掲載日:2026.01.25

ベトナムの民族衣装「アオザイ」とは?世界一美しい伝統服の魅力と歴史

「アオザイ」とはいくつかあるベトナムの民族衣装の中でも、体にフィットした優雅なシルエットと色彩豊かで豪華なデザインが特徴的なベトナムの伝統的で最も有名な民族衣装です。
そのエレガントなシルエットから、女性が着る民族衣装の中で最も美しいといわれていますが、アオザイはなぜこのような形になったのでしょうか。

そこで今回は、アオザイの特徴や歴史などについて詳しく解説していきます。

アオザイとは

アオザイとは

「アオザイ」とは、立襟と体のラインに沿って深いスリットの入った丈の長いトップスに長ズボンを合わせたスタイルの衣装です。
どうして「アオザイ」と呼ばれるのでしょうか?
そこで今回は、アオザイの意味や世界中から美しいと称される理由などについて解説していきましょう。

「アオザイ(Ao dai)」の意味

「アオザイ」は、ベトナム語で「Ao dai」と書きます。
「アオ(Ao)」は「上衣」、「ザイ(dai)」は「長い」という意味の言葉で、「アオザイ(Ao dai)」はこの2つを合わせて「長い上衣」という意味の言葉です。アオザイはその名の通り、膝下やくるぶし、種類によっては地面に届くほどの長いトップスにゆったりとした長ズボンを合わせるのが特徴の民族衣装です。

「世界一美しい民族衣装」と称される理由

アオザイが世界一美しい民族衣装と称されているのは、体のラインに合わせた長い丈の上衣のシルエットが美しいからだとされています。
体のラインにフィットしていて深いスリットが入っていながら袖は長くてゆったりとした長ズボンを履くので露出は少なく、そのスリットのおかげで上衣の裾が優雅に揺れる姿に品格があるとして、幅広い年齢層の女性から美しいと支持されています。
また、色のバリエーションも多く、デザインも刺繍やスパンコールで豪華に仕上げたものから無地のシンプルなものまで様々なのもがあるのも、世界一美しい民族衣装と言われる理由の1つです。

アオザイの歴史

アオザイは、ベトナムの歴史と共に様々な文化を取り入れながら形を変えてきた民族衣装です。
ベトナムは紀元前から他国に支配されたり独立したり南北に分かれたりを繰り返しており、王が変わったり他国の支配を受けたりするたびに、民族衣装もそれぞれの国の文化が反映されてきました。
ここでは、ベトナム文化の象徴でもあるアオザイの歴史について詳しく紹介していきます。

アオザイの起源

アオザイは、ベトナム独自の民族衣装から歴史的背景にて誕生したとされています。

ベトナムでは、古代から独自の民族衣装が着られてきました。
古代ベトナムでは、前開きで裾が長く、サイドにスリットが入って裾が4つに分かれている上衣にズボンやロングスカートを履くスタイルの「アオ・トゥ・タン」と呼ばれる民族衣装が少しずつ形を変えながら着られていたとされています。

「アオ・トゥ・タン」は18世紀初頭までベトナム全土で日常的に着られていましたが、ベトナムが南北に分かれていた1744年に、当時南部を支配していたグエン・フック・コアット王が、自国の国民と北部の人間を区別するため自国の国民に着るよう命じた衣装「アオヤンリン」が「アオザイ」が原型の一つといわれています。

アオヤンリンは、大きめのガウンのような形で裾が足首まである長い上衣の腰の部分を帯のような細長い布で前に縛って留めるスタイルで、現在のアオザイとは違ってスリットは入っておらず、ゆったりとしたシルエットの衣装です。

アオザイ誕生当初は官服として着られていたので、現在でもアオザイは正装として扱われています。

近代アオザイの誕生

アオザイが現在のように体のラインに沿ったデザインへと変化したのは、20世紀初頭、とくに1930年代以降とされています。
18世紀に成立したアオザイの原型(アオ・グー・タンなど)は、直線的でゆったりとしたシルエットの衣装で、現在のように体の曲線を強調するものではありませんでした。

19世紀後半からベトナムがフランスの統治下に置かれると、西洋の美意識や仕立て技術が衣服文化にも影響を与えるようになります。
その流れの中で、1930年代にハノイのベトナム人デザイナー、カット・トゥオン(通称ル・ミュール)が、西洋的な裁断技法を取り入れた新しいアオザイを発表しました。
これにより、ウエストを絞った体にフィットするシルエット、立襟、両脇に入ったスリットといった、現代のアオザイの基本的なスタイルが確立されました。

その後、1960〜70年代には、都市部を中心に鮮やかな色彩や花柄などを取り入れたアオザイが流行し、時代ごとの流行や国際的なファッショントレンドを反映しながら変化していきます。

現在は、古典的なスタイルのものからカジュアルなものまで様々なデザインのアオザイがあり、国内外の多くの人たちに愛されています。

アオザイの種類と特徴

アオザイの種類と特徴

アオザイには、色や素材、模様など様々な種類のものがあります。
ここでは、種類による意味や特徴などについて紹介していきます。

色が持つ意味

アオザイに用いられる色には、ベトナム文化の中で象徴的な意味を持つものがあります。

色 意味 用途
白 純粋
若さ
女子高生の制服
かつては未婚の女性のみ
赤 幸運
繁栄
結婚式(新郎新婦)
旧正月(テト)
黄 鮮やかさ
繁栄・幸福
旧正月(テト)
パーティなどのイベント
青 安らぎ
穏やかさ
旧正月やパーティなどで大人っぽさを演出したい時
結婚式(ゲスト)
緑 若々しさ
爽やかさ
旧正月(テト)
結婚式(ゲスト)
ピンク 幸運
豊かさ
エネルギー
結婚式(花嫁)
紫 高貴さ
忠実さ
旧正月(テト)
パーティなどのイベント
黒 厳粛
悲しみ
葬式

