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妖しく怪しい、どこまでも不思議な存在、妖怪。妖怪ぬりかべというと、そう、ちょっと眠たげな眼、灰色で大きく四角いあの姿ですよね。漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場します。しかし、日本各地の伝承に残るぬりかべ、じつはその姿を見た者はいないのです。夜道で出会ってしまうと、見えない「壁」のようなものに行く手を阻まれ、横に避けても、押しても、いっこうに前に進めない。
会いたくないけど会ってしまったら、どうしたらいいの?どうやら、ぬりかべの撃退法があるようですよ。
いざ、ゆたかな日本の妖の世界へ!
ぬりかべは、九州北部を中心に伝承が残る日本の妖怪です。
姿は思い浮かぶけれど、じつは詳しく知らないという方も多いはず。でもその姿、本当にぬりかべ?
どんな妖怪なのかみてみましょう。
ぬりかべとは、夜道を歩いていると突如現れる「壁」のような妖怪。
見えないものに行く手を阻まれ、人間は先に進めなくなるという怪異(かいい=あやしいこと。ふしぎなこと。『広辞苑』)です。
ぬりかべに出会ってしまったら、力任せに押してもどうにもなりません。ならばと、右に左に回り込んでみようにも、まるで壁がずうっとどこまでも続いているかのようで、いっこうに先には行かれないのだといいます。
ぬりかべは、誰もその姿形を見たことがない、つまりは見えない妖怪だと伝わっています。謎に包まれたぬりかべの姿。
2007年、米国ユタ州のブリガム・ヤング大学附属図書館に、ある絵が残されていることがわかりました。妖怪絵巻『化物之繪』のなかに描かれた、「ぬりかべ」という名が添えられたその絵とは…
なんと、犬ともいえぬ象ともいえぬ、がっしりした真っ白い身体の生き物?大きな三つの眼に、垂れた耳と大きな鼻、小さな牙も描かれています。
なんともいえぬ、不可思議な姿。私たちの中にすっかり定着しているあの姿とは、かけ離れているようです。
これこそ真の妖怪ぬりかべの姿なのか、それともまた違った幻獣なのか。
『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するぬりかべは、大きな四角い姿、小さな目と短い手足。こちらは、漫画家水木しげるが想像し、姿を与えたもの。
やっぱり、私たちにとってぬりかべといえば、こちらの方がしっくりくるでしょうか。
不意に夜道で前に進めなくなってしまった!なんてことが起きたら、それはきっとぬりかべの仕業でしょう。そんなときはどうしたらよいのか、先人たちは伝えてくれています。伝承によると、上の方を押したり、横に避けて通ろうとしたりは、まったく効果がないとのこと。
どうやらぬりかべを撃退するには、この二つが効果的なようです。
ぬりかべの伝承は、おもに九州北部を中心に残されています。
福岡県北部、現在の福岡県遠賀郡に残る伝承です。
この遠賀郡にぬりかべが現れたことを聞き取りしたのは、民俗学者の柳田國男です。『妖怪談義』に収められている「妖怪名彙」に、遠賀郡のぬりかべについての記録が記されています。
遠賀郡の海岸部、この辺りで夜歩いていると、急に目の前に壁のようなものが出現して、前に進めなくなることがあり、「塗り壁」と呼ばれ恐れられている。
上の方を叩いても効果はないが、棒などで下の方を払うようにすると消えるのだと、その対処法も記されています。
福岡県の隣、大分県にもぬりかべのさまざまな言い伝えが残ります。
大分県各地、また他の県でもしばしばみられるのが狸のぬりかべ。旧香々地町では、イタチのぬりかべなのだそう。
夜道を歩いていると、前が見えなくなって進めない。それは、なんと狸がその陰嚢をいっぱいに広げて、目隠しをしているのだというのです。想像すると、なんとも愉快な話ですよね。そういうときは慌てずに、まずは一服するのがよいのだそうです。
