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菊は、同じ国花の桜と並んで、日本を象徴する花です。「春の桜」、「秋の菊」と季節を代表する日本の和花として、それぞれ愛でられてきた歴史もありますね。
ところで、その菊と秋という季節に関係する重要な行事を皆さんご存じでしょうか。菊の節句とも言われる「重陽の節句」です。今回は、菊はもちろん重陽の節句にも触れて、日本の文化と菊の深い関係性を解説していきます。
菊の花言葉や重陽の節句について解説していく前に、そもそも菊とはどんな花なのかについて確認しておきましょう。
「菊」はキク科キク属の植物で、さまざまな種類の「〇〇菊」を総称しています。菊には実に多くの種類があるのですが、大別すると、「和菊」と「洋菊」に分けることができます。
「和菊」とは日本で発展した菊のことで、主に観賞用の植物(多年草)として古くから親しまれています。「洋菊」は欧米で用いられる菊で、「マム」と呼ばれています。花弁が密に詰まっており、全体的に丸いフォルムをしているのが特徴です。元々は日本の和菊を欧米で品種改良して生まれました。
ちなみに、「和菊」は花の大きさでも区別することができ、花の直径が20cm前後の大きな花をつけるものを「大菊」、仏花などに用いられる大きさの「中菊」、花の直径が2cm前後の小さなものを「小菊」と呼びます。「大菊」にはさらに厚物、厚走りなど、花のフォルムで種類分けすることができ、細々しく分類すると「和菊」だけで数千種類に達するとも言われています。
一般的な菊の開花時期は10月から11月頃ですが、時代と共に菊の栽培方法、品種改良がどんどん発展していき、今では一年を通して楽しめる花になりました。それでも「菊と言ったら秋」というイメージが強いからというのもあるのでしょう、春に咲く菊は「春菊」と呼び、夏に咲く菊は「夏菊」と呼び、冬に咲く菊は「寒菊」と呼んで区別します。ちなみに、春菊の開花時期は5月から7月、夏菊の開花時期は8月から9月、寒菊の開花時期は12月から1月です。
菊の花言葉には、「高貴」、「高潔」、「高尚」といったものがありますが、色別の菊の花言葉にはまた違ったものが登場します。
黄色の菊の花言葉は、「長寿と幸福」、「破れた心」、「わずかな愛」です。
花言葉は元々トルコを中心に欧米で発展したものなのですが、花全体を通して、黄色の花には比較的ネガティブな意味合いが付けられていることが多いです。菊もそれに違わず、他の色味に比べて花言葉はややネガティブなものになっています。
紫の菊の花言葉は、「恋の勝利」、「夢が叶う」、「私を信頼してください」です。
いずれも自信に満ち溢れた素敵な言葉であり、比較的明るい紫色に色づく菊のパワフルな印象にぴったりの言葉と言えるでしょう。
白い菊の花言葉は、「真実」、「慕う」、「誠実な心」です。
白菊の白さというのは他の花の白よりもさらに「真っ白」と感じたことがある方も少なくないのではないでしょうか。透明感のある美しい白ともいえる、底抜けの白さは、観ているこちらの気持ちも浄化してくれる、そんなピュアさがありますよね。花言葉の「真実」、「誠実な心」というのはまさに白菊のイメージにぴったりです。
赤い菊の花言葉は、「愛情」、「あなたを愛します」です。
赤色の花の花言葉は、その華やかな色味からか、情熱的なものが多いのですが、菊も例外ではありません。花嫁衣裳の色打掛にも赤い菊はよく登場しますが、愛を誓いあう結婚の場において大変相応しい花であることがよく分かりますね。
ピンク色の菊の花言葉は、「甘い夢」です。
可愛らしいピンク色の菊は、赤い菊の花とは対照的に、成人式の振袖に描かれていたりしますね。若いからこそ抱く「甘い夢」をピンクの菊は応援してくれることでしょう。
