ナスカの地上絵の謎に迫る!描かれた目的とその方法とは?

ペルー南部の果てしない砂漠に刻まれた、誰が、何のために描いたのか分からない巨大な線画群──それが「ナスカの地上絵」です。
ユネスコの世界遺産にも登録されているこの古代遺跡には、いまも多くの謎が眠っています。
その起源や目的、そして長い歳月を経ても消えない理由を、ひとつずつ探っていきましょう。

ナスカの地上絵の基本情報

ナスカの地上絵の基本情報

ナスカの地上絵を理解するには、まずその規模や背景となった文化を知ることが欠かせません。
ここでは地上絵が生まれた時代と、そこに秘められた“謎”の輪郭を見ていきましょう。

ナスカの地上絵とは(時期・規模など)

ナスカの地上絵は、南米ペルー南部のナスカ平原とその周辺に描かれた巨大な線画群です。
およそ紀元前200年から紀元600年ごろにかけて、ナスカ文化の人々によって作られたと考えられています。

確認されている地上絵は数百にのぼり、最大のものは長さ300メートルほど、範囲は数キロ四方にもおよぶとされます。

描かれているのは動植物や幾何学模様など多彩で、地上からでは全体像をとらえることができません。そのため、上空から初めて、その姿が浮かび上がります。
1994年には世界遺産に登録され、現在ではペルーを代表する観光地のひとつとなっています。

ナスカ文化とは

地上絵を生み出したナスカ文化は、南米アンデス文明の一派で、紀元前後からおよそ800年にわたり栄えました。
ナスカの人々は乾燥地帯に高度な灌漑技術を築き、また陶器や織物の美しさでも知られています。

土器の幾何学模様や色彩には、自然を崇拝し、豊穣を願う信仰が表現されていました。
こうした価値観は、後に描かれた地上絵にも影響を与えたと考えられています。

また、ナスカ川流域に点在する集落跡や地下水路などの遺構からは、彼らの高い土木技術と組織力もうかがえます。

ナスカの地上絵の「謎」とは?

ナスカの地上絵がこれほどまでに注目を集めるのは、いくつもの“謎”に包まれているからです。
地上からは形が分からないほど巨大な図形を、なぜ、どのように描いたのか。

目的についても、宗教儀式や天体観測、宇宙人との交信など、さまざまな説が唱えられてきましたが、いまだ決着はついていません。
さらに、雨風が少ないとはいえ、千年以上も姿を保ち続けている点も驚きです。

謎の多さゆえに、ナスカの地上絵は「人類最大のミステリー」とも呼ばれ、今なお多くの研究者や旅行者を惹きつけています。

ナスカの地上絵はどうしてつくられた?(目的)

ナスカの地上絵には多くの謎が残されていますが、なかでも「何のために描かれたのか」という“目的”は最大の焦点のひとつです。この問いに迫るべく、研究者たちはさまざまな視点から調査と検証を重ねてきました。

儀式のため

儀式のため

ナスカ文化では、自然の恵みに感謝し、それを神聖視する信仰が根づいていたとされています。
地上絵は、そうした宗教的な儀式と深く関係していた可能性があります。

たとえば直線や図形は、神聖な場所へ向かう“道”として設けられ、儀式の際にはその上を人々が行進したと考えられています。

また、描かれた動物たちは神への供物や祈りの象徴であり、信仰の場としての役割を果たしていたともいわれます。

道を示すため

道を示すため

幾何学的な直線の多くは、山や水源、集落といった特定の地点を指していることが分かっています。
このことから、地上絵は“道しるべ”として役割を果たしていたとする説も存在します。

見渡す限り目印のない砂漠では、たとえ航空視点でなくても、地上から確認できる小規模な線は有効だったと考えられます。
実際に、古代の交通路や巡礼ルートと重なる線もあり、実利的な意味を持っていた可能性もあるでしょう。

天体観測をするため

天体観測をするため

ナスカの地上絵の中には、夏至や冬至の太陽の動きと一致する直線や図形も見られます。
こうした天体との関係から、地上絵は太陽や星の動きを読み取る“カレンダー”や“観測装置”のような役割を果たしていた、という説もあります。

実際、アンデスの他地域でも天文観測と宗教儀礼が結びついた建造物が存在しており、ナスカにおいても同様の機能を担っていた可能性は高いと考えられています。

宇宙人との交信のため

宇宙人との交信のため

オカルト的な説ではありますが、「宇宙人が上空から見るために描かれた」という主張も一定の人気を集めています。
地上からは見えないほど巨大な線画であることから、そうした想像が生まれたのでしょう。

