2023.06.26

バカンスで「からっぽな時間」を過ごして

ヨーロッパのバカンスには、豊かな時間を過ごす贅沢があります。
海辺や高原を訪れ、壮大な自然を眺めたり、時には目を閉じて、予定は決めず時間に追われない休暇を過ごします。

イタリアには「Dolce far nienteドルチェ・ファル・ニエンテ」ということわざがあって、「なにもしない甘さ=なにもしない幸せ」という意味を持ちます。
バカンスは、ラテン語で「からっぽ」の意味を持っています。こうした言葉をみるだけで、ヨーロッパの人々はなにもしないということを大切にしているのだなと感じることができます。

そして、ヨーロッパには、バカンスにぴったりな場所がいくつもあります。
太陽が眩しいビーチ、緑耀く豊かな島々、どこまでも広がる壮大な草原、たくさんのインスピレーションを与えてくれる場所です。

バカンス02

筆者は、イタリア在住の日本人です。
ヨーロッパ現地で見たり聞いたりするバカンスの過ごし方や、そこからみえてくるヨーロッパ人の暮らしの中で大切にしていることなど、バカンス文化を紹介していきたいと思います。

バカンスを楽しむ秘訣

ヨーロッパの長い長い休暇

ヨーロッパでは、バカンスに出かけるため何ヶ月も前から計画をたてます。

夏のバカンスは、2週間から多くて2ヶ月。
沿岸部や山岳部が過ごしやすい6月~9月にかけて、会社内では順番に休暇に入ります。「自分の時間を持つことは当然の権利」という意識が根付いており、休暇を取るように会社から促されることは普通で、休暇を取る制度も整っている。
社会全体でバカンス文化を守っています。

ちなみに、ヨーロッパの国々(一部)の基本的な年間有給休暇はこんな感じ。

  • イタリア…25日
  • フランス…最低5週間(25日)
  • スイス…6週間(30日)

この長い休暇をつかって、大切な人たちと時間を共にしたり、自分だけの時間を気ままに過ごしたり、バカンスを思い思いに楽しんでいます。
夏に日焼けをしていないとなると、「休暇はとったのか!?」と周りに心配されてしまうのだとか。

ヨーロッパの大自然に囲まれて、バカンスを過ごす

山に囲まれた自然豊かな田舎町や小さな海辺の町など、1箇所に滞在してゆったりとバカンスに浸ります。

大事なことは、予定を詰め込まないこと。「何もしない自由」が最高の贅沢なんですよ!
ドラマチックな田園や紺碧の海、新鮮な料理、そして美しい町並み、のんびり過ごせる場所に長期滞在します。時間的にも場所的にも日常から遠いところに身を置くことで、生活や仕事から完全に解放されてリラックスした時間を楽しむことができます。

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太陽の下では横になって日差しと風にあたり、美しい景色を眺め、海では潮風の香りを、山では緑の香りを楽しみ、壮大な自然の中で本を読むことも。夕方にはサンセットを見に行き、夜は星空を眺めて静かに過ごす。

ゆったりと美しい自然を五感で感じると、からだも心も癒されます。

「なにもしない」に飽きてしまうこともあります。
そんなときは近くの街へ散策してみても。歩くことが好きなヨーロッパの人々は、30分から1時間の距離は徒歩で移動します。

町本来の音や香り、町並みを存分に感じながら、目的も持たずに楽しみます。
歴史的な城壁や偉大な建築の教会や宮殿を鑑賞してのんびり歩き、見かけたバーやジェラートショップに入って休憩。

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キャンピングカーを使ってロードトリップをしたり、高原では森林の中を自転車で探検することも。
「心の赴くままに過ごす」、これがヨーロッパのバカンスです。

自分の時間を大切にする暮らし

バカンスを大切にするヨーロッパの人々は、日常から自分の暮らしを軸にして休息をとる、バランスの良い生活をおくっています。

フランスに住む筆者の友人は、前日遅くまで仕事をしたら、翌日は昼から出社してみたり調整しているようです。そういうときは、朝は自分のために時間をつくり、良いエナジーをつけて1日をスタートさせています。

一方、ドイツでは、「残業=仕事ができない」とされてしまうために、定時で仕事を終わらせることが普通。プライベートの時間をしっかり充実させて、仕事のモチベーションを保っています。

自分の時間を守ることは仕事をする上でも大切とされているのです。
バカンスになると仕事の携帯は自宅に置いて、メールも確認しないといいます。オンとオフをしっかりして、体と心をヘルシーに保っているのですね。

イタリア人のバカンス

8月バカンスになるとミラノから人がいなくなる?!

ここからは、ヨーロッパの中でもイタリアのバカンスをポイントでご紹介します!