最後に海外における菊の花言葉についてご紹介します。菊は日本の国花(の一つ)ですが、他にもドイツやエストニア、ラトビアなどは菊の一種であるヤグルマギクを国花としています。また、フランスは国旗のトリコロールカラーを花で表す際に、青色を青のヤグルマギクに例えるなど、菊およびキク科の花はシンボルによく用いられるのです。これだけさまざまな国で菊が取り上げられているというのはなかなか興味深く、各国の菊の花言葉についても比較してみたいところですが、今回は、ロシア、ドイツ、イギリスにおける菊の花言葉についてご紹介します。
ロシアでは菊の花言葉に「喜び」、「歓喜」、「長寿」、「友情」、「敬意」といったものがあります。
ところで、洋菊の中に「アナスタシア」という種類の菊があるのをご存じでしょうか。アナスタシアという名称からロシア皇帝ロマノフ一家の末娘アナスタシア王女の名を想起された方もいるでしょう。元々アナスタシアという名はギリシャ系だそうですが、「曙」、「高貴」という意味があることから、菊にその名を冠したそうです。耐寒性が強い菊は特に極寒のロシアでは重宝されるであろうことは容易に想像がつくので、花言葉に「歓喜」、「長寿」というものがあるのは納得ですね。
ドイツでは菊の花言葉に「ためらわないで」、「躊躇しないで」、「ぐずぐずしないで」といったものがあります。気持ちを鼓舞する花言葉で、とてもポジティブなものですね。一説によるとこの花言葉は、長く咲き続ける菊の姿にパワーやエネルギーをもらえることに由来しているそうです。
ちなみに、ドイツの国花といわれるヤグルマギクの花言葉は、「(わたしは)希望を決して諦めない」というかなりパワフルな言葉になります。帝室の象徴にも取り入れられたこともある花で、全ドイツの希望、期待を一身に背負い、まさにドイツのシンボル花だということがよく分かりますね。
イギリスでは菊の花言葉に「真実」、「元気」、「友情」、「活発」、「健康」といったものがあります。
菊(マム)の愛らしく明るい感じに快活さが見いだされるのでしょう、元気で前向きな花言葉が与えられています。
菊の基本情報を確認したところで、菊の歴史や菊の節句について詳しく解説していきます。
菊は元々日本に自生していた植物ではなく、中国の植物でした。日本には古墳時代に既に菊が伝わっていたようですが、あくまでも薬草として用いられていたようです。それが奈良時代から平安時代にかけて、今度は観賞用の菊が伝えられ、日本でも広く親しまれるようになりました。特に平安貴族に菊は愛され、和歌や文学作品、調度品、着物の柄などさまざまな場面で菊が用いられました。
菊の栽培が盛んになったのは江戸時代に入ってからで、独自の育成技術、品種改良技術で大きく菊栽培が発展したのです。その技術は本家中国の菊栽培技術をも上回り、江戸時代末期には中国が日本の菊(和菊)を逆輸入することになったほどでした。明治時代に入ってからは欧米諸国に和菊が輸出され、そこで独自の改良が加えられて生まれたのがマムと呼ばれる洋菊です。現在は、必要用途に応じて、和菊、洋菊それぞれ使い分けがなされていますが、いずれも通年用いることができる花として重宝されています。
菊には別称があることをご存じでしょうか。「チギリグサ(千切り草)」、「ヨワイグサ(齢い草)」、「モモヨグサ(百代草)」など「長寿」にちなんだ名で呼ばれることもあるのです。これは、中国において菊には長寿の力が宿っていると信じられていたことに由来するのですが、いずれも聖なる花として崇められていたことがよく分かりますね。
すでに日本に根付いていた春の桜と共に、秋の代表的な草花として菊は愛でられるようになり、さらに、江戸時代には日本独自の育成技術で菊栽培技術が世界トップレベルになったこともあり、菊は日本に欠かせない草花の一つとなりました。また、後鳥羽上皇の時代から菊の紋が天皇の紋として使われ続けてきたこともあり、日本の国花の一つに菊が選ばれたのです。
ちなみに、日本の国花は法令で定められたものではないため、あくまでも事実上の国花といった位置づけになっています。
世界の国花について詳しく知りたい方は、こちらもチェック
