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みなさんは世界一深い湖で、世界遺産にも登録されているバイカル湖をご存知でしょうか?バイカル湖は壮大で美しいその姿から「シベリアの真珠」と呼ばれています。 この記事では、バイカル湖の魅力と、世界の神秘的な湖について紹介します。
バイカル湖の深さは約1700mという世界一の深さ。 しかも、地殻変動の影響で、今でも毎年6mmずつ深くなっているそうです。
バイカル湖畔に住む人たちは、バイカル湖を「海」と言うそうです。実際訪れた人の感想も「海みたいに大きい湖だった」とのこと。 それもそのはずで、バイカル湖の大きさは琵琶湖の約47倍、湖上最大の島オリホン島は奄美大島くらいの面積だそうです。
湖の誕生は今から2500万年前で世界最古の湖です。バイカル湖があるのはロシア連邦の南東部のシベリア地方。南北に伸びる三日月型の最南端から100km行けばモンゴルとの国境です。
日本からの一般的なアクセスは、空路でイルクーツク国際空港へ。イルクーツクで1泊して、市内からバイカル湖畔のリストヴァンカまで車で移動します。 観光拠点となるバイカル湖のオリホン島へは夏はフェリーで。冬季は湖面が凍結するので、なんと車で島まで行けるそうです。 まるで「アナと雪の女王」の世界さながらの冬のバイカル湖は冬も観光のハイシーズン。 多くの観光客が訪れています。
バイカル湖は1996年にユネスコの世界遺産に指定されていますが、その理由のひとつは生態系のユニークさにあります。 バイカル湖に棲む水棲生物の7割は、バイカル湖にしか生息していない「固有種」です。 また、普通海に棲むアザラシが淡水に順応し、「バイカルアザラシ」として独自の進化を遂げています。 その他にも未確認の固有種が多いようで、ガラパゴス諸島と並ぶ「生物進化の博物館」「シベリアのガラパゴス」とも言われています。
ただ、近年の地球温暖化の影響や湖畔周辺の製紙工場などの排水の流入で湖の汚染が進み生態系の破壊が危ぶまれています。
バイカル湖周辺に住む人々はブリアート人やロシア系ブリアート人ですが、ブリアート人はモンゴル系の民族ですので、日本人に非常に親しみやすい風貌をしています。信仰する宗教も、ロシア正教のほか、仏教に近い自然崇拝のシャーマニズムで、ブルハン岬のシャーマン岩はバイカル湖の聖地。
今でも現地の人々は儀式の時にしか立ち入らないそうですが、語り継がれている神話や民話も、自然崇拝の影響を色濃く反映しているようです。 いくつか紹介しましょう。
バイカル湖(父親)には多く子ども(川)がいました。 子どもたちは父親の言いつけを守って、バイカル湖に注いでいたそうです。 ところがある時、一人娘のアンガラが、エニセイという男(川)に恋をしてしまったのです。 父親はそれを許しませんでした。娘は男と駆け落ちをしてしまいました。
そんなわけで、今でもアンガラ川だけはバイカル湖から流れ出て、エニセイ川と合流するのです。
サルマーはバイカル湖に生命を吹き込む小箱を持った精霊でした。 彼女を妻にしようと風の精霊2人が争いましたが、彼女はこれを拒み、それを恨んだ2人は生命の小箱を隠してしまいます。
ところがその小箱を漁師が見つけたので、サルマーは漁師の妻になりました。 風の精霊2人は、なおもサルマーを諦めきれずに漁師とサルマー夫婦に戦いを挑みましたが、サルマーは「私を捕まえられた人の妻になりましょう」と言って突風となって走り去って行きました。 そして、誰もサルマーを捕まえることはできませんでした。
バイカル湖上にサルマーが吹き荒れるときには、「誰かが湖を汚したにちがいない」と今でも土地の人々は信じています。
民話だけでなく、バイカル湖にはさまざまな不思議な現象や言い伝えがあります。 その中には、いまだに科学では証明できないようなこともあるようです。
