世界のパン一覧|各国の特徴・歴史・食べ方をわかりやすく解説

「パンはどこで食べても同じ」と思われがちですが、実際には各地の気候・歴史・宗教・農業環境によって、素材・製法・食べ方が大きく異なります。
小麦粉や酵母を用いる発酵パンから、水と穀物粉だけで作る無発酵パンまで、世界には実に多彩なパン文化が存在します。

本記事では、アジアからアメリカ大陸まで、各地域を代表するパンの特徴と背景を紹介します。

アジアのパン

アジアのパン文化は、乾燥地帯の無発酵パンから米文化圏に根付いた発酵パンまで、地域ごとに大きく異なります。気候・宗教・農業環境の違いが、それぞれ独自の製法や食べ方を生み出しています。

コッペパン(日本)|給食で広まった柔らかい発酵パン

コッペパン(日本)|給食で広まった柔らかい発酵パン

コッペパンは小麦粉と酵母を使って発酵させた、楕円形の柔らかいパンです。

第二次世界大戦後、アメリカから供与された小麦粉を使った学校給食を通じて日本全国に広まりました。
現在でも、あんバターや焼きそばを挟んだ「調理パン」として全国各地の学校給食や惣菜パン店で広く食べられています。

マントウ(中国)|中国北部で広く食べられる蒸しパン

マントウ(中国)|中国北部で広く食べられる蒸しパン

マントウは具材を入れない白い蒸しパンで、小麦の栽培が盛んな中国北部を中心に米に代わる主食として広く食べられています。

小麦粉と酵母を蒸し上げるシンプルな製法で作られ、お粥の副菜として添えたり、油で揚げて練乳をつけて食べたりと、さまざまなアレンジが存在します。

バインミー(ベトナム)|米粉入りバゲットを使ったベトナム式サンドイッチ

バインミー(ベトナム)|米粉入りバゲットを使ったベトナム式サンドイッチ

バインミーは、19世紀後半のフランス植民地時代にバゲットの製法がベトナムに伝わり、現地の食材・嗜好に合わせて発展した食文化です。

レバーパテ・なます・パクチー・唐辛子などを挟んで食べます。現在もホーチミンやハノイの路上屋台で日常的に食べられています。

チャパティ(インド)|全粒粉と水だけで作る無発酵の薄焼きパン

チャパティ(インド)|全粒粉と水だけで作る無発酵の薄焼きパン

チャパティは全粒粉(アタ粉)と水だけをこねて薄く伸ばし、鉄板(タワ)で焼く無発酵パンです。

インドや南アジアの家庭で毎日作られる最も基本的な主食のひとつで、酵母や膨張剤を使わないため短時間で調理できます。カレーやダール(豆料理)をすくいながら食べるのが一般的な食べ方です。

オビ・ノン(ウズベキスタン)|伝統模様が刻まれた円形のパン

オビ・ノン(ウズベキスタン)|伝統模様が刻まれた円形のパン

オビ・ノンはウズベキスタンを代表する円形のパンで、「チェキチ」と呼ばれる専用のスタンプで生地に模様を刻んでからタンドール窯で焼きます。

ノンに模様を付けるチェチキ ノンに模様を付けるチェチキ

地域や職人によって模様が異なり、土地のアイデンティティを表すものとして受け継がれています。
ウズベキスタンでは結婚式や葬儀など冠婚葬祭の場にも欠かせない伝統的な食べ物です。

パレ(チベット)|高地の環境に適応した大麦粉の焼きパン

パレ(チベット)|高地の環境に適応した大麦粉の焼きパン

バルレプは標高4,000mを超えるチベット高原で広く食べられている大麦粉を使った焼きパンです。
高冷地では酵母の発酵が難しいため、無発酵またはごくわずかな発酵で作られます。游牧生活を送る人々の間では保存食としても重宝されており、バター茶やヤクのチーズとともに食べるのが伝統的な食べ方です。

エキメッキ(トルコ)|世界有数のパン消費国を支える主食

エキメッキ(トルコ)|世界有数のパン消費国を支える主食

「エキメッキ」とはトルコ語で「パン」を意味し、トルコの食卓で三食すべてに欠かせない主食です。トルコは一人当たりのパン消費量が世界でも上位に入る国で、その消費量は年間約100~150kgともいわれています。

イスタンブールのボスポラス海峡沿いで売られているサバをバゲット状のパンに挟んだ「バルック・エキメッキ」は、観光客にも広く知られた名物料理です。

ナン(インド・西アジア)|タンドール窯で焼くパン

ナン(インド・西アジア)|タンドール窯で焼くパン

ナンは高温のタンドール窯の内壁に貼り付けて焼く発酵パンです。
もともとはムガル帝国時代の宮廷料理として知られていたとされています。インドやパキスタン、アフガニスタンなど広い地域で食べられており、バター(ギー)を塗って食べたり、カレーと合わせたりするのが一般的です。

