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春は「卒業」の二文字がちらつく季節ですよね。日本では厳粛な空気の中、涙をこらえながら合唱するあの光景がおなじみですが、海外ではまるで事情が違います。
帽子を空にぶん投げたり、教科書をビリビリに破いて窓から撒いたり、王族から直接卒業証書を受け取ったり。知れば知るほど「え、そんなことするの!?」の連続です。
今回は、アメリカ・イギリス・中国・タイ・インド・サウジアラビアの卒業式文化をたっぷりお届けします。
そもそも日本の卒業式って、世界的に見るとちょっと独特な存在なんです。
海外の多くの国では「卒業式=盛大なお祝いパーティー」。笑顔と歓声にあふれた式が当たり前だったりします。 まずは日本と海外、それぞれの卒業式の"空気感"の違いから見ていきましょう。
日本の卒業式といえば、3月、桜がほころぶ少し前の季節。学生たちは制服やスーツ、大学生なら袴姿で体育館に集まります。
校長先生の式辞、来賓の祝辞、在校生からの送辞に卒業生の答辞。プログラムはきっちり決まっていて、会場は終始しーんと静まり返っています。そこに響くのが「仰げば尊し」や「蛍の光」の合唱。こらえきれずに涙をぬぐう卒業生の姿は、もはや春の風物詩ですよね。式が終われば教室に戻って黒板にメッセージを書き合ったり、好きな人の「第二ボタン」をもらうドキドキの瞬間があったり。
ただ、式典そのものは最初から最後まで整然として、笑い声が上がるような場面はほぼありません。「別れ」のしんみりした空気が漂うのが、日本の卒業式の大きな特徴。
しかしこれは、海外の人から見ると「なんでみんな泣いてるの?卒業っておめでたいことじゃないの?」と不思議がられることもあるそうですよ。
では海外はどうかというと、多くの国で共通しているのが「とにかく明るい!」ということ。卒業生の名前が呼ばれるたびに、家族や友人から大歓声と拍手が飛び交います。
しかも来場するのは親だけじゃありません。祖父母、兄弟姉妹、いとこ、時には赤ちゃんまで一家総出で駆けつける国も珍しくないんです。大人数を収容するために、フットボールスタジアムや街の広場で開催する学校もあるほど。
服装も特徴的で、黒いガウンに四角い角帽(モルタルボード)を被るスタイルは映画やドラマでおなじみですよね。
卒業式の後にダンスパーティーを開いたり、ブラジルでは家族も一緒に夜通し踊り明かしたり……日本の「しんみり」とは真逆の、お祭りのような雰囲気が広がっています。
「海外の卒業式」と聞いて真っ先に浮かぶのは、やっぱりアメリカではないでしょうか。
黒いガウンの学生たちが一斉に帽子を空へ放り投げる、あの映画みたいなシーン。「あれって本当にやるの?」と思っている方、安心してください。本当にやります!
アメリカの卒業シーズンは5月下旬から6月初旬。日本とは学校の年度が違い、秋に始まって春に終わるので、卒業式は新緑がまぶしい初夏に行われます。
英語では「Commencement(コメンスメント)」と呼ばれ、高校と大学で特に盛大にお祝いされます。
まず驚くのが、会場のスケール感。大学のキャンパス内の広場やフットボールスタジアムを使うのは当たり前で、ニューヨーク大学にいたっては毎年ヤンキー・スタジアムを貸し切り!何万人もの卒業生と家族が集まる、まさに一大イベントです。
全員おそろいのガウンと角帽姿ですが、よく見ると一人ひとり違うのが面白いところ。成績優秀者は首にカラフルな「オナーコード」というロープを掛けていたり、学生団体の役員はメダルやストールを身につけていたり。同じ服なのに個性や努力がちゃんと見えるのは、アメリカらしい仕組みですよね。
もう一つの名物が、著名人による卒業スピーチ。企業のCEOやハリウッド俳優、時には元大統領が壇上に立つこともあります。2005年にスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学で語った「Stay hungry, Stay foolish」は、卒業式スピーチの枠を超えて世界中で語り継がれる伝説になりました。
あのガウンと角帽には、実は800年以上の歴史があります。
ルーツは中世ヨーロッパの大学。当時の教授たちは教会に属する聖職者でもあり、彼らが着ていた法衣がガウンの原型になりました。学生たちもそれに倣うようになり、「学問を志す者の正装」として定着していったんです。
アメリカ最古のハーバード大学も、1636年の創設時からこのスタイルを取り入れていました。
ガウンの袖の形で学士・修士・博士が区別でき、フード(襟布)の色を見れば専攻分野までわかるようになっています。文学なら白、理学はゴールド、工学はオレンジ、法学は紫……見た目はシンプルなのに、実はものすごく情報量が詰まっているんですね。
さて、あの有名な帽子投げの起源をご存じですか?
