掲載日:2025.10.24

世界と日本の国旗が秘める意味 似すぎている国旗の真実と禁断のシンボル

世界の国旗の一覧を眺めると、色とりどりの多彩なデザインが並んでいて楽しいですよね。
一方で、「なぜこの色?」「この模様の意味は?」「なんだか似たようなデザインがある?」といった疑問を感じたことはないでしょうか?

この記事では、日本を含む世界の国旗の色やモチーフの意味を解説します。
ぜひ最後まで読んで、国旗に込められた各国の歴史や国民性に触れてみてください。世界がもっと魅力的に見えてくるはずです。

国旗の基本的な意味とは?

国旗は、その国を表すだけではなく、歴史や由来に根ざした深い意味があります。
どんな意味があるのか、みていきましょう!

国旗の役割と重要性

国旗は、国のシンボルとして様々な役割を持っています。

複数の国が集う場では、国旗は国のアイデンティティそのものを象徴する存在です。
オリンピックや万博などの国際イベントで自国の国旗をみつけた時に感じる、国としての一体感や高揚感は、簡単に想像できるのではないでしょうか。

また、外交の場や国連などの国際会合では、国旗はその国の尊厳をも象徴し、礼節をもって丁重に扱われます。
さらに、世界各国の国旗が一覧のように並ぶ光景は、国際社会の協調と平和を象徴する場面といえるでしょう。

国旗に込められた歴史的背景

多くの国の国旗には、その国の歴史や価値観が込められています。
国旗について知ることは、その国の成り立ちについての理解を深めることになるのです。

イギリス

イギリス

イギリス国旗「ユニオンジャック」は、実は3つの旗の組み合わせです。

1707年、イングランドとスコットランドが統合され、さらに1801年、アイルランド王国が統合されて現在のイギリスが成立。その度にそれぞれの国の旗が組み合わされて新しい国旗が生まれ、現在のユニオンジャックになったのです。

「ジャック」という名は船首に掲げる小旗が語源とされます。

ちなみに、ウェールズには赤い竜を描いた個性的な旗がありますが、早くからイングランドに統合されていたため、ユニオンジャックには反映されていません。

アメリカ

アメリカ

アメリカ国旗「星条旗」にも歴史が反映されています。

左上の星は州を示し、現在は50個で合衆国を表しています。18世紀に独立して以来、州が増えるたびに星の数も増え、これまでに改定された回数はなんと26回!

一方、13本の縞は独立当初の13州を示し、今も変わっていません。初期には星と同様に縞の数も増えたのですが、見づらくなったため13本に固定されたのです。

国旗の色とその象徴的意味

世界の国旗を見比べると、よく使われている色があることに気づくでしょう。実は、いくつかの色は国際的に特定のものを象徴する色として認識が定着しており、複数の国旗で同じもののシンボルとして使用されているのです。

赤は勇気・共産主義という意味

赤

多くの国旗において、赤は勇気や独立の象徴であり、流された血を示す場合もあります。アメリカの「星条旗」では、赤はたくましさや勇気の象徴。モザンビークの国旗は、独立のための闘争を表す赤色の中に、なんとライフルが描かれています。

また、革命のシンボルであることから、旧ソ連の国旗に採用されて以来、多くの共産主義の国で赤が使われています。中国やベトナムの国旗は、特に赤色が目立つデザインです。

白は正しさという意味

白

白は、多くの国旗で純潔や正しさを表し、平和で理想的な状態の象徴です。

フランス国旗では平等、スイス国旗では中立を表すなど、微妙なニュアンスは異なるものの、その国にとってあるべき正しい姿を象徴することが多いようです。

青は海という意味

青

青は、海がある国の国旗によく使われます。多くの国旗で青は海を表し、国としてのスケール感を象徴しているのです。例えば、イギリスやギリシャの国旗の青は、海のシンボル。国土を海に囲まれた太平洋やアジアの国々では、青が使われている国旗がよくみられます。

緑は豊かさ・イスラム教という意味

緑

緑は、自然や農地が豊かな国土を象徴しています。イタリアやブラジルなどの国旗で、豊かな国土を表す緑が採用されているのです。

また、緑はイスラム教の国でよく使用されます。緑がイスラム教を象徴する色になった経緯ははっきりしていませんが、一説には楽園を象徴する色といいます。

地域ごとによく似た配色パターンがある?

地域ごとの国旗の一覧を眺めていて、「なんだかよく似た配色の国旗が並んでいる」と感じたことはありませんか?
それは気のせいではありません。
地域ごとに似ている配色の国旗をみてみましょう!