-40度まで気温が下がる冬季のバイカル湖では、さまざまな氷のイリュージョンが見られますが、その中でも日本では「御神渡り」と呼ばれるアイスブロークン現象が有名です。 轟音とともに湖面の氷が何キロ機も渡って砕けてせりあがります。バイカル湖の冬は、このような氷のイリュージョンを見物するアイスハンティングが人気です。
バイカル湖の気候の条件は蜃気楼の発生に最適だそうです。普段は見えない40km以上離れた対岸の村が、湖上に出現したりするのです。地元の人々はこれをゴロメニツァと呼んでいます。 毎年、2~6回は見られるそうです。
1957年にはバイカル湖の研究者が夜間にゴロメニツァを見たという証言があります。 夜間に蜃気楼を見るのは珍しいことですが、彼は湖上を無音で走る列車の蜃気楼を見たそうです。実際は50km以上離れた向こう岸の列車です。 これは神秘的というより、ちょっと怖いお話ですね。
1917年、帝政ロシアが崩壊したときに、白軍といわれる皇帝側の貴族や軍人たちは革命軍から逃れてシベリアを目指しました。その際、莫大な財宝を持って逃げたと言われます。 ところが、厳寒のバイカル湖を横断中に遭難してしまい、所持していた金塊や宝石は湖の藻屑となったとされています。その後、長い間、多くの人々がバイカル湖の湖底を捜索しました。戦後には潜水艦まで投入されたこともあるそうです。 湖底に光る金塊を見た、という報告もありますが、実際に金塊を引き上げたというニュースはまだありません。
バイカル湖には、漁師を水の中に引き込む恐ろしい顔をした水竜がいると恐れられており、漁師たちは近年まで、湖に金銀や食べ物などを投げ込んで怪獣に供物を捧げていたそうです。
1980年代には、科学者が水中探知機で30mを超える物体が泳いでいるのを確認した、という報告もあります。バイカル湖にも、ネッシーのような未確認生物がいるのでしょうか?
さて、バイカル湖の魅力を堪能したところで、世界の湖についてみてみましょう。 まず、世界で最も深い湖から上位3つを紹介します。
バイカル湖は、最も深く(1700m)、最も古い(2500万年前)湖。 凍っていない世界淡水の20%はバイカル湖にあるといわれるほど豊かな水量を誇っています。 約1000種の水棲生物や、海から遠く離れているにもかかわらず、通常は海洋に生息するはずのアザラシ(バイカルアザラシ)など、固有で豊かな生態系を持っていて、ユネスコの世界遺産に登録されています。
前述したように、バイカル湖の唯一無二の生態系は危機に晒されています。地球温暖化で水温が上がり、グリーンウォームという藻が大量発生することで、湖の生態系が変化しつつあるのです。水温上昇は、冬季の氷の厚さにも影響を与えます。以前は1.5mあった厚さが今は1mに満たない場所もあるそうです。
アフリカ東部に位置し、南北に細長い形の湖です。貯水量もバイカル湖に次ぎ世界第二位。 タンガニーカ湖の成立も約500万年から1000万年前とされ、バイカル湖に次ぐ歴史があります。タンガニーカ湖も独自の進化を遂げた水棲生物が多く、魚では8割、貝類では9割が、ここの湖でしか生息していない固有種です。
湖周辺の各国は内戦や紛争が絶えないので、タンガニーカ湖を渡って他国へ亡命する人が絶えません。タンガニーカ湖も地球温暖化によって湖水温度が上昇することで、生態系が変化していますが、周辺国の政治的な問題も自然保護の取り組みに影を落としています。
カスピ海の面積は日本の国土面積よりもわずかに狭いだけで、世界最大の広さの湖。世界のすべての湖水の4割を占める貯水量です。 カスピ海が「湖」ではなく「海」と呼ばれるのは、塩水湖のため。カスピ海は、もともとは海で、約550万年前の大陸移動で古代の海が陸地に閉じ込められてできたためと考えられています。 そのため、カスピ海にしか生息しないカスピカイアザラシなどの固有種も生息しています。ラムサール条約登録地でもあり、水鳥を中心に沿岸地域ではユネスコの生物保護区に指定されている地域がたくさんあります。