実は1912年、メリーランド州にあるアメリカ海軍兵学校の卒業式がはじまりなんです。当時の士官候補生たちは、卒業と同時に正式な士官に昇格し、新しい制帽が支給されました。つまり、それまで被っていた候補生の帽子はもう不要。「やったー!もうこの帽子かぶらなくていい!」という解放感から思わず空に投げたのが、すべてのはじまりだったそうです。なんだか微笑ましいですよね。
この風習は他の士官学校に広がり、やがて一般の大学にも波及。20世紀半ばには全米の卒業式で定番のセレモニーになりました。
ちなみに、何百個もの同じ黒い帽子が地面に散らばるので、自分のを見つけるのが大変。だから最近は、帽子の上にメッセージを書いたり、花やキラキラでデコったりする学生も多いのだとか。
大学の歴史でいえば世界トップクラスのイギリス。さぞかし豪華な卒業式が……と思いきや、「意外とあっさりしてるね」という声が少なくないんです。
伝統と合理性が絶妙に同居するイギリスの卒業式、その実態を覗いてみましょう。
イギリスの大学卒業式は7月に行われるのが一般的。会場はキャンパス内の歴史ある講堂や、街の大聖堂が選ばれることも多く、中世の石造りの建物の中で学位が授与される光景はなかなか絵になります。
ただし、高校以下では大がかりな卒業式はほとんど行われません。あったとしても簡単な証書授与とプロム(卒業パーティー)くらい。イギリスで「Graduation」といえば、基本的には大学のイベントを指します。
フランスにいたっては卒業式という行事自体がほとんどなく、卒業証書は郵送で届くというのですから、日本とは感覚がまったく違いますよね。
伝統校の格式はさすがの一言。オックスフォード大学には「サブフス」という正装ルールがあり、男性は黒スーツに白蝶ネクタイ、女性は黒スカートに白ブラウスを着たうえからガウンを羽織ります。ケンブリッジ大学など一部の大学では、今もラテン語で学位授与の宣言が読み上げられるそうで、何百年も前から変わらない荘厳さには鳥肌が立ちそうです。
面白いのは、卒業生だけでなく出席する家族にもフォーマルな装いが求められること。保護者もスーツやワンピースで参列するのは当然で、ケンブリッジ大学の卒業式に参加した日本人のブログには「膝丈のワンピースに帽子を被って出席した」とあります。英国王室のガーデンパーティーさながらの光景ですね。ジーンズで来る人はまずいないそうで、この「ちゃんとしなきゃ」の意識は日本以上かもしれません。
帽子投げはどうかというと、アメリカほど盛んではなく「帽子は脱いで掲げるだけ」という大学もあるのだとか。派手さよりも品格を重んじるイギリスらしさが、こんなところにも表れています。
日本の厳粛さとも、欧米のお祭り騒ぎとも違う、中国ならではの卒業文化。そのキーワードは「とにかく写真!」と「家族の誇り」、そして「受験からの大解放」。
思わず「そんなことする!?」と声が出てしまうユニークな風習がてんこ盛りです。
中国の卒業シーズンは6〜7月。大学では正式な卒業式がありますが、日本ほどかしこまった雰囲気ではなく、わりとカジュアルに進みます。
ちょっとびっくりなのが、卒業証書がその場でもらえないケースが多いこと。式典では象徴的に空の筒だけ渡して、本物の証書は後日あらためて大学の事務局に取りに行くのだとか。日本では式典ですべて完結するのが普通なので、なんだか不思議な感じがしますよね。
高校はさらにあっさりしていて、卒業式自体を行わない学校も珍しくありません。というのも、中国の高校生にとっての人生最大イベントは6月上旬の大学入試「高考(ガオカオ)」。高考が終わった時点でもう気持ちは「高校卒業」なので、式典は二の次になりがちなんです。
中国の卒業シーズンで最も熱いのが、とにかく写真、写真、写真!日本ではクラスで1枚集合写真を撮るくらいですが、中国のスケールは桁違いです。
なんと卒業式の1週間以上前から、友人グループでガウンと角帽を着けてキャンパス中を回り、あらゆるスポットで撮影大会が始まります。校門の前、図書館の前、毛沢東像の前……何十枚、時には何百枚もの写真を撮りまくってSNSに投稿するのが恒例行事。「式の前にもう礼装着ちゃうの!?」と驚きますが、中国ではこれが普通なのだそう。
ひとりっ子政策の影響もあり、子どもの大学卒業は一家の大きな大きな誇り。両親もしっかりおしゃれをして大学に駆けつけ、校門の前で家族写真を撮る姿は卒業シーズンの定番風景になっています。
中国では卒業式そのものよりも、この「卒業写真」こそが本当の主役。一生の宝物になる一枚を残すために、みんな全力なんです。
中国の卒業シーズンには、もっと衝撃的な光景もあります。高考が終わった直後、高校生たちが教科書やノートをビリビリに破いて、教室の窓からバーッと投げ捨てるんです。校舎の周りが白い紙吹雪で覆われるほどの壮絶な光景は、ニュース映像で見たことがある方もいるかもしれません。
