捨てられるはずの廃材をアップサイクル インド綿のファイヤースターター(着火剤)

火を熾すのはなかなか難しい。初心者ならなお更だ。
そこで薪に簡単に火をつけられる着火剤が便利だ。

捨てられるはずだったものを再利用し、ただ火をつけるものにもストーリーのある着火剤が出来ました。

チャイハネのファブリックは、鮮やかな色彩や大胆な柄が魅力です。それは糸くずになっても。
廃棄されるものだった糸くずもアイディア次第でキャンプやBBQを盛り上げてくれるアイテムに生まれ変わりました。

まずは、この着火剤(ファイヤースターター)を製造されている東洋工業株式会社/グラーストウキョウさんにインタビューしました。

Q1
このインタビューにお答えくださっている方のお名前と普段のお仕事の内容を教えてください。

初めまして。東洋工業株式会社の代表を務めています藤井と申します。

キャンドルの新商品開発や、精油をブレンドし新しい香りの創作をすることが多いですが、そうはいってもPCに向かって黙々と資料をつくっていることもあれば、会社を経営しているため当然ですが電卓を叩いて数字とにらめっこすることも多々あります。

「心と体の癒しを追求し創造する」という経営理念に従って、アロマとキャンドルの未来をつくっています。

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Q2
御社の紹介をお願いします。

弊社は、雑貨のアロマキャンドルや冠婚葬祭、教会やレストランなどへの業務用キャンドルを主に製造している65期(2022年4月現在)を迎えたキャンドル専門メーカーです。また、ハンド&ボディクリームやフレグランスソルト、ファブリックミストなどの、アロマ・フレグランス雑貨やボディケア商品を製造している、11期(2022年4月現在)を迎えたGRASSE TOKYO(グラーストウキョウ)がグループ会社にあります。

百貨店やオンラインショップ、国内外のセレクトショップを中心に展開している一方で、お客様のオリジナル商品開発にも積極的に取り組んでおり、弊社の製造技術を様々な形で活かし、お客様に寄り添ったご提案をできるよう日々取り組んでいます。

また、焚き火の匂い対策で使える消臭芳香ファブリックミストや虫除けになるボディミスト、持ち運びや扱いやすいペーパーインセンス(紙製のお香)などのアウトドアで使えるアイテムでも近年注目をいただいており、昨年には廃材となる竹のおが粉を活用した焚き火用の着火剤も商品化しました。

余計なものを一切入れないという考えの下、出来るだけ人に、地球にやさしいものづくりを心掛けています。

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(東洋工業株式会社/グラーストウキョウ様ホームページより)

Q3
廃材として出る竹のおが粉を蝋で固め、ファイヤースターターを作ろうとひらめいたタイミングはどんなときでしたか?

私自身が以前からキャンプをやっているのですが、ずっと着火剤の役目に疑問をもっていたことがきっかけです。

着火剤は、薪や炭に火をつけるための大変便利なアイテムです。着火剤があることで簡単に火起こしが可能になるため、その後の焚き火やバーベキューをストレスなく楽しむことができるからです。
そんな優れた名脇役の着火剤ですが、役目がそれ以上でも以下でもなくて、そこにワクワクがなかったのがとても残念だなと思っていました。

そこで昨年の2021年、弊社商品にあるアロマ芳香剤リードディフューザーの竹製リードスティックを製造する加工所で廃材として出る竹のおが粉をアップサイクルし、資源として生まれ変わらせることでゴミが減りエシカルな着火剤TAKENOKOを商品化しました(商標登録済・意匠登録出願中)。

分かりやすく親しみを込めて、「竹の粉(こ)」=TAKENOKO(タケノコ)と名付けました。
削りたての竹のおが粉はフワフワしていてとても良い香りがします。ゴミとして大量に焼却処分されるのはあまりにも勿体ないうえに可哀そうで・・・この竹のおが粉に第二の人生をつくってあげようと考えました。

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(東洋工業株式会社/グラーストウキョウ様ホームページより)

Q4
燃焼時間も比較的長い5~7分とあって、火おこし初心者には頼りになりそうです。このファイヤースターター(着火剤)のいいところを教えてください。

キャンドルの製造技術を活かし、竹のおが粉にワックスを含侵させています。

ワックスが含侵された竹のおが粉は、とても火つきが良く、更には火もちも良いため非常に着火剤に向いている原料であることが分かりました。この竹のおが粉たちの表面がキャンドルでいうところの芯にあたり、しっかりと含侵したワックスが効率のよい燃料となることで安定した大きな炎となり、また燃焼時間も長く保つことに成功しました。
通常の環境下では自然発火しないため、アルコールや灯油などの原料に比べて安全で、着火剤を使うのが初めての方でも大変扱いやすいのもメリットの一つです。

また、パッケージには一部環境にやさしい植物由来の原材料をしていることや、キャンプ場のサイト内にうっかりTAKENOKOを出しっぱなしにしていたとしても、キャンプサイトに馴染む可愛らしいレトロ調のデザインになっているので、火をおこすためだけの着火剤ではなく、見えるところに置いておきたくなる雑貨のような感覚で扱っていただけると嬉しいです。

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Q5
形もこだわってバランスの取れた半球体状にされたとのこと、形を決める際にも色々アイディアがあったかと思いますが、半球体にした決め手はなんですか?