キャビアで有名なチョウザメ類の水揚げ高は最盛期は世界の8割を占めていましたが、現在では、乱獲とヴォルガ川から流入する汚水による水質汚染により生息数が激減しているそうです。 また、湖底の埋蔵資源をめぐって政治的な駆け引きが繰り広げられた国際紛争で知られる湖でもあります。
さて、今度は日本における深い湖を3つ紹介します。火山国日本では、湖も火山と縁が深いようです。
田沢湖は、秋田県仙北市にある湖です。日本で最も深く、紺青の美しい湖面の色から、「日本のバイカル湖」ともいわれます。豊富な水量の割に、湖に流れ込む河川は沢程度のものしかなく、湖底に湧き水があるのだろうと考えられています。そのためか、厳寒の冬にも湖面が凍結することはありません。 田沢湖のシンボルといえば、辰子姫伝説を題材にしたたつこ像(舟越保武制作)。龍になった美しい女性の伝説ですが、いかにも龍が住んでいそうな神秘的な湖です。
支笏湖(しこつこ)は、北海道千歳市に位置する湖です。 約4.4万年前に起こった火山の大噴火でできたと考えられています。湖水の水量は滋賀県の琵琶湖に次ぎ日本第二位です。
支笏湖は、日本最北の不凍湖としても知られています。これは温かい水が湖の深い部分に残っていて水面を温めるためであると推測されています。 透明度の高い湖水の色は、「支笏湖ブルー」といわれ、環境省の湖沼水質調査では数回全国一位となっています。
十和田湖(とわだこ)は、青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがって位置しています。 約20万年前から約15万年前の十和田火山の噴火で陥没した地形に、3万5000年から1万5000年頃の巨大噴火で水が流れ込んで十和田湖ができたと考えられています。 十和田湖のある十和田山の直近の噴火は915年。その頃の京都での記録には、「朝日には輝きがなく,まるで月のようだった」とあり、火山灰が関西までも及んでいたことがわかります。今でも常時観測火山に指定されている活火山です。
十和田の山は古くから修験道の聖地として信仰を集めていましたが、景勝の地として明治時代の終わりから徐々に観光開発が行われました。十和田湖のシンボルは乙女の像(高村光太郎制作)。観光誘致に尽力した地元名士を顕彰して建てられたものだそうです。
湖がどうやって形成されたか、「地殻変動でできた」「火山活動、氷河の侵食でできた」などと説明してきましたが、以下にわかりやすくまとめてみたいと思います。 湖は、その形成からおおよそ5つのタイプに分類されます。
なお、カスピ海は資料によって断層湖とも、海跡湖ともされていましたので、この表には入れませんでした。
ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖は、標高3810mという高所にある湖で、汽船などが航行できる湖としては世界でいちばんの高所にあります。このチチカカ湖で有名なのが、ウロス島という浮島。
ウロス島は、タトラ族という先住民族の人々がトトラ草というチチカカ湖に群生している葦の一種を使って作り上げた、筏のような浮島です。 島の大きさは大小さまざまで、教会や学校がある島もあれば、数家族しか住んでいない島もあるとか。タトラの人々は、浮島の間をボートに乗って移動します。ウロス島では農業も行われ、昨今ではソーラー発電も行っているそうです。
タトラ族の人々がこのような浮島上の生活を始めたのは500年ほど前から。インカ帝国やスペインの勢力から逃れて島の上の生活にたどり着いたと言われています。 チチカカ湖では、島も、家も、船も、生活に必要なものをほぼすべてトトラ草で作って自給自足してきたタトラ族の人々のSDGsな生活を体験できる、ウロス島に宿泊するツアーもあるそうです。また、カラフルな民族模様であしらわれたトトラ草の民芸品もとても魅力的です。