何年もの受験勉強で溜まりに溜まったストレスを、一気に爆発させるこのパフォーマンス。爽快感はすさまじいでしょうが、後片付けは大変……。さすがに最近は環境面や清掃の負担から禁止する学校も増えてきたようですが、一部の地域ではまだまだ健在だそうです。
大学でも似たような「解放」の表現があり、卒業時に寮のポット(魔法瓶)を窓から豪快に投げるという行為がSNSで話題になったことも。「学生生活からの卒業」を象徴する行動……らしいのですが、これは絶対に真似しちゃダメですね。
タイの卒業式は、ほかのどの国とも似ていない独自の世界観をもっています。そのカギを握るのが「王室」と「仏教」の存在。
王族から直接卒業証書を受け取る伝統や、ジャスミンの花輪で感謝を伝える美しい儀式など、知れば知るほど心を動かされるエピソードが詰まっています。
タイの大学卒業式で最も驚くのが、なんと王室メンバーが卒業証書を一人ひとりに直接手渡すという伝統。しかも各大学は王族のスケジュールに合わせて式の日程を決めるため、「いつ卒業式があるか」は大学ごとにバラバラ。卒業してから半年以上経ってようやく式が行われる、なんてことも珍しくありません。
王族の前に出るわけですから、準備も相当なもの。お辞儀の角度、歩き方、証書の受け取り方まで事前にみっちりリハーサルが行われます。証書を受け取った後は、王族に背中を見せないよう後ずさりで退場するのがマナー。緊張感は半端じゃなさそうですが、「王族から直接いただいた」という事実は、卒業生にとって一生の誇りになるそうです。
ちなみに、各大学には「チュット・クルーイ」という専用のローブがあり、色を見ればどの大学かすぐわかります。チュラーロンコーン大学はピンク、タマサート大学は黄色、マヒドン大学は水色……まるで大学のユニフォームカラーみたいで面白いですよね。
タイは年中暑い国ですが、乾季にあたる2〜4月は特に過酷。卒業式がこの時期にかかると、厚手のガウンを着た卒業生も、正装で来た家族も、暑さとの真剣勝負になります。式の途中で体調を崩す人が出ることも珍しくないのだとか。
しかも王族が出席しているため途中退席は絶対にNG。何千人もの卒業生に一人ずつ手渡しで証書を授与するので、式が丸一日がかりになることもあります。朝から夕方まで座りっぱなし、水分補給もままならない……タイの卒業式は「名誉と体力の勝負」なんです。
暑さの話のあとは、ちょっと心が温まるエピソードを。
タイには、ジャスミンの花で作った花輪「マーライ」を大切な人に贈る美しい伝統があります。ジャスミンはタイで「母の象徴」とされる花。白く清らかなその姿が、尊敬と愛情を表すとされています。
卒業式の日、証書を受け取った卒業生たちは、自分の両親やお世話になった先生のもとへまっすぐ歩み寄ります。そしてひざまずき、マーライを捧げ、両手を合わせた「ワイ」(合掌)の姿勢で感謝を伝えるのです。「育ててくれてありがとう」「教えてくれてありがとう」。その気持ちを、式典の場できちんと形にするタイの文化。見ているだけで目頭が熱くなります。
卒業式が終わる頃、首から何連ものマーライを掛けられて花だらけになった卒業生の姿は、タイの春の風物詩なんだそうですよ。
出典:PR TIMES「アジア6カ国の卒業式の習慣は?」
イギリス植民地時代から受け継いだ学問の格式と、現代インドの文化的アイデンティティが交差するインドの卒業式。
日本以上にフォーマルで厳粛な空気の中、近年は「黒いガウンを脱いで民族衣装を着よう」という大きな変化も起きています。
インドの大学卒業式は「コンボケーション(Convocation)」と呼ばれ、国歌斉唱に始まり、学長の式辞、優等生の表彰、卒業証書の授与と続く格式高いプログラムが特徴。大学によってはヒンドゥー教の祈祷を捧げたり、灯明(ディヤ)を灯す儀式が加わったりと、インドならではの宗教色も垣間見えるのがユニークなところです。
学位を授与するのは、名誉総長(多くの場合は州知事が務めます)や副総長。IIT(インド工科大学)などの名門校では、なんと国の大統領が出席して直接メダルを手渡すことも。その格式の高さは、世界の卒業式の中でもトップクラスといえるでしょう。
インドの卒業式でいま起きている大きな変化が「服装革命」です。もともとイギリスの影響で黒いガウンと角帽が標準でしたが、2015年頃から政府が「植民地時代のガウンをやめて、インドの伝統衣装を着よう」と呼びかけ始めました。暑いインドで重たい黒ガウンは正直つらいという実用面に加え、自国の手織物文化への誇りを取り戻したいという想いが背景にあります。
The Indian Express紙によると、中央政府系の大学92校のうち約70校がガウンと角帽を廃止。男性は白いクルタ(民族シャツ)、女性はサリー姿で卒業式に臨む学校がぐっと増えました。
一方、「ガウンこそ学問の格式だ」と旧来のスタイルを守り続ける名門校もあり、いまのインドの卒業式会場ではサリーと黒ガウンが混在する不思議な光景が見られます。伝統と改革のせめぎ合い、まさに現在進行形のドラマですね。