よくある着火剤はブロック状や四角柱のような形状のものが多くあります。着火剤の底面が焚き火台などに触れている部分は、最後まで燃焼せずに燃え残ってしまうことがよくあります。それに対し、TAKENOKOは半球体状をしており、その球体面を下にして使うため底部の接地面積はごくわずか。そのため、燃え残りが少なく最後までしっかりと燃え尽きることができます。

また、半球体にすることの最大のメリットとしては、炎が球面の側面からも立ち上がるため、たいまつのようにTAKENOKO全体が炎で包まれるために火力を最大限に発揮することができます。

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Q6
商品開発において、試行錯誤したことがあったら教えてください。

キャンドルの主原料でもあるワックス(ロウ)には実は様々な種類があります。このTAKENOKOに適したワックスの種類選定、竹のおが粉の仕分け工程、型、含侵方法、ワックスの含侵時間・含侵量などの実験を繰り返して計測し、最終的な製造方法が完成しました。

上記全ての工程のどれが欠けても今のTAKENOKO完成には至らなかったと思います。キャンドル製造のノウハウがあってのスピーディな商品化だったと感じています。

商品製造過程は、今のところ全ての工程を職人の手作業で行っています。非常に時間と労力のかかる作業なので生産効率は良くないのですが、昨今の環境問題に僅かでも貢献できればという想いと、またそのようなコンセプトに共感いただける皆様に手に取っていただけることがTAKENOKOの使命なのかなと考えております。

Q7
おすすめの使用シーンなどありましたら教えてください。

焚き火で薪への火付けやバーベキューで炭への火付けの際に着火剤として使っていただくのがベストかと思います。着火剤をただの火付け用の道具としてではなく、着火剤に点火する動作から焚き火やバーベキューが始まっているんだという一つのエンターテイメントとして捉えてもらえたら最高です。

火の周りを囲っておしゃべりしたり笑ったり、ときには静けさの中で薪が爆ぜる音と自然の声を聴く。そんな幸せな輪と和をつなぐきっかけとなる火付け役になれるような着火剤になってほしいと考えています。

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Q8
廃材を利用して新たな商品が生まれ、再利用のチャンス、そして実際使うことで持続可能な世界について考えるきっかけになればいいと思います。そのあたりについてメッセージをお願いします。

TAKENOKOには、紙の加工をする株式会社相馬様にご協力いただき、工場からでる紙の廃材を混ぜた、TAKENOKO×KAMNOOTOSHI(タケノコ×紙のおとし)という第二弾も出来ました。複写伝票の2箇所の丸く抜かれた部分などを竹のおが粉に混ぜて固めました。
また、先日ローンチされたばかりですが、マッチ製造工場からでるマッチの軸の廃材を混ぜたMATCH DAMA(マッチ玉)を神戸マッチ株式会社様のオリジナル商品として製造しました。このように、今後も廃材になるものの中で燃やして害のないものであれば、TAKENOKOに混ぜて新しいシリーズができ、面白い展開ができるのではと可能性を感じています。

廃材になるはずだだった資源をアップサイクルし活用することで、ゴミを減らしたり身の回りの物を大切に使おうという意識が高まるきっかけになれば良いですね。

自然に感謝し自然を活用する、というアウトドアの魅力の一助を担えるアイテムに育ってくれたら嬉しいです。

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(東洋工業株式会社/グラーストウキョウ様ホームページより)

見えるところにおいて置きたくなる着火剤を廃材から作りだしてしまう閃き!
会社の技術や熱意によって形になっているのがわかりました。
インタビューのご回答ありがとうございます。

そして、チャイハネの仕入担当をしている、この着火剤とチャイハネのコラボをひらめいた三輪にもインタビューしました。

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Q1
出会いのきっかけを教えてください。

キャンプ需要にフォーカスした視点でいろいろな企業さんの商品を見て回っている際に、よくあるアウトドアグッズとは違った雰囲気の商品を発見しました。

ひと目見たところではなにに使うものなのかわからず、声をかけさせていただいたところ
“おがくずを再利用してロウで固めた着火材“という説明を聞き、同行していたメンバー一同「おもしろい!」と釘付けになってしまいました。

その場でなにか一緒にできないでしょうか? とコラボの相談をしたところ、とても積極的に企画へ参加していただくことができました!

