「クリスマスの起源・由来をわかりやすく。世界各国のクリスマス文化を知ろう」

「メリークリスマス!」、12月に入ると街のいたるところでこの声を聴くようになります。華やかなイルミネーションで街中が彩られ、飾りつけやプレゼントなど多くの人たちがクリスマスを心待ちにしています。

ここでは世界中の人が心待ちにしているクリスマスの起源や由来、各国のクリスマス事情について詳しく見ていきましょう。

クリスマスとは?

毎年12月になると街中が盛り上がる「クリスマス」。
日本だけでなく、世界中で盛り上がる一大イベントと言っても過言ではないでしょう。
しかし「クリスマス」の本当の意味や由来を知っている人は少ないかもしれません。

クリスマスって何?

クリスマスを英語で綴ると「Christmas」になります。
これは2つの単語「Christ(キリスト)」と「mas(礼拝=ミサ)」 が合わさった言葉であり、「キリストを祝うミサ」という意味です。
キリストミサと呼ばれていた2つの単語が、だんだん縮まって「クリスマス」と呼ばれるようになったのです。

クリスマスの本当の意味

「クリスマスを知っていますか?」と聞くと、多くの人は「キリストの誕生日」と答えるでしょう。
しかしキリスト教の正典である新約聖書には、イエス・キリストの誕生日は書かれておらず、正確な誕生日はわかっていないのです。

では12月25日は何をお祝いする日なのでしょうか。
クリスマスとはイエス・キリストの降誕祭、つまり生まれてきたことをお祝いする行事です。イエス・キリストの誕生日ではなかったとは、ちょっと驚きですね。

クリスマスの由来と歴史を知ろう

では、キリストの誕生日でない12月25日が、世界中でこれほどまでに一大イベントとして広まったのはなぜでしょうか。

クリスマスはなんで12月25日なの?

世界人口の3人に1人はキリスト教だと言われており、その宗派は実に4万5千以上にのぼります。
なかでもカトリック・プロテスタント・正教会はキリスト教の三大宗派といわれており、すべて12月25日にクリスマスの誕生を祝ってミサが行われます。
12月25日をクリスマスとしてお祝いする行事は、2~4世紀のローマ帝国時代に始まったという説が有力です。
この時代、すでにキリスト教は国教として定められていたものの、広く民衆が信仰していたのはミトラス教と呼ばれる太陽神信仰でした。
ミトラス教では1年でもっとも昼間が短い冬至を境に、だんだん太陽の力が強まっていくことを祝う行事(光の祭り)が12月25日に行われていました。
ローマ皇帝はイエス・キリストをミトラス教の光に例え、「光の復活」と「キリストの復活」をうまく融合させて、ほかの宗教と対立することなく民衆にキリスト教を広めていったのではないかと言われています。

クリスマスの起源、ルーツとは?

クリスマスの起源は、先ほど述べたミトラス教だけでなく、地域の風習や文化に根付いたほかの土着信仰が深くかかわっています。
たとえばクリスマスツリーは古代ゲルマン民族のお祭りから、クリスマスプレゼントは古代ローマのサートゥルナーリア祭など、いくつもの地域信仰や習慣を吸収しながら、キリスト教は世界中に広まっていったのです。

日本ではいつからクリスマスをお祝いしていたの?

日本ではいつからクリスマスをお祝いしていたの?

ご存じの通り、日本でのキリスト教を信仰する人の数は多くありません。
しかしながらクリスマス行事は生活の一部となり、毎年多くの人がクリスマスイベントを楽しみにしています。
日本で初めてクリスマスミサが行われたのは1552年12月9日、なんと室町時代だったと伝えられています。
降誕祭を行ったのはフランシスコ・ザビエルで、1549年に来日してキリスト教を日本に広めた宣教師です。
ただしその後、江戸時代に徳川幕府がキリスト教を禁止したこともあり、一度はクリスマスなどキリスト教にかかわるイベントは途絶えてしまいます。
日本でクリスマス行事が定着するようになったのは昭和に入ってから。
大正15年に大正天皇が崩御された12月25日、昭和になって改正された休日法により先帝の崩御日が「大正天皇祭」として祝日となってから、クリスマスを祝うイベント文化として急速に広まっていきました。

クリスマス『イブ』の意味を知っていますか?

日本では12月25日のクリスマスより、24日クリスマスイブのほうが盛り上がりを見せますよね。
クリスマスイブは、「クリスマス前夜」を指していると思われがちですが、本当の意味は違うということを知っていましたか?