汎スラブ色

汎スラブ色

東欧からロシアにかけて、配色が白・青・赤である国旗がよくみられます。
これは「汎スラブ色」とよばれ、スラブ民族のシンボル。

かつてスラブ民族の中心的存在だったロシア帝国の国旗が由来となっており、白は高貴・率直、青は名誉・純潔、赤は勇気・寛大の象徴です。

現在のロシアやチェコ、セルビアなどヨーロッパのスラブ系国家でよく使われます。

汎アラブ色

汎アラブ色

西アジアから北アフリカにかけてのイスラム圏でよくみられるのが、「汎アラブ色」とよばれる赤・黒・緑・白の配色です。

アラブ人がオスマン帝国から独立する際に用いたアラブ反乱旗が起源となって、アラブを象徴する色になりました。赤は聖戦で流された血、黒は戦いや圧制の歴史、緑は豊かな大地、白は清らかさのシンボル。また、これらの色はイスラムの歴代王朝を象徴するという説もあります。

汎アフリカ色

汎アフリカ色

アフリカ諸国に多い赤・黄・緑は「汎アフリカ色」です。

アフリカで唯一植民地支配を受けなかったエチオピアの国旗にならい、アフリカ諸国の国旗で使われるようになりました。
エチオピア国旗において、赤は信仰のために流れた血、黄は富・繁栄、緑は豊かな自然のシンボルです。

一方、アフリカ諸国には赤・黒・緑の配色パターンの国旗も多く、こちらを汎アフリカ色とする説もあります。
この場合、赤はアフリカ系の人々の解放のために流された血、黒はアフリカ系の人々そのもの、緑はアフリカの自然のシンボルです。

中南米に多い色

中南米に多い色

中南米では多くの国旗で赤・黄・緑が使われています。
これは、旧宗主国であるスペインやポルトガルの国旗の影響とされます。

なお、スペインやポルトガル国旗において、赤は国のために流れた血大航海時代を切り開いた勇気のシンボル。
スペイン国旗の黄色は国土帝国を象徴し、ポルトガル国旗の緑は建国にまつわるアヴィス騎士団やその勇気を象徴します。

国旗の図形とシンボルの意味

図形などのモチーフも多くの国旗に登場します。

星

最も多くの国旗で共通してみられるモチーフは、星でしょう。
星は多くの場合、団結や未来のシンボルです。
例えば、アメリカ国旗の星は州を表し、合衆国としての連帯を象徴しています。

中国や北朝鮮、ベトナムなどの国旗では、共産主義の象徴。
実はこれらも、もともとは思想的な団結を意味していると考えられます。

このほか、南半球の国ではシンボルとして南十字星がよく国旗に描かれます。

太陽

太陽

太陽も、多くの国旗で描かれるモチーフ。
日本の「日の丸」はその代表といえます。

マラウィ国旗に描かれた夜明けの太陽は、自由・希望の象徴です。
アルゼンチンやウルグアイの国旗に描かれるのは「5月の太陽」という独立のシンボル。
マケドニアやニジェールの国旗では、恵みをもたらす太陽そのものを表します。

月

月は多くの場合、理想や未来のシンボルです。
パラオやシンガポールの国旗に登場する月は、国の誇り進歩を象徴しているとされます。

また、月はイスラム教のシンボルとしてもよく描かれます。
オスマン帝国の初代皇帝の夢に三日月が現れ、国旗に描かれたことが由来のようです。
現在のトルコ国旗にも三日月が描かれています。

十字

十字

十字は、もちろんキリスト教のシンボル。
スイス国旗の中央にある十字が表すものはキリスト教の精神です。
ジョージア国旗には十字が5つ描かれます。
スロバキア国旗にあるのは、十字が2つ重なったダブルクロス。

ジャマイカ国旗の斜め十字も、キリスト教を表しています。
イギリス国旗「ユニオンジャック」を構成するイングランド・スコットランド・アイルランドの旗も、キリスト教の聖人を表す十字です。

北欧諸国の国旗にも、キリスト教を象徴する十字が使われますが、これについては後述します。

ユニオンジャック

ユニオンジャック

国旗の一部にイギリス国旗「ユニオンジャック」が描かれるのは、イギリスの旧植民地だった国々です。オーストラリアやニュージーランド、ツバル、フィジーなどが該当します。

動物

多くの国旗に動物が描かれています。いくつかみてみましょう!