湖の色は水質によって変化します。 水の分子は赤い光を吸収するので、一般に水深が深いほど水は青く見えますが、湖の中に生息するプランクトンや植物に乱反射することで、単なる青ではなく、複雑な色合いを見せてくれます。つまり、湖の色は生息するプランクトンや植物によって変わるのです。
たとえば、フラミンゴの生息地として有名なケニアのボゴリア湖は「ピンク色」です。それは湖の水質がアルカリ性なので、アルカリ性を好むスピルリナというピンク色の藻が大量に生息しているからです。 ちなみにフラミンゴはこのピンク色の藻を餌にしているのであのような美しいピンク色に羽が染まります。ちなみにスピルリナの繁殖が少ない時は、フラミンゴのピンク色も薄くなるとか。
スイスの湖沼学者フォーレル(1841-1912年)は「深さ」と「水中植物の分布状況」から以下のように区別しました。
ただし、この分類も厳密なものではないようで、地図での呼称は地域で呼ばれている慣例に沿ったものが多いそうです。
参照: 国土地理院
厳寒の冬に繰り広げられる氷のページェントをはじめ、珍しい動植物に出会える世界の湖。湖は、地殻変動や火山活動、氷河の侵食など、気が遠くなるほどの長い月日をかけて地球が造ってきたものです。
今回紹介したどの湖も、近年の温暖化や環境汚染でその美しい姿を保てない危機に瀕しています。 湖の不思議にいつまでも会いに行けるように、わたしたちにもできることを心に留めていきたいですね。
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みなさんは世界一深い湖で、世界遺産にも登録されているバイカル湖をご存知でしょうか?バイカル湖は壮大で美しいその姿から「シベリアの真珠」と呼ばれています。
この記事では、バイカル湖の魅力と、世界の神秘的な湖について紹介します。
目次
世界一深く、世界一古い湖バイカル湖
バイカル湖の深さは約1700mという世界一の深さ。
しかも、地殻変動の影響で、今でも毎年6mmずつ深くなっているそうです。
バイカル湖畔に住む人たちは、バイカル湖を「海」と言うそうです。実際訪れた人の感想も「海みたいに大きい湖だった」とのこと。
それもそのはずで、バイカル湖の大きさは琵琶湖の約47倍、湖上最大の島オリホン島は奄美大島くらいの面積だそうです。
湖の誕生は今から2500万年前で世界最古の湖です。バイカル湖があるのはロシア連邦の南東部のシベリア地方。南北に伸びる三日月型の最南端から100km行けばモンゴルとの国境です。
日本からの一般的なアクセスは、空路でイルクーツク国際空港へ。イルクーツクで1泊して、市内からバイカル湖畔のリストヴァンカまで車で移動します。
観光拠点となるバイカル湖のオリホン島へは夏はフェリーで。冬季は湖面が凍結するので、なんと車で島まで行けるそうです。
まるで「アナと雪の女王」の世界さながらの冬のバイカル湖は冬も観光のハイシーズン。
多くの観光客が訪れています。
独自の生態系-バイカル湖にしか生息しない生き物
バイカル湖は1996年にユネスコの世界遺産に指定されていますが、その理由のひとつは生態系のユニークさにあります。
バイカル湖に棲む水棲生物の7割は、バイカル湖にしか生息していない「固有種」です。
また、普通海に棲むアザラシが淡水に順応し、「バイカルアザラシ」として独自の進化を遂げています。
その他にも未確認の固有種が多いようで、ガラパゴス諸島と並ぶ「生物進化の博物館」「シベリアのガラパゴス」とも言われています。
ただ、近年の地球温暖化の影響や湖畔周辺の製紙工場などの排水の流入で湖の汚染が進み生態系の破壊が危ぶまれています。
語り継がれる神話や伝説
