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2月はバレンタインの季節です。イスラム教徒の夫と暮らしていたころ、私は毎年のように夫からプレゼントを貰っていました。「え?イスラムがバレンタイン?」そう思う方も多いかもしれません。今回はイスラム教徒と結婚していた私の記憶から辿る、イスラム教徒とバレンタインの楽しみ方です。
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イスラム教徒の男性と結婚して最初に迎えたバレンタイン。私は数日前からドキドキしていました。バレンタインはチョコレートを贈る日です。でもイスラム圏から日本にやってきた夫が、それに対してどういう反応を見せるのか判断がつきませんでした。
宗教的にNG?そもそもバレンタインが西洋文化だからNG?浮かれたことはNG?色々と手探り状態。夫にチョコレートを渡すべきか渡さないべきか、ずっと悩んでいました。
2月の13日だったと思います。仕事から帰ってきた私の前に、ニコニコした夫の姿がありました。不思議に思っていると、彼は「バレンタインまで待ちきれないから」と、私にブーケを渡してきたのです。ブルーのリボンで結ばれた愛らしいブーケでした。その時の気持ちを一言で表すのなら「意外」。
日本で生まれ育った私は、〝バレンタインは、女性が男性にチョコレートを渡す日〟という認識で生きていたので、お花をもらうことになるとは思ってもみなかったのです。「あげる立場」の人間なのに「もらってしまった」私は、嬉しいよりも先に驚きを感じました。
ビックリして言葉を失っている私に夫は言います。「バレンタインは明日だけど、待てなかった」「知っているでしょ?プレゼントを渡す日だよ。君は僕の奥さんだからね」
ハニカミながら話す夫を見て私は、イスラム教でもバレンタインはOKなんだ、と変な安心感を覚えました。宗教的にバレンタインは無理かもなんて決めつけていた自分がバカみたいに思えました。
そして、その昔友人から聞いた「外国では男性が女性にプレゼントをする日なんだって!」という言葉を思い出しました。改めて、私の夫は外国人だったと再確認します。だから私はもらう側。なんだかくすぐったい気分でした。
バレンタインに花束をくれた夫の行動は、ロマンチックな思い出というよりも、私の中の宗教の寛容さや曖昧さとして強く印象に残りました。
イスラム教がバレンタインを喜ばないなんて誰も言っていないし、どこにも書いてありません。なのに私は、思い込んでいたのです。イスラム教徒は厳格で、他の文化や祭りごとを許さない宗教なのだと。
翌年は、洋服をプレゼントしてもらいました。「君に似合う服を探してきた」と上から下まで一式、受け取ったのを覚えています。洋服のセンスが抜群だった夫のコーディネートは完璧で、着回しまで考えられていました。
その次の年は…正直、何だったかもう曖昧です。ただ、一つはっきりしているのは、チョコレートをもらった記憶が一度もないということ。
バレンタインを迎えるたびに夫は私にプレゼントを送ってくれました。でも、私たちの間にチョコレートは一度も登場しませんでした。
イスラム教徒の夫は決してチョコレートが嫌いなわけではありません。お酒を飲まないイスラム教徒は基本、甘いものが大好きです。そして、その中にはもちろんチョコレートも含まれます。
でも夫の場合は、ガナッシュやカカオにこだわった大人向けのチョコレートより、チロルチョコや銀紙で包まれているようなチョコ。どちらかというと子どもが食べたがるような分かりやすい甘さのチョコレートを好んでいました。多分、これは日本人との味覚の差でしょう。日本に遊びにきた義母も、親戚も同じ反応でした。
そもそも夫の母国のモロッコにいた時、私は一度もチョコレートを食べませんでした。チョコ味のクッキーやお菓子は何度も口にしましたが、「チョコレートそのもの」を意識して食べたことがありません。市場やスーパーを思い出しても、チョコレートの記憶はありません。
暑い国だから溶けてしまう?繊細なチョコは大雑把なモロッコには居心地が悪すぎる?ちゃんとした理由は分かりませんが、少なくとも夫の家族や親戚にはチョコレートを食べる文化はありませんでした。
日常的なお菓子は焼き菓子やデーツ、特別なお菓子は本物のハチミツで作られた焼き菓子が主流だったように記憶しています。
この時期、日本の百貨店には高級チョコレートが溢れます。カカオの価格が高騰し円安が加速した今年は、8000円前後の品も珍しくありません。チョコレートはいつの間にか、高級食材になっていました。
その売り場に立ったとき、ふと頭をよぎったのは、かつての夫の顔でした。そして思いました。「もしかしたら、彼にとってチョコレートは、最初から選択肢に入らないものだったのかもしれない」と。
思えば、私が抱いていたバレンタインの常識は、ずいぶん日本的なものでした。チョコレートを贈ること。値段が上がっても、それを当たり前のように受け入れること。食事代より高いチョコレートを前にして、私は初めて日本のバレンタインとは何なのだろうと立ち止まります。
「贈る気持ち」よりも「消費するイベント」「高いほどいい」が前に出ている気がしてなりませんでした。今の私には、過剰に包装された高価なチョコレートよりも、あの日夫がくれたブーケを飾っていたブルーのリボンの方が、ずっと甘く優しいものとして響いてきます。
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大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。マイナーな国をメインに、世界中を旅する。旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。公式HP:Lucia Travel
2月はバレンタインの季節です。イスラム教徒の夫と暮らしていたころ、私は毎年のように夫からプレゼントを貰っていました。
「え?イスラムがバレンタイン?」そう思う方も多いかもしれません。
今回はイスラム教徒と結婚していた私の記憶から辿る、イスラム教徒とバレンタインの楽しみ方です。
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目次
イスラム教徒の夫がバレンタインにとった行動
イスラム教徒の男性と結婚して最初に迎えたバレンタイン。私は数日前からドキドキしていました。
バレンタインはチョコレートを贈る日です。でもイスラム圏から日本にやってきた夫が、それに対してどういう反応を見せるのか判断がつきませんでした。
宗教的にNG?そもそもバレンタインが西洋文化だからNG?浮かれたことはNG?
