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モロッコで暮らしていると、服をめぐる日本との違いに驚かされます。衝撃的な洗濯物の干し方やムスリムの義母の外出着の秘密など、服を眺めているだけ見えてくるモロッコの日常を紹介します。
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義理の家族と暮らしていた時、一番驚いたのが洗濯物の干し方でした。
私が住んでいたのは屋上付きの2階建ての家。陽当たりの良い屋上の一角には、洗濯物を干すロープが4本張り巡らされていました。でも義母は、ほとんどこのロープを使いませんでした。基本は2階の窓枠にくちゃっと洗濯物を並べて終わりという干し方をしていたのです。
初めて見た時は衝撃でした。義母は洗濯物を干すのがあまり好きではないようで、いつも全身から「面倒くさい」という雰囲気を漂わせて2階に上がってきます。そして、洗濯物が入ったバケツを窓際に置くと、溜め息をつきながら1枚、2枚と窓の格子に濡れた服を通していました。
日本のように、一枚ずつ広げて干すなんてことはしません。半分に折れたままのものもあれば、丸まったまま格子に引っかけただけのものもあります。脱水が甘く水が滴っていることも多々ありましたが、義母は全く気にしませんでした。窓枠が洗濯物で一杯になった時は、近くのソファの上に濡れた服を直接置いていたこともありました。
私が心配していた「洗濯物の生乾き」は、乾燥したこの国では問題になりませんでした。折りたたんだままの服でさえ、いつの間にかカラッと乾いていました。斬新な洗濯物の干し方に慣れるまでには、正直かなり時間がかかりました。でも、あんな干し方でもイヤイヤでも、窓辺に洗濯物を並べておけば、ちゃんと服は乾く。それを知った私は、肩の力が抜けました。
モロッコの旧市街を歩いていると、民族衣装のジュラバやカフタンを着用した街の人と幾度となくすれ違います。でも、そういう服を着ている人は年齢層が高めで、若い人は洋服が主流でした。
私が知り合った若いモロッコ人たちは、お洒落が大好きでした。ほんの少し外出しただけでも衣装はチェンジ。午前と午後で同じ服を着ているなんて、あってはならないことでした。
義理の兄も大変お洒落な人で、モデル並みに細い体形と高身長を生かした、素敵な装いをしています。ある昼下がり、義理の兄は「これ買ったんだ」と新しい洋服を私に自慢してきました。彼はGを重ねたロゴが全体に織り込まれたジーンズと、深い緑と赤のラインが入ったライダーズジャケットというクールな装いをしています。派手な装いですが、彼の長い手足にはピッタリでした。絶賛しながらも、私は不思議に思います。あれ…このロゴって…?
よく見ると、ベルトや靴にも交差したGのロゴが入っています。安く手に入れたのでしょうか。でも、義理の兄は仕事をしていません。私が知る限り、義理の兄も義理一家も、ハイブランドの服を何着も買えるような生活はしていませんでした。
そして私は気付きました。彼が身につけていたのは、ハイブランドそのものではなく、ハイブランドそっくりの服だったのです。改めて街を見渡してみると、グッチ、ベルサーチ、シャネル…。若い人たちの服には、見覚えのあるブランドのロゴがあちこちに入っていました。
どう見ても本物ではありません。でも、誰もそれを隠さないし、指摘もしません。堂々とお洒落を楽しむ若者たちの姿は、ちょっと羨ましいものがありました。
イスラム教徒の女性と聞くと、頭から足先まで肌を隠した女性を思い浮かべる人も多いでしょう。しかしモロッコの女性たちや、日常用カフタンの場合は黒い服ではなく、鮮やかな色合いのジュラバを着て外出します。
義母もそうでした。外出時はもちろん、自宅に来客を招いた時など、家族以外の他人と会う時は必ずジュラバと髪を覆うヒジャブを着用していました。彼女の手持ちのジュラバは、スパンコールが施されたものや、紫をベースカラーにしたトラ柄など、派手な品ばかり。柄ものに柄ものを合わせることも多く、全身を布で覆っていても地味とは無縁の装いをしていました。
私は彼女のそうした姿を少し尊敬していました。わずかな時間であろうと、マナーを守って身なりを整える。その姿は、例えるならコンビニに行く時でも外出着を着てメイクを施すイメージです。
