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「アーミッシュ」と聞いて、映画や海外ドラマ好きな人ならばなんとなく彼らのクラシカルな服に身を包む姿が思い浮かぶのではないでしょうか。 しかし、実際にどのように生活しているのかについて知っている人は少ないかもしれません。
今回は、「アーミッシュ」とは具体的にどんな暮らしをしている人々か、その文化や価値観、なぜその暮らし方を選んでいるのかについてお伝えします。
アーミッシュは、18世紀から19世紀にかけて主にドイツやスイスからアメリカ方面に移住したキリスト教の一派です。 移民当時の生活や規律を守り続け、昔ながらの農耕による自給自足の暮らしをしていることは有名ですね。テレビなどの娯楽に通じるものを持たず、馬車で移動するその生活は、古い映画の中の世界のようです。
彼らはカナダやアメリカに多くその居住地を構えています。アメリカではペンシルバニア州やオハイオ州などの中西部に多く住み、およそ32州に定住しているそう。 大家族が多く、その人口は2024年時点で39万人を超え、1年で2万人のペースで増加しているというデータもあります。
アーミッシュの誕生は、16世紀にルターが行った宗教改革が大きく関係しています。 それまでは生まれてすぐに洗礼を受けるのが一般的でしたが、「幼児に洗礼の意義がわかるのか?」という疑問を持ち、洗礼は大人になってから自分の意思で受ける方がよいという再洗礼派が誕生しました。
その再洗礼派を異端とする勢力に暴力で徹底抗戦しようとする過激派とは別に、穏健派・保守派グループが生まれ、さらに平和主義を貫く再洗礼派(メノナイト)が生まれます。
メノナイトはスイス、オランダ、ドイツを中心に信徒が増え、各地に指導者が配置されましたが、当時彼らの中には、流行に流されて規律を守らない人々もいました。その事実に危機感を抱いたメノナイトの指導者の一人によって、より規律に忠実な一派として独立したのがアーミッシュです。これが1693年のこと。
当時の政府は幼児のうちに洗礼を行うことを推奨していましたが、メノナイトやアーミッシュはこれを無視。政府に従わない人々は、弾圧の対象となります。
ヨーロッパでは自分たちの信仰を守ることが難しいと考えたアーミッシュの人々は、18世紀に信教の自由を求めてアメリカ方面に移住を始め、19世紀には現在のようにアメリカやカナダにそのコミュニティを作ることになります。
メノナイトとアーミッシュの違いは、信仰を守る姿勢にあります。 キリスト教には洗礼以外にも様々な儀式がありますが、そのうちの聖餐式と呼ばれる儀式を頻繁に行い、信仰心をより強くするべきだという考えを守り続けているのがアーミッシュです。
今日においてアーミッシュが電気、自動車、テレビといった現代文明を拒絶しているのに対し、メノナイトはより多様な価値観を持ち、近代技術をある程度取り入れて生活しています。
アーミッシュ誕生には、宗教改革前後から様々な宗派が生まれたことが大きく関係しています。 アーミッシュがメノナイトから独立する以前から、キリスト教は大きく以下のように宗派が分かれてきました。
それぞれの宗派では、聖書の解釈やどれほどその教義に沿うかが異なります。 アーミッシュのように聖書を文字通りに解釈する宗派もあれば、様々な変化の波に合わせてその解釈を変化させていく宗派もあります。
教皇をトップに組織を作るカトリック、聖書をよりどころとし、個人の信仰を重んじるプロテスタント、教会と聖伝を重んじる正教会のように、信仰の象徴とするものが異なるのです。 アーミッシュは聖書のみを信仰のよりどころとし、教会を必須要素とはしていません。
キリスト教には「必要なものは与えられる」という教えがありますが、アーミッシュはこの「必要なものは必要なときに必要な分だけ与えられる」という考えに基づいた生活をしています。
現代の生活には欠かせない電気は、彼らにとって「必要なもの」ではありません。 たしかに、電気はかつてできなかったことを可能にし、通信をはじめ近代社会には欠かせないものですが、便利さと引き換えによくも悪くも様々な変化がありました。その変化を、アーミッシュは求めません。