また、狸やイタチは着物の帯の結び目に乗っていたずらするため、ぬりかべが出そうな夜道では、帯の結び目を前にして歩くのがよい、とされています。
この臼杵市が妖怪ぬりかべの発祥の地ではないか、という説も。この地域では、ぬりかべを「壁塗り」と呼びます。
雨が多いこの一帯には、普通の漆喰に油を練り込むことで水や汚れに強くなる、「油漆喰」という技術があります。
この技術で作られた油漆喰の壁は、普通の漆喰と違って水を弾いてどうも異様であることから、妖怪ぬりかべが生まれたのだともいわれているのです。
宮崎県との境、大分県の南東部にある佐伯市には、妖怪小豆とぎと一緒に現れるというぬりかべの伝承があります。
山間部やリアス海岸地域の曲がりくねった山道「七曲り」。
あかりのない夜のくねくねとした山道は、いっそう行く者の方向感覚を失わせ、さらに脇の真っ暗な谷川からはショキショキと小豆を洗うような音が聞こえたのかもしれません。
『ゲゲゲの鬼太郎』の作者水木しげるさんは、1943年太平洋戦争で徴兵され、南太平洋のニューブリテン島に送られました。
そこで所属していた分遣隊が急襲に遭い全滅。見張りだった水木さんだけは生き延び、密林を逃げ惑ったといいます。
真夜中、密林を一人彷徨っていると、突然壁にぶつかりました。壁は、触るとコールタールが少し溶けた感じで、押すと少し指がめり込むやわらかさ。
どうやってもその壁の向こうへは行かれず、途方に暮れた水木さんはその場で眠り込んでしまったのだといいます。
翌日、目が覚めると目の前の壁は消え、そこには断崖絶壁の縁が迫っていました。
暗闇の中、ぬりかべに出会わなかったら?
妖怪ぬりかべの正体には、さまざまな説があります。
ぬりかべの伝承が語られるようになったのは、夜が本当にまっ暗闇となる時代。
視界が利かない夜道を行くのは、心細く、本当に恐ろしかったでしょう。
暗闇で「見えない」ということの恐怖。「何かわからないもの」がそこに居るかもしれないという恐怖。
そんな人々の言いようのない恐れや動転が、塗り壁を生んだのかもしれません。
その正体は狸やイタチのいたずらという伝承もあるように、その正体はやはり野生動物だという説もあります。きっと狸や狐、イタチなどは人間が暮らす場所のすぐ近くに生きていたでしょう。そして夜は、夜行性である彼らの時間。
ただでさえ心細い夜道に、ガサガサッと物音がしたり、何かが横切った気配がしたり、それは肝を冷やすに違いありません。
見えないけれど何かがいる、思わず想像して身震いしてしまいます。
ぬりかべの正体が病気だなんて、と思われるかもしれません。でも、脚気や夜盲症に罹ったことで、暗い夜道で足が前に出なかったのではないか、という説もあります。
江戸時代〜昭和初期にかけて、国民病といわれるほどに流行した脚気は、足のしびれやむくみ、倦怠感から、やがては心不全にまで至る病気です。
その原因はビタミンB1の欠乏だといわれます。米の生産量が増えたことで、江戸時代以降、玄米を食べていた人々も精米された白米を口にするようになりました。玄米は、精米することでビタミンB1を豊富に含むぬかや胚芽がきれいに削り取られてしまうのです。
そして、暗いところで著しく視力が低下する夜盲症は、「鳥目」とも呼ばれます。戦中戦後の食糧難によるビタミンAの不足が原因で、当時多くの人が患った病気でした。
たしかに、暗いところで何も見えず、だるくて足が思うように前に出せなくなってしまったら、何かに邪魔されているようにも感じるのかもしれません。
日本には、他にもぬりかべに似た行く手を阻む妖怪がいます。
夜中に坂道を登っていく途中、行く先に小坊主が現れる。こちらが見上げているとしだいに背が高くなり、それにつきあってじっと見上げていると、そのままこちらが倒れてしまう。
そんなときは、落ち着いて視線を元の高さに戻していく。すると入道の背丈もしだいに縮んで元の大きさに戻るという。また、出会ったときは「見上げ入道、見越した」と言って伏せると消え去るともいわれる。
