鬼剣舞に思う

北上駅に着いたのは朝の8時。
帰省客でいっぱいの車内で床に座り込み舞踊同好会の仲間と鬼剣舞の話で一晩中盛り上がり一睡もしていなかった。

駅舎を出ると湿り気も少なくスッキリとした気持ちの良い朝だ。
合宿所まで徒歩50分程の道のりで汗をぬぐいながらまるで旅行気分だった。
北上農業高校で鬼剣舞班との合宿が始まり、顧問の教師が前年に二子の庭元から10日程で覚え持ち帰り練習した剣舞とは全く別物に思えるほど優雅で勇ましい踊りであった。
違和感と感激が一緒くたに織り交ざり、心を奪われた50数年前の出来事だった。

鬼剣舞に思う01
自前の手作り衣裳でのクラブ活動風景

農高の剣舞班の踊りと自分たちの踊りが明らかに違って見えたことと、所作を真似たつもりでも自身の体を思い通りに使えてはいないという思考と身体の関係性に対しての違和感があった。

人は目に見えた動作を模倣しようとするとき、自らが体験した身体操作を元に分析しその動作に置き換えるのだが、自身の中に覚えのない動作は滑稽に思えるほどバランスの悪さを発揮するものだ。これは他の民俗舞踊を体験していく過程で常に思うことだった。

目から入った動きを自身の体で再現するとき、始めに自分の身体に軸を作り次の動作の準備を整える作業をしながら、バランスの取れた良い形にして連動することが大事だ。
鬼剣舞では此のことを大切にして踊っていきたい。

鬼剣舞に思う02
岩手県 岩手山

二子鬼剣舞では元旦の明け方市内の諏訪神社と、町内の二子八幡神社で奉納舞をする。
2月には集落を一軒一軒訪れて神楽を回す。
この火防祭では鬼剣舞ではなく権現回しと、子供達によるシンガクだ。9月の秋祭りは剣舞と神楽を町内にある12の神社に巡行奉納する。

此処に一朝一夕では伺えしえない地域社会の慣習があり集落の絆がある。
正に郷土芸能の土着性が色濃く反映するところである。
これらのことを例年繰り返すことで子供、若者、年寄の夫々の役割が決まり、集落の連帯感も強くなり芸能伝承の礎が育まれる。

あるとき二子の庭元に
「剣舞は地元の土を踏み、地元の物を食べなければ剣舞でねェ」
と言われたことを覚えている。
郷土芸能は、集落の生活に密着性の強い芸能だから、部外者の身勝手な理解で向き合わぬよう関わっていきたい。

鬼剣舞に思う03
2017年度 「魂鎮」新横浜 篠原八幡神社

二子流東京鬼剣舞(ふたこりゅうとうきょうおにけんばい) 庭元 小川修自

岩手県北上地方に伝わる民俗芸能「鬼剣舞」を東京で伝える保存会です。
毎年夏に行われる、北上みちのく芸能祭りにも正式団体として参加。
二子流東京鬼剣舞 公式サイト

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鬼剣舞に思う03
旧シルクロード舞踏館にて

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