アーミッシュが大切にしているのは、自分たちで昔ながらの暮らしに必要なものを賄うこと、コミュニティの中で強い絆をもち、助け合いながら暮らすということです。 多くを望まなければ誰かから奪うこともなく、穏やかに暮らすことができるという価値観が彼らには根付いているのです。
アーミッシュの生活で大切にされることの一つに、共同体(コミュニティ)の絆があります。アーミッシュは同じ信仰心を持ち、食料や家などほとんどのものを自給自足で賄うために相互協力が不可欠です。
このコミュニティを維持していくためには、独特のルールがあります。 アーミッシュの中で禁止されているものを見てみましょう。
このように、保険や避雷針などで将来に備えることを禁じていますが、読書や音楽など外界の文化に触れることも禁じています。コミュニティの中にだけ目を向けて生きることを最重要視していることがうかがえます。
アーミッシュには、「ラムスプリンガ」と呼ばれる期間があります。 これは成人前の1~2年間を、アーミッシュ以外の俗世で暮らす期間です。この期間に、アーミッシュの生活にはないほとんどすべてを体験できます。
スマホをはじめとする電気製品の使用や車の運転、お酒もたばこもドラッグも、喧嘩も読書も勉強も映画・音楽鑑賞も許され、これまで経験しなかった快楽や情報にさらされる期間を過ごすのです。 そしてラムスプリンガの期間を終えて、アーミッシュに戻るか、俗世で生きるかを選びます。
16歳といえば、日本では高校生。様々な刺激に影響を受けやすく、価値観を揺さぶられ混乱することは想像に難くありません。新しい暮らしに何を感じるかはその個人の性質によって異なりますが、多くの若者がラムスプリンガの後はアーミッシュの生活に戻っていきます。
アーミッシュに戻らない人は、以降一切家族と接することが禁じられることが大きな要因かもしれません。基本的に各戸に電話がないため、電話で声を聞くことはおろか手紙も禁止され、遠くから姿を見ることも禁止されます。
これまで最も大切にしてきた家族やコミュニティと、外で生きたい気持ちを天秤にかけて選ぶのは、若者にとってとても難しい選択になるでしょう。
アーミッシュの暮らしは移住当時のままだとお伝えしてきました。 19世紀のヨーロッパでは、電気やエンジンが発明され、それに伴い自動車や電車が開発されていましたが、まだまだ庶民の暮らしの中に普及・浸透するまでには至っていない時代です。
この時代の生活スタイルを守っているアーミッシュは、当然電気製品はほとんど使いません。灯りももっぱらガス灯を使用します。 自動車も運転せず、移動は馬車です。ただ、非アーミッシュの生活圏と隣接していることから、一般道路を馬車が走る時には自動車と同じくウィンカーが必要になります。このウィンカーのために、風力や水力、太陽光発電による蓄電池が使われています。
アーミッシュのみの村には、電信柱もありません。冷蔵庫などの家電を使うところもあるようですが、その場合も蓄電池が活躍しているようです。テレビも当然なく、娯楽に通じるものから遠ざけられた生活をしています。
自分たちの農耕や牧畜で賄われる食卓には、多くのチキン料理が並びます。欧米には欠かせないパイやパンももちろん収穫物から作られ、食料の貯蔵には氷室を使う地域もあります。
自給自足で生活するアーミッシュですが、スーパーなどで買い物をすることがあります。主にトイレットペーパーなどの日用品を購入しているようです。 その時に使うお金は、手工芸や家具を非アーミッシュに販売して得ています。
アーミッシュの生業としては牧畜・農耕がメインですが、手作りの家具やキルト、帽子やワンピースなどの衣服、人形なども大切な収入源です。
また、近年は観光業も大切な収入源となっています。農園見学や馬車乗車体験とともに、売店で販売する手工芸作品が人気です。 自分たちで育てたオーガニック野菜を使ったレストランを営む人もいます。
シンプルな暮らしをするアーミッシュらしく、服装も非常にシンプルです。 男性は無地のシャツにズボン、外出時にはつばの広い帽子をまとい、女性は無地の控えめな色合いのシンプルなワンピースにエプロン、ボンネットと呼ばれる頭巾のようなものをまといます。こちらは髪の毛を隠すことが目的です。
