人気のキーワード
★隙間時間にコラムを読むならアプリがオススメ★
神社の境内などで、まるでオブジェのようにも思える大きな大きな輪を見かけたことはありませんか?この輪は茅の輪(ちのわ)と言い、くぐることで穢れを祓い、無病息災を願うもの。誰でもくぐることができます。
起源はとても古く、日本神話にまでさかのぼるといわれているこの茅の輪くぐり。ここではいにしえより伝わる茅の輪くぐりの起源や作法についてくわしく紹介していきます。
多くの神社で6月30日に執り行われる夏越の大祓。この夏越の大祓とは、暮らしの中で知らず知らずのうちについた穢れを落とし、一年の後半も健やかに過ごせるようにと願う儀式です。
この神事の一つとして行われるのが茅の輪くぐり。 神社の結界内に設えられた茅の輪を、8の字を描くようにくぐり、心身を清め災厄を祓い、無病息災を願います。
この大きな輪は、茅(ちがや)と呼ばれるイネ科の植物を束ねて作られたもの。 茅は今でこそ雑草として疎まれていますが、昔からひとの暮らしに欠かせない存在でした。
サトウキビのように茎に糖分を蓄えることから、江戸時代には子どものおやつとして売られていたのだそう。 現代でも、数は少なくなったものの茅葺屋根の屋根材として使われたり、乾燥させた根茎には、消炎・止血・利尿などの作用があるため漢方薬として取り入れられています。
この茅が祓えの輪に使われるようになったのは、邪気を祓う力があると信じられてきたためです。 茅の花言葉は「こどもの守護神」。昔、端午の節句で食べる粽(ちまき)を包むのには笹ではなく茅が使われていました。この鋭く刀のような葉は、悪いものを寄せ付けない魔除けとして、古くから用いられてきたのです。
茅の輪くぐりは、日本神話に基づいているといわれています。諸説ある中で、「備後国風土記」に記されている蘇民将来(そみんしょうらい)の話が有名です。
備後国を旅していた武塔神(スサノオノミコト)が一晩の宿を求めたのは、蘇民将来と巨旦将来(こたんしょうらい)の兄弟でした。 豊かで大きな屋敷を構える弟 巨旦将来はその頼みを断り、一方で貧しい兄 蘇民将来は招き入れ、慎ましいながらも厚くもてなしたのだそうです。
帰路にこの地を再び訪れた武塔神は、自分がスサノオノミコトであることを明かし、蘇民将来の一族に茅で編んだ輪を授けました。そしてその輪を腰につけるよう伝えたのです。
その後この地で疫病が流行しましたが、みなが死に絶えた中でこの輪を身に付けていた蘇民将来の一族だけは生き延びることができた、という話です。
この話から茅の輪は疫病退散、無病息災を願う際に使われるようになりました。 時代が下るごとに輪は大きくなり、江戸時代ごろには現在の大きな輪をくぐる形が定着したという記録が残っています。
1年に二度、夏越の祓と年越の祓が対になって執り行われる大祓。 半年ごとに心身についた穢れを落とす儀式が行われます。
1年の半分が過ぎる6月30日に、人形流しなどとともに夏越の祓の儀式のひとつとして茅の輪くぐりが行われます。 昔は、この梅雨から夏に向かう季節になると疫病が流行したことから、この時期に祓をするという説もあります。
一年の終わり、12月31日大晦日には年越の祓が行われます。一年の後半の穢れを落とし、身も心も清めて新しい年を迎えるための儀式です。 茅の輪くぐりは夏越の祓で行われるのが一般的ですが、数は少ないながら年越の祓でも行う神社もあるそうですよ。
茅の輪をくぐる前に、まず手水舎で手と口を清めてから進みましょう。 輪のくぐり方には、独特の手順と唱える詞があります。
一般的なくぐり方は以下の通りです。
御手水やお清めの塩などの所作にも、この左右左の順番はよく使われますよね。
日本では昔から、言葉には霊力が宿るとされてきました。口に出すことで言葉の持つ力を解き放つができる、という考えです。 この茅の輪くぐりでも無病息災の願いを込め、唱え詞を唱えながら輪をくぐります。
一般的な唱え詞は、聞いたことがある人もいると思います。
「祓い給ひ 清め給え 守り給ひ 幸え給え」 はらいたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ
また、神社によっては1周ごと拾遺和歌集などの和歌を詠みながらくぐるというところもあります。