日本各地、「伸び上がり」「見越入道」「次第高」などの名で伝承が残る。
新潟県の佐渡に出る野衾は、夜歩いていると突如ふわりとどこからともなく飛んできて、顔を包んでしまい、前に進めなくなるという。大きさは風呂敷ほど。
力任せに引っ張ったりしても効かず、お歯黒を施した歯でなら噛み切れるという。そのため佐渡地方では明治時代まで、男性もお歯黒をする風習が残っていたのだそう。
この野衾は、夜に滑空するモモンガやムササビだとされ、江戸時代にはムササビは人や家畜を襲って生き血を吸うと信じられていた。
世界を見回せば時代も国境も超えて、個性的な「何か」が、やっぱり人々の行く手を阻んでいるようです。
夜道を歩く人の前を突如遮り、やがて四方を壁のようなもので囲んでどこへも行かれなくしてしまう妖怪。またぐるぐる歩き回って、いつの間にか元の場所に戻ってしまう怪異。
囲う壁におしっこをかけると、破ることができるといわれる。
転じて、同じことをずっと考えていることや、堂々巡りの議論を指す言葉にも使われているのだそう。
北欧で語り継がれている精霊のこと。
伝わる地域によって、姿や性質はさまざまだが、一般的に大きな体で、怪力。人里離れた森や山に暮らし、夜になると動き出すとされている。
太陽の光が苦手で、太陽を見ると岩になってしまうため、人々は巨岩を見ると「あれは岩になったトロールだよ」というのだそう。
ノルウェーでは、ものが不意になくなると、それはトロールの仕業だとされている。
セイレーンは上半身が女性、下半身は鳥または二股の魚の尾という、ギリシャ神話に登場する怪物。
耳にすると我を忘れてしまうほど美しいという歌声を持ち、棲家である岩場の近くを通る船の船乗りたちを惑わせ、船を沈めてしまうとされている。
あまりに危険な歌声を持つセイレーン。危険を知らせたり、警告に使われたりする「サイレン」の語源となった怪物でもある。
エジプト、ギザのピラミッドを護る大スフィンクスが有名。世界最大の彫像で、ライオンの身体とファラオの顔を持ち、聖域の門番や守護神とされる。
エジプトから、ギリシャやメソポタミアなどにも広がり、翼が生えたものや、女性の顔、鳥の頭部をもつものなどが神話にも描かれた。
ギリシャ神話では、通るものに謎をかけて、謎を解けないものを喰い殺したともいわれる。
最後に、妖怪がお好きな方におすすめの倭物やカヤの商品をご紹介します。
A4サイズも入る大きめのサイズの平たいトートバッグです。普段使いもしやすく、日常の買い物にも便利で、収納力は抜群。
長めの持ち手で肩掛けも楽にできるので、通勤・通学用のカバンとしてもおすすめです。
妖怪ぬりかべ、じつは姿が見えない妖怪だったとは知りませんでした。
暗闇の中にいるだけでも恐ろしいのに、急に進めなくなったらどんなに恐ろしいことか!撃退法が、難しくてなかなか覚えられない呪文とかでなくて、本当によかった。
でも、たとえ夜道を歩かなくても、行く手を阻む「見えない壁」って周りにきっとたくさんある。意外にそんな壁の撃退法も、ごくシンプルなのが一番効果的だったりするのかもしれません。
そう、妖怪ぬりかべが教えてくれています。
妖しく怪しい、どこまでも不思議な存在、妖怪。
妖怪ぬりかべというと、そう、ちょっと眠たげな眼、灰色で大きく四角いあの姿ですよね。
漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場します。
しかし、日本各地の伝承に残るぬりかべ、じつはその姿を見た者はいないのです。
夜道で出会ってしまうと、見えない「壁」のようなものに行く手を阻まれ、横に避けても、押しても、いっこうに前に進めない。
会いたくないけど会ってしまったら、どうしたらいいの?
どうやら、ぬりかべの撃退法があるようですよ。
いざ、ゆたかな日本の妖の世界へ!
目次
ぬりかべとは?
ぬりかべは、九州北部を中心に伝承が残る日本の妖怪です。
姿は思い浮かぶけれど、じつは詳しく知らないという方も多いはず。
でもその姿、本当にぬりかべ?