女性はボタンをつけることはあまりよしとされず、もちろん光る素材は使いません。 また、既婚男性はあごひげを伸ばすのが特徴ですが、口ひげは男性の魅力の象徴であるとして禁止されています。
アーミッシュは、基本的に8年間の義務教育のみを受けます。 彼らにとっての母語であるペンシルベニアドイツ語と英語、算数が主な教育内容。地域によっては地理や保健が加わりますが、多くのアーミッシュはコミュニティで生きていくために必要な分だけの教育を受けます。
学校は小学校1年生から8年生までが1つのクラスで構成されています。年少、年長クラスと分かれて授業を行う地域もあるようですが、多くは1クラスです。
教師は未婚のアーミッシュ女性が担っているそう。 既婚女性は基本的に家庭に入るため、未婚女性のみが教師を担います。
映画などで、アーミッシュの女性と俗世の男性の恋物語が描かれることがありますが、実はそういったことは現実にはないそう。 アーミッシュの人が非アーミッシュの人と結婚すると、コミュニティから出なくてはなりません。二度と連絡をとることも会うこともできなくなるため、天涯孤独と同じ状態になります。 家族やコミュニティの絆を重んじる彼らは自然とアーミッシュ内で結婚し、平均7人ほどの子どもをもうける大家族となります。
高等教育を受けないアーミッシュが医師になることはありませんが、近隣には非アーミッシュの医師が勤務する病院があります。アーミッシュ内に、助産師のような役割を担う人もいます。
ただ、医療を受けることは自然に逆らう(神の意思に反する)こととする地域もあります。病気の時は、まずは民間療法に頼ります。そして民間療法では治らない場合や緊急性が高い場合は、病院にかかります。
アメリカは国民皆保険ではありませんので、治療費は高額。受診する際にはコミュニティ内で助け合います。雇用主が民間保険に加入している場合には、その保険を利用することができます。特に治療内容に制限はなく、受ける意思があれば輸血も手術も受けられます。
閉鎖的なイメージのアーミッシュですが、前述したように観光業は収入源となっています。彼らを訪ねるには、どのようにしたらよいのでしょうか。
一例に「ペンシルベニア州ランカスターや、オハイオ州の観光ツアーを利用する」というものがあります。これらの地域には、アーミッシュのコミュニティの大多数があるからです。
特にランカスターには国内最大級のアーミッシュカントリーがあり、人気の観光コースです。他にもランカスターには夜に幽霊ツアーなるものがあります。
一方、オハイオ州はアーミッシュカントリーツアー以外にもロック&ロール殿堂や、アメリカ空軍国立博物館、シーダーポイント遊園地など多くの観光名所があります。アーミッシュの暮らしを見学したい場合は、ランカスターの方が様々なツアーが用意されているといえるでしょう。
観光で訪れる際には、いくつかの注意点があります。 まず、日曜日は安息日で彼らは働きません。お店ももちろんお休みです。平日を選んで訪ねましょう。
また、アーミッシュの人々は、写真を撮られることを嫌います。写真撮影は必ず本人に断ってからしましょう。アーミッシュツアーに組み込まれていない家や敷地に無断で入ることもNG。見学に行く際には、ツアーに組まれている場所だけにとどめてくださいね。
アーミッシュはその信仰を守り、コミュニティの絆を守るために現代テクノロジーを拒絶し、昔ながらの暮らしを守り慎ましく暮らしています。 現代日本で様々な情報や刺激にさらされて生きる私たちにはなかなか真似できそうにありませんが、シンプルで必要なものを必要な分だけ、という彼らの暮らし方には学ぶことが多いですね。
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「アーミッシュ」と聞いて、映画や海外ドラマ好きな人ならばなんとなく彼らのクラシカルな服に身を包む姿が思い浮かぶのではないでしょうか。
しかし、実際にどのように生活しているのかについて知っている人は少ないかもしれません。
今回は、「アーミッシュ」とは具体的にどんな暮らしをしている人々か、その文化や価値観、なぜその暮らし方を選んでいるのかについてお伝えします。
目次
アーミッシュってどんな人々?