出典:The Indian Express "Goodbye, cap and gown: Over three-fourths of Central institutions shed colonial-era dress code since 2015"
インドの卒業式全体に漂うのは、圧倒的なフォーマルさです。式典中の私語や歓声はマナー違反とされ、卒業生も保護者も姿勢正しく座って静かに待ちます。「大学を卒業すること=社会のエリートとして認められること」という意識が強いインドでは、この場にいること自体がステータスなんです。
来賓スピーチも大きな見どころ。著名な卒業生や企業トップ、時には政府の大臣クラスが「君たちの活躍がインドの未来を形作る」と熱いメッセージを送ります。首席卒業生への金メダル授与も注目の瞬間で、ニュースで報道されることも珍しくありません。
式の締めくくりにはインド国歌「ジャナ・ガナ・マナ」を全員で斉唱。国への貢献を胸に刻みながら巣立っていく。その荘厳な幕引きは、日本の卒業式とはまた違った種類の感動を与えてくれるでしょう。
最後にご紹介するサウジアラビアの卒業式は、ほかのどの国ともまったく違う世界。
「男女完全別」の式典、厳しい撮影制限、そして閉ざされた空間の中で女性たちが見せる意外な一面まで、知られざるサウジの卒業文化に迫りましょう。
サウジアラビアでは教育現場が男女で完全に分かれているため、卒業式もそれぞれ別々に行われるのが基本。男性の式典はコーランの朗読から始まり、比較的オープンに進行。メディアが取材に入ることもあります。驚くのは女性の卒業式です。基本的に男性禁制で、外部にも非公開。
その閉ざされた会場の中はどうなっているかというと……なんと、普段アバヤ(黒い伝統衣装)やヒジャブで全身を覆っている女性たちが、華やかなイブニングドレスにフルメイクで登場するんです。まるで結婚式の披露宴のような煌びやかな空間が広がり、女性たちは思いっきりおしゃれを楽しみます。そして式が終われば、再びアバヤ姿に戻って外へ出ていくのです。このギャップ、すごくないですか?
女性卒業式では、写真やビデオの撮影が厳しく制限されています。会場の入り口でスマートフォンを預けるよう求められることもあり、公式カメラマンが撮った写真すら関係者限定。ネット上に女性卒業生の晴れ姿が出回ることは、ほぼありません。
そのため外部の人間が女性卒業式の実態を知ることはとても難しく、「サウジの女性卒業式は謎のベールに包まれている」と言われるほど。情報が少ないからこそ、余計に気になってしまいますよね。
サウジには伝統的に、男性の卒業式には父親や兄弟が、女性の卒業式には母親や姉妹が出席するというルールがあります。つまり、母親は息子の晴れ姿を生で見届けることができないし、父親も娘の卒業式には立ち会えない。日本では想像もつかない状況ですよね。
しかし近年、この慣習にも少しずつ変化の波が押し寄せています。一部の大学では、大規模な女性用観覧席を新設して母親が息子の卒業式を見届けられるようにしたり、女性卒業式の様子を別室にライブ中継して父親が見られるようにしたり。「テレビ越しではなく、自分の目で子どもの晴れ姿を見て抱きしめたい」。ある母親のこの言葉は、多くの人の共感を集めたそうです。文化や宗教の壁があっても、わが子の門出を祝いたいという親心は万国共通。
その当たり前の願いが、少しずつ形になり始めています。
アメリカの帽子投げ、中国の写真大会、タイのジャスミンの花輪、インドの民族衣装革命、サウジアラビアの秘密のドレスアップ。こうして並べてみると、卒業式って本当に国ごとの歴史や宗教、価値観を映し出す鏡みたいだなと感じます。
でも、形がどれだけ違っても共通しているのは、「卒業生を祝い、新しい門出を応援する」という想い。先生が教え子を誇りに思う気持ちも、親がわが子の成長に涙する瞬間も、友達同士で「おめでとう!」と言い合う笑顔も、世界中どこへ行っても変わりません。
海外の卒業式を知ったうえで日本の卒業式を振り返ると、また違った景色が見えてくるはずです。「仰げば尊し」の合唱に込められた感謝の気持ちや、第二ボタンに込めた淡い想い。日本には日本にしかない美しさがちゃんとありますよね。
異文化を知ることで、自分たちの文化のよさにも気づける。それが、世界の卒業式を覗き見る一番の楽しみなのかもしれません。
お世話になったあの人へ、想いを伝えてみませんか?▼
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春は「卒業」の二文字がちらつく季節ですよね。日本では厳粛な空気の中、涙をこらえながら合唱するあの光景がおなじみですが、海外ではまるで事情が違います。
帽子を空にぶん投げたり、教科書をビリビリに破いて窓から撒いたり、王族から直接卒業証書を受け取ったり。
知れば知るほど「え、そんなことするの!?」の連続です。
今回は、アメリカ・イギリス・中国・タイ・インド・サウジアラビアの卒業式文化をたっぷりお届けします。
目次
海外の卒業式は日本と何が違う?