1周目 「水無月の夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶと云うなり」 みなづきのなごしのはらえするひとは ちとせのいのち のぶという
(6月の夏越の祓をした人は長く長く寿命が延びるということです)
2周目 「思ふ事 皆つきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓ひつるかな」 おもふこと みなつきねとて あさのはを きりにきりても はらひつるかな
(思い悩むことがすべてなくなってしまうように祈りながら、麻の葉を切っては切ってはお願いするのです)
3周目 「宮川の 清き流れに 禊せば 祈れることの 叶わぬはなし」 みやがわの きよきながれに みそぎせば いのれることの かなわぬはなし
(宮川の清らかな流れで禊ぎをすれば、どんな願いも叶うものです)
この他にも、茅の輪くぐりの由来となった蘇民将来の名を唱えながらくぐる、という神社もあるようです。
この茅の輪が設置される期間は神社によって異なり、6月30日だけのところもあれば、早くから茅の輪を置くところもあります。 設置してある間は自由にくぐることができる神社が多いようです。 茅の輪くぐりを行っていない神社もあるので、事前に調べておくことをおすすめします。
また、茅の輪くぐりの作法や唱え詞は地方や神社でさまざま。作法が茅の輪のそばに示されている神社もあります。お祓いをする予定の神社ではどのような作法なのかを確認しておくと安心ですね。
茅の輪くぐりで特に注意をしたいのは、この輪の茅を引き抜いて持ち帰ること。 多くの人が茅の輪をくぐって厄を落とすため、この茅を持ち帰るということは厄も持ち帰ることになるのだそうです。
京都では、6月も中旬を過ぎると和菓子やさんに「水無月」が並ぶようになります。 6月30日夏越の祓に水無月を食べるのが京都の風習です。この和菓子は期間限定で、お店によっては6月30日のみの販売というところもあります。
もっちりした食感の外郎(ういろう)の上に、甘く炊いたつややかな小豆がぎっしりと敷き詰められた水無月。 三角形の外郎は暑い夏に涼をとる氷室(ひむろ)の氷をあらわしたもの。庶民ではなかなか手に入らなかった氷をお菓子で表現したといわれています。 そして小豆は古くから解毒の力があり、命や太陽を象徴する赤色が魔除けの色といわれてきました。
うだるような暑さで知られる夏の京都盆地、本格的な暑さを迎える前の夏越の祓に、京都の人たちはそれぞれお気に入りのお店の水無月を食べ、一年の後半の無病息災を願うのです。
茅の輪くぐりについてご紹介させていただきましたが「こんな身近なところに日本神話から伝わる風習があるなんて」と、ときめいた方はいませんか?
そのときめきは、自然を畏れ、すべてに神が宿ると信じてきた先人たちの営みに、今を生きるあなたが反応した証なのかもしれません。
生まれた時にお宮でご挨拶をしたときから、思っているよりずっと近く、あなたの毎日の暮らしの中に「神さま」はとけ込んでいます。
今生きるわたしたちが日本の神さまとどんなふうに歩んできたのか。 神話を知り、自然を感じ、わたしたちを知る、 そんな旅に出てみませんか?
昔から日本の神さまは私たちの暮らしの中にあり、その神さまと出会い語らう場所が神社だったのかもしれません。
神社学では、奥深い神社の魅力を、「古事記」などに記された神話や伝説を紐解きながら、日本の神さまや歴史的背景、先人との対話を意識して、神社学ならではの楽しみ方をシェアしていきます。
「あまのいわと学校」は実際の神話の舞台「宮崎県高千穂」「長野県戸隠」に訪れ、1 年を通して天岩戸神話に触れ、学び、伝えていくことを目的に展開する学びの場です。
過去のレポートはこちら
茅の輪くぐりは、神話のころから守り伝えられてきた大切な風習です。 日々の暮らしの中でついた穢れを落とし、1年の後半をどうか健やかに過ごせますように、と祈りながらくぐる茅の輪。
穏やかで健やかな日々がどんなに大切かをあらためて知った、いまのわたしたちだからこそ、この茅の輪くぐりを伝えてくれた先人たちの思いを知ることができます。
この夏は神社で茅の輪くぐりをして無病息災を願い、この風習がうまれた神話の世界や先人たちの営みに思いを馳せてみませんか?