メキシコ

メキシコ

メキシコ国旗には、「ヘビをくわえてサボテンにとまるワシ」が描かれています。
これは、アステカの首都テノチティトランの創建神話に基づいたメキシコの国章です。
ワシはメキシコの国鳥で、太陽の力のシンボル。
ヘビは大地の力のシンボルを象徴しています。

なお、ワシはエジプトやカザフスタンなど数多くの国旗に登場する人気のモチーフです。

スリランカ

スリランカ

スリランカ国旗には、剣を持ったライオンが描かれます。
これは、主要民族であるシンハラ人の伝説に登場する、民族のシンボル。
国旗には仏教を表す菩提樹の葉や、ヒンドゥー教を表すオレンジ、イスラム教を表す緑がデザインされ、国内の多様性を象徴しています。

ブータン

ブータン

ブータン国旗に描かれている動物は、なんと龍。
国の守護神が、清らかさを表す白い色で表現されています。
国旗の黄色は王の権威、オレンジはチベット仏教のシンボルです。

国のシンボル

その国独特のシンボルや描かれた、個性的な国旗をみてみましょう。

カンボジア

カンボジア

カンボジア国旗には、国のシンボルであり世界遺産でもあるアンコールワット遺跡が描かれています。1948年にフランスから独立して以来、カンボジアの政権や国旗は何度か変わっていますが、アンコールワットはいつも描かれる定番となっています。仏教を表す白い色で表されます。

カナダ

カナダ

サトウカエデの葉(メイプルリーフ)が描かれたカナダ国旗も、印象に残りますね。
サトウカエデは、メイプルシロップの原料にもなるカナダを代表する木。
実はこのメイプルリーフには12本のトゲがあり、カナダの州と準州を象徴しているのです。

スペイン

スペイン

スペイン国旗に描かれている風格のある紋章は、スペインの国章で、かつてイベリア半島にあった5つの王国の紋章(城・ライオン・縦縞・鎖・ザクロの実)が王冠と柱に囲まれています。
柱は「ヘラクレスの柱」といい、ジブラルタル海峡に面したスペインの地理を象徴しているのです。

ブラジル

ブラジル

中央に文字が書かれたブラジル国旗は、独特のインパクトがありますね。
この文字はポルトガル語で「秩序と進歩」と書かれており、ブラジルの国是(モットー)です。
その周りの星座は、ブラジルが共和制に移行した1889年11月15日のリオデジャネイロの空。
緑は森林、黄色は鉱物資源を象徴しています。

国別の国旗の意味

いくつかの国旗について、込められた意味をみていきましょう。

日本

日本

日本の「日の丸」は、正式には「日章旗」といい、日の出の太陽を表したもの。
白は神聖と純潔、赤は博愛と活力の象徴とされます。
シンプルで印象深く、国際的にも認知度が高い国旗です。

日の丸の起源は古く、古代からシンボルとして用いられてきた「日輪」にルーツがあるとされます。
明治時代から事実上の国旗として使用されていますが、法律で正式に国旗に制定されたのは1999年と、意外と最近なんです。

中国

中国

中国の国旗は「五星紅旗」とよばれます。赤は革命や共産主義の象徴。
大きな星は中国共産党、小さな星は労働者や農民など人民の4つの階級を表します。
4つの小さな星は頂点が大きな星の方を向いており、中国の団結を象徴しているのです。

韓国

韓国

韓国の国旗は「太極旗」とよばれ、陰陽五行説の思想が反映されています。
中央にある模様は「太極」といい、陰を表す青と陽を表す赤が組み合わさって、宇宙を象徴しているのです。
その周囲にあるのは易で使われる卦で、神羅万象の象徴。
李氏朝鮮時代の1883年から国旗として使用されています。

珍しい国旗

実は、国旗のデザインついては国際的なルールはありません。
そのため世界には、形やデザインがほかの国とはちょっと違う個性派の国旗もあるのです。

ネパール

ネパール

ネパール国旗は、2つの三角形が重なった形をしており、世界でただ一つの四角形ではない国旗です。
三角形はヒマラヤ山脈を表し、また仏教とヒンドゥー教の象徴でもあります。
この旗の形状は、実はヒンドゥー文化では伝統的によく使われてきた形なのです。

カタール

カタール

カタール国旗は横の長さが縦の二倍以上あり、世界一細長い国旗です。
白は平和、赤茶色は過去の戦いで流れた血を象徴しています。

なお、よく似ている隣国のバーレーン国旗と区別しやすくするために、もともと赤だった部分を赤茶色にしたという説があります。

スイスとバチカン

スイスとバチカン

キリスト教を表す十字が描かれたスイス国旗と、教皇庁の紋章が描かれたバチカン国旗。
どちらもキリスト教のシンボルが描かれたこの2つには、もう一つ共通点あります。
正式な国旗の形が正方形なのです。
なお、国際的な場では、よく他の国にそろえた縦横比で掲揚されます。

パラグアイ

パラグアイ
パラグアイ

パラグアイ国旗は、裏と表でデザインが異なる世界でただ一つの国旗。
正義・平和・自由を象徴する赤・白・青の横線は裏表共通ですが、中央に描かれるシンボルが異なります。
表に描かれるのは国章ですが、裏には「フリジア帽」という自由のシンボルと、それを守るライオンが描かれるのです。

似ている国旗の事例とその背景

世界の国旗の一覧をよく見ると、よく似た国旗がいくつかありますね。何か意味があるのでしょうか?