そもそも日本の卒業式って、世界的に見るとちょっと独特な存在なんです。
海外の多くの国では「卒業式=盛大なお祝いパーティー」。笑顔と歓声にあふれた式が当たり前だったりします。
まずは日本と海外、それぞれの卒業式の"空気感"の違いから見ていきましょう。
日本の卒業式の特徴(静か・厳粛・制服・式辞中心)
日本の卒業式といえば、3月、桜がほころぶ少し前の季節。学生たちは制服やスーツ、大学生なら袴姿で体育館に集まります。
校長先生の式辞、来賓の祝辞、在校生からの送辞に卒業生の答辞。プログラムはきっちり決まっていて、会場は終始しーんと静まり返っています。
そこに響くのが「仰げば尊し」や「蛍の光」の合唱。こらえきれずに涙をぬぐう卒業生の姿は、もはや春の風物詩ですよね。
式が終われば教室に戻って黒板にメッセージを書き合ったり、好きな人の「第二ボタン」をもらうドキドキの瞬間があったり。
ただ、式典そのものは最初から最後まで整然として、笑い声が上がるような場面はほぼありません。
「別れ」のしんみりした空気が漂うのが、日本の卒業式の大きな特徴。
しかしこれは、海外の人から見ると「なんでみんな泣いてるの?
卒業っておめでたいことじゃないの?」と不思議がられることもあるそうですよ。
海外の卒業式の共通点
では海外はどうかというと、多くの国で共通しているのが「とにかく明るい!」ということ。
卒業生の名前が呼ばれるたびに、家族や友人から大歓声と拍手が飛び交います。
しかも来場するのは親だけじゃありません。
祖父母、兄弟姉妹、いとこ、時には赤ちゃんまで一家総出で駆けつける国も珍しくないんです。
大人数を収容するために、フットボールスタジアムや街の広場で開催する学校もあるほど。
服装も特徴的で、黒いガウンに四角い角帽(モルタルボード)を被るスタイルは映画やドラマでおなじみですよね。
卒業式の後にダンスパーティーを開いたり、ブラジルでは家族も一緒に夜通し踊り明かしたり……日本の「しんみり」とは真逆の、お祭りのような雰囲気が広がっています。
アメリカの卒業式文化|キャップ投げは本当にやる?
「海外の卒業式」と聞いて真っ先に浮かぶのは、やっぱりアメリカではないでしょうか。
黒いガウンの学生たちが一斉に帽子を空へ放り投げる、あの映画みたいなシーン。
「あれって本当にやるの?」と思っている方、安心してください。本当にやります!
アメリカの卒業式の基本スタイル
アメリカの卒業シーズンは5月下旬から6月初旬。日本とは学校の年度が違い、秋に始まって春に終わるので、卒業式は新緑がまぶしい初夏に行われます。
英語では「Commencement(コメンスメント)」と呼ばれ、高校と大学で特に盛大にお祝いされます。
まず驚くのが、会場のスケール感。大学のキャンパス内の広場やフットボールスタジアムを使うのは当たり前で、ニューヨーク大学にいたっては毎年ヤンキー・スタジアムを貸し切り!
何万人もの卒業生と家族が集まる、まさに一大イベントです。
全員おそろいのガウンと角帽姿ですが、よく見ると一人ひとり違うのが面白いところ。
成績優秀者は首にカラフルな「オナーコード」というロープを掛けていたり、学生団体の役員はメダルやストールを身につけていたり。
同じ服なのに個性や努力がちゃんと見えるのは、アメリカらしい仕組みですよね。
もう一つの名物が、著名人による卒業スピーチ。
企業のCEOやハリウッド俳優、時には元大統領が壇上に立つこともあります。
2005年にスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学で語った「Stay hungry, Stay foolish」は、卒業式スピーチの枠を超えて世界中で語り継がれる伝説になりました。
ガウン&モルタルボード(帽子)の意味
あのガウンと角帽には、実は800年以上の歴史があります。
ルーツは中世ヨーロッパの大学。
当時の教授たちは教会に属する聖職者でもあり、彼らが着ていた法衣がガウンの原型になりました。
学生たちもそれに倣うようになり、「学問を志す者の正装」として定着していったんです。
アメリカ最古のハーバード大学も、1636年の創設時からこのスタイルを取り入れていました。
ガウンの袖の形で学士・修士・博士が区別でき、フード(襟布)の色を見れば専攻分野までわかるようになっています。
文学なら白、理学はゴールド、工学はオレンジ、法学は紫……
見た目はシンプルなのに、実はものすごく情報量が詰まっているんですね。
キャップトス(帽子投げ)はなぜ行う?
さて、あの有名な帽子投げの起源をご存じですか?
実は1912年、メリーランド州にあるアメリカ海軍兵学校の卒業式がはじまりなんです。
当時の士官候補生たちは、卒業と同時に正式な士官に昇格し、新しい制帽が支給されました。つまり、それまで被っていた候補生の帽子はもう不要。
「やったー!もうこの帽子かぶらなくていい!」という解放感から思わず空に投げたのが、すべてのはじまりだったそうです。なんだか微笑ましいですよね。
この風習は他の士官学校に広がり、やがて一般の大学にも波及。
20世紀半ばには全米の卒業式で定番のセレモニーになりました。
ちなみに、何百個もの同じ黒い帽子が地面に散らばるので、自分のを見つけるのが大変。
だから最近は、帽子の上にメッセージを書いたり、花やキラキラでデコったりする学生も多いのだとか。
イギリスの卒業式文化|卒業式は意外とシンプル?
