掲載日:2024.05.04

食虫植物は虫しか食べない?食虫植物を徹底解説!

「食虫植物」と聞くとどんなイメージを抱くでしょうか?
「虫しか食べない」「見た目がグロテスク」と考えた人がいるかもしれません。
しかし実際には食虫植物はまったく違った面を持つ植物でもあります。

そこでここでは食虫植物は実際にどうやって生息しているのか、どのような種類があるのか徹底解説していきます!

食虫植物植物とは?

食虫植物とはその名前の通り、虫を捕食するという習性を持った植物のことを指します。
「食肉植物」「肉食植物」と呼ばれることもあり、その仕組みは「捕虫葉」と呼ばれている、虫を捕らえるために発達した葉がトラップとなって虫を捕らえています。
現在600種類ほどの種類の食虫植物が確認されています。

食虫植物の栄養源は虫だけ?

食虫植物というと「虫だけを食べている」というイメージを持たれることがありますが、実際には「虫を食べることもある植物」であり、虫だけを食べて栄養源としているわけではありません。
一般的な植物と同様に光合成をしているため、自身で生育していくことが可能です。

では何故虫を食べるのでしょうか?
それは自生している食虫植物は栄養源の少ない土地に生息しているため、足りない栄養源を、虫を食べることで補っているのです。

そのため、虫だけを食べているのではなく、虫を食べることもあるというのが正解ということになります。

食虫植物の定義とは?

虫を捕まえるという行動だけであれば多くの植物が持っている仕組みでもあります。
ただ、食虫植物として認められているのは「虫を捕まえる」「消化液を分泌する」「消化して吸収する」といった仕組みを持っているものとされています。

花が虫を捕らえるものは多くあるのですが、これらは消化して栄養分とするためではなく花粉媒介をさせるためですので、捕らえてしばらくすると解放することがほとんどです。
こうしたものは食虫植物とは言いません。

食虫植物の生育場所は?

食虫植物は寒冷地、熱帯雨林、高山地帯、低湿地帯、湿原地帯、砂漠などと世界中の幅広い地域で生育しています。
ただ、総じて土壌にリンやミネラルなどの栄養素が不足している土地に生育していることが多く、土から十分な栄養素を吸収できないために足りない栄養素を虫を捕食することで得ていると考えられます。

土ではなく湿原地帯などの場合も、その地域の水が栄養分を十分に含んでいないために虫を捕食します。
樹皮や樹上に生育している食虫植物は根から十分に栄養を得られないので落ちてくる虫を取り込んで養分にするように進化していきました。

食虫植物の捕虫方法

食虫植物と一口に言ってもすべてが同じ方法で捕食しているわけではなく、さまざまな捕虫方法が存在しています。
それらの捕虫方法は大きく4つに分けられており、それぞれの植物が生育している地域に適したものとなっています。
ここではそれぞれの方法と代表的な食虫植物を紹介していきます。

落とし穴式:ウツボカズラ

落とし穴式:ウツボカズラ

落とし穴式の食虫植物の捕虫葉は葉っぱの一部が筒状の袋のような形状になっており、落とし穴のようになっています。
単純に虫が落ちてくるのを待っているというだけでなく、袋の蓋部分や内部から虫が好む匂いを出しておびき寄せていきます。

袋の入り口部分は非常に滑りやすくなっており、虫は穴の中に落ちるようになっています。虫が袋の中に落ちると蓋が閉まって出られないようになり、中に溜まっている消化液で虫を消化していくのです。

この落とし穴式の食虫植物には、ウツボカズラ・へリアンフォラ・カトプシス・サラセニアなどがあります。
代表的なものにはウツボカズラがあり、マレーシアやシンガポールなど東南アジアで自生している品種です。日本でも園芸店などで購入することができます。

日本では観葉植物、食虫植物として観賞用に栽培されることが多く、日本に持ち込まれて100年以上経っているという歴史の古いものとなっています。

粘着式:モウセンゴケ

粘着式:モウセンゴケ

粘着式の食虫植物は捕虫葉の裏側に「腺毛(せんもう)」という細い毛が生えており、この腺毛から分泌されるネバネバの粘着液によって虫を捕まえます。

捕まえた虫が逃げようとするとその刺激によって腺毛が虫を絡めとり、葉が巻きついて虫を逃がさないようにするのです。
また、この粘着液に消化酵素が含まれており、そのまま虫は消化されていくこととなります。