どんな妖怪なのかみてみましょう。
ぬりかべとはどんな存在?
ぬりかべとは、夜道を歩いていると突如現れる「壁」のような妖怪。
見えないものに行く手を阻まれ、人間は先に進めなくなるという怪異(かいい=あやしいこと。ふしぎなこと。『広辞苑』)です。
ぬりかべに出会ってしまったら、力任せに押してもどうにもなりません。
ならばと、右に左に回り込んでみようにも、まるで壁がずうっとどこまでも続いているかのようで、いっこうに先には行かれないのだといいます。
ぬりかべはどんな姿?
ぬりかべは、誰もその姿形を見たことがない、つまりは見えない妖怪だと伝わっています。
謎に包まれたぬりかべの姿。
2007年、米国ユタ州のブリガム・ヤング大学附属図書館に、ある絵が残されていることがわかりました。
妖怪絵巻『化物之繪』のなかに描かれた、「ぬりかべ」という名が添えられたその絵とは…
画像引用:Wikimedia Commons
所蔵:米ユタ州・ブリガムヤング大学付属図書館(ブルーニング・コレクション)蔵の妖怪絵巻
なんと、犬ともいえぬ象ともいえぬ、がっしりした真っ白い身体の生き物?
大きな三つの眼に、垂れた耳と大きな鼻、小さな牙も描かれています。
なんともいえぬ、不可思議な姿。
私たちの中にすっかり定着しているあの姿とは、かけ離れているようです。
これこそ真の妖怪ぬりかべの姿なのか、それともまた違った幻獣なのか。
『ゲゲゲの鬼太郎』に登場するぬりかべは、大きな四角い姿、小さな目と短い手足。
こちらは、漫画家水木しげるが想像し、姿を与えたもの。
やっぱり、私たちにとってぬりかべといえば、こちらの方がしっくりくるでしょうか。
ぬりかべに出会ってしまったら?
不意に夜道で前に進めなくなってしまった!なんてことが起きたら、それはきっとぬりかべの仕業でしょう。
そんなときはどうしたらよいのか、先人たちは伝えてくれています。
伝承によると、上の方を押したり、横に避けて通ろうとしたりは、まったく効果がないとのこと。
どうやらぬりかべを撃退するには、この二つが効果的なようです。
ぬりかべの伝承と歴史
ぬりかべの伝承は、おもに九州北部を中心に残されています。
福岡県遠賀郡(海岸地方の伝承)
福岡県北部、現在の福岡県遠賀郡に残る伝承です。
この遠賀郡にぬりかべが現れたことを聞き取りしたのは、民俗学者の柳田國男です。
『妖怪談義』に収められている「妖怪名彙」に、遠賀郡のぬりかべについての記録が記されています。
遠賀郡の海岸部、この辺りで夜歩いていると、急に目の前に壁のようなものが出現して、前に進めなくなることがあり、「塗り壁」と呼ばれ恐れられている。
上の方を叩いても効果はないが、棒などで下の方を払うようにすると消えるのだと、その対処法も記されています。
大分県
福岡県の隣、大分県にもぬりかべのさまざまな言い伝えが残ります。
大分県各地・旧香々地町(現在の豊後高田市)
大分県各地、また他の県でもしばしばみられるのが狸のぬりかべ。旧香々地町では、イタチのぬりかべなのだそう。
夜道を歩いていると、前が見えなくなって進めない。
それは、なんと狸がその陰嚢をいっぱいに広げて、目隠しをしているのだというのです。
想像すると、なんとも愉快な話ですよね。
そういうときは慌てずに、まずは一服するのがよいのだそうです。
また、狸やイタチは着物の帯の結び目に乗っていたずらするため、ぬりかべが出そうな夜道では、帯の結び目を前にして歩くのがよい、とされています。
大分県臼杵市
この臼杵市が妖怪ぬりかべの発祥の地ではないか、という説も。
この地域では、ぬりかべを「壁塗り」と呼びます。
雨が多いこの一帯には、普通の漆喰に油を練り込むことで水や汚れに強くなる、「油漆喰」という技術があります。
この技術で作られた油漆喰の壁は、普通の漆喰と違って水を弾いてどうも異様であることから、妖怪ぬりかべが生まれたのだともいわれているのです。