大学の歴史でいえば世界トップクラスのイギリス。
さぞかし豪華な卒業式が……と思いきや、「意外とあっさりしてるね」という声が少なくないんです。
伝統と合理性が絶妙に同居するイギリスの卒業式、その実態を覗いてみましょう。
イギリスの卒業式の基本スタイル
イギリスの大学卒業式は7月に行われるのが一般的。
会場はキャンパス内の歴史ある講堂や、街の大聖堂が選ばれることも多く、中世の石造りの建物の中で学位が授与される光景はなかなか絵になります。
ただし、高校以下では大がかりな卒業式はほとんど行われません。
あったとしても簡単な証書授与とプロム(卒業パーティー)くらい。
イギリスで「Graduation」といえば、基本的には大学のイベントを指します。
フランスにいたっては卒業式という行事自体がほとんどなく、卒業証書は郵送で届くというのですから、日本とは感覚がまったく違いますよね。
伝統校の格式はさすがの一言。
オックスフォード大学には「サブフス」という正装ルールがあり、男性は黒スーツに白蝶ネクタイ、女性は黒スカートに白ブラウスを着たうえからガウンを羽織ります。
ケンブリッジ大学など一部の大学では、今もラテン語で学位授与の宣言が読み上げられるそうで、何百年も前から変わらない荘厳さには鳥肌が立ちそうです。
伝統的なドレスコード
面白いのは、卒業生だけでなく出席する家族にもフォーマルな装いが求められること。
保護者もスーツやワンピースで参列するのは当然で、ケンブリッジ大学の卒業式に参加した日本人のブログには「膝丈のワンピースに帽子を被って出席した」とあります。
英国王室のガーデンパーティーさながらの光景ですね。ジーンズで来る人はまずいないそうで、この「ちゃんとしなきゃ」の意識は日本以上かもしれません。
帽子投げはどうかというと、アメリカほど盛んではなく「帽子は脱いで掲げるだけ」という大学もあるのだとか。
派手さよりも品格を重んじるイギリスらしさが、こんなところにも表れています。
中国の卒業式文化|写真と家族が主役の一大イベント
日本の厳粛さとも、欧米のお祭り騒ぎとも違う、中国ならではの卒業文化。
そのキーワードは「とにかく写真!」と「家族の誇り」、そして「受験からの大解放」。
思わず「そんなことする!?」と声が出てしまうユニークな風習がてんこ盛りです。
中国の卒業式の基本スタイル
中国の卒業シーズンは6〜7月。
大学では正式な卒業式がありますが、日本ほどかしこまった雰囲気ではなく、わりとカジュアルに進みます。
ちょっとびっくりなのが、卒業証書がその場でもらえないケースが多いこと。
式典では象徴的に空の筒だけ渡して、本物の証書は後日あらためて大学の事務局に取りに行くのだとか。
日本では式典ですべて完結するのが普通なので、なんだか不思議な感じがしますよね。
高校はさらにあっさりしていて、卒業式自体を行わない学校も珍しくありません。
というのも、中国の高校生にとっての人生最大イベントは6月上旬の大学入試「高考(ガオカオ)」。
高考が終わった時点でもう気持ちは「高校卒業」なので、式典は二の次になりがちなんです。
記念撮影がメインイベント
中国の卒業シーズンで最も熱いのが、とにかく写真、写真、写真!