粘着式の食虫植物にはモウセンゴケ・ムシトリスミレ・ドロソフィルム・ビブリスなどがあります。代表的なものはモウセンゴケで、腺毛が綺麗に光るために人気となっています。

コケと名前はついていますが種子植物です。
こちらもホームセンターや園芸店で購入することができるほか、日本全国の湿地帯で自生しています。

挟み込み式:ハエトリソウ

挟み込み式:ハエトリソウ

挟みこみ式の食虫植物は捕虫葉を2枚の貝のように開いた上で閉じて挟みこんで虫を捕らえます。葉の内側に「感覚毛」と呼ばれる毛が生えており、この毛に虫が触れると時間にして0.5秒ほどで葉が閉じて虫を挟みこむのです。

虫は瞬間的に素早く動けるものが多いのですが、そんな虫が逃げる暇もないほどの速さで挟みこんで閉じ込めます。虫を挟みこんで閉じ込めると、消化液が分泌されて虫を消化し始めます。

たいていは1週間程度で消化していくのですが、この間は消化をすると同時に葉をぴったりと閉じることで虫を押しつぶすようにして消化しやすくしています。
この分泌される消化液はタンパク質に反応するので、虫以外の不要なものについては排出するようになっています。

挟み込み式食虫植物はハエトリソウ・ムジナモなどがあります。代表的なものはハエトリソウです。

「ハエトリグサ」とも呼ばれるこちらの食虫植物は熱帯植物だと思われることが多いのですが、実際には温帯植物となっています。

そのため、日本でも生育しやすい植物だと言えるでしょう。
一般の家庭でも生育しやすく、乾燥しないようにして日光に当て、風通しの良い場所で生育すれば枯れることなくことなく生育できます。

吸い込み式:ミミカキグサ

吸い込み式:ミミカキグサ

吸い込み式の食虫植物は湿原や池のように水辺で多く生息しています。
捕虫葉は小さい袋のようになっており、捕虫嚢(ほちゅうのう)と呼ばれる半透明のものとなっています。

それが葉や茎などについており、入り口についているトゲ部分に虫、微生物、プランクトンなどが触れると開いて水と一緒に吸い込んで捕まえます。
そのため捕虫葉は地中もしくは水中にあります。

吸い込み式の食虫植物の代表としてはミミカキグサがあります。
ミミカキグサは世界中で分布している植物でもあり、日本の本州以南、中国、オーストラリア、東南アジアの湿地や浅い水域、水田などで生育しています。

非常に小さい植物ですので、自生しているものはなかなか見つけることができないかもしれません。

個性豊かな食虫植物たち

さまざまな捕虫方法をもつ食虫植物たち。
見た目がグロテスクなものばかりだと思っている人もいるのではないでしょうか?
ここではそんな概念を変えるような、見た目も美しい食虫植物を紹介していきます。

愛らしい見た目のウサギゴケ

愛らしい見た目のウサギゴケ

ウサギゴケは、名前の通りウサギのような見た目を持つ食虫植物です。
高山地帯の湿地の岩壁に、張り付くように自生しています。

コケの仲間ではなく吸い込み式の食虫植物であるタヌキモの仲間で、花の大きさは1センチ弱ほどしかありません。
南アフリカ原産の食虫植物で、成長すると高さは15センチほどになります。

酒器から命名されたサラセニア

酒器から命名されたサラセニア

北アメリカ東岸の亜熱帯域からカナダにわたって分布している、ウツボカズラと同じ落とし穴式の食虫植物。
ウツボカズラは内部の消化液で消化するのに対し、サラセニアは細菌の力を借りて虫を消化します。

北アメリカ原産の食虫植物で、筒状の葉がお酒を入れる瓶子(へいし)に似ることからヘイシソウ(瓶子草)の和名が付けられています。

まとめ

食虫植物というと虫だけを食べている、見た目がグロテスクなものというイメージを持たれることがありますが、実際には虫だけを食べているのではなく、多くは光合成をして足りない栄養分を虫を捕食することで得ているという植物となっています。

また、見た目にも整っているものが多く、観葉植物として栽培されていることが多いという現状もあります。
日本ではホームセンターや園芸店などで購入できるものも多く、それほど高額ではなく販売していることがありますので、興味がある人はぜひ購入して栽培してみてはいかがでしょうか?

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