大分県旧南海部郡(現在の佐伯市)
宮崎県との境、大分県の南東部にある佐伯市には、妖怪小豆とぎと一緒に現れるというぬりかべの伝承があります。
山間部やリアス海岸地域の曲がりくねった山道「七曲り」。
あかりのない夜のくねくねとした山道は、いっそう行く者の方向感覚を失わせ、さらに脇の真っ暗な谷川からはショキショキと小豆を洗うような音が聞こえたのかもしれません。
水木しげるが出会ったぬりかべ
『ゲゲゲの鬼太郎』の作者水木しげるさんは、1943年太平洋戦争で徴兵され、南太平洋のニューブリテン島に送られました。
そこで所属していた分遣隊が急襲に遭い全滅。見張りだった水木さんだけは生き延び、密林を逃げ惑ったといいます。
真夜中、密林を一人彷徨っていると、突然壁にぶつかりました。
壁は、触るとコールタールが少し溶けた感じで、押すと少し指がめり込むやわらかさ。
どうやってもその壁の向こうへは行かれず、途方に暮れた水木さんはその場で眠り込んでしまったのだといいます。
翌日、目が覚めると目の前の壁は消え、そこには断崖絶壁の縁が迫っていました。
暗闇の中、ぬりかべに出会わなかったら?
ぬりかべの正体とは?
妖怪ぬりかべの正体には、さまざまな説があります。
暗闇に対する恐怖感
ぬりかべの伝承が語られるようになったのは、夜が本当にまっ暗闇となる時代。
視界が利かない夜道を行くのは、心細く、本当に恐ろしかったでしょう。
暗闇で「見えない」ということの恐怖。
「何かわからないもの」がそこに居るかもしれないという恐怖。
そんな人々の言いようのない恐れや動転が、塗り壁を生んだのかもしれません。
獣たちの仕業
その正体は狸やイタチのいたずらという伝承もあるように、その正体はやはり野生動物だという説もあります。きっと狸や狐、イタチなどは人間が暮らす場所のすぐ近くに生きていたでしょう。
そして夜は、夜行性である彼らの時間。
ただでさえ心細い夜道に、ガサガサッと物音がしたり、何かが横切った気配がしたり、それは肝を冷やすに違いありません。
見えないけれど何かがいる、思わず想像して身震いしてしまいます。
栄養失調からくる病気
ぬりかべの正体が病気だなんて、と思われるかもしれません。
でも、脚気や夜盲症に罹ったことで、暗い夜道で足が前に出なかったのではないか、という説もあります。
江戸時代〜昭和初期にかけて、国民病といわれるほどに流行した脚気は、足のしびれやむくみ、倦怠感から、やがては心不全にまで至る病気です。
その原因はビタミンB1の欠乏だといわれます。
米の生産量が増えたことで、江戸時代以降、玄米を食べていた人々も精米された白米を口にするようになりました。
玄米は、精米することでビタミンB1を豊富に含むぬかや胚芽がきれいに削り取られてしまうのです。
そして、暗いところで著しく視力が低下する夜盲症は、「鳥目」とも呼ばれます。
戦中戦後の食糧難によるビタミンAの不足が原因で、当時多くの人が患った病気でした。
たしかに、暗いところで何も見えず、だるくて足が思うように前に出せなくなってしまったら、何かに邪魔されているようにも感じるのかもしれません。
ぬりかべだけじゃない⁉行く手を阻む日本の妖怪たち
日本には、他にもぬりかべに似た行く手を阻む妖怪がいます。
見上げるほどに大きくなる!見上げ入道
夜中に坂道を登っていく途中、行く先に小坊主が現れる。こちらが見上げているとしだいに背が高くなり、それにつきあってじっと見上げていると、そのままこちらが倒れてしまう。
そんなときは、落ち着いて視線を元の高さに戻していく。すると入道の背丈もしだいに縮んで元の大きさに戻るという。
また、出会ったときは「見上げ入道、見越した」と言って伏せると消え去るともいわれる。