ヨーロッパのパン

ヨーロッパのパン文化は、宗教・歴史・気候の影響を受けながら各地域で独自に発展してきました。北欧のライ麦パンから地中海のフラットブレッドまで、素材と製法の多様性が際立っています。

オントバイトクック(オランダ)|スパイスを練り込んだ朝食用ライ麦パン

オントバイトクック(オランダ)|スパイスを練り込んだ朝食用ライ麦パン

オントバイトクックはライ麦粉にシナモン・クローブ・アニスなどのスパイスを加えて焼いた、甘みのあるパンです。
オランダ語で「朝食のケーキ」を意味し、薄切りにしてバターを塗って食べるのが一般的です。オランダが17世紀に香辛料貿易の中心地として栄えた歴史的背景が、このパンの風味に反映されています。

パ・デ・パジェス(スペイン)|カタルーニャ地方の農家パン

パ・デ・パジェス(スペイン)|カタルーニャ地方の農家パン

パ・デ・パジェスはスペインのカタルーニャ地方で広く食べられている、長時間発酵と石窯焼きが特徴の農家パンです。
「農民のパン」を意味し、表面はパリッとした硬い皮で中身はしっとりしています。焼いたパンにトマトとにんにくをこすりつけてオリーブオイルをかける「パン・コン・トマテ」はカタルーニャの伝統的な食べ方として広く知られています。

チャバッタ(イタリア)|水分多めの生地で作るもっちりしたパン

チャバッタ(イタリア)|水分多めの生地で作るもっちりしたパン

チャバッタは1982年にイタリアで考案された比較的新しいパンで、通常より水分量を高くした生地が特徴です。
「スリッパ」を意味するイタリア語が名前の由来で、その形状に由来しています。
断面に大きな気泡ができ、もっちりした食感に仕上がります。生ハムやチーズ、野菜を挟んだ「パニーニ」の材料として広く使われています。

ラーンゴシュ(ハンガリー)|生地を油で揚げるハンガリーの揚げパン

ラーンゴシュ(ハンガリー)|生地を油で揚げるハンガリーの揚げパン

ラーンゴシュは小麦粉と酵母で作った生地を油で揚げた、ハンガリーの伝統的な食べ物です。

揚げたての生地の上に、にんにく、サワークリーム、チーズをトッピングして食べるのが一般的なスタイルです。市場や屋台で広く売られており、庶民的な軽食として親しまれています。

ブロア(ポルトガル)|トウモロコシ粉を使ったポルトガル北部の伝統的なパン

ブロア(ポルトガル)|トウモロコシ粉を使ったポルトガル北部の伝統的なパン

ブロアはポルトガル北部で広く食べられているトウモロコシ粉を主原料とする重厚なパンです。
トウモロコシは15〜16世紀の大航海時代に新大陸からもたらされたもので、小麦の栽培に不向きな北部の農村地帯に定着しました。ポルトガルの伝統的なスープ「カルド・ヴェルデ」に浸して食べるのが定番の食べ方です。

パスカ(ウクライナ)|復活祭に食べる卵とバター入りの祝祭パン

パスカ(ウクライナ)|復活祭に食べる卵とバター入りの祝祭パン

パスカはウクライナをはじめ東欧各地でキリスト教の復活祭(イースター)に食べられる伝統的なパンです。
卵・バター・砂糖を豊富に使ったふんわりした生地に、伝統的には宗教的な模様や編み込みで装飾され、近年はアイシングやスプリンクルで飾るスタイルも見られます。教会に持ち込んでお祓いを受けてから食べる習慣が今も続いています。

スーシュカ(ロシア)|リング状の乾燥パン

スーシュカ(ロシア)|リング状の乾燥パン

スーシュカはロシアで広く食べられている、小さなリング状のパンです。
生低水分で焼き上げて乾燥させた保存性の高いパン菓子で、長期保存が可能です。紅茶やコーヒーに浸してやわらかくして食べるのが伝統的なスタイルです。
同じ製法で作られる類似のパンとして、スーシュカより一回り大きい「バランカ」、さらに大きくふんわりした食感の「ブーブリク」があります。