この説は、ドイツの作家エーリッヒ・フォン・デニケンによって提唱されました。

科学的根拠は乏しいものの、ナスカの地上絵が持つ神秘性や怖さを象徴する論点のひとつとなっています。

農耕や水に関する祈りのため

農耕や水に関する祈りのため

ナスカ地方は非常に乾燥した地域で、水は人々の生存を左右する最重要資源でした。
そのため、地上絵は雨乞いや水源の発見を祈る“宗教的象徴”として描かれたとする説も有力です。

特に螺旋状の図形や植物に似たモチーフは、地下水路や水の流れとの関連性を示唆するものとして注目されています。
こうした説はナスカの人々が自然と向き合いながら生きていた証ともいえるでしょう。

ナスカの地上絵はどうやってつくられた?(方法)

ナスカの地上絵はどうやってつくられた?(方法)

ナスカの地上絵は、現代のような重機も測量機器もない時代につくられたとは思えないほど、精密でスケールの大きな構図を描いています。

いったい、どのようにしてこれほどの線画が地上に刻まれたのでしょうか。
この章では、その謎めいた制作方法に迫っていきます。

地表の暗い石を取り除く

ナスカの地上絵は、丘や台地の表面にある暗褐色の石を取り除き、その下にある黄土色の明るい地層を露出させることで描かれました。
明暗のコントラストによって、輪郭のはっきりした線画が地面に浮かび上がる仕組みです。

掘り下げる深さはわずか数センチで、顔料などの塗料は使われていません。
非常にシンプルな方法ながら、削られた線は長年そのままの形を保っているのです。

工具なしでどう直線や図形を描いたのか?

ナスカの人々は、金属製の道具や車輪といった技術を持っていなかったとされています。
それでも、直線や円形を正確に描くために、杭とロープを使って線を引いたり、地面に簡易的なグリッド(方眼)を設けて、図を拡大しながら描いたと考えられています。

また、複数人で役割を分担しながら、少しずつ図形を仕上げていった可能性もあります。
実際、現代の研究チームが同様の手法を用いて実験を行ったところ、素人でも数時間から数日で再現が可能だったと報告されています。

巨大な絵を上空視点でどう把握したのか?

ナスカの地上絵は、上空からでなければ全体像を把握できないほどの規模を持っています。
空を飛ぶ手段を持たなかった古代の人々は、どのようにしてその完成形を思い描いていたのでしょうか。

この点については複数の仮説があり、たとえば周囲の丘の上から俯瞰して確認していた、あるいは地面に縮図を描き、グリッド方式で拡大したという説が挙げられます。
なかには、線の配置や形そのものが、記憶や設計図として人々の間で共有されていた可能性を示す声もあります。

実際、ナスカ周辺には見晴らしのよい小高い場所が点在しており、そこから一部の絵が確認できたとも考えられているのです。

再現可能か

現代の研究者たちは、実際にナスカの地上絵を模倣する実験を行い、一定の条件がそろえば再現できることを確かめています。
実際に、ペルーの学生や地元住民が杭とロープだけを使って幾何学模様を描いたプロジェクトも成功を収めました。

こうした検証は、ナスカの人々が優れた観察力と協調性を備え、想像以上に高度な造形技術を持っていたことを示しているといえるでしょう。

ナスカの地上絵が消えない理由は?

ナスカの地上絵は、約2000年前に描かれたにもかかわらず、今なおその形を保ち続けています。
風雨にさらされることの多い自然環境において、これほどまでに長期間保存されているのはなぜなのか、その環境的な要因について見ていきましょう。

乾燥した気候

ナスカ地方は、世界でも有数の乾燥地帯に位置し、年間の降水量はわずか数ミリにすぎません。
極端な乾燥は、地面の浸食や植物の繁茂を防ぎ、地上絵の輪郭が損なわれるのを防いできました。

雨による土砂の流出や、湿気による地表の崩壊といった現象がほとんど起きないことも、地上絵が描かれた当時の姿を保つ一因とされています。

風の影響が少ない

砂漠地帯でありながら、ナスカ平原では強風が吹き荒れることはほとんどありません。
地上絵のある台地は、周囲を山に囲まれたくぼ地のような地形で、風が通りにくくなっています。

さらに、ナスカの地表の砂は粒が重く、風で舞い上がって線を埋めるようなことも起こりにくいのです。
このように風の影響が少ないことで、削られた線が長く残り続けていると考えられています。

固い大地

地上絵が描かれたナスカ台地の地層は非常に硬く、人が踏んだ程度では崩れたり削れたりすることはありません。
表面の小石を取り除くだけで明るい地層が露出するため、掘り下げる必要はなく、描かれた線も自然に埋まりにくくなっています。

さらに、この硬い地層は吸水性が低く、雨天後も地面が崩れにくいことが、ナスカの地上絵を長く保ち続ける要因となっています。

野生動物がいない

ナスカ台地には、地上絵を踏み荒らすような大型の野生動物がほとんど生息していません。
この地域の乾燥した気候では、動物が群れをなして移動する環境そのものが成立しにくいのです。