でも、その印象はある日崩れます。その日、リビングには義母のほかに私と夫がいて、それぞれがくつろいでいました。昼過ぎだというのに義母はパジャマ姿のままで、完全にリラックスモードです。突然、義母が「野菜をもらう約束をしていたんだった!」と誰に言うでもなく呟きました。
そしてソファの下からピンクのジュラバを取り出すと、パジャマの上からスポッとおもむろに被ったのです。ペンシルで目を囲み、ヒジャブを髪に巻くまで約2分。ジュラバはゆったりしたシルエットの服なので、下にパジャマを着ていても着ぶくれしません。私は、颯爽と出かけて行く義母の姿を目で追いながら、呆気に取られました。
30分ほどして義母は帰宅しました。野菜がたっぷり入った黒いビニール袋を両手にぶら下げています。彼女は「疲れた~」と言いながらヒジャブを外しジュラバを脱ぐと、ソファに横たわってリラックスモードに入っていました。帰宅して1分もしないうちに、パジャマ姿に戻っていたのです。
その後も、突然誰かが訪ねてきた時には「待って!」と大声で叫んで、パジャマの上からジュラバをすっぽり被って対応していました。
キレイな身なりをしている義母を尊敬さえしていた私は、そのズボラなお洒落を目の当たりにして失望するどころか、さらに義母が好きになりました。鮮やかなジュラバに身を包んで旧市街を闊歩する女性たち。でも、その服の下はパジャマなのかと思うと、何ともいえない甘酸っぱい愛しい気持ちがこみあげてきます。
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
モロッコで暮らしていると、服をめぐる日本との違いに驚かされます。
衝撃的な洗濯物の干し方やムスリムの義母の外出着の秘密など、服を眺めているだけ見えてくるモロッコの日常を紹介します。
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目次
斬新な洗濯物の干し方
義理の家族と暮らしていた時、一番驚いたのが洗濯物の干し方でした。
私が住んでいたのは屋上付きの2階建ての家。
陽当たりの良い屋上の一角には、洗濯物を干すロープが4本張り巡らされていました。でも義母は、ほとんどこのロープを使いませんでした。
基本は2階の窓枠にくちゃっと洗濯物を並べて終わりという干し方をしていたのです。
初めて見た時は衝撃でした。
義母は洗濯物を干すのがあまり好きではないようで、いつも全身から「面倒くさい」という雰囲気を漂わせて2階に上がってきます。そして、洗濯物が入ったバケツを窓際に置くと、溜め息をつきながら1枚、2枚と窓の格子に濡れた服を通していました。
日本のように、一枚ずつ広げて干すなんてことはしません。半分に折れたままのものもあれば、丸まったまま格子に引っかけただけのものもあります。脱水が甘く水が滴っていることも多々ありましたが、義母は全く気にしませんでした。
窓枠が洗濯物で一杯になった時は、近くのソファの上に濡れた服を直接置いていたこともありました。
私が心配していた「洗濯物の生乾き」は、乾燥したこの国では問題になりませんでした。折りたたんだままの服でさえ、いつの間にかカラッと乾いていました。
斬新な洗濯物の干し方に慣れるまでには、正直かなり時間がかかりました。
でも、あんな干し方でもイヤイヤでも、窓辺に洗濯物を並べておけば、ちゃんと服は乾く。それを知った私は、肩の力が抜けました。
街に溢れるハイブランドの洋服
モロッコの旧市街を歩いていると、民族衣装のジュラバやカフタンを着用した街の人と幾度となくすれ違います。でも、そういう服を着ている人は年齢層が高めで、若い人は洋服が主流でした。
私が知り合った若いモロッコ人たちは、お洒落が大好きでした。
ほんの少し外出しただけでも衣装はチェンジ。午前と午後で同じ服を着ているなんて、あってはならないことでした。
義理の兄も大変お洒落な人で、モデル並みに細い体形と高身長を生かした、素敵な装いをしています。
ある昼下がり、義理の兄は「これ買ったんだ」と新しい洋服を私に自慢してきました。
彼はGを重ねたロゴが全体に織り込まれたジーンズと、深い緑と赤のラインが入ったライダーズジャケットというクールな装いをしています。
派手な装いですが、彼の長い手足にはピッタリでした。絶賛しながらも、私は不思議に思います。あれ…このロゴって…?