ピタ(ギリシャ)|高温で焼くことで空洞ができるポケットパン

ピタ(ギリシャ)|高温で焼くことで空洞ができるポケットパン

ピタは古代中東・地中海地域に起源を持つ薄い円形のパンで、ギリシャをはじめ中東・北アフリカの広い地域で食べられています。
高温のオーブンで焼くと生地が膨らんで内部に空洞(ポケット)ができるのが特徴で、フムスやファラフェル、肉や野菜などを詰めて食べます。持ち歩きやすく、器代わりにもなる合理的な食べ方から、屋台食としても広く普及しています。

プレッツェル(ドイツ)|アルカリ溶液に浸してから焼く独特の製法のパン

プレッツェル(ドイツ)|アルカリ溶液に浸してから焼く独特の製法のパン

プレッツェルは独特のひねり形状と茶色く光沢のある表面が特徴のドイツのパンです。
焼く前に水酸化ナトリウム溶液(または重曹水)に浸すことで、深い茶色と独特の香ばしい風味が生まれます。表面に岩塩をふりかけるのが一般的です。
ドイツ南部(バイエルン地方)を中心に広く食べられており、ビールのお供としても知られています。結び目の形は中世の修道院文化に由来するという説があります。

アフリカのパン

アフリカのパン文化は、地域固有の穀物や共同窯の文化が特徴です。
エチオピアの「テフ」のように、他の地域ではほとんど使われない穀物を主原料とするものもあります。

ホブス(モロッコ)|共同窯で焼かれるモロッコの丸型パン

ホブス(モロッコ)|共同窯で焼かれるモロッコの丸型パン

ホブスはモロッコで広く食べられている、小麦粉やセモリナ粉を使った丸型のパンです。
かつては家庭で生地をこねて、地域の共同窯(フルン)に持ち込んで焼く習慣が一般的でした。

現在も街なかのパン屋(フルン)で毎朝焼かれており、タジン料理やスープとともにスプーン代わりとして使いながら食べるのが伝統的なスタイルです。

インジェラ(エチオピア)|テフを発酵させて焼くエチオピアの主食

インジェラ(エチオピア)|テフを発酵させて焼くエチオピアの主食

インジェラはエチオピアおよびエリトリアで毎日食べられる大型の薄焼きパンです。
エチオピア原産の穀物「テフ」を数日かけて発酵させた生地を大きな鉄板で焼き、独特の酸味とスポンジ状の食感が生まれます。
食卓では大皿に広げたインジェラの上にさまざまな煮込み料理をのせ、インジェラをちぎって料理を包みながら食べます。
食器とテーブルクロスを兼ねる機能的な食文化として知られています。

ピタ(エジプト)|「命」を意味するエジプトの日常的なパン

エジプトのピタパン(エジプトでは「アエーシ」と呼ばれる)は、古代エジプトの時代から続くパン文化の流れを汲む主食です。

「アエーシ」はアラビア語で「命」を意味します。古代エジプトでは労働者の賃金がパンとビールで支払われていたことが、遺跡や文献から確認されています。現在も白いピタパンが三食の主食として広く食べられており、フール(そら豆の煮込み)などと合わせるのが定番の食べ方です。

北・中南米のパン

北中南米のパン文化は、ヨーロッパからの移民が持ち込んだ技術と、先住民の伝統食材が組み合わさって形成されました。
地域独自の素材(タピオカ・キャッサバ・トウモロコシなど)を活かしたパンが多く存在します。

ハンバーガーバンズ(アメリカ)|移民文化が生んだ世界的なパン

ハンバーガーバンズ(アメリカ)|移民文化が生んだ世界的なパン

ハンバーガーバンズは小麦粉と酵母を使って作るやわらかい発酵パンです。
19世紀後半にドイツのハンブルク地方からアメリカへ移住した移民が持ち込んだ挽き肉料理の文化が、アメリカのパン文化と融合して現在のハンバーガーの形が確立されたとされています。

20世紀以降にファストフード産業が世界規模で広がったことで、ハンバーガーバンズは世界中で食べられるパンのひとつになりました。

ハワイアンブレッド(ハワイ)|パイナップルジュースを使った甘いパン

ハワイアンブレッド(ハワイ)|パイナップルジュースを使った甘いパン

ハワイアンブレッドはパイナップルジュースと砂糖を生地に加えた、甘みとふんわりした食感が特徴のパンです。
ポルトガル系移民がハワイに持ち込んだ甘いパン「パォン・ドーシェ」が原型とされており、現地の食材と組み合わさって独自のスタイルに発展しました。
引きちぎって食べるロールパン型のものが一般的で、多様な文化が混ざり合うハワイの食環境を反映しています。