日本ではクラスで1枚集合写真を撮るくらいですが、中国のスケールは桁違いです。
なんと卒業式の1週間以上前から、友人グループでガウンと角帽を着けてキャンパス中を回り、あらゆるスポットで撮影大会が始まります。
校門の前、図書館の前、毛沢東像の前……何十枚、時には何百枚もの写真を撮りまくってSNSに投稿するのが恒例行事。
「式の前にもう礼装着ちゃうの!?」と驚きますが、中国ではこれが普通なのだそう。
ひとりっ子政策の影響もあり、子どもの大学卒業は一家の大きな大きな誇り。
両親もしっかりおしゃれをして大学に駆けつけ、校門の前で家族写真を撮る姿は卒業シーズンの定番風景になっています。
中国では卒業式そのものよりも、この「卒業写真」こそが本当の主役。
一生の宝物になる一枚を残すために、みんな全力なんです。
受験からの解放
中国の卒業シーズンには、もっと衝撃的な光景もあります。
高考が終わった直後、高校生たちが教科書やノートをビリビリに破いて、教室の窓からバーッと投げ捨てるんです。
校舎の周りが白い紙吹雪で覆われるほどの壮絶な光景は、ニュース映像で見たことがある方もいるかもしれません。
何年もの受験勉強で溜まりに溜まったストレスを、一気に爆発させるこのパフォーマンス。
爽快感はすさまじいでしょうが、後片付けは大変……。
さすがに最近は環境面や清掃の負担から禁止する学校も増えてきたようですが、一部の地域ではまだまだ健在だそうです。
大学でも似たような「解放」の表現があり、卒業時に寮のポット(魔法瓶)を窓から豪快に投げるという行為がSNSで話題になったことも。
「学生生活からの卒業」を象徴する行動……らしいのですが、これは絶対に真似しちゃダメですね。
タイの卒業式文化|王室と仏教の影響が色濃く残る卒業式
タイの卒業式は、ほかのどの国とも似ていない独自の世界観をもっています。
そのカギを握るのが「王室」と「仏教」の存在。
王族から直接卒業証書を受け取る伝統や、ジャスミンの花輪で感謝を伝える美しい儀式など、知れば知るほど心を動かされるエピソードが詰まっています。
タイの卒業式の基本スタイル
タイの大学卒業式で最も驚くのが、なんと王室メンバーが卒業証書を一人ひとりに直接手渡すという伝統。
しかも各大学は王族のスケジュールに合わせて式の日程を決めるため、「いつ卒業式があるか」は大学ごとにバラバラ。
卒業してから半年以上経ってようやく式が行われる、なんてことも珍しくありません。
王族の前に出るわけですから、準備も相当なもの。
お辞儀の角度、歩き方、証書の受け取り方まで事前にみっちりリハーサルが行われます。
証書を受け取った後は、王族に背中を見せないよう後ずさりで退場するのがマナー。
緊張感は半端じゃなさそうですが、「王族から直接いただいた」という事実は、卒業生にとって一生の誇りになるそうです。
ちなみに、各大学には「チュット・クルーイ」という専用のローブがあり、色を見ればどの大学かすぐわかります。
チュラーロンコーン大学はピンク、タマサート大学は黄色、マヒドン大学は水色……まるで大学のユニフォームカラーみたいで面白いですよね。
卒業式当日は"暑さとの戦い"
タイは年中暑い国ですが、乾季にあたる2〜4月は特に過酷。
卒業式がこの時期にかかると、厚手のガウンを着た卒業生も、正装で来た家族も、暑さとの真剣勝負になります。
式の途中で体調を崩す人が出ることも珍しくないのだとか。
しかも王族が出席しているため途中退席は絶対にNG。
何千人もの卒業生に一人ずつ手渡しで証書を授与するので、式が丸一日がかりになることもあります。
朝から夕方まで座りっぱなし、水分補給もままならない……タイの卒業式は「名誉と体力の勝負」なんです。
両親・先生に"ジャスミンの花輪"を捧げる
暑さの話のあとは、ちょっと心が温まるエピソードを。
タイには、ジャスミンの花で作った花輪「マーライ」を大切な人に贈る美しい伝統があります。
ジャスミンはタイで「母の象徴」とされる花。白く清らかなその姿が、尊敬と愛情を表すとされています。
卒業式の日、証書を受け取った卒業生たちは、自分の両親やお世話になった先生のもとへまっすぐ歩み寄ります。
そしてひざまずき、マーライを捧げ、両手を合わせた「ワイ」(合掌)の姿勢で感謝を伝えるのです。
「育ててくれてありがとう」「教えてくれてありがとう」。
その気持ちを、式典の場できちんと形にするタイの文化。
見ているだけで目頭が熱くなります。
卒業式が終わる頃、首から何連ものマーライを掛けられて花だらけになった卒業生の姿は、タイの春の風物詩なんだそうですよ。
出典:PR TIMES「アジア6カ国の卒業式の習慣は?」
インドの卒業式文化|伝統とエリート意識が混ざる式典
イギリス植民地時代から受け継いだ学問の格式と、現代インドの文化的アイデンティティが交差するインドの卒業式。
日本以上にフォーマルで厳粛な空気の中、近年は「黒いガウンを脱いで民族衣装を着よう」という大きな変化も起きています。
インドの卒業式の基本スタイル
インドの大学卒業式は「コンボケーション(Convocation)」と呼ばれ、国歌斉唱に始まり、学長の式辞、優等生の表彰、卒業証書の授与と続く格式高いプログラムが特徴。
大学によってはヒンドゥー教の祈祷を捧げたり、灯明(ディヤ)を灯す儀式が加わったりと、インドならではの宗教色も垣間見えるのがユニークなところです。
学位を授与するのは、名誉総長(多くの場合は州知事が務めます)や副総長。
IIT(インド工科大学)などの名門校では、なんと国の大統領が出席して直接メダルを手渡すことも。
その格式の高さは、世界の卒業式の中でもトップクラスといえるでしょう。