神社の境内などで、まるでオブジェのようにも思える大きな大きな輪を見かけたことはありませんか?この輪は茅の輪(ちのわ)と言い、くぐることで穢れを祓い、無病息災を願うもの。誰でもくぐることができます。
起源はとても古く、日本神話にまでさかのぼるといわれているこの茅の輪くぐり。ここではいにしえより伝わる茅の輪くぐりの起源や作法についてくわしく紹介していきます。
目次
茅の輪くぐりとは?大きな輪が茅で編まれているわけ
多くの神社で6月30日に執り行われる夏越の大祓。この夏越の大祓とは、暮らしの中で知らず知らずのうちについた穢れを落とし、一年の後半も健やかに過ごせるようにと願う儀式です。
この神事の一つとして行われるのが茅の輪くぐり。
神社の結界内に設えられた茅の輪を、8の字を描くようにくぐり、心身を清め災厄を祓い、無病息災を願います。
この大きな輪は、茅(ちがや)と呼ばれるイネ科の植物を束ねて作られたもの。
茅は今でこそ雑草として疎まれていますが、昔からひとの暮らしに欠かせない存在でした。
サトウキビのように茎に糖分を蓄えることから、江戸時代には子どものおやつとして売られていたのだそう。
現代でも、数は少なくなったものの茅葺屋根の屋根材として使われたり、乾燥させた根茎には、消炎・止血・利尿などの作用があるため漢方薬として取り入れられています。
この茅が祓えの輪に使われるようになったのは、邪気を祓う力があると信じられてきたためです。
茅の花言葉は「こどもの守護神」。昔、端午の節句で食べる粽(ちまき)を包むのには笹ではなく茅が使われていました。この鋭く刀のような葉は、悪いものを寄せ付けない魔除けとして、古くから用いられてきたのです。
茅の輪くぐりの起源は日本神話
茅の輪くぐりは、日本神話に基づいているといわれています。諸説ある中で、「備後国風土記」に記されている蘇民将来(そみんしょうらい)の話が有名です。
備後国を旅していた武塔神(スサノオノミコト)が一晩の宿を求めたのは、蘇民将来と巨旦将来(こたんしょうらい)の兄弟でした。
豊かで大きな屋敷を構える弟 巨旦将来はその頼みを断り、一方で貧しい兄 蘇民将来は招き入れ、慎ましいながらも厚くもてなしたのだそうです。
帰路にこの地を再び訪れた武塔神は、自分がスサノオノミコトであることを明かし、蘇民将来の一族に茅で編んだ輪を授けました。そしてその輪を腰につけるよう伝えたのです。
その後この地で疫病が流行しましたが、みなが死に絶えた中でこの輪を身に付けていた蘇民将来の一族だけは生き延びることができた、という話です。
この話から茅の輪は疫病退散、無病息災を願う際に使われるようになりました。
時代が下るごとに輪は大きくなり、江戸時代ごろには現在の大きな輪をくぐる形が定着したという記録が残っています。
茅の輪くぐりはいつ行われるの?
1年に二度、夏越の祓と年越の祓が対になって執り行われる大祓。
半年ごとに心身についた穢れを落とす儀式が行われます。
6月の晦日、夏越の祓で
1年の半分が過ぎる6月30日に、人形流しなどとともに夏越の祓の儀式のひとつとして茅の輪くぐりが行われます。
昔は、この梅雨から夏に向かう季節になると疫病が流行したことから、この時期に祓をするという説もあります。
年越の祓で行う神社も
一年の終わり、12月31日大晦日には年越の祓が行われます。一年の後半の穢れを落とし、身も心も清めて新しい年を迎えるための儀式です。
茅の輪くぐりは夏越の祓で行われるのが一般的ですが、数は少ないながら年越の祓でも行う神社もあるそうですよ。
茅の輪のくぐり方・作法とは?
