鬼剣舞とわたし

「デンスクスッタグ、デンデンコ、デンスクスッタグ……」

鬼剣舞の拍子の一節である。
これを聞くと、岩手県北上市民、いや、市内出身者の大多数が鬼剣舞であることを認識する。血が騒ぐ。私もその一人である。
物心ついたころには、当たり前のように夏祭りで鬼剣舞の大群舞を見ていた。
鬼の面は子供には怖いはずだが、なぜか怖くない、未だに不思議な感覚だが、その舞の中に恐怖とは別の神々しいものが見えていたのかもしれない。
「いつか、自分も……」
そんな思い、尊敬の眼差しで踊り手を見ていたものだった。

時は経ち、故郷を巣立ち東京で暮らす私には幼い息子がいた。
これまでは帰省をしてもなかなか鬼剣舞を見る機会がなかったが、ある日、運良く息子と一緒に見ることができた。
見た場所は至近距離。東京であれば子供は確実に泣くであろう位置だった。またそれを期待する自分もいた。
ところが、息子は泣くどころか、逆に食い入るように見ている。あの頃の自分のように。

「鬼剣舞を踊りたい」
息子からの一言、また、その後の親子での二子流東京鬼剣舞への入門も必然だったのかもしれない。

鬼剣舞01

あれから10年、息子も高校生になり、踊りもだいぶ様になってきた。私も50を超えた。
「そろそろ潮時か……」
とも言っていられない。ここには人生の先輩方が多く、まだまだ現役。
私だってまだ「若手」。気力と体力、そして鬼剣舞への愛が続く限り、下手くそではあるが舞い続けたいと思う。

「デンスクスッタグ、デンデンコ、デンスクスッタグ」
さあ、踊ろう、あの頃の自分に見てもらえるように。

◆鬼剣舞(おにけんばい)

岩手県北上地方に伝承されている民俗芸能のひとつ。起源は今から約1200余年前と伝えられている。鬼のような強面な面をつけ勇壮に踊ることから「鬼剣舞(おにけんばい)」と呼ばれている。この「鬼」は一般的によく知られている『悪さをする鬼』とは異なり、「仏(明王)の化身」を表現したもので角が無い。お盆の精霊供養の他、五穀豊穣や無病息災祈願、また結婚式の余興等で披露されることもあり、北上市民にとって身近な存在。北上市内には現在13団体あり、二子流東京鬼剣舞は岩手県外で最初に正式に認められた団体である。

鬼剣舞02
岩手山に広がる燃えるような夕日のパノラマ

二子流東京鬼剣舞(ふたこりゅうとうきょうおにけんばい)
菊地政幸

岩手県北上地方に伝わる民俗芸能「鬼剣舞」を東京で伝える保存会です。
毎年夏に行われる、北上みちのく芸能祭りにも正式団体として参加。
二子流東京鬼剣舞 公式サイト

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