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今年も残りわずかです。お正月の恒例行事は色々ありますが、子供たちから大人まで楽しめるものの一つに『書き初め』があります。道具の準備や片付けが少し面倒かも知れませんが、新年の抱負や目標を掲げ、親子や友達同士で共有するのは素晴らしいことです。今回は『書き初め』の歴史や由来、書いてみたくなる前向きな言葉などを紹介します!最後まで読み、新年は日本的なお正月気分を満喫してみましょう。
『書き初め』は、日本の年中行事の一つであり、伝統文化でもあります。一般的には、新年になって初めて毛筆で文字を書くことをいいますが、絵を描くことも『書き初め』というそうです。
毎年、小学校の冬休みにおける宿題として、書道教室に通っている方は発表会の課題として『書き初め』に取り組んでいる方々も多いのではないでしょうか。そんな『書き初め』ですが、いつ頃から始まり、どのような意味があるのでしょう。知っているようで知らない『書き初め』のアレコレについて、一緒に再確認してみませんか!
『書き初め』の起源は、平安時代の宮中における『吉書の奏(きっしょのそう)と呼ばれていた行事だといわれています。『吉書の奏』とは、年始・改元・天皇の代替わりなどの節目節目に行われていて、天皇に対し、吉日を選んで儀礼的な文書を提出 していたということです。鎌倉幕府以降の武家政権では『吉書始め(きっしょはじめ)』と呼ばれるようになり、将軍に対して儀礼的文書が提出されるようになっています。江戸時代になると『吉書始め』の儀式は庶民にも知られるようになり、おめでたい新年に書道をするという行事になって、寺子屋などを通じ急速に広がったということです。
『書き初め』は、新年を迎え、一年の抱負や縁起の良い言葉など、年頭にふさわしい文字をその年の恵方に向かい心を込めて書くというお正月の伝統行事です。おめでたい言葉や詩歌、あるいは、一年の抱負や目標を書くことで、目標の成就や新年をお祝いする気持ちを高め、行動を新たにします。また『書き初め』に使用する墨は、「若水」と呼ばれる新年最初に汲んだ水を神棚にお供えしたものをすって 使うため、神様にあやかって字が上手になればという願望も込められていたということです。
幕末に黒船で来航したアメリカ人のペリーが、日本人の識字率の高さに驚愕したという話は有名ですが、それには、寺子屋の存在や『書き初め』という習慣が大きく影響していました。まだ、字を書くことができない幼児ですら、筆で絵や線を描いて『書き初め』に参加していたということですよ。寺子屋での『書き初め』の様子は、江戸時代の美しい浮世絵にも生き生きと描かれています。
1月2日は、昔から仕事始めの日とされていました。商人たちにとっては初出荷の日となり、農家の人々は、田畑や山の神様をお祀りする日だったのです。現在、そういった季節感は薄れてきていますが、お正月の初売りは1月2日に行われていることが多いと思います。
『書き初め』は、一年の抱負などを決意表明のように書く場合が多いことから、仕事始めの日と同じ方が良いと考えられていたようです。そうすることにより、その年の仕事や学業が上向くと信じられていました。また、書道や茶道・三味線などのお稽古ごとも、1月2日から習い始めると上達するといわれていて、1月2日を初稽古の日としていることが多いようです。
心を込めて書いた『書き初め』は、小正月まで飾り『どんと焼き』のときにお焚き上げします。小正月とは、一般的に1月14日から16日までの3日間のことを指し『どんと焼き』は1月15日に行います。
古くは、小正月まで門松を飾っていたことが多く、元旦から小正月までを『松の内』とも呼んでいました。『どんと焼き』は『左義長(さぎちょう)』とも呼ばれ、地方によって、実に様々な呼称が存在します。
『書き初め』という習慣が、日本人の生活に定着したのは江戸時代といわれています。町人の子供たちが学んだ寺子屋の存在が、大きいようです。やはり、世の中が安定しないと、文化の醸成は難しいのかも知れません。現在の私たちは、新年にふさわしい言葉や四字熟語などを『書き初め』の題材としていますが、江戸時代はどうだったのでしょうか?まずは、江戸時代に題材となっていた言葉をふり返り、2025年のお正月に向けて、おすすめの言葉もピックアップして紹介したいと思います。
江戸時代の『書き初め』を知る手掛かりとして、歌川豊国が1805年(文化2年)頃に描いた『風流てらこ吉書はじめけいこの図』や歌川国芳が1842年(天保13年)頃に描いた『幼童席書会』という浮世絵があります。