菊を図案化した菊紋は天皇家の紋として用いられていることは大変有名です。元々日月紋を天皇家の紋としていたのですが、後鳥羽上皇が菊を大変愛で、自分の私物や剣、印などに菊紋を用いたことで、天皇家の御紋は菊紋へと変わり、大正15年の皇室儀制令で御紋の図案、使用制限など詳しく取り決められました。ちなみに、天皇家の御紋は「十六八重表菊」です
また、日本のパスポートの表紙の絵も国花を図案化した菊紋が用いられ、ここには「十六一重表菊」が描かれています。他にも、国会議員の議員バッジに菊花紋章は用いられ、皇室とゆかりの深い寺社で菊花紋章を見ることができます。
重陽(ちょうよう)の節句は、陰暦9月9日の節供で、1月7日、3月3日、5月5日、7月7日と共に五節供に数えられます。中国において奇数は縁起の良い陽数であり、その9を重ねることから「重陽」もしくは「重九(ちょうきゅう)」と言い、お祝いしました。ちょうどこの時期に咲く菊の花はこの日の景物として用いられることから、「菊の節句」とも呼ばれます。
観賞用の菊が日本に伝来した際に、菊の節句も一緒に入ってきたため、平安時代からは宮中で9月9日に重陽の節会が紫宸殿で催され、宴が開かれるようになりました。菊の花を酒に浮かべる菊酒や、菊の花の露を綿にしみこませて体を拭う着せ綿の儀などは菊の節句ならではのものとして継承されてきました。しかし、明治時代に陰暦から新暦に暦を変えたことで、時期が大幅にずれ、新暦の9月9日にはまだ秋菊は咲いてすらいないことから、重陽の節句が以前ほど盛大にお祝いできなくなってしまったのです。
現在でも重陽の節句は9月9日にお祝いされ、栗ご飯を食べたり、菊酒を飲んだり、菊を愛でたりしますが、秋菊の時期ではないことから華やかさはあまりないのも事実です。後雛ということで、お雛様お内裏様を飾り、桃の花ではなく菊の花に替えて飾るという江戸時代から生まれた風習を大切にしているご家庭もあるでしょう。周りにたくさんの菊が無くても、日本人が大切にしてきた風習と自然美を楽しみながら、厄除け、長寿祈願をしてみるのはいかがでしょうか。
大人の雛祭りともいわれる後の雛とは?
菊といえば仏花の代表と言っても過言ではありません。実際、仏花に何を用いるか考えた時にまず菊が思い浮かぶという人は少なくないでしょう。元々縁起の良い花として伝えられた菊ですが、なぜ仏花としても用いられるようになったのかというと、縁起が良く、邪気払い効果もあるからこそ仏花に相応しいと選ばれたのです。また、派手すぎないながらも華がある見た目の菊は、厳粛な葬儀の席に相応しいものと考えられたのです。さらに、菊は花持ちが大変よく、また開花時期を電照栽培などでコントロールできることから、必要な時に用意できる便利さ、実用性も突然の葬儀には欠かせないポイントだったのです。
こうしたことから、菊は仏花として広く用いられるようになりました。決して縁起が悪くなったからということではなく、実用面でどの花よりも秀でた特性があったからなのです。
菊の花言葉や意味、縁起について、菊の節句とも言われる重陽の節句と絡めながら解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。仏花としてのイメージが強かったという方にとっては、意外な発見もあったことでしょう。菊は決してネガティブなイメージの花ではないはずだけれど、最近は仏花としての地位が定着して、おめでたい席に菊や菊を想起させるものを持ち込むのは気が引けたという方、ぜひ率先して菊をおめでたい席でも用いてください。
菊は国花であり、天皇家の象徴でもあるので、決してネガティブなものではないのです。むしろ高貴な花であり、おめでたい席には大変相応しい、縁起の良い花なのだということを忘れず、機会があった時にぜひ菊の花を実生活の中でもどんどん取り入れていってくださいね。
菊は、同じ国花の桜と並んで、日本を象徴する花です。
「春の桜」、「秋の菊」と季節を代表する日本の和花として、それぞれ愛でられてきた歴史もありますね。
ところで、その菊と秋という季節に関係する重要な行事を皆さんご存じでしょうか。菊の節句とも言われる「重陽の節句」です。