クリスマス「イブ」の時間帯

クリスマス「イブ」の時間帯

クリスマスイブの「イブ」は「Evening(夜)」が語源です。
その昔、キリスト教会暦での1日は日没からはじまると考えられてきました。
つまりキリスト教では12月24日の日没からはじまり、25日の日没までが『クリスマス』なのです。
前夜ではなく、イブもクリスマス当日の一部というわけです。

クリスマスイブはどう祝うの?

日本のクリスマスイブは、恋人と一緒に過ごしたり、家族で美味しい食事を囲んでプレゼントを贈ったり、宗教的な意味合いは持ちません。
しかしキリスト教会暦におけるクリスマスイブは、これからはじまるクリスマスのお祝いスタートそのもの。
大切な家族や愛する人とイブの夜を過ごし、教会のクリスマスミサでイエス・キリスト生誕のお祝いをする、これが本来のクリスマスイブの祝い方です。

ただし「Merry Christmas!(楽しいクリスマスを!)」「Happy Christmas!(よいクリスマスを!)」といったクリスマスのあいさつがあるように、近年はクリスマスを宗教的な日ではなく、家族や大切な人と一緒に過ごす日と捉える人が増えています。
アメリカではZ世代を中心にキリスト教信者が減っていると言われていますが、彼らも日本人同様、クリスマス行事を楽しく過ごしていますよ。

クリスマスの象徴と込められた意味

一大イベントであるクリスマス、日本では12月に入ると街中がクリスマス一色に染まります。
クリスマスの象徴と呼ばれるものはいくつかあり、ツリーやサンタクロースはその代表格でしょう。

ではクリスマスの象徴たちの意味について、もう少し掘り下げてみましょう。

クリスマスツリーの由来

クリスマスツリーの由来

常緑樹であるモミの木に飾りつけをするクリスマスツリー。
そもそもこのツリーを飾る習慣は、古代ゲルマン民族の土着信仰がもとになっています。
古来、常緑樹は「永遠の象徴」とされており、古代ゲルマン民族は樫の木を大切にしていました。
キリスト教を布教させたい宣教師が、樫の木を切り倒し、代わりに生えてきたモミの木をクリスマスツリーとして定着させたと言われています。
ちなみにクリスマスツリーへ飾るオーナメントにもそれぞれ意味があります。
ツリーの頂点に飾る星形のオーナメントは「ベツレヘムの星」、丸いボールはアダムとイブが食べた「禁断の果実」、ベルはキリスト誕生を知らせる鐘を表しているそうです。

サンタクロースは実在したってホント?

クリスマスツリーの由来

クリスマスの象徴と言えば、「サンタクロース」を外すわけにはいかないですよね。
サンタクロースのモデルとなったのは、ギリシャ人司教である聖ニコラウスだと言われています。
聖ニコラウスは貧しい人々を助けたり罪人を改心させたりと、多くの逸話をもった実在した人物です。

あるとき、聖ニコラウスが貧しい家庭に金貨を投げ入れたところ、たまたま暖炉にかかっていた靴下に金貨が入ってしまったそうです。
このエピソードがきっかけで、「サンタクロースが靴下にプレゼントを入れてくれる」というクリスマスの風習が生まれたとされています。

クリスマスカラーやモチーフに込められた意味とは?

世界中で楽しまれているクリスマスイベント、ここまで人々に愛されるイベントとなっているのは、クリスマスを彩る多くのアイテムがあるからかもしれません。
そしてそのひとつひとつに意味があり、クリスマスの精神や歴史を物語っているのです。

クリスマスリース

クリスマスリース

日本でもおなじみとなったクリスマスリース。
12月になると玄関ドアにリースを飾る家が増えましたね。
クリスマスリースと言えば丸い形が特徴ですが、これは途切れることのない輪にちなんで「永遠の愛」を願っているからです。
また常緑樹で作られるリースは農作物の繁栄を、ヒイラギのリースには魔除けの意味も込められています。

プレゼント

プレゼント

さきほど、聖ニコラウスの投げ入れた金貨がクリスマスプレゼントの由来だとお話ししましたが、ほかにもプレゼントを贈る風習の起源といわれているエピソードがあります。
イエス・キリストが生まれた日に、東方の三賢者が贈り物をもってイエスのもとへやってきたと聖書に記されています。
クリスマスプレゼントの起源は諸説あるようですが、プレゼントを贈るとき少し思い出してみるのもいいですね。

クリスマスカラー

クリスマスの装飾というと、赤や緑のクリスマスカラーが象徴的です。
このふたつの色にもきちんとした宗教的な意味が込められています。
赤は「イエス・キリストが流した血」、緑は「永遠の愛」「永遠の命」の象徴である常緑樹、そしてこの2色を象徴する植物が「セイヨウヒイラギ」や「ポインセチア」です。
とくにヨーロッパでは三角形の樹形が「信仰・希望・慈悲」をあらわすと言われており、強い生命力への願いを込めて常緑樹のヒイラギが選ばれています。
また聖ニコラウスは司教の儀式をする際、赤い服を身にまとっていたそうです。
司教の赤い服には、血を流してでも人々のために尽くすという意味が込められており、サンタクロースが赤い服を着ている由来とされています。