アーミッシュは、18世紀から19世紀にかけて主にドイツやスイスからアメリカ方面に移住したキリスト教の一派です。
移民当時の生活や規律を守り続け、昔ながらの農耕による自給自足の暮らしをしていることは有名ですね。テレビなどの娯楽に通じるものを持たず、馬車で移動するその生活は、古い映画の中の世界のようです。
アーミッシュの居住地・人口規模
彼らはカナダやアメリカに多くその居住地を構えています。アメリカではペンシルバニア州やオハイオ州などの中西部に多く住み、およそ32州に定住しているそう。
大家族が多く、その人口は2024年時点で39万人を超え、1年で2万人のペースで増加しているというデータもあります。
アーミッシュの歴史
アーミッシュの誕生は、16世紀にルターが行った宗教改革が大きく関係しています。
それまでは生まれてすぐに洗礼を受けるのが一般的でしたが、「幼児に洗礼の意義がわかるのか?」という疑問を持ち、洗礼は大人になってから自分の意思で受ける方がよいという再洗礼派が誕生しました。
その再洗礼派を異端とする勢力に暴力で徹底抗戦しようとする過激派とは別に、穏健派・保守派グループが生まれ、さらに平和主義を貫く再洗礼派(メノナイト)が生まれます。
メノナイトはスイス、オランダ、ドイツを中心に信徒が増え、各地に指導者が配置されましたが、当時彼らの中には、流行に流されて規律を守らない人々もいました。その事実に危機感を抱いたメノナイトの指導者の一人によって、より規律に忠実な一派として独立したのがアーミッシュです。これが1693年のこと。
当時の政府は幼児のうちに洗礼を行うことを推奨していましたが、メノナイトやアーミッシュはこれを無視。政府に従わない人々は、弾圧の対象となります。
ヨーロッパでは自分たちの信仰を守ることが難しいと考えたアーミッシュの人々は、18世紀に信教の自由を求めてアメリカ方面に移住を始め、19世紀には現在のようにアメリカやカナダにそのコミュニティを作ることになります。
メノナイトとアーミッシュの違い
メノナイトとアーミッシュの違いは、信仰を守る姿勢にあります。
キリスト教には洗礼以外にも様々な儀式がありますが、そのうちの聖餐式と呼ばれる儀式を頻繁に行い、信仰心をより強くするべきだという考えを守り続けているのがアーミッシュです。
今日においてアーミッシュが電気、自動車、テレビといった現代文明を拒絶しているのに対し、メノナイトはより多様な価値観を持ち、近代技術をある程度取り入れて生活しています。
アーミッシュ誕生の宗教的背景
アーミッシュ誕生には、宗教改革前後から様々な宗派が生まれたことが大きく関係しています。
アーミッシュがメノナイトから独立する以前から、キリスト教は大きく以下のように宗派が分かれてきました。
それぞれの宗派では、聖書の解釈やどれほどその教義に沿うかが異なります。
アーミッシュのように聖書を文字通りに解釈する宗派もあれば、様々な変化の波に合わせてその解釈を変化させていく宗派もあります。
教皇をトップに組織を作るカトリック、聖書をよりどころとし、個人の信仰を重んじるプロテスタント、教会と聖伝を重んじる正教会のように、信仰の象徴とするものが異なるのです。
アーミッシュは聖書のみを信仰のよりどころとし、教会を必須要素とはしていません。
なぜ彼らは電気を使わない?
