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怪物、セイレーンと人魚。あまりに美しい歌声、そして魅惑的な姿に、人は心ばかりでなく命をとられてしまうのだといいます。時代時代で多くの芸術家たちが魅せられ、向き合ってきたモチーフであり、今でも人々の心をとらえ続ける謎めいた存在です。よく似ているセイレーンと人魚、どこが似ていてどこが違うのか、ちょっとみてみましょう。
その前にひとこと。美しく、恐ろしいこの怪物たちに、決して魅了されぬよう、どうかご用心を。
同一視されたり、混同されたりしがちなセイレーンと人魚。よくみると、その起源や姿形にも違いがありそうです。
セイレーンの起源がギリシャ神話であるのに対し、人魚は世界各地で水にまつわる神や精霊としてさまざまな起源を持ちます。
そして、じつはセイレーンのもとの姿は半人半鳥。
有名なあのスターバックスのロゴマーク、よく見ると二股の尾を持っています。あれは人魚ではなく、半人半鳥から時代とともに姿を変えていったセイレーンなのです。
セイレーンは、聴けば我を忘れてしまうほど美しい歌声を持つという、古代から伝わる半人半鳥の怪物です。
セイレーンが登場するのは、ギリシャ神話の世界を描いたホメロスの『オデュッセイア』。『オデュッセイア』は、トロイ戦争の英雄オデュッセウスが帰郷するまでの冒険を描いた物語です。
セイレーンは海辺の岩場に棲み、その美しい歌声で通りかかる船乗りたちを惑わせる怪物として描かれています。
セイレーンの棲家には、その歌声に惑わされ、喰い殺された船乗りたちの骨が山をなしているとも。
船旅の途中、セイレーンの棲家である岩場を通ることになったオデュッセウス。船乗りたちにはその歌声が聴こえぬよう、こねた蜜蝋で耳を塞がせました。
しかし、自分はどうしてもセイレーンの歌を聞いてみたい。そこで、オデュッセウスは蜜蝋で耳を塞ぐかわりに、何があっても動けぬよう自分の身体を帆柱に縛り付けさせることで、セイレーンの歌声の誘惑からかろうじて逃れたのでした。
あまりにも危険なその歌声。セイレーンは、注意を促したり危険を知らせたりするための警告音、「サイレン」の語源となりました。
じつは『オデュッセイア』には、その姿についての具体的な描写は出てきません。
ただ、『オデュッセイア』が成立したそのすぐ後から、壺絵や彫刻などに半人半鳥の奇怪な姿のセイレーンが描かれるようになります。
そして中世以降は、鳥から二股の魚の尾を持つ半人半魚へと姿を変えていったのです。その背景には、主に二つのことが考えられます。
一つは、航海技術の飛躍的な発展です。
それまで沿岸の目標物や天文、海流の観測に頼っていた航海は、羅針盤が発明され、造船技術も発達したことで、遠く外洋へと船を進めることが可能になりました。
航路を沿岸に取る必要がなくなると、神話のセイレーンの棲む岩場も通る必要がなくなります。それにともなって、セイレーンは棲家を大海原に変え、その姿も変わっていったと考えられるのです。
もう一つは、時代とともに姿にまつわる「羽」と「ひれ」の単語が混同されたということ。
古ギリシャ語で、羽はπτερόν (pteron)、ヒレはπτερύγιον (pterygion)。同じ語源で意味合いもよく似ていたことで、混同されてしまったのだと考えられています。
下半身が魚となったセイレーンは、海中から船に乗り込んで船乗りたちを誘惑し、海底へと引きずり込む、そんな恐ろしい怪物として描かれるようになっていくのです。
上半身は女性、下半身には魚の尾を持つ、美しい姿として描かれることが多い人魚。アンデルセンの『人魚姫』を思い浮かべる方も多いでしょうか?