トナカイ

サンタクロースはトナカイが引くソリに乗ってプレゼントを配るというのは有名な話。
ただしこの描写はわりと最近になって定着したものです。
19世紀に神学者クレメント・クラーク・ムーアが「聖ニコラウスの訪問」という書物を書きました。
ここで描かれていたのが「サンタクロースの乗ったソリを引くトナカイ」であり、ここからサンタクロースとトナカイのイメージが定着しました。

世界各国のクリスマスの祝い方

クリスマスは日本だけでなく、世界中で多くの人がお祝いを捧げています。
そのお祝いの仕方は国によってさまざまだということを知っていますか?
ここからは世界各国のクリスマスについてみていきましょう。

ドイツ

ドイツ

ドイツのクリスマスで有名なのは、「クリスマスマーケット」と「アドベントカレンダー」です。
ドイツではクリスマスイブまでの4週間をクリスマスの準備期間とし、アドベント(待降節)と呼んでいます。

日本でも見かけることが多くなったアドベントカレンダー発祥の国でもあり、毎日をカウントダウンしながら準備を楽しむのです。
またさまざまな都市でクリスマスマーケットが開催されるのも、ドイツならではの楽しみ方。
広場に並ぶ屋台では、クリスマスツリーに飾る手作りのオーナメントや、ホットワイン、ドイツの伝統的な菓子パン「シュトレン」などが販売されています。

イギリス

イギリス

イギリスではクリスマスを家族で過ごすのが一般的。
家族と離れて暮らす人も実家に帰省するため、街全体が静かなクリスマスを迎えます。
24日のイブの日は交通機関やレストランも早めにお休みとなり、25日は完全休業というレストランやお店も珍しくありません。
ちょうど日本の大晦日から元日にかけての過ごし方と似ていると言われています。

ギリシャ

ギリシャのクリスマスは華やかな各国のクリスマスと異なり、身を清める期間からはじまります。
クリスマス前の約40日間は肉・魚・卵・牛乳のほか、お酒も禁じて食事制限して心身を清めるのです。
そして身を清めて迎えた25日クリスマス、ようやく祝いと祈りを込めた1日がはじまります。

クリスマスの食文化と伝統

クリスマスの楽しみと言えば、美味しい食事もそのひとつですよね。
日本ではチキンを食べたり、チョコレートや生クリームでデコレーションされたクリスマスケーキを食べたりするのが一般的です。
では世界各国におけるクリスマスの食文化はどうなっているのでしょう。

イギリス

イギリスではサンタクロースのことを「ファザークリスマス」と呼んでおり、クリスマスツリーのそばにクッキートナカイ用のニンジンなどを置いてもてなします。
またイギリスの家庭では、ドライフルーツなどが入った「クリスマスプディング」を準備し、家族で美味しくいただくのが一般的です。

フランス

フランスのクリスマスでは、七面鳥フォアグラチョコレートブッシュ・ド・ノエルを家庭で食べる文化があります。
木の切り株をイメージしたブッシュ・ド・ノエルは日本でも人気ですが、フランスでは各家庭で手作りすることも多いそうです。

オーストラリア

オーストラリア

南半球に位置するオーストラリアでは、クリスマスは夏本番の季節。
そのため、ビーチやプールでクリスマスパーティーを開催することも多く、水着を着てバーベキューをしたりビールで乾杯したり楽しく過ごします。
またクリスマスの食事も、オーストラリアは少し特徴的です。
もともとシーフードを食べる習慣があることから、クリスマスイブにはフィッシュマーケットが開催され、多くの買い物客が車エビやロブスターを買って食卓に並べるそうです。

フィンランド

北欧の国フィンランドでは、クリスマス当日の朝食にミルク粥「リーシプーロ」を家族でいただきます。
米をミルクで炊き、なかにアーモンドを一粒だけ入れるのですが、取り分けたお皿にそのアーモンドが入っていたら、その人に幸運が訪れると言われています。

世界の文化を知ればクリスマスがもっと特別に!

1年で最も盛り上がるイベントでもあるクリスマス。
日本では宗教色があまりなく、恋人や家族と楽しむ行事として浸透しています。
またクリスマスは、世界各国でも年に一度の特別な日として迎えられていますが、そこに込められた意味は国によってさまざまです。

今年のクリスマスは、クリスマスの由来や世界各国の文化に思いをはせながらひとあし違ったクリスマスを楽しんでみてはどうでしょうか。


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