“シンプルに生きる”信念
キリスト教には「必要なものは与えられる」という教えがありますが、アーミッシュはこの「必要なものは必要なときに必要な分だけ与えられる」という考えに基づいた生活をしています。
現代の生活には欠かせない電気は、彼らにとって「必要なもの」ではありません。
たしかに、電気はかつてできなかったことを可能にし、通信をはじめ近代社会には欠かせないものですが、便利さと引き換えによくも悪くも様々な変化がありました。その変化を、アーミッシュは求めません。
アーミッシュが大切にしているのは、自分たちで昔ながらの暮らしに必要なものを賄うこと、コミュニティの中で強い絆をもち、助け合いながら暮らすということです。
多くを望まなければ誰かから奪うこともなく、穏やかに暮らすことができるという価値観が彼らには根付いているのです。
アーミッシュが個よりも共同体を
大切にする理由
アーミッシュの生活で大切にされることの一つに、共同体(コミュニティ)の絆があります。アーミッシュは同じ信仰心を持ち、食料や家などほとんどのものを自給自足で賄うために相互協力が不可欠です。
このコミュニティを維持していくためには、独特のルールがあります。
アーミッシュの中で禁止されているものを見てみましょう。
このように、保険や避雷針などで将来に備えることを禁じていますが、読書や音楽など外界の文化に触れることも禁じています。コミュニティの中にだけ目を向けて生きることを最重要視していることがうかがえます。
ラムスプリンガとは?若者が“自由”を試す通過儀礼
アーミッシュには、「ラムスプリンガ」と呼ばれる期間があります。
これは成人前の1~2年間を、アーミッシュ以外の俗世で暮らす期間です。この期間に、アーミッシュの生活にはないほとんどすべてを体験できます。
スマホをはじめとする電気製品の使用や車の運転、お酒もたばこもドラッグも、喧嘩も読書も勉強も映画・音楽鑑賞も許され、これまで経験しなかった快楽や情報にさらされる期間を過ごすのです。
そしてラムスプリンガの期間を終えて、アーミッシュに戻るか、俗世で生きるかを選びます。
16歳といえば、日本では高校生。様々な刺激に影響を受けやすく、価値観を揺さぶられ混乱することは想像に難くありません。新しい暮らしに何を感じるかはその個人の性質によって異なりますが、多くの若者がラムスプリンガの後はアーミッシュの生活に戻っていきます。
アーミッシュに戻らない人は、以降一切家族と接することが禁じられることが大きな要因かもしれません。基本的に各戸に電話がないため、電話で声を聞くことはおろか手紙も禁止され、遠くから姿を見ることも禁止されます。
これまで最も大切にしてきた家族やコミュニティと、外で生きたい気持ちを天秤にかけて選ぶのは、若者にとってとても難しい選択になるでしょう。
アーミッシュの“自給自足の知恵”
アーミッシュの暮らしは移住当時のままだとお伝えしてきました。
19世紀のヨーロッパでは、電気やエンジンが発明され、それに伴い自動車や電車が開発されていましたが、まだまだ庶民の暮らしの中に普及・浸透するまでには至っていない時代です。
この時代の生活スタイルを守っているアーミッシュは、当然電気製品はほとんど使いません。灯りももっぱらガス灯を使用します。
自動車も運転せず、移動は馬車です。ただ、非アーミッシュの生活圏と隣接していることから、一般道路を馬車が走る時には自動車と同じくウィンカーが必要になります。このウィンカーのために、風力や水力、太陽光発電による蓄電池が使われています。
アーミッシュのみの村には、電信柱もありません。冷蔵庫などの家電を使うところもあるようですが、その場合も蓄電池が活躍しているようです。テレビも当然なく、娯楽に通じるものから遠ざけられた生活をしています。
自分たちの農耕や牧畜で賄われる食卓には、多くのチキン料理が並びます。欧米には欠かせないパイやパンももちろん収穫物から作られ、食料の貯蔵には氷室を使う地域もあります。
アーミッシュの生業
自給自足で生活するアーミッシュですが、スーパーなどで買い物をすることがあります。主にトイレットペーパーなどの日用品を購入しているようです。
その時に使うお金は、手工芸や家具を非アーミッシュに販売して得ています。
アーミッシュの生業としては牧畜・農耕がメインですが、手作りの家具やキルト、帽子やワンピースなどの衣服、人形なども大切な収入源です。
また、近年は観光業も大切な収入源となっています。農園見学や馬車乗車体験とともに、売店で販売する手工芸作品が人気です。