イタリアでは、大型連休のイースター(3月)とクリスマス(12月)はおうちで家族や大切な人と過ごすため、おうちでない場所で休暇を過ごすことが多い夏のバカンスは1年の中でもビッグイベントです。

中でも都会であるミラノの人々は、バカンスには海や山に行くため、都心の観光客向けのお店しか空いていません。

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8月のブティックやヘアサロン、クリーニング、ジェラートショップなどはことごとくシャッターが閉まり1枚の紙切れが貼られます。
そこには「Buone vacanze(ブオネ・ヴァカンツェ)良いバカンスを!」とだけ。イタリアの都市にいる人は海外からの観光者のみといわれています。

イタリア人は日焼けが大好き

日焼けが好きなイタリア人は、小さな島やイタリアにあるビーチタウンでバカンスを過ごします。

ギリシャのサントリーニ島からフェリーに乗って行く小さな島「イオス(Ios)島」には、白塗りの村に囲まれた素晴らしい自然の美しさと、ギリシャの太陽をたっぷり浴びることができる静かなビーチがあります。

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スペインのイビザ島にはビーチはもちろん、歴史やスペインの美食があり、サンライズが6時半ごろで美しい景色を見て目覚めることができるのも魅力。ミラノからもダイレクトフライトがあって、イタリア人からも人気のエリアです。

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伝統的なバカンスが過ごせる、北イタリアにあるビーチタウンBibione(ビビオーネ)。浜辺には、どこまでもパワソルが並び、1日中魅惑的な海岸でバカンスを楽しめます。アドリア海の海岸沿いにありヨーロッパ内からの観光者も多くいます。

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Bagnasciuga(バンニャアシュガ)という波打ち際を歩く健康法があります。
足元が交互に波で濡れて乾いて(bagnaバンニャ=濡れる、asciugaアシュガ=乾燥する)血行が良くなると言われていて、子どもからシニア世代まで地中海の穏やかな水辺を素足で歩きます。

日光浴を楽しんだらパラソルの下で昼寝をして、気が向いたら波打ち際を歩いて、お腹が空いたらご飯を食べる。
Dolce far niente(何もしない幸せ)がここにあります。

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小さな島は綺麗な海と静かな町があり、建物が低いことから空が広くて解放的なことでも好まれています。さらに、物価が安いことも選ばれる理由です。
筆者のイタリア人の友人は、バカンス前の時期にギリシャ、スペイン、フランスにある小さな島に行く話で盛り上がっていて、長い休暇を前に気分が高まっていました。

ちなみに、小さな島へ行くことは、ヨーロッパの若者のトレンドにもなっているんですよ。

避暑地で楽しむバカンス

イタリアでは自宅にクーラーがない家庭が多く、夏場はカーテンを閉め、窓を開けて暑さを凌ぎます。そのためか避暑地にセカンドハウスを持つ人が多くいます。

海辺、高原、湖のある田舎町には、セカンドハウスエリアがあり、都心から離れていることもあって手頃な価格で購入できます。普段は生活感がないエリアですが、大型連休やバカンスの時期になると、人が増えてきて生活感がでてきます。家の中は、一般家庭よりもコンパクトな作りで近隣との距離も近くバカンスの間だけ会うご近所さんがいます。

アルプスの麓にある小さな町Asiago(アジアーゴ)に、セカンドハウスを持つ筆者のイタリア人家族は、そこでしか食べることができない郷土料理や新鮮なチーズ、プロシュートを食べることも避暑地で過ごすバカンスならではの楽しみの一つです!

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あなたらしいバカンスを!

ヨーロッパではバカンスで何もしないことに贅沢を感じ、高級ホテルに滞在や豪華なレストランへ行くような、いわゆるリッチな贅沢はあまりしません。「心が豊かになる暮らし」に人生の価値観があります。

筆者のイタリア人の夫は、予定をたてて都会や海外へ行くことを「旅行」といい、リラックスして何もしない休暇のことを「バカンス」といいます。旅行とバカンスは全くの別物なのですね。
日本の休暇は数日なことが多く、1日に詰め込む予定が多くなりがちですが、予定や時間に追われないでからだや心を癒す休暇も楽しいかもしれません。

それでは夏に向けて、Buone vacanze! 良いバカンスを!

ライタープロフィール:Shiho Yamaguchi

欧米のライフスタイル・サステナビリティを発信しているフリーライター。
30歳を機にニューヨークへ移住。イタリア人と出会い、現在はミラノへ拠点を移し夫と娘の3人暮らし。休暇がたっぷり取れるイタリアならでは、楽しみは格安フライトやフェリーで行く月1回のヨーロッパ旅行。

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