バイカル湖周辺に住む人々はブリアート人やロシア系ブリアート人ですが、ブリアート人はモンゴル系の民族ですので、日本人に非常に親しみやすい風貌をしています。信仰する宗教も、ロシア正教のほか、仏教に近い自然崇拝のシャーマニズムで、ブルハン岬のシャーマン岩はバイカル湖の聖地。
今でも現地の人々は儀式の時にしか立ち入らないそうですが、語り継がれている神話や民話も、自然崇拝の影響を色濃く反映しているようです。
いくつか紹介しましょう。
アンガラ川とエニセイ川の恋物語
バイカル湖(父親)には多く子ども(川)がいました。
子どもたちは父親の言いつけを守って、バイカル湖に注いでいたそうです。
ところがある時、一人娘のアンガラが、エニセイという男(川)に恋をしてしまったのです。
父親はそれを許しませんでした。娘は男と駆け落ちをしてしまいました。
そんなわけで、今でもアンガラ川だけはバイカル湖から流れ出て、エニセイ川と合流するのです。
バイカル湖のサルマー(突風)の伝説
サルマーはバイカル湖に生命を吹き込む小箱を持った精霊でした。
彼女を妻にしようと風の精霊2人が争いましたが、彼女はこれを拒み、それを恨んだ2人は生命の小箱を隠してしまいます。
ところがその小箱を漁師が見つけたので、サルマーは漁師の妻になりました。
風の精霊2人は、なおもサルマーを諦めきれずに漁師とサルマー夫婦に戦いを挑みましたが、サルマーは「私を捕まえられた人の妻になりましょう」と言って突風となって走り去って行きました。
そして、誰もサルマーを捕まえることはできませんでした。
バイカル湖上にサルマーが吹き荒れるときには、「誰かが湖を汚したにちがいない」と今でも土地の人々は信じています。
バイカル湖の雑学いろいろ
民話だけでなく、バイカル湖にはさまざまな不思議な現象や言い伝えがあります。
その中には、いまだに科学では証明できないようなこともあるようです。
バイカル湖のアイスブロークン現象(御神渡り)
-40度まで気温が下がる冬季のバイカル湖では、さまざまな氷のイリュージョンが見られますが、その中でも日本では「御神渡り」と呼ばれるアイスブロークン現象が有名です。
轟音とともに湖面の氷が何キロ機も渡って砕けてせりあがります。バイカル湖の冬は、このような氷のイリュージョンを見物するアイスハンティングが人気です。
バイカル湖の神秘的な現象―ゴロメニツァ(蜃気楼)
バイカル湖の気候の条件は蜃気楼の発生に最適だそうです。普段は見えない40km以上離れた対岸の村が、湖上に出現したりするのです。地元の人々はこれをゴロメニツァと呼んでいます。
毎年、2~6回は見られるそうです。
1957年にはバイカル湖の研究者が夜間にゴロメニツァを見たという証言があります。
夜間に蜃気楼を見るのは珍しいことですが、彼は湖上を無音で走る列車の蜃気楼を見たそうです。実際は50km以上離れた向こう岸の列車です。
これは神秘的というより、ちょっと怖いお話ですね。
バイカル湖の湖底に眠る金塊
1917年、帝政ロシアが崩壊したときに、白軍といわれる皇帝側の貴族や軍人たちは革命軍から逃れてシベリアを目指しました。その際、莫大な財宝を持って逃げたと言われます。
ところが、厳寒のバイカル湖を横断中に遭難してしまい、所持していた金塊や宝石は湖の藻屑となったとされています。その後、長い間、多くの人々がバイカル湖の湖底を捜索しました。戦後には潜水艦まで投入されたこともあるそうです。
湖底に光る金塊を見た、という報告もありますが、実際に金塊を引き上げたというニュースはまだありません。
バイカル湖の怪物
バイカル湖には、漁師を水の中に引き込む恐ろしい顔をした水竜がいると恐れられており、漁師たちは近年まで、湖に金銀や食べ物などを投げ込んで怪獣に供物を捧げていたそうです。
1980年代には、科学者が水中探知機で30mを超える物体が泳いでいるのを確認した、という報告もあります。バイカル湖にも、ネッシーのような未確認生物がいるのでしょうか?