色々と手探り状態。夫にチョコレートを渡すべきか渡さないべきか、ずっと悩んでいました。
2月の13日だったと思います。仕事から帰ってきた私の前に、ニコニコした夫の姿がありました。
不思議に思っていると、彼は「バレンタインまで待ちきれないから」と、私にブーケを渡してきたのです。ブルーのリボンで結ばれた愛らしいブーケでした。
その時の気持ちを一言で表すのなら「意外」。
日本で生まれ育った私は、〝バレンタインは、女性が男性にチョコレートを渡す日〟という認識で生きていたので、お花をもらうことになるとは思ってもみなかったのです。
「あげる立場」の人間なのに「もらってしまった」私は、嬉しいよりも先に驚きを感じました。
イスラム教でもバレンタインはOK
ビックリして言葉を失っている私に夫は言います。
「バレンタインは明日だけど、待てなかった」「知っているでしょ?プレゼントを渡す日だよ。君は僕の奥さんだからね」
ハニカミながら話す夫を見て私は、イスラム教でもバレンタインはOKなんだ、と変な安心感を覚えました。宗教的にバレンタインは無理かもなんて決めつけていた自分がバカみたいに思えました。
そして、その昔友人から聞いた「外国では男性が女性にプレゼントをする日なんだって!」という言葉を思い出しました。
改めて、私の夫は外国人だったと再確認します。だから私はもらう側。なんだかくすぐったい気分でした。
厳格な宗教という思い込み
バレンタインに花束をくれた夫の行動は、ロマンチックな思い出というよりも、私の中の宗教の寛容さや曖昧さとして強く印象に残りました。
イスラム教がバレンタインを喜ばないなんて誰も言っていないし、どこにも書いてありません。なのに私は、思い込んでいたのです。イスラム教徒は厳格で、他の文化や祭りごとを許さない宗教なのだと。
翌年は、洋服をプレゼントしてもらいました。
「君に似合う服を探してきた」と上から下まで一式、受け取ったのを覚えています。洋服のセンスが抜群だった夫のコーディネートは完璧で、着回しまで考えられていました。
その次の年は…正直、何だったかもう曖昧です。ただ、一つはっきりしているのは、チョコレートをもらった記憶が一度もないということ。
バレンタインを迎えるたびに夫は私にプレゼントを送ってくれました。でも、私たちの間にチョコレートは一度も登場しませんでした。
イスラム教徒とチョコレートの関係
イスラム教徒の夫は決してチョコレートが嫌いなわけではありません。
お酒を飲まないイスラム教徒は基本、甘いものが大好きです。そして、その中にはもちろんチョコレートも含まれます。
でも夫の場合は、ガナッシュやカカオにこだわった大人向けのチョコレートより、チロルチョコや銀紙で包まれているようなチョコ。どちらかというと子どもが食べたがるような分かりやすい甘さのチョコレートを好んでいました。
多分、これは日本人との味覚の差でしょう。日本に遊びにきた義母も、親戚も同じ反応でした。
そもそも夫の母国のモロッコにいた時、私は一度もチョコレートを食べませんでした。
チョコ味のクッキーやお菓子は何度も口にしましたが、「チョコレートそのもの」を意識して食べたことがありません。
市場やスーパーを思い出しても、チョコレートの記憶はありません。
暑い国だから溶けてしまう?繊細なチョコは大雑把なモロッコには居心地が悪すぎる?
ちゃんとした理由は分かりませんが、少なくとも夫の家族や親戚にはチョコレートを食べる文化はありませんでした。
日常的なお菓子は焼き菓子やデーツ、特別なお菓子は本物のハチミツで作られた焼き菓子が主流だったように記憶しています。
バレンタインの本当の姿
この時期、日本の百貨店には高級チョコレートが溢れます。カカオの価格が高騰し円安が加速した今年は、8000円前後の品も珍しくありません。チョコレートはいつの間にか、高級食材になっていました。
その売り場に立ったとき、ふと頭をよぎったのは、かつての夫の顔でした。そして思いました。「もしかしたら、彼にとってチョコレートは、最初から選択肢に入らないものだったのかもしれない」と。
思えば、私が抱いていたバレンタインの常識は、ずいぶん日本的なものでした。
チョコレートを贈ること。値段が上がっても、それを当たり前のように受け入れること。
食事代より高いチョコレートを前にして、私は初めて日本のバレンタインとは何なのだろうと立ち止まります。
「贈る気持ち」よりも「消費するイベント」「高いほどいい」が前に出ている気がしてなりませんでした。
今の私には、過剰に包装された高価なチョコレートよりも、あの日夫がくれたブーケを飾っていたブルーのリボンの方が、ずっと甘く優しいものとして響いてきます。
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筆者プロフィール:R.香月(かつき)
大学卒業後、ライター&編集者として出版社や新聞社に勤務。
マイナーな国をメインに、世界中を旅する。
旅先で出会ったイスラム教徒と国際結婚。
出産&離婚&再婚を経て現在は2児の母。
公式HP:Lucia Travel