パンデムエルト(メキシコ)|「死者の日」に食べる伝統的なお祝いパン

パンデムエルト(メキシコ)|「死者の日」に食べる伝統的なお祝いパン

パンデムエルトは毎年11月1〜2日の「死者の日(ディア・デ・ムエルトス)」に食べるメキシコの伝統的なパンです。
アニスやオレンジの花水で香りをつけた甘い生地に砂糖をまぶして仕上げます。
骨をかたどった生地の装飾が表面に施されており、先祖の霊をまつるオフレンダ(祭壇)にも供えられます。死者の日の期間中はベーカリーやスーパーマーケットで広く販売されます。

バミー(ジャマイカ)|キャッサバを原料とする先住民の伝統的なパン

バミーはジャマイカの先住民タイノ族が古くから作り続けてきた、キャッサバ(マニオク)を原料とする無発酵の薄焼きパンです。キャッサバには天然の毒素(シアン化物)が含まれているため、すりおろして毒素を取り除く処理が必要です。

現在でもジャマイカの家庭料理として根付いており、ミルクやココナッツミルクに浸してから揚げ、魚料理と合わせて食べるのが伝統的な食べ方です。

ポンデケージョ(ブラジル)|タピオカ粉とチーズで作るグルテンフリーのパン

ポンデケージョ(ブラジル)|タピオカ粉とチーズで作るグルテンフリーのパン

ポンデケージョはブラジルのミナスジェライス州を中心に広く食べられているチーズ入りのボール状のパンです。
タピオカ粉(キャッサバでんぷん)を主原料とするため自然にグルテンフリーとなっており、外側はカリッと内側はもっちりした食感が特徴です。
朝食やおやつとしてカフェや家庭で広く食べられており、ブラジルのカフェ文化に欠かせない存在です。

マラケタ(チリ)|油を使わないシンプルなチリの主食パン

マラケタ(チリ)|油を使わないシンプルなチリの主食パン

マラケタはチリで最もポピュラーなパンで、小麦粉・水・塩・酵母を基本としたシンプルな配合が特徴です。
4分割の切れ込みが入った小さなロールパンで、油脂を使わないためカロリーが低く、毎日の食卓に登場します。チリの朝食では、マラケタにアボカドペースト(チャンプル)をのせる食べ方が古くから定着しており、現在世界的なトレンドとなっているアボカドトーストよりも長い歴史があります。

パンにまつわる世界一

世界で一番古いパン

現在確認されている最古のパンは、ヨルダン北東部の遺跡「シュバイカ67」で発見されたもので、約1万4,400年前(紀元前12,400年頃)のものとされています。

2018年にデンマークのコペンハーゲン大学の研究チームが調査結果を発表し、学術誌に掲載されました。
この時代は農耕が始まる約4,000年前にあたり、狩猟採集生活を送っていたナトゥーフ人が野生の穀物(エンマー小麦・大麦・カラスムギの仲間など)を採集して石臼で挽き、水と混ぜて焼いていたことが明らかになっています。
人類がパンを作り始めた時期が従来の想定よりも大幅にさかのぼることを示す重要な発見です。

世界で一番長いパン

2024年にフランスで全長140m以上のパンが焼かれ、もっとも長いパンとしてギネス世界記録に認定されました。
複数の職人が同時に長い生地を伸ばし、それぞれを一本につなぎ合わせてバゲットにします。通常のオーブンには入らないため、特別に作られた移動式オーブンで焼き上げられました。
ギネス認定には「実際に食べられる品質」である必要で、焼き上がった後、均一につながっていることも重要です。

世界で一番パンを食べる国は?

一人当たりの年間パン消費量が最も多い国はトルコで、その量は年間約200kgとされています(国際的な農業・食料統計による推計)。トルコでは朝食・昼食・夕食のすべてに「エキメッキ(パン)」が出される食文化が根付いており、主食としての位置づけが非常に強いことが背景にあります。

世界で一番パンを食べる国は?

消費量が多いことを受け、トルコ政府はパンの価格を定期的に管理・規制しており、パンの値段が社会問題になることもあります。

まとめ|世界のパンから学ぶ食文化の多様性

本記事では世界各地のパンをアジア・ヨーロッパ・アフリカ・北中南米に分けて紹介しました。
小麦粉・大麦粉・テフ・タピオカ粉・キャッサバなど使用する穀物の違い、発酵・無発酵の違い、タンドール窯・石窯・鉄板・蒸し器など加熱方法の違いによって、世界中で多様なパンが生まれてきたことがわかります。

それぞれのパンには、その土地の気候・農業環境・歴史・宗教・食習慣が反映されています。
旅行先や国際色豊かなレストランで異なる地域のパンを試す際には、本記事で紹介した背景を知ることで、より深くその食文化を理解するきっかけになるでしょう。


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