よく見ると、ベルトや靴にも交差したGのロゴが入っています。安く手に入れたのでしょうか。
でも、義理の兄は仕事をしていません。私が知る限り、義理の兄も義理一家も、ハイブランドの服を何着も買えるような生活はしていませんでした。
そして私は気付きました。彼が身につけていたのは、ハイブランドそのものではなく、ハイブランドそっくりの服だったのです。
改めて街を見渡してみると、グッチ、ベルサーチ、シャネル…。若い人たちの服には、見覚えのあるブランドのロゴがあちこちに入っていました。
どう見ても本物ではありません。でも、誰もそれを隠さないし、指摘もしません。
堂々とお洒落を楽しむ若者たちの姿は、ちょっと羨ましいものがありました。
鮮やかに着飾るモロッコの女性達
イスラム教徒の女性と聞くと、頭から足先まで肌を隠した女性を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしモロッコの女性たちや、日常用カフタンの場合は黒い服ではなく、鮮やかな色合いのジュラバを着て外出します。
義母もそうでした。外出時はもちろん、自宅に来客を招いた時など、家族以外の他人と会う時は必ずジュラバと髪を覆うヒジャブを着用していました。
彼女の手持ちのジュラバは、スパンコールが施されたものや、紫をベースカラーにしたトラ柄など、派手な品ばかり。
柄ものに柄ものを合わせることも多く、全身を布で覆っていても地味とは無縁の装いをしていました。
私は彼女のそうした姿を少し尊敬していました。わずかな時間であろうと、マナーを守って身なりを整える。その姿は、例えるならコンビニに行く時でも外出着を着てメイクを施すイメージです。
ジュラバの下は…パジャマ!?
でも、その印象はある日崩れます。
その日、リビングには義母のほかに私と夫がいて、それぞれがくつろいでいました。昼過ぎだというのに義母はパジャマ姿のままで、完全にリラックスモードです。
突然、義母が「野菜をもらう約束をしていたんだった!」と誰に言うでもなく呟きました。
そしてソファの下からピンクのジュラバを取り出すと、パジャマの上からスポッとおもむろに被ったのです。ペンシルで目を囲み、ヒジャブを髪に巻くまで約2分。
ジュラバはゆったりしたシルエットの服なので、下にパジャマを着ていても着ぶくれしません。私は、颯爽と出かけて行く義母の姿を目で追いながら、呆気に取られました。
30分ほどして義母は帰宅しました。野菜がたっぷり入った黒いビニール袋を両手にぶら下げています。
彼女は「疲れた~」と言いながらヒジャブを外しジュラバを脱ぐと、ソファに横たわってリラックスモードに入っていました。帰宅して1分もしないうちに、パジャマ姿に戻っていたのです。
その後も、突然誰かが訪ねてきた時には「待って!」と大声で叫んで、パジャマの上からジュラバをすっぽり被って対応していました。
キレイな身なりをしている義母を尊敬さえしていた私は、そのズボラなお洒落を目の当たりにして失望するどころか、さらに義母が好きになりました。
鮮やかなジュラバに身を包んで旧市街を闊歩する女性たち。でも、その服の下はパジャマなのかと思うと、何ともいえない甘酸っぱい愛しい気持ちがこみあげてきます。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel