gあたり1万円ほどであった金相場は、約半年で約3,000円も価格が上がりました。
オリンピック金メダルに使われる純金は6gですから、単純に78,000円ほどの金が使われていることになります。
メダルの中心素材である銀の使用量は約550gです。純度92.5%であるスターリングシルバーの価格が150円(2024年5月現在)ほどですから、メダル重量が550gある銀の価値は約82,500円になります。つまりオリンピック金メダルの貴金属価値は16万円以上というわけです
ちなみに市場においての銅相場は、銀のおよそ100分の1だと言われています。ですから銅メダルの価値は銀メダルの100分の1程度、1,000円に満たないほどでしょう。
しかしこれらは単なる素材としてのメダルの価値です。
ここにオリンピック選手の努力と栄誉を加えれば、オリンピックメダルにおける本当の価値はプライスレスになるのではないでしょうか。
メダリストに対する報奨金
オリンピックのメダリストに、報奨金が与えられるという話を近年耳にするようになりました。
オリンピックで報奨金制度が解禁となったのは1974年からで、それ以前はアマチュアリズムの理念の下、スポーツでお金を稼ぐという考え方は否定されていたのです。
しかし解禁後も日本ではアマチュアリズム信仰が根強く残り、報奨金制度が導入されたのは、18年後の1992年アルベールビルオリンピックからでした。
きっかけは1988年ソウルオリンピックです。
日本のメダル獲得数はたった14個。かつてはアジアトップであったメダル数が、中国・韓国に抜かれて3位に転落したことにあります。
そこからメダルを獲得するためには選手の強化も込めて、結果を残したメダリストへの労いを込めた報奨金制度が始まりました。
現在、日本オリンピック委員会(JOC)から支給される金額は、金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円です。それ以外に各加盟競技団体から報奨金が支払われることもあります。
冬季オリンピックメダルのデザインは自由度が高い
夏季オリンピックメダルの表側は、「勝利の女神ニケ」と定められていると前述しましたが、実は、冬季オリンピックメダルにも規約があります。
「冬季オリンピックのメダルのデザインは夏季とは異なるものでなければならない」という規約です。
裏を返せば、冬季オリンピックの方が夏季よりもメダルデザインの自由度が高いということ。
加えて冬季はデザインや素材の制約がなく、2006年トリノオリンピックではドーナツ状、1998年長野オリンピックでは素材に漆を使うなど、個性的なデザインが多くなっています。
メダリストはなぜオリンピックメダルを噛むのか?
オリンピックの表彰式で、メダリストがメダルを噛む光景を見た人は多いのではないでしょうか。
世界で初めてメダルを噛んだと言われているのは、1988年ソウルオリンピックの男子水泳200メートル自由形で金メダルを獲得した、ダンカン・アームストロング選手(オーストラリア)です。
ちなみに日本人選手では、1996年アトランタオリンピックの柔道男子71キロ級で金メダルを獲得した中村兼三が初めだと言われています。
アームストロング選手がなぜメダルを噛んだのかという理由は不明ですが、その後メダルを噛むメダリストたちが増えたのは、勝利の笑顔をおさめようとするカメラマンからのリクエストによるものが大きいとされています。
首にかけたメダルと選手の顔を1枚の写真に収めようとすると、写真が縦長になり顔が小さくなりがちです。選手の表情をもっとアップに、メダルをより大きく、というカメラマンの要望をうまく叶えたのが、メダル噛みポーズなのだそうです。
このメダル噛みポーズに関して、東京オリンピックの公式ツイッター(現X)が次のようにコメントを残しています。
訳:東京2020メダルは食用ではないことを正式に確認したいと思います。
私たちのメダルは、日本の国民から寄付された電子機器からリサイクルされた素材で作られています。
だから、あなたたちはそれらを噛む必要はありません...けれどもまだ噛むのでしょうけどね。
東京オリンピック・パラリンピックのメダルはリサイクル?
2021年に開催された東京オリンピックでは、世界初の取り組みによってメダルの素材が集められました。それが「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」です。
都市鉱山とは、使用済みとなった家電や携帯電話、パソコンなどから金属材料を回収して再利用することを指します。
日本は資源が乏しい国ではありますが、都市鉱山に眠る貴金属の埋蔵量は世界有数といわれています。
それを活かし、東京オリンピックではすべてのメダルが都市鉱山から生み出された資源をもとに作られているのです。
ちなみに集められた廃品小型家電の量は全国自治体分で約78,990トン、NTTドコモの回収分が約870トンと公表されています。これらの廃棄物から得られた素材は、金約32㎏、銀約3,500㎏、銅約2,200kgにも上りました。
その他の純金製「金メダル」について
オリンピックメダル以外にも、純金製メダルが登場したことがあります。いくつか紹介していきましょう。
など
2005年に愛知県で開催された日本国際博覧会(愛称:「愛・地球薄」)では、額面1万円の純金メダルが発行されました。直径26mmのメダルには、15.6gの純金が使われています。
ちょっと面白いものだと、上野動物園で産まれた双子の赤ちゃんパンダ(シャオシャオとレイレイ)の誕生記念純金メダルが大人気となりました。
まとめ:オリンピック金メダルの秘密とは
オリンピックの表彰台で光り輝いている金メダル、その素材は金ではなく銀でした。
金は非常に高価な貴金属であり、開催国によっては純金の用意が大きな負担になってしまう可能性があります。
そのため国際オリンピック委員会(IOC)では、比較的安価な銀を素材とした金メダルを規定に掲げているのです。
また、たとえメダルの色が違っても、そこに至るまでの努力は決して差別するものではありません。オリンピックの公平性を重んじている精神が、メダルの素材にも表れています。
オリンピックメダルについて知ると、これから表彰式を見る目が少し変わるかもしれません。けれども忘れてはならないのは、メダルの価値は色で決まるのではないということ、そして参加している選手すべてが尊敬に値するということです。
2024年夏には、フランス・パリで第33回夏季オリンピック競技大会が開催されます。メダルの秘密を胸に、選手たちの熱い戦いを応援しましょう。