Q2
インド綿のボロ糸を使おう!とひらめいたきっかけや、そのときの気持ちを教えてください。

グラーストウキョウさんが着目された、廃材を生まれ変わらせてワクワクするものを作りたい。というアイディアに惹かれて、チャイハネだったらどんなものができるか想像してみました。

お店をみていただいても分かるように、チャイハネにはたくさんの布製品があります。もちろん生産過程では不要な糸くずもたくさんでているはずです。グラーストウキョウさんの商品を見ながら「カラフルな糸で作れたら絶対かわいい!」とひらめきました。

チャイハネの商品を作る際に出てしまう廃材から、また別のチャイハネらしい商品に生まれ変わる可能性があるなんて、思いもしなかったです。

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Q3
インドのメーカーさんの反応はどうでしたか?

「糸くずが欲しいから送って欲しい」
と連絡をしたところ、当然ですが
「???」
という感じでした(笑)。

商品のイメージを伝えると、快くカラフルな糸くずを集めることに協力してくれました。
海外からゴミ(になるはずのもの)だけを輸入したのはおそらく初めてだと思います(笑)。

もちろん燃やしても無害な綿素材を使用していますし、不純物もしっかり取り除いた上で糸くずを集めてもらっています。
この作業は意外と大変かと思うので少し心配ましたが、完璧に対応してくれたインドのメーカーさんにはとても感謝しています。

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(写真はイメージです。糸くずだけでこんなにたくさんの量はありません)

Q4
正直なところ、良いもの見つけちゃったな!って思いました?

はい。僕自身初めて見る商品でしたし、着火材をおしゃれにする。というアイディアにまず衝撃を受けました。
燃やしてなくなってしまうものにもこういう遊びゴコロがあると、キャンプなどの特別な体験がより思い出にのこるものになると思います。

“サステナブルでカラフルな着火材”という新しすぎるアウトドアグッズを完成させることは、このコラボが無かったらなかなか出来なかったと思います。

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Q5
社内で提案したときの、メンバーの反応を教えてください。

サンプルを作ってもらって社内で見せたところ、はじめはみんな何で出来た何に使うものなのか分からなかったみたいです。
僕がはじめて商品を見たときと同じリアクションでした。

インドの綿、しかも廃材を生まれ変わらせた商品だという説明をすると、長年インドと付き合いのある人からも驚きの声が上がりました。

Q6
商品開発において、試行錯誤したことがあったら教えてください。

廃材とはいえ手に取りやすい価格帯、着火材としての性能、そして見映えを良く。
この3つを合わせることはなかなか難しかったです。そこはやはりオリジナルの商品を生産されているグラーストウキョウさんのアドバイスがとても力になりました。

糸にロウを流し込んで固めているのですが、1個あたりに使う糸の量や火がつきやすい成型の仕方など、プロならではのご意見もいただきながら企画をすすめていけたことがとても心強かったです。

火がつきやすく燃焼時間もばっちり5分以上と厳しいアウトドア環境下でもしっかり満足していただける商品にしあがりました。

料理や夜の焚き火など、1度のキャンプの中で火を起こすタイミングって1回きりじゃないと思います。
8個入りという安心感のある数量で1000円以下!
しかも可愛い!

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Q7
廃材を利用して新たな商品が生まれ、再利用のチャンス、そして実際使うことで持続可能な世界について考えるきっかけになればいいと思います。そのあたりについてメッセージをお願いします。

日常の中で当たり前に捨ててしまう、いわゆるゴミと言われているモノについて深く考えることってなかなか出来ないと思います。サステナブルって言葉だけを聞くとすごくスケールの大きい話に聞こえてしまうし、もちろん僕1人のちからだけで人の役に立つモノを産み出す! なんてことはできないです。

でも、今回のような今まで誰も思いついていないような変身アイディアってまだまだたくさんあると思います。
実現させることができた今回のコラボ開発はとても貴重な経験でしたし、こういうアイディアを想像して考えることだけでも、サステナブルの一環なんじゃないかなと思います。

みなさんもゴミ箱にむかう一瞬で、なにかを想像して楽しんでみてください!

ファイヤースターター

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みわさんプロフィール画像

プロフィール:三輪(みわ)

本社仕入担当(主にインド・バリの商品)浜松店出身
現地の民芸雑貨や普段使いのお香etc...
エスニック雑貨好きの目線で、素敵な商品をたくさんお届けします。

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