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今や川越の定番スポットとして度々話題にも上がる、川越「椿の蔵」。2023年で10周年を迎える当施設は、約10年前、幸運の巡り合わせと人々の想いによってその歴史が動き始めました。
この記事では、アミナコレクション代表 進藤が、今まで表では語ってこなかった川越「椿の蔵」の誕生秘話を綴ります。
アミナコレクションは最初の30年、チャイハネでエスニック諸国の文化を発信してきました。 その先に日本の文化も発信していこうということで、2009年に倭ものやカヤ、2013年に岩座をローンチしました。
出だし好調の手ごたえの中、日本文化が強く根付いた観光地に出店をして、観光と文化の両面で盛り上げていきたいという想いが強まっていたときのこと。川越の観光地一等地に土地を取得することとなったのですが、今となっては信じられないことにインターネットで物件を見つけたのです。
人気の観光地だと不動産は表に出る前に人づてで売買や賃貸が進んでしまうため、インターネットはもちろんなかなか表には出ません。ビギナーズラックというか縁の巡り会わせがあったのだと思います。
川越のあとも観光地の出店を多数成功させてきましたが、インターネットで物件を見つけたのは川越が最初で最後です。
土地を取得したのちに新規建築をすることになるのですが、川越は伝統的建造物築群保存地区に指定されているために、好き勝手に建築することはできません。歴史的な町並みの景観を守るため、建築に多くの規制や審査を通過しなければならないのです。
川越一番街商店街には町並み委員会という、商店街の商店主、住民、行政、専門家が出席する会議があるのですが、その委員会に顔を出して審査されることとなります。その会議で私が建築をしていきたい旨、業態も含めて報告するところから始まったのですが、ちょっとピリピリとした空気がありました。
今までも、町並み委員会が本当に望むような建築をしてくれるところもあれば、最低限の対応で審査を通そうとするところもあれば、委員会の意に背くような希望を出してくるところもあったのでしょう。ピリピリとした警戒心はあって当然ですし、それだけ町を良くしたいという想いが強いのだな、と逆にちょっとした感銘を受けました。なんて熱い町だ!と。
私としましても、川越の魅力は蔵の町並みにあるとはっきりと分かっておりましたので、当然、審査も理解できますし、できれば町の魅力向上につながる建築をしたいと思っておりました。
当時の川越における新築では京都で見るような町屋形式が建つことが多かったようです。
確かに町並みを守る、という視点ではコストを押さえて和風の建築でいなす、という意味で町屋形式は最低限の対応という感じでしょう。しかしながら町並み委員会の方々の発言を聞いていると、「本来は蔵の町並み。できれば町屋でなくて蔵造りの建築であってほしい」、という本音が見え隠れしていました。私は、ほとんど迷いなく、蔵造りを選択しました。
当社としても勝負するならば、町並みを壊すような悪目立ちする建築はしたくないし、町屋で存在感のないこともしたくない。川越らしい蔵、その川越らしさをより強調した蔵を立てることで存在感を出し、町との調和のみならず商売でも勝ちたい、と自然に思ったのです。
私が蔵を建てたいと宣言したときに、町並み委員の方々は意外な表情をしつつ、喜んでくれたのを覚えています。
町並み委員でもある松本康弘建築工房さんが設計をしてくれました。
川越の蔵の特徴である、大きな影盛り、印籠、箱棟など重厚な屋根の要素があるのですが、より重厚感を出して存在感を高めると同時に、町並みと調和を考えてくれました。蔵造りの通りの中の連続性を考え、周辺の蔵を参考に、軒の高さ、建物の高さ、影盛の大きさ、壁面の位置など、細かく組み込んでいってくれたのです。
正直なところを申しますと、最初は町並み委員会からあれこれ口を出されて「お金を出すのはこちらですよね」と言い返したくなることもありました。建築の意匠はともかくも、火事の延焼を止めるための中庭の位置の考え方、雨樋にいたるまで、こまかく川越流で指摘されたのです。
ただ川越らしい蔵を建てたい気持ちは一緒なので、最後はどこか私も意固地になって「この人たちが認めざるを得ない蔵にしたい」という気持ちさえ芽生えました。ですので松本設計士から川越の特徴である棟を特別に大きいサイズでやったらどうかという提案を受けたときも、絶対そうしたいと共感できたのです。
果たして蔵が完成しますと、町の方々も見に来てくださりました。 そのときにどなたかの「久々に川越らしい蔵ができたね」との嬉しそうな声が聞こえてきました。自分が嬉しいだけでなく、町の方も嬉しいと思ってくれてる!心底、「良かった」、と思いました。
そして2017年にNPO法人 川越蔵の会より「蔵詩句(くらしっく)大賞」を受賞いたしました。 1987年に県や市に先駆けて創設した景観賞であるこの賞は、デザインの新建築物、空間づくり、イベント、創作文化に対し贈呈されるものです。新築とは思えないほど町に馴染んだ川越らしい蔵であったこと、二名の店長が積極的に町の活動に参加してくれたこと、が受賞理由でした。