茅の輪をくぐる前に、まず手水舎で手と口を清めてから進みましょう。
輪のくぐり方には、独特の手順と唱える詞があります。
8の字に3度くぐりぬける
一般的なくぐり方は以下の通りです。
御手水やお清めの塩などの所作にも、この左右左の順番はよく使われますよね。
言霊(ことだま)をのせる唱え詞
日本では昔から、言葉には霊力が宿るとされてきました。口に出すことで言葉の持つ力を解き放つができる、という考えです。
この茅の輪くぐりでも無病息災の願いを込め、唱え詞を唱えながら輪をくぐります。
一般的な唱え詞は、聞いたことがある人もいると思います。
「祓い給ひ 清め給え 守り給ひ 幸え給え」
はらいたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ
また、神社によっては1周ごと拾遺和歌集などの和歌を詠みながらくぐるというところもあります。
1周目
「水無月の夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶと云うなり」
みなづきのなごしのはらえするひとは ちとせのいのち のぶという
(6月の夏越の祓をした人は長く長く寿命が延びるということです)
2周目
「思ふ事 皆つきねとて 麻の葉を きりにきりても 祓ひつるかな」
おもふこと みなつきねとて あさのはを きりにきりても はらひつるかな
(思い悩むことがすべてなくなってしまうように祈りながら、麻の葉を切っては切ってはお願いするのです)
3周目
「宮川の 清き流れに 禊せば 祈れることの 叶わぬはなし」
みやがわの きよきながれに みそぎせば いのれることの かなわぬはなし
(宮川の清らかな流れで禊ぎをすれば、どんな願いも叶うものです)
この他にも、茅の輪くぐりの由来となった蘇民将来の名を唱えながらくぐる、という神社もあるようです。
茅の輪くぐりについて注意したいこと
この茅の輪が設置される期間は神社によって異なり、6月30日だけのところもあれば、早くから茅の輪を置くところもあります。
設置してある間は自由にくぐることができる神社が多いようです。
茅の輪くぐりを行っていない神社もあるので、事前に調べておくことをおすすめします。
また、茅の輪くぐりの作法や唱え詞は地方や神社でさまざま。作法が茅の輪のそばに示されている神社もあります。お祓いをする予定の神社ではどのような作法なのかを確認しておくと安心ですね。
茅の輪くぐりで特に注意をしたいのは、この輪の茅を引き抜いて持ち帰ること。
多くの人が茅の輪をくぐって厄を落とすため、この茅を持ち帰るということは厄も持ち帰ることになるのだそうです。
夏越の祓にいただく京の和菓子「水無月」
京都では、6月も中旬を過ぎると和菓子やさんに「水無月」が並ぶようになります。
6月30日夏越の祓に水無月を食べるのが京都の風習です。この和菓子は期間限定で、お店によっては6月30日のみの販売というところもあります。
もっちりした食感の外郎(ういろう)の上に、甘く炊いたつややかな小豆がぎっしりと敷き詰められた水無月。
三角形の外郎は暑い夏に涼をとる氷室(ひむろ)の氷をあらわしたもの。庶民ではなかなか手に入らなかった氷をお菓子で表現したといわれています。
そして小豆は古くから解毒の力があり、命や太陽を象徴する赤色が魔除けの色といわれてきました。
うだるような暑さで知られる夏の京都盆地、本格的な暑さを迎える前の夏越の祓に、京都の人たちはそれぞれお気に入りのお店の水無月を食べ、一年の後半の無病息災を願うのです。
神社や日本神話についてもっと知りたい人は
茅の輪くぐりについてご紹介させていただきましたが「こんな身近なところに日本神話から伝わる風習があるなんて」と、ときめいた方はいませんか?
そのときめきは、自然を畏れ、すべてに神が宿ると信じてきた先人たちの営みに、今を生きるあなたが反応した証なのかもしれません。
生まれた時にお宮でご挨拶をしたときから、思っているよりずっと近く、あなたの毎日の暮らしの中に「神さま」はとけ込んでいます。
今生きるわたしたちが日本の神さまとどんなふうに歩んできたのか。
神話を知り、自然を感じ、わたしたちを知る、
そんな旅に出てみませんか?
先人達が紡いできた神話を読み解く【ライフスタイル神社学】
昔から日本の神さまは私たちの暮らしの中にあり、その神さまと出会い語らう場所が神社だったのかもしれません。
神社学では、奥深い神社の魅力を、「古事記」などに記された神話や伝説を紐解きながら、日本の神さまや歴史的背景、先人との対話を意識して、神社学ならではの楽しみ方をシェアしていきます。
実際の神話の舞台に訪れ体験する【あまのいわと学校】
「あまのいわと学校」は実際の神話の舞台「宮崎県高千穂」「長野県戸隠」に訪れ、1 年を通して天岩戸神話に触れ、学び、伝えていくことを目的に展開する学びの場です。
過去のレポートはこちら
まとめ
茅の輪くぐりは、神話のころから守り伝えられてきた大切な風習です。
日々の暮らしの中でついた穢れを落とし、1年の後半をどうか健やかに過ごせますように、と祈りながらくぐる茅の輪。
穏やかで健やかな日々がどんなに大切かをあらためて知った、いまのわたしたちだからこそ、この茅の輪くぐりを伝えてくれた先人たちの思いを知ることができます。
この夏は神社で茅の輪くぐりをして無病息災を願い、この風習がうまれた神話の世界や先人たちの営みに思いを馳せてみませんか?