これらの浮世絵を見たところ『寿』や『鶴』『麒麟』『百福寿』といった縁起の良い言葉や、古今和歌集に収められている和歌から日本の国歌にもなった『君が代』などが『書き初め』の題材となっていることが確認できました。漢字・ひらがな・和歌・漢詩など、あるとあらゆるものが題材だったようです。
『寺子屋』は、時代劇にもよく登場するので、馴染みがありますね。お寺で子供たちに読み・書き・そろばんを教えていた私的な教育施設で、江戸時代の天保年間前後に爆発的に増加したということです。幕末の頃には全国に1万5,000カ所以上もあったとされ、浮世絵には女性教師も描かれています。お坊さんが教えていた訳ではないようですね。また、現在のような年齢による一斉入学・一斉進級ではなく、入学は随時で、進級は子供たちの能力に応じて臨機応変に行われていました。明治維新により公的な学校教育制度が導入されると、大規模な寺子屋はそのまま小学校となり、寺子屋の教師が小学校の教師となることも多かったということです。
『書き初め』の題材にする言葉の選び方については、これといった決まりごとはありません。ただ、新年の行事ですから、前向きで明るい印象の言葉がふさわしいでしょう。ご自身の好きな言葉や四字熟語がすぐにひらめけば、それで決まりです。そうはいっても、なかなか、ひらめかないよという方は、これから、おすすめする言葉の中から選んでみてはいかがでしょうか。
年代によって、挑戦できる字や言葉にも差があると思いますので、書道の授業が始まる小学校3年生ぐらいの低学年・小学校高学年から中学生まで・高校生以上の3パターンを目安にして紹介します。あくまで目安ですから、一覧の中に気に入った言葉が見つかれば、子供だから、大人だからと気にする必要はありませんよ。
小学校低学年の場合、ほとんどの子供たちは書道初心者だと思いますので『ひらがな』がおすすめです。文字数も少ない方が良いでしょう。2文字・3文字・4文字でグループ分けしてあります。
小学校も高学年以上になると『ひらがな』だけでは物足りないですね。『ひらがな』に『漢字』も加えて、より『書き初め』らしい雰囲気を出していきましょう。
高校生以上になれば大人です。日本や中国の古典文学や故事名言などから四字熟語を選び、抱負や目標、心意気などを表明してみましょう。
ご自身で書いてみたい、あるいは、お子さんに書かせてみようと思う言葉は見つかりましたか?これらの言葉は一例ですが、そう思っていただける言葉があったなら幸いです。
『書き初め』におすすめの言葉を紹介した中で、もしかしたら、一読しただけでは意味が解らなかったものがあるかも知れません。その可能性が高い言葉について、軽く補足しておきましょう。
守破離とは、師の教えを守り基本を身につけること。その上で、自分自身で考えて工夫し、最終的には新しい境地に達するという意味です。茶道の千利休が唱えた思想です。
荷心香とは、どんな状況でも自分らしさを見失うなという意味です。荷心香は蓮の花のことで、普段は泥の中にあっても、花を咲かせれば良い香りを放ちます。中国の君主が読んだ漢文の一節『日落ちて荷心香る』が出典だということです。
点滴穿石とは、水滴でも長い年月をかければ石に穴を開けることができるように、小さな努力でも、積み重ねれば大きな成果を上げられるという意味になります。中国の歴史書『漢書』が出典です。
桜梅桃李とは、他人と比べることなく、自分自身を磨くことが重要だという意味です。サクラ・ウメ・モモ・スモモは、それぞれに個性的な花を咲かせていることから、周りを過度に気にする必要はないということです。出典は、鎌倉時代の古今箸聞集とも、日蓮の言葉ともいわれています。
転凡成聖とは、平凡なものでも素晴らしいものに変化するという意味だといわれています。石も磨きつづければ玉になるようにということです。出典は、中国の仏教書『五灯会元(ごとうえげん)』とされています。
『書き初め』の由来や歴史、関連する『どんと焼き』や『寺子屋』について、皆さんと再確認しました。大元の由来は平安時代の宮中にありますが、今日のような形式に落ち着いたのは江戸時代だったのですね。今も昔も、半紙に毛筆で書くことから、お題になる言葉には共通性がありました。間もなく、新年を迎えます。このコラムの後半は、2025年の『書き初め』に向けて、おすすめの言葉一覧のようになっていますので、楽しくお役立てください。
今年も残りわずかです。
お正月の恒例行事は色々ありますが、子供たちから大人まで楽しめるものの一つに『書き初め』があります。道具の準備や片付けが少し面倒かも知れませんが、新年の抱負や目標を掲げ、親子や友達同士で共有するのは素晴らしいことです。今回は『書き初め』の歴史や由来、書いてみたくなる前向きな言葉などを紹介します!最後まで読み、新年は日本的なお正月気分を満喫してみましょう。
目次
日本の伝統文化『書き初め』とは?