受賞式に参加したのちに講演を頼まれました。 「本当に町の方々が喜んでくださる建築をすれば、たとえ建築コストが増してもそれ以上の見返りはあるのではないか。現に私の蔵は集客に成功して繁盛してます。」と本当に感じてることを話しました。 川越の町並みの美しさや独自性が今後の改築・新築で壊されることのないように、そのことが商売にとってもプラスになるという循環につながるように、祈って言葉を紡いだつもりです。
蔵での商売の展開としましては「日本人のルーツが花咲く」をテーマに、二つの和業態と足湯を組み合わせました。 特徴としまして入り口に入ってすぐ、9mを越す吹き抜けがあります。その右側の壁には京都の絵師・木村英輝氏(Ki-Yan Studio FLYING HIDEKI PROJECT)のチームにダイナミックな椿画を手描きで描いてもらいました。
蔵の裏庭には足湯のカフェを展開しました。裏庭を囲う塀の奥には老舗の日本料亭の美しい古建築が見えていて、素晴らしい環境です。 川越を楽しくそぞろ歩いたお客様が足を休めカフェを楽しんでもらいたい。その想いで足湯カフェを立ち上げましたが、今や川越観光の一つの定番スポットとなっているようでうれしく思っております。
さまざまな幸運と想いを紡いで生まれた椿の蔵も、2023年で10年目を迎えました。 川越も観光地としてますます人気が上がり多くの人で賑わっておりますが、巨大な棟を乗せた椿の蔵は、町並みに調和しつつも存在感を放ち続けてます。今後とも多くのご愛顧とともに、川越の魅力を高め、日本文化を発信する拠点として、町の歴史に溶け込んでいきたいです。
【西武新宿線「本川越駅」を利用の方】 東武バス5分、「一番街」にて下車、または徒歩16分。 【東武東上線・JR「川越駅」を利用の方】 東武バス7分、「一番街」にて下車すぐ。
〒350-0063埼玉県川越市幸町3-2椿の蔵1F
Googleマップ
※足湯喫茶TSUBAKIYAは営業時間が異なります。 12:00-17:30(L.O.17:00)土日祝10:00-18:30(L.O.18:00)
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アミナコレクション創業者 進藤幸彦の次男坊。2010年に社長に就任。 1975年生まれ。自然と歴史と文化、それを巡る旅が好き。
今や川越の定番スポットとして度々話題にも上がる、川越「椿の蔵」。2023年で10周年を迎える当施設は、約10年前、幸運の巡り合わせと人々の想いによってその歴史が動き始めました。
この記事では、アミナコレクション代表 進藤が、今まで表では語ってこなかった川越「椿の蔵」の誕生秘話を綴ります。
アミナコレクションは最初の30年、チャイハネでエスニック諸国の文化を発信してきました。
その先に日本の文化も発信していこうということで、2009年に倭ものやカヤ、2013年に岩座をローンチしました。
出だし好調の手ごたえの中、日本文化が強く根付いた観光地に出店をして、観光と文化の両面で盛り上げていきたいという想いが強まっていたときのこと。川越の観光地一等地に土地を取得することとなったのですが、今となっては信じられないことにインターネットで物件を見つけたのです。
人気の観光地だと不動産は表に出る前に人づてで売買や賃貸が進んでしまうため、インターネットはもちろんなかなか表には出ません。ビギナーズラックというか縁の巡り会わせがあったのだと思います。
川越のあとも観光地の出店を多数成功させてきましたが、インターネットで物件を見つけたのは川越が最初で最後です。
土地を取得したのちに新規建築をすることになるのですが、川越は伝統的建造物築群保存地区に指定されているために、好き勝手に建築することはできません。歴史的な町並みの景観を守るため、建築に多くの規制や審査を通過しなければならないのです。
川越一番街商店街には町並み委員会という、商店街の商店主、住民、行政、専門家が出席する会議があるのですが、その委員会に顔を出して審査されることとなります。その会議で私が建築をしていきたい旨、業態も含めて報告するところから始まったのですが、ちょっとピリピリとした空気がありました。
今までも、町並み委員会が本当に望むような建築をしてくれるところもあれば、最低限の対応で審査を通そうとするところもあれば、委員会の意に背くような希望を出してくるところもあったのでしょう。ピリピリとした警戒心はあって当然ですし、それだけ町を良くしたいという想いが強いのだな、と逆にちょっとした感銘を受けました。なんて熱い町だ!と。
私としましても、川越の魅力は蔵の町並みにあるとはっきりと分かっておりましたので、当然、審査も理解できますし、できれば町の魅力向上につながる建築をしたいと思っておりました。
当時の川越における新築では京都で見るような町屋形式が建つことが多かったようです。