自分たちで育てたオーガニック野菜を使ったレストランを営む人もいます。
アーミッシュの衣服の特徴
シンプルな暮らしをするアーミッシュらしく、服装も非常にシンプルです。
男性は無地のシャツにズボン、外出時にはつばの広い帽子をまとい、女性は無地の控えめな色合いのシンプルなワンピースにエプロン、ボンネットと呼ばれる頭巾のようなものをまといます。こちらは髪の毛を隠すことが目的です。
女性はボタンをつけることはあまりよしとされず、もちろん光る素材は使いません。
また、既婚男性はあごひげを伸ばすのが特徴ですが、口ひげは男性の魅力の象徴であるとして禁止されています。
アーミッシュの学校生活
アーミッシュは、基本的に8年間の義務教育のみを受けます。
彼らにとっての母語であるペンシルベニアドイツ語と英語、算数が主な教育内容。地域によっては地理や保健が加わりますが、多くのアーミッシュはコミュニティで生きていくために必要な分だけの教育を受けます。
学校は小学校1年生から8年生までが1つのクラスで構成されています。年少、年長クラスと分かれて授業を行う地域もあるようですが、多くは1クラスです。
教師は未婚のアーミッシュ女性が担っているそう。
既婚女性は基本的に家庭に入るため、未婚女性のみが教師を担います。
アーミッシュの結婚と家族観
映画などで、アーミッシュの女性と俗世の男性の恋物語が描かれることがありますが、実はそういったことは現実にはないそう。
アーミッシュの人が非アーミッシュの人と結婚すると、コミュニティから出なくてはなりません。二度と連絡をとることも会うこともできなくなるため、天涯孤独と同じ状態になります。
家族やコミュニティの絆を重んじる彼らは自然とアーミッシュ内で結婚し、平均7人ほどの子どもをもうける大家族となります。
アーミッシュの医療
高等教育を受けないアーミッシュが医師になることはありませんが、近隣には非アーミッシュの医師が勤務する病院があります。アーミッシュ内に、助産師のような役割を担う人もいます。
ただ、医療を受けることは自然に逆らう(神の意思に反する)こととする地域もあります。病気の時は、まずは民間療法に頼ります。そして民間療法では治らない場合や緊急性が高い場合は、病院にかかります。
アメリカは国民皆保険ではありませんので、治療費は高額。受診する際にはコミュニティ内で助け合います。雇用主が民間保険に加入している場合には、その保険を利用することができます。特に治療内容に制限はなく、受ける意思があれば輸血も手術も受けられます。
アーミッシュを訪ねるには?
閉鎖的なイメージのアーミッシュですが、前述したように観光業は収入源となっています。彼らを訪ねるには、どのようにしたらよいのでしょうか。
一例に「ペンシルベニア州ランカスターや、オハイオ州の観光ツアーを利用する」というものがあります。これらの地域には、アーミッシュのコミュニティの大多数があるからです。
特にランカスターには国内最大級のアーミッシュカントリーがあり、人気の観光コースです。他にもランカスターには夜に幽霊ツアーなるものがあります。
一方、オハイオ州はアーミッシュカントリーツアー以外にもロック&ロール殿堂や、アメリカ空軍国立博物館、シーダーポイント遊園地など多くの観光名所があります。アーミッシュの暮らしを見学したい場合は、ランカスターの方が様々なツアーが用意されているといえるでしょう。
観光時のマナーと注意点
観光で訪れる際には、いくつかの注意点があります。
まず、日曜日は安息日で彼らは働きません。お店ももちろんお休みです。平日を選んで訪ねましょう。
また、アーミッシュの人々は、写真を撮られることを嫌います。写真撮影は必ず本人に断ってからしましょう。アーミッシュツアーに組み込まれていない家や敷地に無断で入ることもNG。見学に行く際には、ツアーに組まれている場所だけにとどめてくださいね。
アーミッシュは信仰心と家族、
コミュニティを尊ぶ人々
アーミッシュはその信仰を守り、コミュニティの絆を守るために現代テクノロジーを拒絶し、昔ながらの暮らしを守り慎ましく暮らしています。
現代日本で様々な情報や刺激にさらされて生きる私たちにはなかなか真似できそうにありませんが、シンプルで必要なものを必要な分だけ、という彼らの暮らし方には学ぶことが多いですね。
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