日本各地、「伸び上がり」「見越入道」「次第高」などの名で伝承が残る。
お歯黒で撃退?野衾(のぶすま)
画像引用:Wikimedia Commons
作者:歌川国芳
新潟県の佐渡に出る野衾は、夜歩いていると突如ふわりとどこからともなく飛んできて、顔を包んでしまい、前に進めなくなるという。大きさは風呂敷ほど。
力任せに引っ張ったりしても効かず、お歯黒を施した歯でなら噛み切れるという。
そのため佐渡地方では明治時代まで、男性もお歯黒をする風習が残っていたのだそう。
この野衾は、夜に滑空するモモンガやムササビだとされ、江戸時代にはムササビは人や家畜を襲って生き血を吸うと信じられていた。
世界にも!行く手を阻む伝説上の生き物たち
世界を見回せば時代も国境も超えて、個性的な「何か」が、やっぱり人々の行く手を阻んでいるようです。
中国:鬼打牆(きだしょう)
夜道を歩く人の前を突如遮り、やがて四方を壁のようなもので囲んでどこへも行かれなくしてしまう妖怪。またぐるぐる歩き回って、いつの間にか元の場所に戻ってしまう怪異。
囲う壁におしっこをかけると、破ることができるといわれる。
転じて、同じことをずっと考えていることや、堂々巡りの議論を指す言葉にも使われているのだそう。
北欧:トロール
画像引用:Wikimedia Commons
作者:テオドール・キッテルセン
北欧で語り継がれている精霊のこと。
伝わる地域によって、姿や性質はさまざまだが、一般的に大きな体で、怪力。
人里離れた森や山に暮らし、夜になると動き出すとされている。
太陽の光が苦手で、太陽を見ると岩になってしまうため、人々は巨岩を見ると「あれは岩になったトロールだよ」というのだそう。
ノルウェーでは、ものが不意になくなると、それはトロールの仕業だとされている。
ギリシャ神話:セイレーン
画像引用:Wikimedia Commons
所蔵:ヴィクトリア国立美術館
セイレーンは上半身が女性、下半身は鳥または二股の魚の尾という、ギリシャ神話に登場する怪物。
耳にすると我を忘れてしまうほど美しいという歌声を持ち、棲家である岩場の近くを通る船の船乗りたちを惑わせ、船を沈めてしまうとされている。
あまりに危険な歌声を持つセイレーン。
危険を知らせたり、警告に使われたりする「サイレン」の語源となった怪物でもある。
エジプト:スフィンクス
エジプト、ギザのピラミッドを護る大スフィンクスが有名。
世界最大の彫像で、ライオンの身体とファラオの顔を持ち、聖域の門番や守護神とされる。
エジプトから、ギリシャやメソポタミアなどにも広がり、翼が生えたものや、女性の顔、鳥の頭部をもつものなどが神話にも描かれた。
ギリシャ神話では、通るものに謎をかけて、謎を解けないものを喰い殺したともいわれる。
妖怪が好きなあなたに!倭物やカヤおすすめ商品
最後に、妖怪がお好きな方におすすめの倭物やカヤの商品をご紹介します。
浮世色トートBAG:YOKAI
A4サイズも入る大きめのサイズの平たいトートバッグです。普段使いもしやすく、日常の買い物にも便利で、収納力は抜群。
長めの持ち手で肩掛けも楽にできるので、通勤・通学用のカバンとしてもおすすめです。
見えない壁「ぬりかべ」を乗り越える
妖怪ぬりかべ、じつは姿が見えない妖怪だったとは知りませんでした。
暗闇の中にいるだけでも恐ろしいのに、急に進めなくなったらどんなに恐ろしいことか!
撃退法が、難しくてなかなか覚えられない呪文とかでなくて、本当によかった。
でも、たとえ夜道を歩かなくても、行く手を阻む「見えない壁」って周りにきっとたくさんある。
意外にそんな壁の撃退法も、ごくシンプルなのが一番効果的だったりするのかもしれません。
そう、妖怪ぬりかべが教えてくれています。
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