今回は、菊はもちろん重陽の節句にも触れて、日本の文化と菊の深い関係性を解説していきます。
目次
菊の基本情報
菊の花言葉や重陽の節句について解説していく前に、そもそも菊とはどんな花なのかについて確認しておきましょう。
種類と特徴
「菊」はキク科キク属の植物で、さまざまな種類の「〇〇菊」を総称しています。
菊には実に多くの種類があるのですが、大別すると、「和菊」と「洋菊」に分けることができます。
「和菊」とは日本で発展した菊のことで、主に観賞用の植物(多年草)として古くから親しまれています。
「洋菊」は欧米で用いられる菊で、「マム」と呼ばれています。花弁が密に詰まっており、全体的に丸いフォルムをしているのが特徴です。元々は日本の和菊を欧米で品種改良して生まれました。
ちなみに、「和菊」は花の大きさでも区別することができ、花の直径が20cm前後の大きな花をつけるものを「大菊」、仏花などに用いられる大きさの「中菊」、花の直径が2cm前後の小さなものを「小菊」と呼びます。
「大菊」にはさらに厚物、厚走りなど、花のフォルムで種類分けすることができ、細々しく分類すると「和菊」だけで数千種類に達するとも言われています。
開花時期
一般的な菊の開花時期は10月から11月頃ですが、時代と共に菊の栽培方法、品種改良がどんどん発展していき、今では一年を通して楽しめる花になりました。
それでも「菊と言ったら秋」というイメージが強いからというのもあるのでしょう、春に咲く菊は「春菊」と呼び、夏に咲く菊は「夏菊」と呼び、冬に咲く菊は「寒菊」と呼んで区別します。ちなみに、春菊の開花時期は5月から7月、夏菊の開花時期は8月から9月、寒菊の開花時期は12月から1月です。
菊の花言葉
菊の花言葉には、「高貴」、「高潔」、「高尚」といったものがありますが、色別の菊の花言葉にはまた違ったものが登場します。
黄色
黄色の菊の花言葉は、「長寿と幸福」、「破れた心」、「わずかな愛」です。
花言葉は元々トルコを中心に欧米で発展したものなのですが、花全体を通して、黄色の花には比較的ネガティブな意味合いが付けられていることが多いです。
菊もそれに違わず、他の色味に比べて花言葉はややネガティブなものになっています。
紫色
紫の菊の花言葉は、「恋の勝利」、「夢が叶う」、「私を信頼してください」です。
いずれも自信に満ち溢れた素敵な言葉であり、比較的明るい紫色に色づく菊のパワフルな印象にぴったりの言葉と言えるでしょう。
白色
白い菊の花言葉は、「真実」、「慕う」、「誠実な心」です。
白菊の白さというのは他の花の白よりもさらに「真っ白」と感じたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
透明感のある美しい白ともいえる、底抜けの白さは、観ているこちらの気持ちも浄化してくれる、そんなピュアさがありますよね。花言葉の「真実」、「誠実な心」というのはまさに白菊のイメージにぴったりです。
赤色
赤い菊の花言葉は、「愛情」、「あなたを愛します」です。
赤色の花の花言葉は、その華やかな色味からか、情熱的なものが多いのですが、菊も例外ではありません。
花嫁衣裳の色打掛にも赤い菊はよく登場しますが、愛を誓いあう結婚の場において大変相応しい花であることがよく分かりますね。
ピンク色
ピンク色の菊の花言葉は、「甘い夢」です。
可愛らしいピンク色の菊は、赤い菊の花とは対照的に、成人式の振袖に描かれていたりしますね。
若いからこそ抱く「甘い夢」をピンクの菊は応援してくれることでしょう。
海外での花言葉
最後に海外における菊の花言葉についてご紹介します。
菊は日本の国花(の一つ)ですが、他にもドイツやエストニア、ラトビアなどは菊の一種であるヤグルマギクを国花としています。また、フランスは国旗のトリコロールカラーを花で表す際に、青色を青のヤグルマギクに例えるなど、菊およびキク科の花はシンボルによく用いられるのです。