ただ、世界各地に残る人魚の伝承では、恐ろしい怪物として描かれることも多いのです。
北から南まで、まさに世界中に数多く伝承が残る人魚は、その起源もじつにさまざま。海や川など水にまつわる神や精霊など、より人々の暮らしに根付いた存在のようです。
最古の人魚として知られるのが、古代バビロニアの神オアンネス。時代は紀元前6、7000年ごろ。上半身は男性、下半身は魚の姿をしており、人類に文明を授けた神だとされています。海に棲み、昼になると陸に上がってあらゆる知恵を人々に授け、夜にはふたたび海に帰っていくとされました。
また古代シリアの半神半魚の女神アタルガティスは、地母神(すべての命の源、母なる大地の神)として篤く信仰されてきました。伝播の過程ではギリシャ神話のアフロディーテとも深く結びつき、豊穣ばかりでなく愛、美の神とされています。
現代の人魚として知られている姿は、それぞれの地に伝わる神や精霊に、半人半魚となったセイレーンが融合していったのだともいわれています。
◆メロウ/アイルランド
現れると嵐が起こるとされ、船乗りに恐れられる。全身が緑色、もしくは緑色の長い髪を持つ。「コホリン・ドゥリュー」という魔法の帽子をなくすと海に帰れなくなる。人間との間に生まれた子どもには、手に水かきがあり、足に鱗があるといわれる。
◆マルメーレ/ノルウェー
ノルウェーのハヴマン(男の人魚)とハウフル(女の人魚)の子どもであるといわれる。漁師が、預言を得るために捕まえたとされる。捕まえたら、24時間以内に同じ場所に帰さなければならない。
◆イアーラ/南米
アマゾン川流域の先住民に伝えられる、現代でも恐れられている水の精。美しい姿と歌声で男性を誘い出し、川の深みに引きずり込んで溺死させる。
つい長い髪の美しい姿を想像しますが、じつは伝わる地域によって、その姿はさまざま。
男性の人魚もいますし、地域によってはイメージと逆、上半身が魚で下半身が人間ということもあるのだそうです。
また、たびたび手鏡をうっとり覗き込んだり、櫛でその長い髪を梳いたり姿も描かれます。これは、一目で愛と美の神アフロディーテや人魚であることの「目印」ともなる持ち物、アトリビュート。
鏡や櫛には「自惚れ」「虚栄」の意味があり、人魚が「快楽」や「誘惑」の象徴であることを意味しているのです。
人魚はさまざまな能力を持ち、その肉や骨にも特別な力が宿ると信じられてきました。
人魚の出現は、良い兆しであるとも、不吉な前触れであるともいわれます。でも、どちらかというと、天変地異が起こる、嵐がやってくる、不漁となる、といった凶兆とされることの方が多いでしょうか。
伝えられるその地域によって、担う意味も変わるようです。
美しい歌声、魅惑的な姿だと伝わるセイレーンや人魚ですが、じつは、正体はまったく別のものなのでは?ともいわれます。
ジュゴンやマナティーが人魚のモデルとなったというのは有名な説です。
大きなからだ、ゆったりとした泳ぎ。ジュゴンやマナティーは、左右の胸ビレの付け根に乳首があり、子どもを抱えるようにして授乳します。
また、マナティやジュゴンが属する海牛目(かいぎゅう目=海生哺乳類の総称)、学名は「Sirenia」。そう、セイレーンに由来しています。
アイルランドやスコットランド、また北欧圏にも多くの人魚の伝承が残ります。
その正体だとされるのが、アザラシなどの海獣。
伝承がある地域は、人間の生活圏と海獣の生息域が重なる場所。生活になくてはならない存在でもありました。物語が生まれるほどにとても近しい関係であったのです。
そして、大海原に潜む危険そのものに姿を与えたのだともいわれています。
今のような技術を持たない時代、大海原に繰り出すことはまさに命がけでした。嵐との遭遇や漂流、座礁の危険。
人間にはどうすることもできないその大きな力を、我を忘れてしまうほどの美しい歌声や理性を失うような美しさに置き換えたのかもしれません。
世界には、セイレーンや人魚に似た多くの物語が残されています。
ヨーロッパ東部から北アジアにかけて伝わるスラヴ神話に登場する長い髪の水の精霊、または、幽霊のような存在であるとされる。水難事故で亡くなったり、叶わぬ恋に絶望して身投げしたりした女性、また洗礼を受ける前に亡くなった赤ちゃんがルサールカとなるのだといわれる。