『書き初め』は、日本の年中行事の一つであり、伝統文化でもあります。
一般的には、新年になって初めて毛筆で文字を書くことをいいますが、絵を描くことも『書き初め』というそうです。
毎年、小学校の冬休みにおける宿題として、書道教室に通っている方は発表会の課題として『書き初め』に取り組んでいる方々も多いのではないでしょうか。そんな『書き初め』ですが、いつ頃から始まり、どのような意味があるのでしょう。知っているようで知らない『書き初め』のアレコレについて、一緒に再確認してみませんか!
『書き初め』の由来は平安時代の宮中儀式だった!
『書き初め』の起源は、平安時代の宮中における『吉書の奏(きっしょのそう)と呼ばれていた行事だといわれています。
『吉書の奏』とは、年始・改元・天皇の代替わりなどの節目節目に行われていて、天皇に対し、吉日を選んで儀礼的な文書を提出 していたということです。鎌倉幕府以降の武家政権では『吉書始め(きっしょはじめ)』と呼ばれるようになり、将軍に対して儀礼的文書が提出されるようになっています。江戸時代になると『吉書始め』の儀式は庶民にも知られるようになり、おめでたい新年に書道をするという行事になって、寺子屋などを通じ急速に広がったということです。
江戸時代に浸透した『書き初め』の心
『書き初め』は、新年を迎え、一年の抱負や縁起の良い言葉など、年頭にふさわしい文字をその年の恵方に向かい心を込めて書くというお正月の伝統行事です。おめでたい言葉や詩歌、あるいは、一年の抱負や目標を書くことで、目標の成就や新年をお祝いする気持ちを高め、行動を新たにします。また『書き初め』に使用する墨は、「若水」と呼ばれる新年最初に汲んだ水を神棚にお供えしたものをすって 使うため、神様にあやかって字が上手になればという願望も込められていたということです。
幕末に黒船で来航したアメリカ人のペリーが、日本人の識字率の高さに驚愕したという話は有名ですが、それには、寺子屋の存在や『書き初め』という習慣が大きく影響していました。まだ、字を書くことができない幼児ですら、筆で絵や線を描いて『書き初め』に参加していたということですよ。寺子屋での『書き初め』の様子は、江戸時代の美しい浮世絵にも生き生きと描かれています。
なぜ『書き初め』は1月2日に行うことが多いのか?
1月2日は、昔から仕事始めの日とされていました。
商人たちにとっては初出荷の日となり、農家の人々は、田畑や山の神様をお祀りする日だったのです。現在、そういった季節感は薄れてきていますが、お正月の初売りは1月2日に行われていることが多いと思います。
『書き初め』は、一年の抱負などを決意表明のように書く場合が多いことから、仕事始めの日と同じ方が良いと考えられていたようです。
そうすることにより、その年の仕事や学業が上向くと信じられていました。また、書道や茶道・三味線などのお稽古ごとも、1月2日から習い始めると上達するといわれていて、1月2日を初稽古の日としていることが多いようです。
『書き初め』の締めはどんと焼きでお焚き上げ
心を込めて書いた『書き初め』は、小正月まで飾り『どんと焼き』のときにお焚き上げします。
小正月とは、一般的に1月14日から16日までの3日間のことを指し『どんと焼き』は1月15日に行います。
古くは、小正月まで門松を飾っていたことが多く、元旦から小正月までを『松の内』とも呼んでいました。
『どんと焼き』は『左義長(さぎちょう)』とも呼ばれ、地方によって、実に様々な呼称が存在します。
古今の『書き初め』でお題にされる言葉には共通性が!
『書き初め』という習慣が、日本人の生活に定着したのは江戸時代といわれています。
町人の子供たちが学んだ寺子屋の存在が、大きいようです。やはり、世の中が安定しないと、文化の醸成は難しいのかも知れません。現在の私たちは、新年にふさわしい言葉や四字熟語などを『書き初め』の題材としていますが、江戸時代はどうだったのでしょうか?