確かに町並みを守る、という視点ではコストを押さえて和風の建築でいなす、という意味で町屋形式は最低限の対応という感じでしょう。しかしながら町並み委員会の方々の発言を聞いていると、「本来は蔵の町並み。できれば町屋でなくて蔵造りの建築であってほしい」、という本音が見え隠れしていました。私は、ほとんど迷いなく、蔵造りを選択しました。
当社としても勝負するならば、町並みを壊すような悪目立ちする建築はしたくないし、町屋で存在感のないこともしたくない。川越らしい蔵、その川越らしさをより強調した蔵を立てることで存在感を出し、町との調和のみならず商売でも勝ちたい、と自然に思ったのです。
私が蔵を建てたいと宣言したときに、町並み委員の方々は意外な表情をしつつ、喜んでくれたのを覚えています。
町並み委員でもある松本康弘建築工房さんが設計をしてくれました。
川越の蔵の特徴である、大きな影盛り、印籠、箱棟など重厚な屋根の要素があるのですが、より重厚感を出して存在感を高めると同時に、町並みと調和を考えてくれました。蔵造りの通りの中の連続性を考え、周辺の蔵を参考に、軒の高さ、建物の高さ、影盛の大きさ、壁面の位置など、細かく組み込んでいってくれたのです。
正直なところを申しますと、最初は町並み委員会からあれこれ口を出されて「お金を出すのはこちらですよね」と言い返したくなることもありました。建築の意匠はともかくも、火事の延焼を止めるための中庭の位置の考え方、雨樋にいたるまで、こまかく川越流で指摘されたのです。
ただ川越らしい蔵を建てたい気持ちは一緒なので、最後はどこか私も意固地になって「この人たちが認めざるを得ない蔵にしたい」という気持ちさえ芽生えました。ですので松本設計士から川越の特徴である棟を特別に大きいサイズでやったらどうかという提案を受けたときも、絶対そうしたいと共感できたのです。
果たして蔵が完成しますと、町の方々も見に来てくださりました。
そのときにどなたかの「久々に川越らしい蔵ができたね」との嬉しそうな声が聞こえてきました。自分が嬉しいだけでなく、町の方も嬉しいと思ってくれてる!心底、「良かった」、と思いました。
そして2017年にNPO法人 川越蔵の会より「蔵詩句(くらしっく)大賞」を受賞いたしました。
1987年に県や市に先駆けて創設した景観賞であるこの賞は、デザインの新建築物、空間づくり、イベント、創作文化に対し贈呈されるものです。新築とは思えないほど町に馴染んだ川越らしい蔵であったこと、二名の店長が積極的に町の活動に参加してくれたこと、が受賞理由でした。
受賞式に参加したのちに講演を頼まれました。
「本当に町の方々が喜んでくださる建築をすれば、たとえ建築コストが増してもそれ以上の見返りはあるのではないか。現に私の蔵は集客に成功して繁盛してます。」と本当に感じてることを話しました。
川越の町並みの美しさや独自性が今後の改築・新築で壊されることのないように、そのことが商売にとってもプラスになるという循環につながるように、祈って言葉を紡いだつもりです。
蔵での商売の展開としましては「日本人のルーツが花咲く」をテーマに、二つの和業態と足湯を組み合わせました。
特徴としまして入り口に入ってすぐ、9mを越す吹き抜けがあります。その右側の壁には京都の絵師・木村英輝氏(Ki-Yan Studio FLYING HIDEKI PROJECT)のチームにダイナミックな椿画を手描きで描いてもらいました。
蔵の裏庭には足湯のカフェを展開しました。裏庭を囲う塀の奥には老舗の日本料亭の美しい古建築が見えていて、素晴らしい環境です。
川越を楽しくそぞろ歩いたお客様が足を休めカフェを楽しんでもらいたい。その想いで足湯カフェを立ち上げましたが、今や川越観光の一つの定番スポットとなっているようでうれしく思っております。
さまざまな幸運と想いを紡いで生まれた椿の蔵も、2023年で10年目を迎えました。
川越も観光地としてますます人気が上がり多くの人で賑わっておりますが、巨大な棟を乗せた椿の蔵は、町並みに調和しつつも存在感を放ち続けてます。今後とも多くのご愛顧とともに、川越の魅力を高め、日本文化を発信する拠点として、町の歴史に溶け込んでいきたいです。
川越「椿の蔵」概要
■アクセス
【西武新宿線「本川越駅」を利用の方】
東武バス5分、「一番街」にて下車、または徒歩16分。
【東武東上線・JR「川越駅」を利用の方】
東武バス7分、「一番街」にて下車すぐ。
川越「椿の蔵」
〒350-0063
埼玉県川越市幸町3-2椿の蔵1F
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※足湯喫茶TSUBAKIYAは営業時間が異なります。
12:00-17:30(L.O.17:00)土日祝10:00-18:30(L.O.18:00)
足湯喫茶ってどんなところ?気になる方はこちら▼
足湯喫茶TSUBAKIYAがリニューアルオープン!川越スイーツを堪能しながら足湯を満喫
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筆者プロフィール:進藤さわと
アミナコレクション創業者 進藤幸彦の次男坊。2010年に社長に就任。
1975年生まれ。自然と歴史と文化、それを巡る旅が好き。