民族衣装とガウンが混在
インドの卒業式でいま起きている大きな変化が「服装革命」です。
もともとイギリスの影響で黒いガウンと角帽が標準でしたが、2015年頃から政府が「植民地時代のガウンをやめて、インドの伝統衣装を着よう」と呼びかけ始めました。
暑いインドで重たい黒ガウンは正直つらいという実用面に加え、自国の手織物文化への誇りを取り戻したいという想いが背景にあります。
The Indian Express紙によると、中央政府系の大学92校のうち約70校がガウンと角帽を廃止。男性は白いクルタ(民族シャツ)、女性はサリー姿で卒業式に臨む学校がぐっと増えました。
一方、「ガウンこそ学問の格式だ」と旧来のスタイルを守り続ける名門校もあり、いまのインドの卒業式会場ではサリーと黒ガウンが混在する不思議な光景が見られます。
伝統と改革のせめぎ合い、まさに現在進行形のドラマですね。
出典:The Indian Express "Goodbye, cap and gown: Over three-fourths of Central institutions shed colonial-era dress code since 2015"
フォーマルで格式高い雰囲気
インドの卒業式全体に漂うのは、圧倒的なフォーマルさです。
式典中の私語や歓声はマナー違反とされ、卒業生も保護者も姿勢正しく座って静かに待ちます。
「大学を卒業すること=社会のエリートとして認められること」という意識が強いインドでは、この場にいること自体がステータスなんです。
来賓スピーチも大きな見どころ。
著名な卒業生や企業トップ、時には政府の大臣クラスが「君たちの活躍がインドの未来を形作る」と熱いメッセージを送ります。
首席卒業生への金メダル授与も注目の瞬間で、ニュースで報道されることも珍しくありません。
式の締めくくりにはインド国歌「ジャナ・ガナ・マナ」を全員で斉唱。
国への貢献を胸に刻みながら巣立っていく。
その荘厳な幕引きは、日本の卒業式とはまた違った種類の感動を与えてくれるでしょう。
サウジアラビアの卒業文化|男女別で行われる卒業式
最後にご紹介するサウジアラビアの卒業式は、ほかのどの国ともまったく違う世界。
「男女完全別」の式典、厳しい撮影制限、そして閉ざされた空間の中で女性たちが見せる意外な一面まで、知られざるサウジの卒業文化に迫りましょう。
男女完全別の卒業式
サウジアラビアでは教育現場が男女で完全に分かれているため、卒業式もそれぞれ別々に行われるのが基本。
男性の式典はコーランの朗読から始まり、比較的オープンに進行。メディアが取材に入ることもあります。
驚くのは女性の卒業式です。基本的に男性禁制で、外部にも非公開。
その閉ざされた会場の中はどうなっているかというと……
なんと、普段アバヤ(黒い伝統衣装)やヒジャブで全身を覆っている女性たちが、華やかなイブニングドレスにフルメイクで登場するんです。
まるで結婚式の披露宴のような煌びやかな空間が広がり、女性たちは思いっきりおしゃれを楽しみます。
そして式が終われば、再びアバヤ姿に戻って外へ出ていくのです。このギャップ、すごくないですか?
外部公開はNG
女性卒業式では、写真やビデオの撮影が厳しく制限されています。
会場の入り口でスマートフォンを預けるよう求められることもあり、公式カメラマンが撮った写真すら関係者限定。
ネット上に女性卒業生の晴れ姿が出回ることは、ほぼありません。
そのため外部の人間が女性卒業式の実態を知ることはとても難しく、「サウジの女性卒業式は謎のベールに包まれている」と言われるほど。
情報が少ないからこそ、余計に気になってしまいますよね。
家族の同席ルール
サウジには伝統的に、男性の卒業式には父親や兄弟が、女性の卒業式には母親や姉妹が出席するというルールがあります。
つまり、母親は息子の晴れ姿を生で見届けることができないし、父親も娘の卒業式には立ち会えない。
日本では想像もつかない状況ですよね。
しかし近年、この慣習にも少しずつ変化の波が押し寄せています。
一部の大学では、大規模な女性用観覧席を新設して母親が息子の卒業式を見届けられるようにしたり、女性卒業式の様子を別室にライブ中継して父親が見られるようにしたり。
「テレビ越しではなく、自分の目で子どもの晴れ姿を見て抱きしめたい」。
ある母親のこの言葉は、多くの人の共感を集めたそうです。文化や宗教の壁があっても、わが子の門出を祝いたいという親心は万国共通。
その当たり前の願いが、少しずつ形になり始めています。
世界の卒業式を知ると、日本の卒業式がもっと面白くなる
アメリカの帽子投げ、中国の写真大会、タイのジャスミンの花輪、インドの民族衣装革命、サウジアラビアの秘密のドレスアップ。
こうして並べてみると、卒業式って本当に国ごとの歴史や宗教、価値観を映し出す鏡みたいだなと感じます。
でも、形がどれだけ違っても共通しているのは、「卒業生を祝い、新しい門出を応援する」という想い。
先生が教え子を誇りに思う気持ちも、親がわが子の成長に涙する瞬間も、友達同士で「おめでとう!」と言い合う笑顔も、世界中どこへ行っても変わりません。
海外の卒業式を知ったうえで日本の卒業式を振り返ると、また違った景色が見えてくるはずです。
「仰げば尊し」の合唱に込められた感謝の気持ちや、第二ボタンに込めた淡い想い。日本には日本にしかない美しさがちゃんとありますよね。
異文化を知ることで、自分たちの文化のよさにも気づける。
それが、世界の卒業式を覗き見る一番の楽しみなのかもしれません。
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