冬は川や湖沼などの水底の暗がりにおり、夏になると川縁の森や野、畑に移り住む。ルサールカが通った場所には草が生い茂り、穀物もよく実る。豊穣の神ともされている。
「父なるライン」と呼ばれるライン川流域に伝わる水の精。
ライン川で最も川幅が狭く、流れも早い、さらに水面下に岩礁が潜む一帯。そこに聳える130mほどの岩山の上から聞こえる美しい歌声に聞き惚れるうちに、船乗りは舵をとり忘れ、船は沈むという。
ローレライとは、「見張りをする岩」という意味。
海の中ではアザラシの姿、陸に上がるときには毛皮を脱ぎ人間の姿になるという精霊。
セルキーとはスコットランド語で「アザラシ」。スコットランドやその北、オークリー諸島やシェットランド諸島などに伝わる。
人間の男性が、女性のセルキーが脱いだ毛皮を隠して帰れなくして妻としたり、男性のセルキーが船乗りの夫を待つ人間の女性たちを誘ったりした伝承が残る。
西アフリカから中央アフリカにかけて、ブードゥー教などの土着信仰で崇拝される水の女神。中米、カリブ海沿岸などでも崇拝されている。
長い髪の美しい姿、頭部が複数あったり、体にヘビを巻きつけた姿で描かれたりすることも多い。水害や病気の感染の原因とされる一方で、幸福や富をもたらすともされている。
セイレーンと人魚。美しさと恐ろしさが共存する怪物。
半分だけ人であるからこそ、私たちはひかれてしまうんでしょうね。
半分私たちと同じであるはずなのに、私たちは生きることのできない領域に生き、半分同じであるはずなのに、人間を容赦なく水中へと引きずり込む。
半分同じはずなのに、私たちとは違う。
ほら、どんな歌声だろう、髪はどのくらい長いだろうか、言葉は通じるのかな、なんてついうっとり考えてしまっていませんか?
美しくとも、それは怪物。気をつけて、気をつけて。
怪物、セイレーンと人魚。
あまりに美しい歌声、そして魅惑的な姿に、人は心ばかりでなく命をとられてしまうのだといいます。
時代時代で多くの芸術家たちが魅せられ、向き合ってきたモチーフであり、今でも人々の心をとらえ続ける謎めいた存在です。
よく似ているセイレーンと人魚、どこが似ていてどこが違うのか、ちょっとみてみましょう。
その前にひとこと。
美しく、恐ろしいこの怪物たちに、決して魅了されぬよう、どうかご用心を。
目次
セイレーンと人魚の違いとは?
同一視されたり、混同されたりしがちなセイレーンと人魚。
よくみると、その起源や姿形にも違いがありそうです。
大きな違いは起源とその姿
また、世界各地の神や精霊など
のちに半人半魚
下半身は二股の魚の尾
多くは美しい姿
長い髪
アンテモエッサ島(?)
「つなぐ」、「結びつける」
古英語mægden =乙女
セイレーンの起源がギリシャ神話であるのに対し、人魚は世界各地で水にまつわる神や精霊としてさまざまな起源を持ちます。
そして、じつはセイレーンのもとの姿は半人半鳥。
有名なあのスターバックスのロゴマーク、よく見ると二股の尾を持っています。
あれは人魚ではなく、半人半鳥から時代とともに姿を変えていったセイレーンなのです。
セイレーンとは?
セイレーンは、聴けば我を忘れてしまうほど美しい歌声を持つという、古代から伝わる半人半鳥の怪物です。
起源はギリシャ神話
セイレーンが登場するのは、ギリシャ神話の世界を描いたホメロスの『オデュッセイア』。
『オデュッセイア』は、トロイ戦争の英雄オデュッセウスが帰郷するまでの冒険を描いた物語です。
セイレーンは海辺の岩場に棲み、その美しい歌声で通りかかる船乗りたちを惑わせる怪物として描かれています。
セイレーンの棲家には、その歌声に惑わされ、喰い殺された船乗りたちの骨が山をなしているとも。
美しい歌声が人々を惑わす
船旅の途中、セイレーンの棲家である岩場を通ることになったオデュッセウス。
船乗りたちにはその歌声が聴こえぬよう、こねた蜜蝋で耳を塞がせました。
しかし、自分はどうしてもセイレーンの歌を聞いてみたい。
そこで、オデュッセウスは蜜蝋で耳を塞ぐかわりに、何があっても動けぬよう自分の身体を帆柱に縛り付けさせることで、セイレーンの歌声の誘惑からかろうじて逃れたのでした。
あまりにも危険なその歌声。
セイレーンは、注意を促したり危険を知らせたりするための警告音、「サイレン」の語源となりました。
半人半鳥から半人半魚へ変身?