まずは、江戸時代に題材となっていた言葉をふり返り、2025年のお正月に向けて、おすすめの言葉もピックアップして紹介したいと思います。
江戸時代に『書き初め』のお題となった言葉
江戸時代の『書き初め』を知る手掛かりとして、歌川豊国が1805年(文化2年)頃に描いた『風流てらこ吉書はじめけいこの図』や歌川国芳が1842年(天保13年)頃に描いた『幼童席書会』という浮世絵があります。
これらの浮世絵を見たところ『寿』や『鶴』『麒麟』『百福寿』といった縁起の良い言葉や、古今和歌集に収められている和歌から日本の国歌にもなった『君が代』などが『書き初め』の題材となっていることが確認できました。漢字・ひらがな・和歌・漢詩など、あるとあらゆるものが題材だったようです。
書き初めの豆知識【寺子屋】
『寺子屋』は、時代劇にもよく登場するので、馴染みがありますね。
お寺で子供たちに読み・書き・そろばんを教えていた私的な教育施設で、江戸時代の天保年間前後に爆発的に増加したということです。幕末の頃には全国に1万5,000カ所以上もあったとされ、浮世絵には女性教師も描かれています。お坊さんが教えていた訳ではないようですね。また、現在のような年齢による一斉入学・一斉進級ではなく、入学は随時で、進級は子供たちの能力に応じて臨機応変に行われていました。
明治維新により公的な学校教育制度が導入されると、大規模な寺子屋はそのまま小学校となり、寺子屋の教師が小学校の教師となることも多かったということです。
2025年の『書初め』に向けて
『書き初め』の題材にする言葉の選び方については、これといった決まりごとはありません。
ただ、新年の行事ですから、前向きで明るい印象の言葉がふさわしいでしょう。ご自身の好きな言葉や四字熟語がすぐにひらめけば、それで決まりです。そうはいっても、なかなか、ひらめかないよという方は、これから、おすすめする言葉の中から選んでみてはいかがでしょうか。
年代によって、挑戦できる字や言葉にも差があると思いますので、書道の授業が始まる小学校3年生ぐらいの低学年・小学校高学年から中学生まで・高校生以上の3パターンを目安にして紹介します。あくまで目安ですから、一覧の中に気に入った言葉が見つかれば、子供だから、大人だからと気にする必要はありませんよ。
小学校低学年へのおすすめの言葉
小学校低学年の場合、ほとんどの子供たちは書道初心者だと思いますので『ひらがな』がおすすめです。
文字数も少ない方が良いでしょう。2文字・3文字・4文字でグループ分けしてあります。
小学校高学年から中学生へのおすすめの言葉
小学校も高学年以上になると『ひらがな』だけでは物足りないですね。
『ひらがな』に『漢字』も加えて、より『書き初め』らしい雰囲気を出していきましょう。
高校生以上へのおすすめの言葉
高校生以上になれば大人です。日本や中国の古典文学や故事名言などから四字熟語を選び、抱負や目標、心意気などを表明してみましょう。
ご自身で書いてみたい、あるいは、お子さんに書かせてみようと思う言葉は見つかりましたか?これらの言葉は一例ですが、そう思っていただける言葉があったなら幸いです。
書き初めの豆知識【少し難しかった言葉の補足】
『書き初め』におすすめの言葉を紹介した中で、もしかしたら、一読しただけでは意味が解らなかったものがあるかも知れません。その可能性が高い言葉について、軽く補足しておきましょう。
守破離
守破離とは、師の教えを守り基本を身につけること。その上で、自分自身で考えて工夫し、最終的には新しい境地に達するという意味です。茶道の千利休が唱えた思想です。
荷心香
荷心香とは、どんな状況でも自分らしさを見失うなという意味です。荷心香は蓮の花のことで、普段は泥の中にあっても、花を咲かせれば良い香りを放ちます。中国の君主が読んだ漢文の一節『日落ちて荷心香る』が出典だということです。
点滴穿石
点滴穿石とは、水滴でも長い年月をかければ石に穴を開けることができるように、小さな努力でも、積み重ねれば大きな成果を上げられるという意味になります。中国の歴史書『漢書』が出典です。
桜梅桃李
桜梅桃李とは、他人と比べることなく、自分自身を磨くことが重要だという意味です。サクラ・ウメ・モモ・スモモは、それぞれに個性的な花を咲かせていることから、周りを過度に気にする必要はないということです。出典は、鎌倉時代の古今箸聞集とも、日蓮の言葉ともいわれています。
転凡成聖
転凡成聖とは、平凡なものでも素晴らしいものに変化するという意味だといわれています。石も磨きつづければ玉になるようにということです。出典は、中国の仏教書『五灯会元(ごとうえげん)』とされています。
日本の伝統文化『書き初め』はお正月の心
『書き初め』の由来や歴史、関連する『どんと焼き』や『寺子屋』について、皆さんと再確認しました。
大元の由来は平安時代の宮中にありますが、今日のような形式に落ち着いたのは江戸時代だったのですね。今も昔も、半紙に毛筆で書くことから、お題になる言葉には共通性がありました。間もなく、新年を迎えます。このコラムの後半は、2025年の『書き初め』に向けて、おすすめの言葉一覧のようになっていますので、楽しくお役立てください。