日本とバングラデシュ・パラオ

日本とバングラデシュ・パラオ

日本の「日の丸」とよく似ているのが、バングラデシュパラオの国旗です。

バングラデシュ国旗は、緑の背景の中心から少し左寄りに、赤丸が描かれています。
緑は豊かな国土とイスラム教、赤丸は自由の象徴としての太陽独立のために流れた血。
初代大統領により、1972年に国旗に制定されました。
後年、首相になった娘により、日本の日の丸を参考にしたことが明かされています。

パラオ国旗は、青い太平洋を背景に金色の月が浮かぶ姿。外国の支配から主権を取り戻したパラオの誇りや団結を象徴しているのです。
パラオは親日国ですが、国旗デザインへの日の丸の影響については、デザインした当事者が否定しています。

モナコとインドネシア

モナコとインドネシア

モナコ国旗とインドネシア国旗は、なんとどちらも上半分が赤、下半分が白。
ほとんど見分けがつきません!
インドネシアが国旗を制定した際に、先に制定していたモナコが変更を求めたことも。

実は、モナコとインドネシアの国旗の違いは、縦横比にあります。
インドネシア国旗の方が、少し横に長い
のです。
モナコ国旗の赤と白の配色は、少なくとも14世紀まで遡る王家の紋章に由来。
一方、インドネシア国旗の赤と白も、13世紀に成立した王朝のシンボルに由来します。

ちなみに、ポーランド国旗はこれらとは上下が逆で、上半分が白、下半分が赤のデザインです。

北欧諸国

北欧諸国

北欧の国々には、左側に寄った十字の国旗が多いですね。
これは「スカンディナビア十字」といい、デンマーク国旗が基になっているのです。

デンマーク国旗は「ダンネブロ」とよばれ、現存する国旗では世界最古とされます。
伝説によると、1219年に空から国王のもとに降ってきたとか。

スウェーデンやノルウェー、アイスランド、フィンランドも、これにならってノルディック十字を国旗としたのです。

三色旗(縦)

三色旗(縦)

三つの色で縦または横に分けられた三色旗(トリコロール)は、多くの国旗にみられます。

なかでも最も有名なのが、フランス国旗。
フランス革命時代の1794年に国旗となり、左から青・白・赤の縦線が並び、自由・平等・博愛の象徴とされます。
ただし、どの色が何を象徴しているかについては諸説あるようです。
多くの国旗に影響を与え、まさしくヨーロッパを代表する国旗といえるでしょう。

イタリアやベルギーを始め、10以上の国旗が縦向きの三色旗です。

三色旗(横)

三色旗(横)

三色旗には、横線が三つ並ぶパターンもあります。
このパターンの代表例がオランダ国旗。
縦横含め、三色旗を最初に国旗にしたのは、実はオランダなのです。

16世紀後半、オランダのスペインからの独立をかけて、80年戦争が始まりました。
この時オランダの中心人物だったオラニエ公ウィレムの家紋の色が、オレンジ・白・青でした。
時代とともに色や並び順が少しずつ変遷し、現在の上から赤・白・青の横線が並ぶオランダ国旗になりました。

オランダ国旗が影響を与えた国旗は多く、フランス国旗もその一つとされます。

特に、汎スラブ色の由来でもあるロシア国旗は、オランダとは並び順が違うものの、色の組み合わせは同じ。
17世紀のピョートル大帝の時代にオランダから造船を学び、旗のデザインも取り入れたという言い伝えがあります。

そのほか、ドイツやハンガリーなど数多くの国が横向きの三色旗です。

意味を知れば国旗は雄弁に語り出す

国旗は世界の国々の歴史や独立の歩み、文化の由来を色やデザインに込めたシンボルです。日本をはじめ、ヨーロッパやアジア、アフリカの国旗にもそれぞれの意味や特徴があります。国旗の意味を知れば、世界が断然魅力的に見えてくるはずです。

ここで紹介した国旗はほんの一部。ぜひ、世界の国旗の意味をもっと楽しんでください!


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