これだけさまざまな国で菊が取り上げられているというのはなかなか興味深く、各国の菊の花言葉についても比較してみたいところですが、今回は、ロシア、ドイツ、イギリスにおける菊の花言葉についてご紹介します。
ロシアの菊の花言葉
ロシアでは菊の花言葉に「喜び」、「歓喜」、「長寿」、「友情」、「敬意」といったものがあります。
ところで、洋菊の中に「アナスタシア」という種類の菊があるのをご存じでしょうか。
アナスタシアという名称からロシア皇帝ロマノフ一家の末娘アナスタシア王女の名を想起された方もいるでしょう。元々アナスタシアという名はギリシャ系だそうですが、「曙」、「高貴」という意味があることから、菊にその名を冠したそうです。
耐寒性が強い菊は特に極寒のロシアでは重宝されるであろうことは容易に想像がつくので、花言葉に「歓喜」、「長寿」というものがあるのは納得ですね。
ドイツの菊の花言葉
ドイツでは菊の花言葉に「ためらわないで」、「躊躇しないで」、「ぐずぐずしないで」といったものがあります。
気持ちを鼓舞する花言葉で、とてもポジティブなものですね。一説によるとこの花言葉は、長く咲き続ける菊の姿にパワーやエネルギーをもらえることに由来しているそうです。
ちなみに、ドイツの国花といわれるヤグルマギクの花言葉は、「(わたしは)希望を決して諦めない」というかなりパワフルな言葉になります。
帝室の象徴にも取り入れられたこともある花で、全ドイツの希望、期待を一身に背負い、まさにドイツのシンボル花だということがよく分かりますね。
イギリスの菊の花言葉
イギリスでは菊の花言葉に「真実」、「元気」、「友情」、「活発」、「健康」といったものがあります。
菊(マム)の愛らしく明るい感じに快活さが見いだされるのでしょう、元気で前向きな花言葉が与えられています。
菊の魅力と歴史
菊の基本情報を確認したところで、菊の歴史や菊の節句について詳しく解説していきます。
歴史
菊は元々日本に自生していた植物ではなく、中国の植物でした。日本には古墳時代に既に菊が伝わっていたようですが、あくまでも薬草として用いられていたようです。
それが奈良時代から平安時代にかけて、今度は観賞用の菊が伝えられ、日本でも広く親しまれるようになりました。特に平安貴族に菊は愛され、和歌や文学作品、調度品、着物の柄などさまざまな場面で菊が用いられました。
菊の栽培が盛んになったのは江戸時代に入ってからで、独自の育成技術、品種改良技術で大きく菊栽培が発展したのです。その技術は本家中国の菊栽培技術をも上回り、江戸時代末期には中国が日本の菊(和菊)を逆輸入することになったほどでした。明治時代に入ってからは欧米諸国に和菊が輸出され、そこで独自の改良が加えられて生まれたのがマムと呼ばれる洋菊です。
現在は、必要用途に応じて、和菊、洋菊それぞれ使い分けがなされていますが、いずれも通年用いることができる花として重宝されています。
国花
菊には別称があることをご存じでしょうか。「チギリグサ(千切り草)」、「ヨワイグサ(齢い草)」、「モモヨグサ(百代草)」など「長寿」にちなんだ名で呼ばれることもあるのです。これは、中国において菊には長寿の力が宿っていると信じられていたことに由来するのですが、いずれも聖なる花として崇められていたことがよく分かりますね。
すでに日本に根付いていた春の桜と共に、秋の代表的な草花として菊は愛でられるようになり、さらに、江戸時代には日本独自の育成技術で菊栽培技術が世界トップレベルになったこともあり、菊は日本に欠かせない草花の一つとなりました。
また、後鳥羽上皇の時代から菊の紋が天皇の紋として使われ続けてきたこともあり、日本の国花の一つに菊が選ばれたのです。
ちなみに、日本の国花は法令で定められたものではないため、あくまでも事実上の国花といった位置づけになっています。
世界の国花について詳しく知りたい方は、こちらもチェック
【写真付き】世界の素敵な「国の花」30選と花言葉菊の御紋(菊花紋章)
菊を図案化した菊紋は天皇家の紋として用いられていることは大変有名です。