この他にも、金色は王朝時代には皇族しか身に着けることを許されない高貴な色とされていましたが、現在は繁栄や権力の象徴として、結婚式の新郎新婦の衣装や旧正月(テト)などのお祝い事などで使用されています。

模様が持つ意味

アオザイには、無地のものや色々な模様が色鮮やかな糸や金糸銀糸などで刺繍されたもの、ビーズやスパンコールなどで装飾されているのもなどがあります。
とくに次のような模様は、人気が高くよく用いられています。

・花柄

花柄は、女性らしさや優雅さを強調するとして人気の模様です。
とくに国花である蓮の花や蓮や、旧正月に縁起の良い花(桃の花・黄色い梅)が好まれています。

・鳥の模様

鳥も人気のモチーフの1つです。
とくに、「鳳凰」や「鶴」は繁栄や長寿、高貴さなどを象徴するとして昔からよく描かれています。

・龍

龍は、王を象徴する模様で、かつてはデザインに制限がありました。
現在は繁栄や力強さを象徴するとして、主に男性のアオザイに描かれています。

・雲

雲は、天と地を結び付けるという意味がある縁起の良い模様としてよく用いられています。

模様が持つ意味

チャイハネのアオザイ風ワンピースは、牡丹の刺しゅうと大胆なスリットが印象的。
サテンジャカードの艶やかさが女性らしさを引き立てる一枚です。

男性用アオザイの特徴

男性用アオザイの特徴

アオザイは女性の衣装というイメージが強いですが、男性用のアオザイもあります。
男性用アオザイは「アオ・ザイ・ナム(Ao Dai Nam)」と呼ばれており、女性用に比べて肩幅や袖が大きくてゆったりとしたシルエットの上衣が特徴的です。

ボトムスは、上衣に合わせたものだけでなく、現代ではデニムを合わせることもあります。
模様は、龍や雲、鳳凰などが多く、色は紺や青、赤などが多く使われています。
男性は、結婚式や旧正月などの式典のみで着る衣装や、伝統芸能を演じる人が着る衣装として扱われているので、街中でアオザイを着た男性を目にすることはほとんどありません。

どんなシーンで着る?

かつてアオザイは日常的に着用されていましたが、北ベトナムでベトナム民主共和国が成立した後は、農作業や工場労働に適していないことから、普段着としての着用は推奨されなくなりました。
そのため、アオザイは次第に結婚式や旧正月、葬式などの冠婚葬祭で着られる衣装として定着しました。
ベトナム戦争後、一時期は着用が減少しましたが、1980年代以降は都市部を中心に再び着られるようになり、現在も式典や学校制服、伝統行事などで用いられています。
このような歴史を経て、アオザイは現代でも特別な場で着られる伝統衣装として存在しています。

学校

学校

白いアオザイは、若さを象徴しかつては未婚の女性を表す色であったため、現在は主に南ベトナムの中学校や高校で女子の制服として定められています。
高校によって、毎日着用の学校や、週に2回(月曜日と金曜日)に着用する学校などがあります。
北ベトナムは白いアオザイを制服として義務付けていませんが、入学式や卒業式などの特別な行事の日には白いアオザイを選ぶ学生が多くいるそうです。

また、ベトナムでは11月20日を「教師(先生)の日」という記念日に定めていて、式典やパーティが行われるので、この日は女性の先生がアオザイを着て参加します。

結婚式

アオザイは正装として扱われているので、結婚式で着られることが一般的です。
新郎新婦は、赤い生地に金糸や銀糸、その他のカラフルな糸で豪華な刺繍が施された伝統的なアオザイを着ます。
新郎新婦の家族や親族、招待された人たちは、新郎新婦より豪華にならないカラフルなアオザイを着るのがマナーです。

旧正月「テト」

旧正月「テト」

ベトナムでは、中国の旧暦(太陰暦)に基づいて「テト(Tet)」と呼ばれる旧正月のお祝いをします。
「テト」はベトナムで最も重要な祝祭日で、旧暦に基づいているため毎年日付が変わりますが、毎年1月下旬から2月上旬ごろにあたります。
テト休暇は旧暦の大晦日から1月4日までの5日間とされており、この期間に帰省をして家族全員が集まり、新年を迎えます。
元日にあたる日には、家の中にある先祖の祭壇に挨拶をした後、新しい服を着て親戚や友人の家を訪ねたり、寺院に初詣に行ったりするのがベトナムの旧正月(テト)の過ごし方です。

日本で正月に着物を着るように、ベトナムでも旧正月(テト)には民族衣装のアオザイを着る人が多くいます。
旧正月(テト)では、幸運や繁栄を象徴した赤色の生地や、白や緑、青などの様々な色の生地に、春を表す梅や桃、木の新芽、鳥などの模様や「福」「禄」などの縁起の良い漢字など伝統的なデザインが施されたアオザイが着られます。

これらの他にも、航空会社のCAの制服やホテルや銀行などの制服などにもアオザイが採用されています。

アオザイはベトナムの歴史と文化を語る美しい民族衣装

ベトナムの民族衣装「アオザイ」は、ベトナムの歴史の中で誕生し、歴史上ベトナムと深く関わった様々な国の影響を受けながら進化してきました。
かつて普段着だったアオザイは、現在ではベトナムの正装として扱われており、結婚式や旧正月(テト)、式典などのフォーマルなシーンや、女子高生やCAさんなどの制服として着られています。
女性のシルエットをエレガントに表しているアオザイは現在でも進化し続け、世界各国の女性たちを惹きつけています。
アオザイは日本でも購入できるので、興味のある方はぜひアオザイを身に着けてみてください。


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