じつは『オデュッセイア』には、その姿についての具体的な描写は出てきません。
ただ、『オデュッセイア』が成立したそのすぐ後から、壺絵や彫刻などに半人半鳥の奇怪な姿のセイレーンが描かれるようになります。
そして中世以降は、鳥から二股の魚の尾を持つ半人半魚へと姿を変えていったのです。
その背景には、主に二つのことが考えられます。
一つは、航海技術の飛躍的な発展です。
それまで沿岸の目標物や天文、海流の観測に頼っていた航海は、羅針盤が発明され、造船技術も発達したことで、遠く外洋へと船を進めることが可能になりました。
航路を沿岸に取る必要がなくなると、神話のセイレーンの棲む岩場も通る必要がなくなります。
それにともなって、セイレーンは棲家を大海原に変え、その姿も変わっていったと考えられるのです。
もう一つは、時代とともに姿にまつわる「羽」と「ひれ」の単語が混同されたということ。
古ギリシャ語で、羽はπτερόν (pteron)、ヒレはπτερύγιον (pterygion)。
同じ語源で意味合いもよく似ていたことで、混同されてしまったのだと考えられています。
下半身が魚となったセイレーンは、海中から船に乗り込んで船乗りたちを誘惑し、海底へと引きずり込む、そんな恐ろしい怪物として描かれるようになっていくのです。
人魚とは?
上半身は女性、下半身には魚の尾を持つ、美しい姿として描かれることが多い人魚。
アンデルセンの『人魚姫』を思い浮かべる方も多いでしょうか?
ただ、世界各地に残る人魚の伝承では、恐ろしい怪物として描かれることも多いのです。
人魚の起源はさまざま
北から南まで、まさに世界中に数多く伝承が残る人魚は、その起源もじつにさまざま。
海や川など水にまつわる神や精霊など、より人々の暮らしに根付いた存在のようです。
最古の人魚として知られるのが、古代バビロニアの神オアンネス。
時代は紀元前6、7000年ごろ。上半身は男性、下半身は魚の姿をしており、人類に文明を授けた神だとされています。
海に棲み、昼になると陸に上がってあらゆる知恵を人々に授け、夜にはふたたび海に帰っていくとされました。
また古代シリアの半神半魚の女神アタルガティスは、地母神(すべての命の源、母なる大地の神)として篤く信仰されてきました。
伝播の過程ではギリシャ神話のアフロディーテとも深く結びつき、豊穣ばかりでなく愛、美の神とされています。
世界各地に伝わる人魚の伝承
現代の人魚として知られている姿は、それぞれの地に伝わる神や精霊に、半人半魚となったセイレーンが融合していったのだともいわれています。
◆メロウ/アイルランド
現れると嵐が起こるとされ、船乗りに恐れられる。
全身が緑色、もしくは緑色の長い髪を持つ。「コホリン・ドゥリュー」という魔法の帽子をなくすと海に帰れなくなる。
人間との間に生まれた子どもには、手に水かきがあり、足に鱗があるといわれる。
◆マルメーレ/ノルウェー
ノルウェーのハヴマン(男の人魚)とハウフル(女の人魚)の子どもであるといわれる。漁師が、預言を得るために捕まえたとされる。捕まえたら、24時間以内に同じ場所に帰さなければならない。
◆イアーラ/南米
アマゾン川流域の先住民に伝えられる、現代でも恐れられている水の精。美しい姿と歌声で男性を誘い出し、川の深みに引きずり込んで溺死させる。
美しき半人半魚?
つい長い髪の美しい姿を想像しますが、じつは伝わる地域によって、その姿はさまざま。
男性の人魚もいますし、地域によってはイメージと逆、上半身が魚で下半身が人間ということもあるのだそうです。
また、たびたび手鏡をうっとり覗き込んだり、櫛でその長い髪を梳いたり姿も描かれます。
これは、一目で愛と美の神アフロディーテや人魚であることの「目印」ともなる持ち物、アトリビュート。
鏡や櫛には「自惚れ」「虚栄」の意味があり、人魚が「快楽」や「誘惑」の象徴であることを意味しているのです。
神秘的な人魚の能力
人魚はさまざまな能力を持ち、その肉や骨にも特別な力が宿ると信じられてきました。
人魚の出現は、良い兆しであるとも、不吉な前触れであるともいわれます。
でも、どちらかというと、天変地異が起こる、嵐がやってくる、不漁となる、といった凶兆とされることの方が多いでしょうか。
伝えられるその地域によって、担う意味も変わるようです。
セイレーンや人魚の正体とは?