元々日月紋を天皇家の紋としていたのですが、後鳥羽上皇が菊を大変愛で、自分の私物や剣、印などに菊紋を用いたことで、天皇家の御紋は菊紋へと変わり、大正15年の皇室儀制令で御紋の図案、使用制限など詳しく取り決められました。ちなみに、天皇家の御紋は「十六八重表菊」です
また、日本のパスポートの表紙の絵も国花を図案化した菊紋が用いられ、ここには「十六一重表菊」が描かれています。
他にも、国会議員の議員バッジに菊花紋章は用いられ、皇室とゆかりの深い寺社で菊花紋章を見ることができます。
重陽の節句と菊
重陽(ちょうよう)の節句は、陰暦9月9日の節供で、1月7日、3月3日、5月5日、7月7日と共に五節供に数えられます。中国において奇数は縁起の良い陽数であり、その9を重ねることから「重陽」もしくは「重九(ちょうきゅう)」と言い、お祝いしました。ちょうどこの時期に咲く菊の花はこの日の景物として用いられることから、「菊の節句」とも呼ばれます。
観賞用の菊が日本に伝来した際に、菊の節句も一緒に入ってきたため、平安時代からは宮中で9月9日に重陽の節会が紫宸殿で催され、宴が開かれるようになりました。菊の花を酒に浮かべる菊酒や、菊の花の露を綿にしみこませて体を拭う着せ綿の儀などは菊の節句ならではのものとして継承されてきました。
しかし、明治時代に陰暦から新暦に暦を変えたことで、時期が大幅にずれ、新暦の9月9日にはまだ秋菊は咲いてすらいないことから、重陽の節句が以前ほど盛大にお祝いできなくなってしまったのです。
現在でも重陽の節句は9月9日にお祝いされ、栗ご飯を食べたり、菊酒を飲んだり、菊を愛でたりしますが、秋菊の時期ではないことから華やかさはあまりないのも事実です。
後雛ということで、お雛様お内裏様を飾り、桃の花ではなく菊の花に替えて飾るという江戸時代から生まれた風習を大切にしているご家庭もあるでしょう。
周りにたくさんの菊が無くても、日本人が大切にしてきた風習と自然美を楽しみながら、厄除け、長寿祈願をしてみるのはいかがでしょうか。
大人の雛祭りともいわれる後の雛とは?
後の雛とは?重陽の節句に愉しむ大人の雛祭り仏花として使われている理由
菊といえば仏花の代表と言っても過言ではありません。実際、仏花に何を用いるか考えた時にまず菊が思い浮かぶという人は少なくないでしょう。元々縁起の良い花として伝えられた菊ですが、なぜ仏花としても用いられるようになったのかというと、縁起が良く、邪気払い効果もあるからこそ仏花に相応しいと選ばれたのです。
また、派手すぎないながらも華がある見た目の菊は、厳粛な葬儀の席に相応しいものと考えられたのです。
さらに、菊は花持ちが大変よく、また開花時期を電照栽培などでコントロールできることから、必要な時に用意できる便利さ、実用性も突然の葬儀には欠かせないポイントだったのです。
こうしたことから、菊は仏花として広く用いられるようになりました。
決して縁起が悪くなったからということではなく、実用面でどの花よりも秀でた特性があったからなのです。
菊を飾って縁起を呼び込む
菊の花言葉や意味、縁起について、菊の節句とも言われる重陽の節句と絡めながら解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
仏花としてのイメージが強かったという方にとっては、意外な発見もあったことでしょう。菊は決してネガティブなイメージの花ではないはずだけれど、最近は仏花としての地位が定着して、おめでたい席に菊や菊を想起させるものを持ち込むのは気が引けたという方、ぜひ率先して菊をおめでたい席でも用いてください。
菊は国花であり、天皇家の象徴でもあるので、決してネガティブなものではないのです。むしろ高貴な花であり、おめでたい席には大変相応しい、縁起の良い花なのだということを忘れず、機会があった時にぜひ菊の花を実生活の中でもどんどん取り入れていってくださいね。
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