世界で最も深い湖3選
さて、バイカル湖の魅力を堪能したところで、世界の湖についてみてみましょう。
まず、世界で最も深い湖から上位3つを紹介します。
第1位 水深約1700mバイカル湖(ロシア連邦)
バイカル湖は、最も深く(1700m)、最も古い(2500万年前)湖。
凍っていない世界淡水の20%はバイカル湖にあるといわれるほど豊かな水量を誇っています。
約1000種の水棲生物や、海から遠く離れているにもかかわらず、通常は海洋に生息するはずのアザラシ(バイカルアザラシ)など、固有で豊かな生態系を持っていて、ユネスコの世界遺産に登録されています。
前述したように、バイカル湖の唯一無二の生態系は危機に晒されています。地球温暖化で水温が上がり、グリーンウォームという藻が大量発生することで、湖の生態系が変化しつつあるのです。水温上昇は、冬季の氷の厚さにも影響を与えます。以前は1.5mあった厚さが今は1mに満たない場所もあるそうです。
第2位 水深約1470mタンガニーカ湖(タンザニア、コンゴ民主共和国、ザンビア、ブルンジ)
アフリカ東部に位置し、南北に細長い形の湖です。貯水量もバイカル湖に次ぎ世界第二位。
タンガニーカ湖の成立も約500万年から1000万年前とされ、バイカル湖に次ぐ歴史があります。タンガニーカ湖も独自の進化を遂げた水棲生物が多く、魚では8割、貝類では9割が、ここの湖でしか生息していない固有種です。
湖周辺の各国は内戦や紛争が絶えないので、タンガニーカ湖を渡って他国へ亡命する人が絶えません。タンガニーカ湖も地球温暖化によって湖水温度が上昇することで、生態系が変化していますが、周辺国の政治的な問題も自然保護の取り組みに影を落としています。
第3位 水深約1025m カスピ海(ロシア連邦、アゼルバイジャン、イラン、トルクメニスタン、カザフスタン)
カスピ海の面積は日本の国土面積よりもわずかに狭いだけで、世界最大の広さの湖。世界のすべての湖水の4割を占める貯水量です。
カスピ海が「湖」ではなく「海」と呼ばれるのは、塩水湖のため。カスピ海は、もともとは海で、約550万年前の大陸移動で古代の海が陸地に閉じ込められてできたためと考えられています。
そのため、カスピ海にしか生息しないカスピカイアザラシなどの固有種も生息しています。ラムサール条約登録地でもあり、水鳥を中心に沿岸地域ではユネスコの生物保護区に指定されている地域がたくさんあります。
キャビアで有名なチョウザメ類の水揚げ高は最盛期は世界の8割を占めていましたが、現在では、乱獲とヴォルガ川から流入する汚水による水質汚染により生息数が激減しているそうです。
また、湖底の埋蔵資源をめぐって政治的な駆け引きが繰り広げられた国際紛争で知られる湖でもあります。
日本で深い湖3選
さて、今度は日本における深い湖を3つ紹介します。火山国日本では、湖も火山と縁が深いようです。
1位 田沢湖(秋田県)最大水深:423.4m
田沢湖は、秋田県仙北市にある湖です。日本で最も深く、紺青の美しい湖面の色から、「日本のバイカル湖」ともいわれます。豊富な水量の割に、湖に流れ込む河川は沢程度のものしかなく、湖底に湧き水があるのだろうと考えられています。そのためか、厳寒の冬にも湖面が凍結することはありません。
田沢湖のシンボルといえば、辰子姫伝説を題材にしたたつこ像(舟越保武制作)。龍になった美しい女性の伝説ですが、いかにも龍が住んでいそうな神秘的な湖です。
2位 支笏湖(北海道)最大水深:360.1m.
支笏湖(しこつこ)は、北海道千歳市に位置する湖です。
約4.4万年前に起こった火山の大噴火でできたと考えられています。湖水の水量は滋賀県の琵琶湖に次ぎ日本第二位です。
支笏湖は、日本最北の不凍湖としても知られています。これは温かい水が湖の深い部分に残っていて水面を温めるためであると推測されています。
透明度の高い湖水の色は、「支笏湖ブルー」といわれ、環境省の湖沼水質調査では数回全国一位となっています。
3位 十和田湖(青森県・秋田県)最大水深:326.8m.