美しい歌声、魅惑的な姿だと伝わるセイレーンや人魚ですが、じつは、正体はまったく別のものなのでは?ともいわれます。
ジュゴン・マナティー説
ジュゴンやマナティーが人魚のモデルとなったというのは有名な説です。
大きなからだ、ゆったりとした泳ぎ。
ジュゴンやマナティーは、左右の胸ビレの付け根に乳首があり、子どもを抱えるようにして授乳します。
また、マナティやジュゴンが属する海牛目(かいぎゅう目=海生哺乳類の総称)、学名は「Sirenia」。
そう、セイレーンに由来しています。
アザラシなどの海獣説
アイルランドやスコットランド、また北欧圏にも多くの人魚の伝承が残ります。
その正体だとされるのが、アザラシなどの海獣。
伝承がある地域は、人間の生活圏と海獣の生息域が重なる場所。
生活になくてはならない存在でもありました。物語が生まれるほどにとても近しい関係であったのです。
危険な海の擬人化説
そして、大海原に潜む危険そのものに姿を与えたのだともいわれています。
今のような技術を持たない時代、大海原に繰り出すことはまさに命がけでした。
嵐との遭遇や漂流、座礁の危険。
人間にはどうすることもできないその大きな力を、我を忘れてしまうほどの美しい歌声や理性を失うような美しさに置き換えたのかもしれません。
世界に残るセイレーンや人魚に似た伝承
世界には、セイレーンや人魚に似た多くの物語が残されています。
ルサールカ|スラヴ
ヨーロッパ東部から北アジアにかけて伝わるスラヴ神話に登場する長い髪の水の精霊、または、幽霊のような存在であるとされる。
水難事故で亡くなったり、叶わぬ恋に絶望して身投げしたりした女性、また洗礼を受ける前に亡くなった赤ちゃんがルサールカとなるのだといわれる。
冬は川や湖沼などの水底の暗がりにおり、夏になると川縁の森や野、畑に移り住む。
ルサールカが通った場所には草が生い茂り、穀物もよく実る。豊穣の神ともされている。
ローレライ|ドイツ
「父なるライン」と呼ばれるライン川流域に伝わる水の精。
ライン川で最も川幅が狭く、流れも早い、さらに水面下に岩礁が潜む一帯。
そこに聳える130mほどの岩山の上から聞こえる美しい歌声に聞き惚れるうちに、船乗りは舵をとり忘れ、船は沈むという。
ローレライとは、「見張りをする岩」という意味。
セルキー|ケルト
海の中ではアザラシの姿、陸に上がるときには毛皮を脱ぎ人間の姿になるという精霊。
セルキーとはスコットランド語で「アザラシ」。
スコットランドやその北、オークリー諸島やシェットランド諸島などに伝わる。
人間の男性が、女性のセルキーが脱いだ毛皮を隠して帰れなくして妻としたり、男性のセルキーが船乗りの夫を待つ人間の女性たちを誘ったりした伝承が残る。
マミ・ワタ|アフリカ
西アフリカから中央アフリカにかけて、ブードゥー教などの土着信仰で崇拝される水の女神。
中米、カリブ海沿岸などでも崇拝されている。
長い髪の美しい姿、頭部が複数あったり、体にヘビを巻きつけた姿で描かれたりすることも多い。
水害や病気の感染の原因とされる一方で、幸福や富をもたらすともされている。
怪物にひかれる理由
セイレーンと人魚。
美しさと恐ろしさが共存する怪物。
半分だけ人であるからこそ、私たちはひかれてしまうんでしょうね。
半分私たちと同じであるはずなのに、私たちは生きることのできない領域に生き、半分同じであるはずなのに、人間を容赦なく水中へと引きずり込む。
半分同じはずなのに、私たちとは違う。
ほら、どんな歌声だろう、髪はどのくらい長いだろうか、言葉は通じるのかな、なんてついうっとり考えてしまっていませんか?
美しくとも、それは怪物。
気をつけて、気をつけて。
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