実際、他の歴史的遺構では動物の糞尿による劣化が多く見られますが、ナスカではそのようなリスクが低く、保存状態の良さにつながっています。

代表的な地上絵

ナスカの地上絵には、幾何学模様だけでなく動植物や人の形をした絵も描かれています。
なかでも特に有名なのが、以下で紹介する4つのモチーフです。

ハチドリ

ハチドリ

ナスカの地上絵のなかでも、特に有名なモチーフのひとつが「ハチドリ」です。
全長は約96メートル、細長いくちばしと左右対称に広げた翼が印象的で、空を飛び回るその姿を見事にとらえています。

芸術的な構図の美しさから、ハチドリはナスカ文化の象徴ともいえる存在であり、雨をもたらす存在として信仰の対象だったという説もあります。

サル

サル

サルの地上絵も、ナスカのなかで特にユニークなモチーフのひとつです。
全長は約55メートルで、渦を巻くような長いしっぽが印象的に描かれています。

この螺旋状のしっぽには、天体や生命のサイクルを表す象徴性があるとも考えられており、親しみのある姿とあわせて、古代人の豊かな感性を感じさせます。

クモ

クモ

クモの地上絵は、脚を大きく広げて地面に張りついたような姿で描かれています。
全長は約45メートルで、8本の脚が放射状に広がり、その対称性と構造の正確さに驚かされます。

クモは雨を呼ぶ存在として信仰の対象だったともいわれ、ナスカの農耕文化との深いつながりを感じさせるモチーフです。

コンドル

コンドル

コンドルは、南米アンデス地方に生息する巨大な鳥をかたどった地上絵です。
翼を大きく広げたその姿は、全長およそ120メートルにもおよび、ナスカの地上絵の中でも最大級のスケールを誇ります。

力強く広がる構図は、天と地をつなぐ聖なる存在としてのコンドルを象徴しており、古代人が空に抱いた信仰や畏敬の念を感じさせます。

ナスカの地上絵を見るには

ナスカの地上絵は地表に描かれているため、地上からは全体を見渡すことができません。
実際に訪れる際は、空から・塔の上から・地上からと、さまざまな視点でその姿を楽しむことができます。

ナスカの地上絵へのアクセス

ナスカの地上絵は、ペルー南部のナスカ台地一帯に描かれています。
最寄りの町「ナスカ」へは、首都リマから長距離バスで約7〜9時間かかります。

美しい景色を眺めながらペルーの大地を巡る旅路は魅力的で、イカやパラカスといった人気観光地を経由するルートも多くの旅行者に親しまれています。

セスナに乗って上空から見る

セスナに乗って上空から見る

ナスカの地上絵をもっともダイナミックに楽しめるのが、セスナ機による上空からの観賞です。
セスナとは小型のプロペラ機で、ナスカの空港から出発する遊覧飛行ツアーに参加することで、約30分かけて複数の地上絵を巡ることができます。

空からは地上絵の形や構図が一望でき、特にハチドリやコンドルといった大型モチーフはその迫力が際立ちます。
なお、小型機は揺れやすいため、乗り物酔いしやすい方は酔い止めを用意しておきましょう。

観測塔から見る

観測塔から見る

飛行機に乗らずに地上絵を観賞したい場合は、観測塔(ミラドール)からの見学がおすすめです。
ナスカ台地に設けられた高さ約13メートルの塔からは、「手」と「木」と呼ばれる2つの地上絵を上から眺めることができます。

見える範囲は限られますが、費用や体力の負担が少ないため、誰でも気軽に立ち寄れる人気の観賞スポットとなっています。

地上から見る

ナスカ台地を歩いて地上絵を観賞するという選択肢もありますが、地上からでは全体像を把握するのは難しく、多くのエリアでは遺跡保護のため立ち入りも制限されています。

一部の線や模様は道路沿いから確認できるものの、地上絵の本来の姿を楽しむには、やはり上空または観測塔からの観賞が現実的といえるでしょう。

ナスカの地上絵が放つ永遠の謎と魅力

ナスカの地上絵は、いまも多くの謎に包まれており、その姿に「怖い」と感じる人もいるほどです。
なぜ空からでなければ見えない図形を、どのような技術と意図で描いたのか──。決定的な答えは見つかっていません。

それでも、世界遺産として大切に守られながら、この考古学的ミステリーは人々の想像力をかき立て、歴史や宇宙へのロマンを呼び起こし続けています。
乾いた大地に刻まれ、ペルーの空の下で悠然と残り続けるその姿は、発見と研究の歴史を超えた、時を超えるメッセージなのかもしれません。


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