十和田湖(とわだこ)は、青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがって位置しています。
約20万年前から約15万年前の十和田火山の噴火で陥没した地形に、3万5000年から1万5000年頃の巨大噴火で水が流れ込んで十和田湖ができたと考えられています。
十和田湖のある十和田山の直近の噴火は915年。その頃の京都での記録には、「朝日には輝きがなく,まるで月のようだった」とあり、火山灰が関西までも及んでいたことがわかります。今でも常時観測火山に指定されている活火山です。
十和田の山は古くから修験道の聖地として信仰を集めていましたが、景勝の地として明治時代の終わりから徐々に観光開発が行われました。十和田湖のシンボルは乙女の像(高村光太郎制作)。観光誘致に尽力した地元名士を顕彰して建てられたものだそうです。
湖なんでも豆知識
湖の形成
湖がどうやって形成されたか、「地殻変動でできた」「火山活動、氷河の侵食でできた」などと説明してきましたが、以下にわかりやすくまとめてみたいと思います。
湖は、その形成からおおよそ5つのタイプに分類されます。
細長い形。できた時代も古い
タンガニーカ湖
諏訪湖
火口に水が溜まった火口湖、火口が陥没してできた窪地(カルデラ)に水が溜まったカルデラ湖。
支笏湖
十和田湖
オイギンス/サンマルティン湖
富士五湖
サロマ湖
なお、カスピ海は資料によって断層湖とも、海跡湖ともされていましたので、この表には入れませんでした。
浮かぶ島(ペルー・チチカカ湖)
ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖は、標高3810mという高所にある湖で、汽船などが航行できる湖としては世界でいちばんの高所にあります。このチチカカ湖で有名なのが、ウロス島という浮島。
ウロス島は、タトラ族という先住民族の人々がトトラ草というチチカカ湖に群生している葦の一種を使って作り上げた、筏のような浮島です。
島の大きさは大小さまざまで、教会や学校がある島もあれば、数家族しか住んでいない島もあるとか。タトラの人々は、浮島の間をボートに乗って移動します。ウロス島では農業も行われ、昨今ではソーラー発電も行っているそうです。
タトラ族の人々がこのような浮島上の生活を始めたのは500年ほど前から。インカ帝国やスペインの勢力から逃れて島の上の生活にたどり着いたと言われています。
チチカカ湖では、島も、家も、船も、生活に必要なものをほぼすべてトトラ草で作って自給自足してきたタトラ族の人々のSDGsな生活を体験できる、ウロス島に宿泊するツアーもあるそうです。また、カラフルな民族模様であしらわれたトトラ草の民芸品もとても魅力的です。
湖の色は水質によって変化する?
湖の色は水質によって変化します。
水の分子は赤い光を吸収するので、一般に水深が深いほど水は青く見えますが、湖の中に生息するプランクトンや植物に乱反射することで、単なる青ではなく、複雑な色合いを見せてくれます。つまり、湖の色は生息するプランクトンや植物によって変わるのです。
たとえば、フラミンゴの生息地として有名なケニアのボゴリア湖は「ピンク色」です。それは湖の水質がアルカリ性なので、アルカリ性を好むスピルリナというピンク色の藻が大量に生息しているからです。
ちなみにフラミンゴはこのピンク色の藻を餌にしているのであのような美しいピンク色に羽が染まります。ちなみにスピルリナの繁殖が少ない時は、フラミンゴのピンク色も薄くなるとか。
池・沼・湖の違い?
スイスの湖沼学者フォーレル(1841-1912年)は「深さ」と「水中植物の分布状況」から以下のように区別しました。
特に人工的に作ったもの
ダムによってできた池でも「○○湖」と呼ぶことがある
ただし、この分類も厳密なものではないようで、地図での呼称は地域で呼ばれている慣例に沿ったものが多いそうです。
参照: 国土地理院
湖の不思議を守るためにできること
厳寒の冬に繰り広げられる氷のページェントをはじめ、珍しい動植物に出会える世界の湖。湖は、地殻変動や火山活動、氷河の侵食など、気が遠くなるほどの長い月日をかけて地球が造ってきたものです。
今回紹介したどの湖も、近年の温暖化や環境汚染でその美しい姿を保てない危機に瀕しています。
湖の不思議にいつまでも会いに行けるように、わたしたちにもできることを心に留めていきたいですね。
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